ロシアの歴史・文化に学ぶ

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

ジェフリー・ロバーツ『スターリンの図書室』~読書という視点から見る斬新なスターリン伝。彼はドストエフスキーをどう見たのか。

「嫌っているだけでは、彼がなぜ、いかにしてあのような所業に走ったのかを説明することはできない。」

これは著者による非常に重要な指摘です。スターリンを単なる大悪人と片付けてしまったらそこで思考は終了です。

なぜスターリンは独裁者となれたのか、その背景となったものは何だったのか、それを「読書」という観点から見ていく本書は非常に刺激的です。「読書」というある意味独裁者と結びつきにくいマイナーな切り口から攻めていく著者の勇気には驚くしかありません。非常に斬新です。

独ソ戦~ソ連とナチスの絶滅戦争

S・マッケイ『ドレスデン爆撃1945 空襲の惨劇から都市の再生まで』~ドイツの美しき古都が消滅した悲惨な爆撃とは

エルベ河畔の宝石箱と謳われたドレスデン。この本ではその古都への爆撃について詳しく語られます。

ドレスデンが爆撃されるまでの英米首脳部の葛藤、兵士たちの精神状況、そしてドレスデンに生きていた人たちの生活。そして爆撃が始まってからの地獄絵図・・・

これは恐るべき作品です。

正直、私は怖いです。歴史を学べば学ぶほど恐怖を感じています。この先、私たちの生きる世界がどうなるのか、改めてこの本を読んで恐れを感じたのでありました。

原爆や大空襲を経験した日本にとってもこの本で提起されている問題は重要な意味を持っているのではないでしょうか。

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

R・ヴァナガイテ、E・ズロフ『同胞 リトアニアのホロコースト 伏せられた歴史』~歴史修正主義を考えさせられる衝撃の一冊

リトアニア国内にいた約20万人ユダヤ人の90%~95%がホロコーストで亡くなった・・・

これは衝撃的な数字ですよね・・・

この本ではそんなリトアニアのホロコーストがなぜ起こったのか、そのメカニズムは何だったのか、また、その歴史をめぐる現在のあり方について鋭いメスを入れた作品になります。

この作品はリトアニア人のホロコースト加担について書かれた本で、リトアニア国民の中に大論争を引き起こしました。

歴史修正主義とは何かを考える上でも非常に重大な示唆を与えてくれる作品です。

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

富樫耕介『コーカサスの紛争』~チェチェン、ナゴルノ・カラバフ、ジョージアにおける紛争とロシアについて知るのにおすすめ

「本書は、コーカサス地域の理解にしか役に立たないのではなく、現在の国際社会において様々な地域で出現している民族や国家をめぐる問題を理解する際にも役立つことを目指している。(「はじめに」より)」

まさにこの作品は複雑なコーカサス情勢を学ぶことで「他の地域の紛争を見る眼」も養うことができる参考書です。

しかもコーカサス地方の紛争はどれもロシアと関わりの深い紛争です。

ロシア・ウクライナ戦争を考える上でも新たな視点を授けてくれるおすすめの参考書です

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

安武塔馬『シリア内戦』~アサド政権の実態と内戦の経緯を知るのにおすすめ。ロシア・ウクライナ戦争とのつながりを学ぶためにも

この本は複雑怪奇なシリア内戦の流れを時系列に沿って解説してくれます。

解説はかなり丁寧で、この内戦について全く知らない方でも読み進めていくことができます。この内戦がなぜこんなにも入り組んだ構図になってしまったのかという流れがとてもわかりやすかったです。

また、この内戦に対するアメリカとロシアの駆け引きを知れたのも大きかったです。この内戦がなぜロシア・ウクライナ戦争において重要だったかがよくわかりました。

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

高橋ブランカ『東京まで、セルビア』~セルビア的作品とは?山崎佳代子氏の指導を受けたセルビア人作家の日本デビュー作

著者の高橋ブランカ氏はセルビア出身の作家です。ベオグラード大学で日本語を学び、その時の指導教官がこれまで当ブログでも紹介してきました詩人山崎佳代子氏でした。

繊細な内面描写あり。思わずくすっとしてしまうユーモアあり。

著者の思いを感じながら読んだ『東京まで、セルビア』は非常に刺激的かつ楽しい時間になりました。

ぜひぜひおすすめしたいです。

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

山崎佳代子『ベオグラード日誌』~読売文学賞受賞作!空爆後のセルビア生活を紡った珠玉の言葉たち

ユーゴ紛争、NATO空爆を経たベオグラードの街で詩人である著者は何を見て、感じたのか。

紛争後も続く何気ない日常。

その日常を綴った言葉の中に、じんわりと見え隠れしてくる紛争の影・・・

わかりやすい「特別な出来事」ではなく、そこで今も生きる人たちの日常を捉えたこの作品は非常に稀有な存在だと思います。ただ単に日常を切り取っただけでなく、そこに何か人間生活の奥深さが感じられてくる不思議。

この作品が読売文学賞を受賞したのももっともだなと思いました。不思議な力がある作品です。

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

山崎佳代子『そこから青い闇がささやき』~NATOのベオグラード空爆を体験した詩人によるエッセイ集~そこで何が起きていたのか

この作品はセルビアの首都ベオグラード在住の詩人山崎佳代子氏によるエッセイ集です。

なぜユーゴ紛争は起こってしまったのか・・・

「セルビア悪玉論」という単純な構図で語られてしまったこの紛争。

そんな国際世論の中セルビアはNATOによる空爆を受けることになります。著者はそんな猛烈な爆撃の中ベオグラードに残り続け、そこに生きる人々の声や、自らの思いをこの本に記しています。

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

森住卓『イラク 湾岸戦争の子どもたち』~NATOのユーゴ空爆でも用いられた劣化ウラン弾とは~現在も続く放射能汚染の脅威

1999年、コソボ紛争の中NATO軍は「セルビアによる虐殺を止めること」を理由に、ベオグラードやセルビア人居住地に対し激しい空爆を行いました。そしてその時に使用されたのが「劣化ウラン弾」でした。この兵器は撃ち込まれたエリアに放射能汚染を引き起こします。そんな危険な兵器をNATO軍が大量に撃ち込んでいた・・・私はそのことにショックを受け、「この兵器が引き起こした実態をもっと知らなければならない」と考えこの本を手に取ったのでありました。

この記事ではそんな劣化ウラン弾の恐ろしさについてお話ししていきます。

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

J・モンタギュー『ULTRAS 世界最凶のゴール裏ジャーニー』~ウクライナ情勢を違った視点から見ることができる衝撃の書!

「本書は良質なドキュメンタリーがお好きな方、あるいはサッカーはもとより、スポーツと政治・経済のつながり、さらには文化論に興味がある方にはたまらない一冊だと思う。(訳者あとがきより)」

私もまさにそう思います。

過激なサポーター達の姿を通して社会のなぜ、歴史のなぜを問うていくこの作品は非常に刺激的でした。かなり驚くようなこともたくさん書かれています。ぜひぜひおすすめしたい作品です!