パウエル中西裕一『ギリシャ正教と聖山アトス』知られざる正教とギリシャの聖地とは
パウエル中西裕一『ギリシャ正教と聖山アトス』知られざる正教とギリシャの聖地とは 前回の記事 今回ご紹介するのは2021年に幻冬舎より出版されたパウエル中西裕一著『ギリシャ正教と聖山アトス』です。 早速この本について見てい…
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ドストエフスキーとロシア正教のディープな世界へ~『ゲンロンβ63』齋須直人『「カラマーゾフの子供たち」、聖地ヴァラームへ行く』 今回ご紹介するのは株式会社ゲンロンより2021年7月に発行された『ゲンロンβ63』所収、齋須…
この記事では「ドストエフスキーは無神論者であり、革命思想を持った皇帝暗殺主義者だった」という説について考えていきます。
これは日本でもよく聞かれる話なのですが、これはソ連時代、ソ連のイデオロギー下で発表された論説が基になっていることが多いです。
この記事ではなぜそのようなことになっていったのかもでお話ししていきます。
ドストエフスキーとキリスト教は切っても切れない関係です。
キリスト教と言えば私たちはカトリックやプロテスタントをイメージしてしまいがちですが、ドストエフスキーが信仰したのはロシア正教というものでした。
そうした背景を知った上でドストエフスキーを読むと、それまで見てきたものとは全く違った小説の世界観が見えてきます。
キリスト教を知ることはドストエフスキーを楽しむ上で非常に役に立ちます。
この本では「キリスト教こそ絶対に正しくて、異教徒は間違っている」というニュアンスはまず存在していません。歴史的にその出来事はなぜ起こったのかということをできるだけ客観的に見ていこうという視点が感じられます。
また、この本はそもそも読み物としてとても面白いです。キリスト教史の教科書というと、固くて難しい本をイメージしてしまいがちですが、フスト・ゴンサレス『キリスト教史』は一味も二味も違います。
著者のF・フォーキン氏は1965年、カリーニングラードに生まれ、カリーニングラード大学を卒業し現在はロシア国立文学博物館研究員であると同時にモスクワ・ドストエフスキー博物館の主任を務めています。
この論文の特徴はドストエフスキー最後の作品『カラマーゾフの兄弟』をドストエフスキーの信仰告白であると捉えている点にあります。
著者のI・S・ベーリュスチン(1820年頃~1890)はロシア正教の司祭の家庭に生まれ、自身も司祭職に就きました。
この本はとにかく強烈です。ロシアの農村の教会がここまでひどい状況にあったのかと目を疑いたくなってきます。
そしてなぜそうなってしまったのかを著者は語っていきます。
この本を読むことでいかにオプチーナ修道院が重要な場所であるか、ドストエフスキーにとってキリスト教というのはどういうものなのかということがより見えてくるような気がしました。
この本の特徴はロシアの偉大なる修道士の生涯と思想をひとりひとり丁寧に紹介しているところにあります。
特に18世紀に名を馳せた聖ティーホンについて書かれた章は重要です。聖ティーホンの思想は後の修道僧や長老に大きな影響を与え、ドストエフスキーも彼の思想や生涯に感銘を受け、その印象は『カラマーゾフの兄弟』や『悪霊』の執筆に反映されています。
『オープチナ修道院』ではこの修道院の歴史や高名な長老達の思想や生涯を知ることが出来ます。写真や絵も豊富なので、この修道院がどのような場所なのかをイメージするには非常に便利な本となっています。
『カラマーゾフの兄弟』、特にゾシマ長老と主人公アリョーシャの関係性をより深く知りたいという方にはぜひともお勧めしたい1冊です。
この本では謎の国ロシアの精神史を建国の歴史と一緒に学ぶことができます。
ロシアとは一体何なのか、これまでとは違った切り口で見るとてもよい機会となります。
ロシア宗教史を学びたい方にはうってつけの入門書です。