『〈ゾラ・セレクション〉第8巻 文学論集1865-1896』ゾラの文学観を知るならこの1冊!

『レ・ミゼラブル』とドストエフスキー

ゾラの文学観を知るならこの1冊!『〈ゾラ・セレクション〉第8巻 文学論集1865-1896』

今回ご紹介するのは2007年に藤原書店より発行された佐藤正年編訳『〈ゾラ・セレクション〉第8巻 文学論集1865-1896』です。

資本主義社会に生きる人間の矛盾を描き尽した巨人

「実験小説論」だけを根拠にゾラの文学理論を裁断してきた紋切り型の文学史を一新、ゾラの幅広く奥深い文学観を呈示!「個性的な表現」「文学における金銭」「淫らな文学」「文学における道徳性について」「小説家の権利」「バルザック」「スタンダール」他。

藤原書店商品紹介ページより

この本は1865年から1896年にゾラによって書かれた文学論の中から編訳者が重要な13の論文を選び翻訳したものになります。

ゾラ(1840-1902)はフランスの偉大な作家でありますが、彼は同時にジャーナリストとして活躍していました。

特に作家としての駆け出しの頃はジャーナリストが本業と言ってもいいほどで、日々新聞にたくさんの記事を書いていました。

ゾラ自身もこの本の中で述べているのですが、ジャーナリストとして記事を大量に書き続けたこと、これが作家人生にとって大きな意味を持ったと語っています。時代を読み、そしてそれを締め切りがある中でできるだけ速やかに的確な言葉で描写していく。これは作家として重要な訓練になったとゾラは述べます。若い作家にはぜひジャーナリストになって経験を積むことを薦めるとすら述べています。それほどゾラはジャーナリストとしての仕事を大切にしていたのでした。

巻末解説によれば、ゾラは新聞や雑誌に投稿した記事を加筆修正し、再出版の形で自分の本にしていたそうです。

この本ではそんなゾラが文学について書いた論文を読むことができます。

特に、ゾラの文学スタイル「自然主義文学」とは何かということがわかりやすく解説されているのがこの本の大きな特徴になります。ゾラの自然主義文学については以前当ブログでも紹介しました。

ゾラはこの本でフランス文学の歴史を語り、小説や詩、演劇の変遷をわかりやすく解説し、その上でゾラが考える理想の文学観を語ってくれます。

ジャーナリストとして活躍していただけあって、ゾラの文章はものすごく読みやすいです。専門家だけを相手にするのではなく、一般読者にもわかりやすい文章をゾラは綴ります。ゾラのいいところは難解な言葉を使わず、明快な論旨で淡々と語りかけてくれるところにあります。ジャーナリストとしての面目躍如ですね。

この本を読めばフランス文学の歴史も知ることができます。

もちろん、その中には『レ・ミゼラブル』を書いたフランス文学の巨人ヴィクトル・ユゴーも出てきます。

次の記事ではゾラはユゴーをどう見ていたのかということを紹介していきます。

世界文学史上の頂きに君臨し続けているユゴーの傑作『レ・ミゼラブル』。

現代でもミュージカルで大人気のこの作品ですが、ゾラならばこの作品について何と言うのでしょうか。

私はレミゼが大好きです。

でも、ゾラも大好きです。

ゾラの小説はとにかく面白いです。ゾラの連作シリーズ「ルーゴン・マッカール叢書」も全て読みました。

ただ、ゾラは空想的、ファンタジー的な文学を嫌います。

自然主義文学は現実の人間世界を忠実に描くことをモットーとしています。

そうなると、レミゼは「リアルな世界」と言えるのか・・・これは何とも言えないところですよね。

実はユゴーとゾラは真逆の文学観を持つ存在なのです。

これは非常に興味深い対称です。

ユゴーもゾラも、どっちも大好きな私にとってこれはなかなかに難しい問題です。

「反対なものどちらも好き」と言えば一見矛盾しているようにも思えますが仕方ありません。ユゴーもゾラも、どちらもとにかく面白いのですから。

というわけで、次の記事ではゾラのユゴー批判を見ていきたいと思います。

ゾラはこの本においてユゴーに対する意見を述べています。これがまた頗るエッジの効いた評論になっています。

ゾラはユゴーの劇作品『リュイ・ブラース』を題材にユゴーに対して噛みつきます。

この評論が二人の文学スタイルを知る上で非常にわかりやすいものだったのでぜひ皆さんにご紹介したいと思います。これを読めばフランス文学とは何なのかということまで考えることができる非常に優れた評論です。

評論と言っても小難しい専門用語が飛び交うこともありません。そこはゾラです。ものすごくわかりやすく話してくれます。

ぜひ引き続きお付き合い頂けたらなと思います。

以上、「『〈ゾラ・セレクション〉第8巻 文学論集1865-1896』ゾラの文学観を知るならこの1冊!」でした。

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