『レ・ミゼラブル』おすすめ解説本一覧~レミゼをもっと楽しみたい方へ

『レ・ミゼラブル』をもっと楽しむために

目次

『レ・ミゼラブル』おすすめ解説本一覧~レミゼをもっと楽しみたい方へ

ヴィクトル・ユゴー(1802-1885)Wikipediaより

ユゴーの『レ・ミゼラブル』は、ミュージカルも原作もとにかく面白い!

私も大好きな作品です。

今回の記事ではこれまで紹介した『レ・ミゼラブル』のおすすめ参考書をまとめていきたいと思います。

レミゼをもっと楽しみたいという方にぜひおすすめしたい参考書です。

これらを読めばレミゼがもっともっと好きになること請け合いです。

では、早速始めていきましょう。それぞれの本についてはリンク先でより詳しくお話ししていますので興味のある本がありましたらぜひそちらもご覧ください。

鹿島茂『「レ・ミゼラブル」百六景』おすすめの最強レミゼ解説本!

この本はとにかく素晴らしいです。最強のレミゼ解説本です。

『レ・ミゼラブル』の原作は文庫本で2500ページを超える大作です。ミュージカルや映画で大人気のレミゼですがいざ原作を読むとなるとなかなか厳しいものがあります。

そこでこの本の出番です。

この本はレミゼの物語の重要なシーンをタイトルにありますように106のシーンに分けて挿絵と共に解説していきます。

ひとつのシーンに対して2枚の挿絵が付きますのでかなりたくさんの絵を見ることができます。

小説だけだと文字だけですべての状況を想像しなければならないのに対し、挿絵があるとやはりイメージしやすいですよね。

しかもまたフランス文学者鹿島氏の解説が抜群にわかりやすく面白いのです。

レミゼのストーリーの流れだけでなく当時の時代背景やもっともっとレミゼを楽しむための豆知識が満載です。

そしてさらには、この本はミュージカルのレミゼの最高の参考書にもなります。

ミュージカルでは時間の制限上、原作部分を泣く泣くカットせざるをえなかった部分がいくつもあります。

たとえばジャン・ヴァルジャンはなぜ市長になれたのかということやファンチーヌはなぜあんな悲劇的な状況に落ち込んだのか、マリユスはそもそもどんな生まれでどう育ってきたのかということも原作ではもっと掘り下げられています。

こうしたこともこの本ではしっかり解説されていますのでミュージカルをより楽しむための最強の参考書ともなっています。「え!?この人ってこんな背景があったのか!」と驚くことがたくさんあると思います。

この本はガイドブックとして無二の存在です。ぜひ手に取って頂きたいなと思います。

鹿島茂『「レ・ミゼラブル」百六景』おすすめの最強レミゼ解説本!

ユゴー『私の見聞録』ユゴーの内面やレミゼの裏話を知れる1冊

この本では1840年代から1850年代半ばの『レ・ミゼラブル』執筆に大きな影響を与えた時期のユゴーを知ることができます。

特にこの本にはレミゼの重要人物ファンテーヌのモデルになった女性が登場します。

ファンテーヌが無礼な男に雪を入れられ、それに反撃したが故に連行され牢獄行きを宣告されたシーンはレミゼを観た人には強烈なインパクトがあったと思います。そして作中でそんなファンテーヌを救ったのがジャン・バルジャンでした。

実はこの「捕らえられた娼婦と彼女を解放する紳士」という構図はユゴー自身が実際に体験した出来事がモデルになっているのです。

ユゴーはこれとまさに同じ場面をレミゼ執筆に先立つ1841年に体験していたのです。

この本では他にもレミゼにつながるユゴーの体験がいくつも出てきます。

レミゼが生まれてくる背景やユゴーが当時何に関心を持ち、どのような行動を取っていたかをこの本では知ることができます。これはとても興味深かったです。とてもおすすめな一冊!

ユゴー『私の見聞録』ユゴーの内面やレミゼの裏話を知れる1冊

ディヴィッド・ベロス『世紀の小説 『レ・ミゼラブル』の誕生』レミゼファン必見のおすすめ参考書

この本もものすごいです。とにかく面白い!

