ドストエフスキーとキリスト教

ドストエフスキーとキリスト教

高橋保行『迫害下のロシア教会―無神論国家における正教の70年』~ソ連時代のキリスト教はどのような状態だったのか

ソ連時代のことは現代を生きる私たちにはなかなかイメージしにくいかもしれません。同時代を生きていた人にとっても情報が制限されていたため限られた範囲でしかその実態を知ることができませんでした。

そんな中ソ連政権下でタブー視されていた宗教については特に秘密にされていた事柄だと思います。

ソ連が崩壊した今だからこそ知ることができるソ連とロシア正教の関わり。

そのことを学べるこの本は非常に貴重な一冊です。

ドストエフスキーを知る上でもこの本は非常に大きな意味がある作品だと思います。

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エフドキーモフ『ロシア思想におけるキリスト』~『悪霊』ティーホン主教のモデルになったザドンスクの聖ティーホンとは

この作品はタイトルにも書きましたようにロシアにおけるキリスト教の歴史や思想の概略を示してくれる作品となっています。

そしてこの本で一番ありがたかったのはザドーンスクの聖ティーホンについての解説の存在です。

この人物はドストエフスキーの『悪霊』に出てくる主教ティーホンと『カラマーゾフの兄弟』のゾシマ長老の造形に大きな影響を与えた人物として知られています。

この作品ではドストエフスキーについても語られますしトルストイやゴーゴリなどロシア文学を代表する人物達とキリスト教の関係を知ることができます。

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ローテル『無名の巡礼者 あるロシア人巡礼の手記』~ドストエフスキーに大きな影響を与えた巡礼の精神を知るのにおすすめの作品

この本はドストエフスキーやトルストイにも大きな影響を与えた「ロシアの巡礼」について知るためにうってつけの作品となっています。この本が初めて出たのはドストエフスキーが亡くなった1881年より数年後ですので直接彼がこれを読んでいたわけではありませんが、当時ロシアにいた巡礼者がどのような教えの下生きていたのかということを知ることができます。

私はこの作品を読んで何度も驚かされました。

この本で語られる祈りや瞑想の方法が仏教で説かれることとそっくりな部分がいくつもあったのです。信仰と祈りについて学ぶのに素晴らしい作品です。ぜひおすすめしたい一冊です。

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パウエル中西裕一『ギリシャ正教と聖山アトス』~知られざる正教の文化とギリシャの聖地とは

この本では私たちがあまり知ることのない正教の教えをわかりやすく解説してくれます。カトリックやプロテスタントとの違いもこの本を読めば見えてきますし、聖地アトス山が一体どのような場所なのかということも知ることができます。

長きにわたって守られ続けてきた祈りの生活とははたしてどんなものなのか。修道士は何を思い、どんな生活をしているのか。

読んでいて驚くような世界がどんどん出てきます。

写真も豊富で、現地の様子が非常にイメージしやすいです。これもこの本のありがたいところです。

著者の語り口もとても読みやすく、楽しみながら知られざる正教の姿を学ぶことができます。

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『ゲンロンβ63』齋須直人『「カラマーゾフの子供たち」、聖地ヴァラームへ行く』~ドストエフスキーとロシア正教のディープな世界へ

『ゲンロンβ63』齋須直人『「カラマーゾフの子供たち」、聖地ヴァラームへ行く』概要と感想~ドストエフスキーとロシア正教のディープな世界へ 今回ご紹介するのは株式会社ゲンロンより2021年7月に発行された『ゲンロンβ63』…

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『ロシア正教古儀式派の歴史と文化』~ドストエフスキーは無神論者で革命家?ドストエフスキーへの誤解について考える

この記事では「ドストエフスキーは無神論者であり、革命思想を持った皇帝暗殺主義者だった」という説について考えていきます。

これは日本でもよく聞かれる話なのですが、これはソ連時代、ソ連のイデオロギー下で発表された論説が基になっていることが多いです。

この記事ではなぜそのようなことになっていったのかもお話ししていきます。

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ドストエフスキーとキリスト教のおすすめ解説書一覧~小説に込められたドストエフスキーの宗教観とは

ドストエフスキーとキリスト教は切っても切れない関係です。

キリスト教と言えば私たちはカトリックやプロテスタントをイメージしてしまいがちですが、ドストエフスキーが信仰したのはロシア正教というものでした。

そうした背景を知った上でドストエフスキーを読むと、それまで見てきたものとは全く違った小説の世界観が見えてきます。

キリスト教を知ることはドストエフスキーを楽しむ上で非常に役に立ちます。

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フスト・ゴンサレス『キリスト教史』~キリスト教の歴史の大枠を学ぶのにおすすめの参考書!

この本では「キリスト教こそ絶対に正しくて、異教徒は間違っている」というニュアンスはまず存在していません。歴史的にその出来事はなぜ起こったのかということをできるだけ客観的に見ていこうという視点が感じられます。

また、この本はそもそも読み物としてとても面白いです。キリスト教史の教科書というと、固くて難しい本をイメージしてしまいがちですが、フスト・ゴンサレス『キリスト教史』は一味も二味も違います。

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P・フォーキン「ドストエフスキーの「信仰告白」からみた『カラマーゾフの兄弟』」岩波書店『思想』2020年6月号より

著者のF・フォーキン氏は1965年、カリーニングラードに生まれ、カリーニングラード大学を卒業し現在はロシア国立文学博物館研究員であると同時にモスクワ・ドストエフスキー博物館の主任を務めています。

この論文の特徴はドストエフスキー最後の作品『カラマーゾフの兄弟』をドストエフスキーの信仰告白であると捉えている点にあります。

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ベーリュスチン『十九世紀ロシア農村司祭の生活』~19世紀ロシア正教の姿を嘆く農村司祭の悲痛な叫び

著者のI・S・ベーリュスチン(1820年頃~1890)はロシア正教の司祭の家庭に生まれ、自身も司祭職に就きました。

この本はとにかく強烈です。ロシアの農村の教会がここまでひどい状況にあったのかと目を疑いたくなってきます。

そしてなぜそうなってしまったのかを著者は語っていきます。

この本を読むことでいかにオプチーナ修道院が重要な場所であるか、ドストエフスキーにとってキリスト教というのはどういうものなのかということがより見えてくるような気がしました。