ボスニア

ラジオの戦争責任スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

坂本慎一『ラジオの戦争責任』~メディアが煽るナショナリズム。戦争のメカニズムを学ぶためにも非常におすすめ!

かつて日本でもラジオにおいて仏教学者や演説、説法の達人が仏教を語り多くの人に強い影響を与えていたというのは驚きでした。

また、松下幸之助についての驚きの事実や、政治家松岡洋右の圧倒的な演説力、玉音放送を手掛け戦争を終結させた影の立役者下村宏の偉業など次から次へと驚異の事実をこの本では目にしていくことになります。

とにかく読んでみて下さい。それも一刻も早く!これほどの本に出会えるのはそうそうありません。世界が非常に不安定になっている今こそ読むべき名著中の名著です。

仏教モダニズムの遺産スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

杉本良男『仏教モダニズムの遺産』~スリランカ内戦はなぜ起こったのか。仏教ナショナリズムと宗教と暴力のつながり

スリランカの研究者オベーセーカラはダルマパーラの生み出したスリランカ仏教を「プロテスタント仏教(改革仏教)」と呼びました。スリランカの仏教といえば最も古い仏教を今でもそのまま継承しているというイメージがあるかもしれませんが、実はそうではなく19世紀から活発化した運動のひとつだったのでありました。その流れで仏教とシンハラ人のナショナリズムが結びつき、内戦へと向かっていったという歴史をこの本では詳しく見ていくことになります。特にこのダルマパーラについては伝記のようにその生涯をじっくり見ていくことになります。その生涯を見ていきながらスリランカ仏教の独特な歴史を知ることができます。

ボスニア紛争とルワンダ虐殺の悲劇に学ぶ~冷戦後の国際紛争

ルワンダの虐殺を学ぶのにおすすめの参考書7作品~目を背けたくなる地獄がそこにあった…

ルワンダの虐殺はあまりに衝撃的です。トラウマになってもおかしくないほどの読書になるかもしれません。それほどの地獄です。人間はここまで残酷になれるのかと恐れおののくしかありません。

私はボスニア紛争をきっかけにルワンダの虐殺をこうして学ぶことになりましたが、これらの本を読んでいてボスニア、ルワンダ、ソマリアのそれぞれが特異で異常なのではなく、人間の本質としてそういうことが起こり得る、誰しもがやってしまいかねないものを持っているのだということを改めて思い知らされることになりました。

目を背けたくなるような歴史ではありますが、ここを通らなければ、歴史はまた形を変えて繰り返してしまうことでしょう。そうならないためにも私たちは悲惨な人間の歴史を学ばなければならないのではないでしょうか。

観察力を磨く僧侶の日記

『観察力を磨く 名画読解』概要と感想~ものの見方が変われば世界が変わる!ぜひ学生に読んでほしい名著!

この本では様々な絵画や芸術作品を通して数々の実践をこなしていくことになります。

あの有名なフェルメールを通しての実践はものすごく刺激的で面白いです。

何気なく見るだけでは決して気づくことのできない細部の描写。この絵に実際に何が描かれているのか。この本を読めば私たちがいかに何も見えていないかがよくわかります。試しにまずはこの本を読んでみて下さい。自分の世界の見方の漠然さに衝撃を受けると思います。

「見る」と「観る」の違いがこんなにも大きいものだったのかと私は衝撃を受けることになりました。

これは勉強をする上でも、仕事をする上でも、いや、生きること全てにおいても大切な技術です。これはぜひ多くの人に体感して頂きたい驚異のプログラムです。

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

高橋ブランカ『東京まで、セルビア』~セルビア的作品とは?山崎佳代子氏の指導を受けたセルビア人作家の日本デビュー作

著者の高橋ブランカ氏はセルビア出身の作家です。ベオグラード大学で日本語を学び、その時の指導教官がこれまで当ブログでも紹介してきました詩人山崎佳代子氏でした。

繊細な内面描写あり。思わずくすっとしてしまうユーモアあり。

著者の思いを感じながら読んだ『東京まで、セルビア』は非常に刺激的かつ楽しい時間になりました。

ぜひぜひおすすめしたいです。

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

山崎佳代子『ベオグラード日誌』~読売文学賞受賞作!空爆後のセルビア生活を紡った珠玉の言葉たち

ユーゴ紛争、NATO空爆を経たベオグラードの街で詩人である著者は何を見て、感じたのか。

紛争後も続く何気ない日常。

その日常を綴った言葉の中に、じんわりと見え隠れしてくる紛争の影・・・

わかりやすい「特別な出来事」ではなく、そこで今も生きる人たちの日常を捉えたこの作品は非常に稀有な存在だと思います。ただ単に日常を切り取っただけでなく、そこに何か人間生活の奥深さが感じられてくる不思議。

この作品が読売文学賞を受賞したのももっともだなと思いました。不思議な力がある作品です。

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

山崎佳代子『そこから青い闇がささやき』~NATOのベオグラード空爆を体験した詩人によるエッセイ集~そこで何が起きていたのか

この作品はセルビアの首都ベオグラード在住の詩人山崎佳代子氏によるエッセイ集です。

なぜユーゴ紛争は起こってしまったのか・・・

「セルビア悪玉論」という単純な構図で語られてしまったこの紛争。

そんな国際世論の中セルビアはNATOによる空爆を受けることになります。著者はそんな猛烈な爆撃の中ベオグラードに残り続け、そこに生きる人々の声や、自らの思いをこの本に記しています。

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

森住卓『イラク 湾岸戦争の子どもたち』~NATOのユーゴ空爆でも用いられた劣化ウラン弾とは~現在も続く放射能汚染の脅威

1999年、コソボ紛争の中NATO軍は「セルビアによる虐殺を止めること」を理由に、ベオグラードやセルビア人居住地に対し激しい空爆を行いました。そしてその時に使用されたのが「劣化ウラン弾」でした。この兵器は撃ち込まれたエリアに放射能汚染を引き起こします。そんな危険な兵器をNATO軍が大量に撃ち込んでいた・・・私はそのことにショックを受け、「この兵器が引き起こした実態をもっと知らなければならない」と考えこの本を手に取ったのでありました。

この記事ではそんな劣化ウラン弾の恐ろしさについてお話ししていきます。

ボスニア紛争とルワンダ虐殺の悲劇に学ぶ~冷戦後の国際紛争

千田善『ユーゴ紛争』~ユーゴ紛争はなぜ起こったのかがコンパクトにまとめられたおすすめの参考書

この本では著者が、「旧ユーゴ崩壊から二年あまりが過ぎ、戦局は泥沼化しているが、いたずらに民族主義をあおるしか能がない各民族の指導者が、武力による支配地拡大一辺倒の対決策を繰り返してきた責任も、問われなければならない。」と93年の段階で述べているのが非常に印象的でした。

ユーゴ紛争はなぜ起こったのか、そのきっかけは何だったのか、なぜ泥沼化してしまったのか。それをリアルタイムで取材した著者の言葉は非常に重いです。