大好きなレミゼがどのようにして生まれ、そしてどのように広がっていったのか、そしてミュージカルとのつながりや物語に込められた意味など、たくさんのことを知ることができます。

この本は『レ・ミゼラブル』の誕生と発展の伝記と言うことができます。『レ・ミゼラブル』がどのように書き上げられたのかがドラマチックに語られていきます。ユゴーがどんな状況でどんな思いでこの傑作を書いていたのか、それを知ると今まで知っていたレミゼとはまた違ったレミゼが見えてくることになると思います。これは非常に興味深かったです。

ディヴィッド・ベロス『世紀の小説 『レ・ミゼラブル』の誕生』レミゼファン必見のおすすめ参考書

『『レ・ミゼラブル』をつくった男たち ブーブリルとシェーンベルク そのミュージカルの世界』ミュージカル『レ・ミゼラブル』はいかにして作られたのか!その制作現場に迫る1冊!

「感動」を生み出す彼らの仕事。

驚異的動員数を更新するミュージカル『レ・ミゼラブル』と『ミス・サイゴン』。作詞・作曲のブーブリルとシェーンベルクの二人と共に持てる力のすべてを捧げ、単なるエンターテインメントを超越した名作を作り上げた者たちの肉声。

製作現場を知れば、ミュージカルの見方が変わる!

ファンのみならず、ミュージカル制作に興味を持つすべての人、必携。

元社、マーガレット・ヴァ―メット、高城綾子訳『レ・ミゼラブル』をつくった男たち ブーブリルとシェーンベルク そのミュージカルの世界』帯

この本はミュージカル『レ・ミゼラブル』の制作に関わった人たちの言葉を聞きながらレミゼ製作の裏側をたずねていく作品です。

これはレミゼファン必見です。

「製作現場を知れば、ミュージカルの見方が変わる!」

この言葉はまさにその通り!

この本を読んでレミゼのすごさを改めて知ることになりました!

私たちは劇場まで出向き、すでに出来上がった作品を観劇します。

ですが当たり前のことですが、その作品も多くの人が関わってゼロから作り上げられていったものです。

私たちは特に意識することなく完成品を享受しているわけではありますが、よくよく考えればその裏で製作陣がものすごい力を込めてそのミュージカルを作り上げてくれたからこそ、私達の前に作品が届けられています。

超一流の製作陣が精魂込めて作っている過程をこの本では知ることができます。

この本はミュージカルを楽しむ新たな視点を授けてくれます。この本もものすごくおすすめです。

レミゼファンはもちろん、舞台やミュージカル、映画などに興味のある方にもぜひおすすめしたい一冊です。

『『レ・ミゼラブル』をつくった男たち ブーブリルとシェーンベルク そのミュージカルの世界』ミュージカル『レ・ミゼラブル』はいかにして作られたのか!その制作現場に迫る1冊!

『レ・ミゼラブルー舞台から映画へ』レミゼのおすすめガイドブック!

ひとつ上で紹介した『『レ・ミゼラブル』をつくった男たち ブーブリルとシェーンベルク そのミュージカルの世界』はレミゼのミュージカル制作の裏側に迫る作品でしたが、この『レ・ミゼラブルー舞台から映画へ』はレミゼのミュージカル制作のスタートから2012年の映画化までの過程を知ることができます。

この本もまたものすごく面白かったです・・・!これはぜひおすすめしたい1冊です!

まずありがたいのは大量の写真やイラストの存在です。当時の様子が非常にイメージしやすいです。

そして解説の文章の読みやすさ。まるで小説を読んでいるかのような物語性を感じます。この本は全20章に分けてレミゼの映画化までの歴史が語られます。解説書というよりドキュメンタリー小説と言った方がぴったりかもしれません。ぐいぐい引き込まれます。

出演者や製作陣へのインタビューも絶妙に織り込まれ、彼らの声を生で聴いている感覚になります。

こちらの映像で語られますように、この映画はミュージカル映画史上、前代未聞の作品でした。

それまでは歌はスタジオで先に録音し、撮影は口パクで行っていました。

しかしレミゼは新しく開発された高性能マイクを駆使し、実際に歌いながらの撮影となりました。それによって役者さんたちがより感情を込めて演技することができるようになったのでした。

他にも画期的な演出が多々出てきます。

この本ではこの映像では語られない撮影の裏側がどんどん出てきます。この本を読めば映画を観る時の印象ががらっと変わると思います。この映画がいかにすごいのか、そしてレミゼの素晴らしさをもっともっと知ることができます。

この本はとにかく面白いです。

レミゼファン必見の一冊です。ぜひぜひおすすめしたい一冊です。これを読めばもっともっとレミゼを好きになること請け合いです。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

『レ・ミゼラブルー舞台から映画へ』レミゼのおすすめガイドブック!

西永良成『『レ・ミゼラブル』の世界』~レミゼとナポレオン、革命の関係を解説した1冊

この本の特徴はなかなか通読されることの少ない『レ・ミゼラブル』の原作に込められたユゴーの思いを明らかにしていくところにあります。

また、著者の西永良成氏はメインストーリーとは一見無関係な文章が延々と続く箇所にこそレミゼの面白さがあり、これらの記述の背景を知ることでレミゼがもっと面白くなるということを教えてくれます。

そしてこの本の前半ではレミゼの簡潔なあらすじが語られていきます。原作のエッセンスがコンパクトかつ絶妙にまとめられていてとてもわかりやすいです。このあらすじは非常にありがたいです。

こうしてレミゼの全体像をまず掴んだ上で著者はユゴーの思想やレミゼに込められた背景について解説していきます。

1789年のフランス革命からナポレオンの台頭、そこから1830年七月革命などフランスの歴史とレミゼが繋がっていきます。こうした背景を知るとレミゼがこれまでとは違って見えてきます。

特にナポレオンの存在はレミゼにとって非常に大きな意味を持ちます。この本ではその点が非常にわかりやすく解説されていますのでとてもおすすめです。

レミゼを学ぶ参考書としてぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

西永良成『『レ・ミゼラブル』の世界』~レミゼとナポレオン、革命の関係を解説した1冊

アンドレ・モロワ『ヴィクトール・ユゴー《詩と愛と革命》』ユゴーのおすすめ伝記

ユゴーは並々ならぬ人物です。正直、私達の常識で測れるスケールの人間ではありません。この伝記を読むと驚くような事実がどんどん出てきます。

この伝記の特徴は過度にユゴーを讃美するのでもなく、逆に欠点ばかりを誇張するのでもない、「人間ユゴー」の生涯を描いている点にあります。

そしてただ客観的に歴史的事実を追っていくのではなく、小説のように面白く読めるというのも大きな特徴となっています。

ユゴーと言えば「レ・ミゼラブル』を生み出したフランスの偉大な作家というイメ―ジが強かったのですが、この伝記を読んでその見方がだいぶ変わりました。

ユゴーはあくまで「詩人」なのです。

彼は詩人として文学者としての人生をスタートし、最晩年まで詩人として生きていました。

彼の溢れんばかりの感受性やそれを表現する圧倒的な言語的才能。

アンドレ・モロワ『ヴィクトール・ユゴー《詩と愛と革命》』ユゴーのおすすめ伝記

鹿島茂『パリの王様たち ユゴー・デュマ・バルザック 三大文豪大物くらべ』パリの文豪達の圧倒的スケールを語る一冊!

『レ・ミゼラブル』のユゴー、『モンテ・クリスト伯』のデュマ、『ゴリオ爺さん』のバルザック。

この本では19世紀中頃にパリで大活躍した文豪達の尋常ならざるエネルギーについてフランス文学者鹿島茂氏が解説をしていきます。

私がこの本を読んだのは『レ・ミゼラブル』を書いたユゴーの生涯や人となりについてもっと知りたいと思ったのがきっかけでした。

ひとつ上の記事ではユゴーのおすすめ伝記を紹介しましたが、鹿島氏のこの本もユゴーを知る上でとても興味深い発見がいっぱいでした。二つ合わせて読むことでよりユゴーの人となりについて考えることができました。

天才とはどういうことなのか。

カリスマとは何なのか。

彼らは何を求め、どう突き進んでいくのか。

そして、そんな彼らを生み出した時代背景とは。

ユゴー、デュマ、バルザックという三人の怪物を比較しながら、当時の偉人の原動力を模索していくこの作品は非常に面白かったです。ぜひおすすめしたい一冊です。

鹿島茂『パリの王様たち ユゴー・デュマ・バルザック 三大文豪大物くらべ』パリの文豪達の圧倒的スケールを語る一冊!

鹿島茂『パリ時間旅行』19世紀パリを体感する珠玉のエッセイ集

パリにはそこに足を踏み入れた者を魅了して止まない、濃密なる「パリ時間」が流れている……。オスマン改造以前、十九世紀パリの原風景へと誘う、華麗なる時間旅行。ボードレール、プルーストの生きた時代のパリの街の音や匂いが鮮やかに甦る、珠玉の知的探求エッセイ集。

中央公論新社、鹿島茂『パリ時間旅行』裏表紙

この本はフランス文学者鹿島茂氏が19世紀のパリを時間旅行するという体で当時の様子や文化を臨場感たっぷりにお話ししてくれます。

この本の魅力は何と言っても鹿島氏の語り口にあります。

巻末解説で「堅苦しい学問だの理論だのを振りかざすようなことはしない。魅惑的でロマンティックな仕掛けによって、パリという不思議にアプローチしてゆく」と語られるようにとにかく読みやすくて面白いです。

この本では「パサージュ、音、匂い、光、馬車、写真、スポーツ」などをキーワードに様々なパリ情景を見ていきますが、その中で特に私が興味深く読んだのは「匂い」の箇所でした。

パリといえば高級なブランド香水が有名ですよね。「匂い」に対して強いこだわりがあるようなイメージが漠然とありますが、こうした香水がパリで人気になっていく過程がこの本で語られます。

「悪臭を隠すために香水が発達した」と巷でよく言われますが、鹿島氏の解説を読んでびっくり、単純にはそう言い切れない歴史があったのでした。パリはそもそも信じられないほどの悪臭の街でした。街中に汚物が溢れ、さらにそもそも身体を洗う習慣もなかったので強烈な匂いが当たり前の世界だったのです。しかも、人々はそのことをあまり気にしていなかったようなのです。

むしろその強烈な体臭が性的に魅力があるとすら思われていたのだそう。

ですから匂いを隠すために香水ができたというのは正確な理由ではなかったのです。

ではなぜ香水ができていったのか。

これがまたものすごく面白いんです。ぜひこの本を読んでその答えを確かめてみてください。

鹿島茂『パリ時間旅行』19世紀パリを体感する珠玉のエッセイ集

鹿島茂『フランス文学は役に立つ!『赤と黒』から『異邦人』まで』おすすめフランス文学案内書!

皆さんはフランス文学といえばどのようなことが思い浮かぶでしょうか。

フランス文学といえば「恋愛」を思い浮かべる方が多いのではないかと思います。

たしかにフランス文学は恋がものすごく大きな要素を占めています。これは間違いありません。

ですが、単に「恋愛もの」だと侮るなかれ。フランス文学は現代社会を生きる私たちに恋愛だけでは収まらない大きな知恵を与えてくれる文学です。

この本ではフランス文学者鹿島茂氏が17世紀から20世紀までのフランス文学の代表作を取り上げ、その作品の概要とそこから学べる教訓を語ってくれます。これはフランス文学入門として最高の手引きとなります。

フランス文学に興味のある方はぜひおすすめしたい作品です。

鹿島茂『フランス文学は役に立つ!『赤と黒』から『異邦人』まで』おすすめフランス文学案内書!

鹿島茂『職業別 パリ風俗』19世紀パリの人々の生活と職業、時代背景を知るならこの一冊!

この本では19世紀中頃のパリの人々の生活を職業という面から見ていきます。

この本を読めばフランス文学がものすごくわかりやすくなります。

これを読むことでフランス文学を読んだ時の印象がきっと変わると思います。

小説が書かれた当時に当たり前だったことはわざわざ書かれたりはしません。

ですがその当たり前は「現代人たる私達の当たり前」とはまるで異なります。仮に小説中に弁護士という職業の人間が出てきたとしても、私達の想像する弁護士とはだいぶ違った仕事や生活ぶりをしていたのです。学生や医者、教師、グリゼット、警察、ジャーナリストなどなど、この本では様々な職業の「当たり前」を知ることができます。

また、その職業の内容だけではなく、そうした職業が生まれてきた背景や当時の人たちがどのような生活をしていたのかということも詳しく語られていきます。

これはフランス文学という範囲に関わらず、現代日本に生きる私たちの生活を違った側面から見る素晴らしいきっかけになります。ひとつ上で紹介した『フランス文学は役に立つ!『赤と黒』から『異邦人』まで』でお話ししましたように、フランス文学を知ることは現代日本を学ぶことと同じなのです。私達の生活はこの頃のフランスと繋がっています。私達のライフスタイルのルーツがここにあるのです。

フランス文学に興味のある方だけではなく、フランスそのものに興味のある方、歴史や文化に興味のある方にもぜひ手に取って頂きたい作品です。非常に興味深い本です。とてもおすすめです!

鹿島茂『職業別 パリ風俗』19世紀パリの人々の生活と職業、時代背景を知るならこの一冊!

鹿島茂『馬車が買いたい!』青年たちのフレンチ・ドリームと19世紀パリの生活を知るならこの1冊!

この本ではバルザックの『ゴリオ爺さん』や『幻滅』、スタンダールの『赤と黒』の主人公たちを手がかりに、地方から華の都パリに上京し成功を望む若者が見たパリを解説していきます。『レ・ミゼラブル』のマリユスもこの本では登場します。

この本は地方からパリに上ってくる馬車の解説からスタートします。地方から都に出てくるには移動手段が必要です。当時は鉄道もありませんので馬車です。そして彼らにはお金がないので乗合馬車でやってくることになります。一言で馬車と言っても様々なランクがあります。貧乏な青年である彼らが乗れるのはどんな馬車か。こうした所から鹿島氏は詳しい解説をしてくれます。ただ単に「こういうものがあってこうこうこうなのです」という事実の羅列ではなく、そこにある背景や「なぜ」をふんだんに語ってくれるのでものすごく面白いです。

この本では移動手段の説明から始まり、パリへの入場の手続き、宿探し、毎日の食事をどうするかを物語風に解説していきます。

そしてそこからダンディーになるためにどう彼らが動いていくのか、またタイトルのようになぜ「馬車が買いたい!」と彼らが心の底から思うようになるのかという話に繋がっていきます。

優雅な「おフランス」の姿だけでなく、普通の人々の生活を知れる貴重な1冊となっています。

成り上がりを目指す当時の若者たちの様子をつぶさに知ることができるこの本はとにかく面白いです。非常におすすめです。

鹿島茂『馬車が買いたい!』青年たちのフレンチ・ドリームと19世紀パリの生活を知るならこの1冊!

鹿島茂『明日は舞踏会』夢の社交界とパリの女性たちの恋愛と結婚模様を解説!

ひとつ上で紹介した『馬車が買いたい!』ではパリの若い青年たちの成り上がりストーリーについて書かれていましたが今作はその女性版になります。

女性にとって、舞踏会は戦場です。ここでの立ち振る舞いがその後の生活に決定的な影響を与えかねません。

華やかな衣装に身を包み、優雅な社交界でダンディー達と夢のようなひと時を…という憧れがこの本を読むともしかしたら壊れてしまうかもしません。

社交界は想像以上にシビアで現実的な戦いの場だったようです。

当時の結婚観や男女の恋愛事情を知るには打ってつけの1冊です。

フランス文学がなぜどろどろの不倫や恋愛ものだらけなのかが見えてきます。

フランスといえば奥手な日本人にはわからない、恋愛上手というようなイメージがありますがその秘密もこの辺に隠されているように思えてきます。

イラストもたくさん挿入されており、とても楽しく読んでいける本なのでフランス社交界に興味のある方には特におすすめの一冊です。

鹿島茂『明日は舞踏会』夢の社交界とパリの女性たちの恋愛と結婚模様を解説!

鹿島茂『怪帝ナポレオンⅢ世 第二帝政全史』ナポレオン三世の知られざる治世と実態に迫る一冊!

ナポレオン三世・・・日本では正直あまり馴染みがない存在ではありますが、フランスの歴史を考える上ではものすごく重要な人物です。これまでユゴーの『レ・ミゼラブル』について記事を更新してきましたが、ユゴーがレミゼを執筆していた時期はまさしくこのナポレオン三世の治世にあたり、彼に反対していたユゴーは亡命を余儀なくされていたのでした。

そんな亡命期間中に書き上げられたのがあの『レ・ミゼラブル』なのです。ある意味、亡命中の苦難や不満によって溜め込まれたエネルギーが爆発したかのようにあの作品は書き上げられたのでした。

レミゼの誕生という意味でもナポレオン三世とは一体何者だったのか、そして1852年から1870年のナポレオン第二帝政期というのはどういうものだったかを知ることは大きな意味があります。

この本もものすごくおすすめです。とにかく面白いです!読んでいる最中思わず声が出てしまうほどの発見がどんどん出てきます。

フランス第二帝政という日本ではあまりメジャーではない時代ですが、この時代がどれだけ革新的で重要な社会変革が起きていたかをこの本では知ることになります。人々の欲望を刺激する消費資本主義が発展したのもまさしくこの時代のパリからです。その過程を見ていくのもものすごく興味深いです。

非常におすすめな一冊です。ぜひ手に取って頂けたらなと思います。

鹿島茂『怪帝ナポレオンⅢ世 第二帝政全史』ナポレオン三世の知られざる治世と実態に迫る一冊!

『〈ゾラ・セレクション〉第8巻 文学論集1865-1896』ゾラの文学観を知るならこの1冊!

この本は1865年から1896年にゾラによって書かれた文学論の中から編訳者が重要な13の論文を選び翻訳したものになります。

ゾラ(1840-1902)はフランスの偉大な作家でありますが、彼は同時にジャーナリストとして活躍していました。

特に作家としての駆け出しの頃はジャーナリストが本業と言ってもいいほどで、日々新聞にたくさんの記事を書いていました。

ゾラはこの本でフランス文学の歴史を語り、小説や詩、演劇の変遷をわかりやすく解説し、その上でゾラが考える理想の文学観を語ってくれます。

ジャーナリストとして活躍していただけあって、ゾラの文章はものすごく読みやすいです。専門家だけを相手にするのではなく、一般読者にもわかりやすい文章をゾラは綴ります。ゾラのいいところは難解な言葉を使わず、明快な論旨で淡々と語りかけてくれるところにあります。ジャーナリストとしての面目躍如ですね。

この本を読めばフランス文学の歴史も知ることができます。

もちろん、その中には『レ・ミゼラブル』を書いたフランス文学の巨人ヴィクトル・ユゴーも出てきます。

世界文学史上の頂きに君臨し続けているユゴーの傑作『レ・ミゼラブル』。

現代でもミュージカルで大人気のこの作品ですが、ゾラならばこの作品について何と言うのでしょうか。

私はレミゼが大好きです。

でも、ゾラも大好きです。

ゾラの小説はとにかく面白いです。ゾラの連作シリーズ「ルーゴン・マッカール叢書」も全て読みました。

ただ、ゾラは空想的、ファンタジー的な文学を嫌います。

自然主義文学は現実の人間世界を忠実に描くことをモットーとしています。

そうなると、レミゼは「リアルな世界」と言えるのか・・・これは何とも言えないところですよね。

実はユゴーとゾラは真逆の文学観を持つ存在なのです。

これは非常に興味深い対称です。

ゾラはこの本においてユゴーに対する意見を述べています。これがまた頗るエッジの効いた評論になっています。

この評論が二人の文学スタイルを知る上で非常にわかりやすいものだったのでぜひ皆さんにご紹介したいと思います。これを読めばフランス文学とは何なのかということまで考えることができる非常に優れた評論です。

評論と言っても小難しい専門用語が飛び交うこともありません。そこはゾラです。ものすごくわかりやすく話してくれます。ユゴーやレミゼをもっと知る上でもとてもおすすめな1冊となっています。

『〈ゾラ・セレクション〉第8巻 文学論集1865-1896』ゾラの文学観を知るならこの1冊!

おわりに

ドストエフスキーが愛した小説『レ・ミゼラブル』とはいかなる作品だったのだろうか。

そんな興味から読み始めたレミゼでしたが、今ではすっかりドはまりしてしまいました。

特にミュージカル映画の素晴らしさに撃ち抜かれてしまい、サントラを聴く毎日です。曲がまた素晴らしいんですよね・・・。

原作もミュージカルもとにかく面白い!そして知れば知るほどレミゼを好きになっていく。それを感じた日々でした。上で紹介した本はどれもレミゼファンにおすすめしたい素晴らしい参考書です。

レミゼファンの皆様のお役に少しでも立てたなら嬉しく思います。

以上、「『レ・ミゼラブル』おすすめ解説本一覧~レミゼをもっと楽しみたい方へ」でした。

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