原始仏教

インドスリランカスリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

R・ゴンブリッチ『インド・スリランカ上座仏教史』~「ブッダの教えは誰が聴いたのか」社会と仏教のつながりを考えさせられる名著

この本はスリランカの仏教の大枠を学ぶのに非常におすすめな作品です。

スリランカといえば本書タイトルにありますように日本の大乗仏教とは異なる「上座部(テーラワーダ)仏教」が根付く国です。そのスリランカにおける仏教の歴史をインドにおける仏教誕生から遡って考えていくのが本書の大きな流れとなります。

本書で特徴的なのは「仏教の社会史」という視点があることです。本書では単に思想的、歴史的な問題だけでなく、当時の社会との関わりの中において仏教がどのように存在していくかを見ていきます。この本を読めば皆さんもきっと驚くと思います。ぜひぜひおすすめしたい名著です。

仏教の誕生インドにおける仏教

佐々木閑『仏教の誕生』~初学者にもおすすめの仏教入門書!

今作『仏教の誕生』は仏教入門にぜひぜひおすすめしたい参考書です。仏教に興味があるけど何を読んだらよいですか?と聞かれたら最近はこの本を私はおすすめしています。それほどわかりやすく、読みやすいです。しかも仏教が私達の生活とどのように関わってくるかということも考えていけるので非常に実践的です。単なる知識で終わるのではなく、生きる智慧としての仏教を本書で知ることができます。

これまで当ブログでは様々な仏教書を紹介してきましたが、入門書としてはこの本がピカイチです。ぜひ私もおすすめしたいです。

ブッダの生涯インドにおける仏教

平川彰『ブッダの生涯 『仏所行讃』を読む』~漢訳された仏伝をもとに超人間的なブッダの生涯を見ていくおすすめ入門書

前回の記事では2世紀頃に活躍したアシュヴァゴーサによる仏伝叙事詩『ブッダチャリタ』をご紹介しました。

この『ブッダチャリタ』は西暦430年頃に曇無讖によって『仏所行讃』として漢訳されました。これが日本にも伝来し日本の仏教者にも伝えられたのでありました。最澄や空海、法然や親鸞もこの仏伝を読んでブッダに思いを馳せていたのではないでしょうか。

本書はこの漢訳の『仏所行讃』の書き下し文を読みながらブッダの生涯がわかりやすく解説される仏教入門書になります。

ブッダチャリタインドにおける仏教

『完訳 ブッダチャリタ』~アシュヴァゴーシャ(馬鳴)による『仏所行讃』としても知られる仏伝の大元!ブッダの生涯を叙事詩化!

今作『ブッダチャリタ』は1~2世紀頃にインドで活躍した仏教詩人アシュヴァゴーサ(馬鳴)による仏伝です。漢訳では曇無讖によって『仏所行讃』として翻訳されています。空海や最澄、鎌倉仏教の開祖たちもこの仏伝を読んでブッダの生涯を学んでいたのではないでしょうか。

現在語られるブッダの生涯の大元となったアシュヴァゴーシャの『ブッダチャリタ』。物語としても非常に面白い作品でした。

ジャイナ教インド思想と文化、歴史

渡辺研二『ジャイナ教 非所有・非暴力・非殺生―その教義と実生活』~仏教との比較も興味深いおすすめ解説書!

この本ではジャイナ教の基本的な教義や成立の背景などをわかりやすく知ることができます。

特にこの本ではジャイナ教が生まれてくる背景としての六師外道についても詳しく知れるのがありがたかったです。

六師外道とは仏教側から見たブッダと同時代のインドの思想家のことです。この中の一人がジャイナ教の開祖マハーヴィーラ(仏教ではニガンタ・ナーマプッタと呼びます)になります。

ブッダの生きた時代を学ぶ上でも六師外道の思想家は非常に重要な存在です。やはり仏教とジャイナ教は同じ時代に同じ文化的背景の中で生まれてきたとあってその成立過程も共通するものが多々あります。

こうした時代背景と一緒にジャイナ教とは何かを知れるこの本はとてもおすすめです。

インド仏教史インドにおける仏教

平川彰『インド仏教史』~仏教学の不滅の古典!仏教の歴史や教義が網羅された名著!

この本が出版されたのは1974年ですが、今なお名著中の名著として高く評価されている仏教書です。2011年には新版が出版され、現在においても仏教を深く学びたい方必読の参考書となっています。

一つの著作でここまで教えを網羅し、ひと流れの仏教史として書き上げられた本書は驚異としか言いようがありません。

これはものすごい本です。初学者に気軽におすすめできる本ではありませんが、仏教をより深く学びたいという方にはぜひおすすめしたい一冊です。

インド性愛文化論インドにおける仏教

定方晟『インド性愛文化論』~仏教経典に説かれた性。仏教と性の関係性を真正面から問うた参考書

この本は普段私たちがなかなか触れることのない「仏教と性の関係性」についてストレートに論じた作品です。

「わたしはいま仏教の裏街道を示そうとしている。仏教学者のなかにはこれを好まない人がいるかもしれない。しかし、人間にとって大事な性の問題を避けて、仏教のなにがわかるだろうか。性愛(カーマ)はインドでは人生の三大目的の一つにあげられているくらいである。人間のすべての面を知ってこそ仏教の意義が正しく理解できると、わたしは考える。」

本書におけるこの言葉は非常に重要な提言ではないでしょうか。

実理論インド思想と文化、歴史

カウティリヤ『実利論』~古代インドのマキャヴェリズム!『君主論』に比すべき徹底的な帝王学とは!

マキャヴェリの『君主論』ではかなりえげつない権謀術数が説かれますが、この『実利論』もかなりのどぎつさです。

本書解説でも「本書の作者は、自国の治安を守り、国力を増強して、他者の領土を獲得するために、君主の採用すべきありとあらゆる権謀術数を説く。なかんずく、本書の随所で展開される諜報活動の実例は、最も注目すべきものの一つであろう。インドの古典において諜報活動は非常に重視され、後代の文学作品においても、スパイを適切に活用できぬ王は非難されている。」と述べられるように、スパイの活用法については特に念入りに説かれます。

この本を読んでいると王族で生まれることが全く羨ましくありません。どんなに贅沢ができたとしても私は謹んでその権利をお返ししたいと思います。ブッダももしかしたらそういう気持ちだったのかもしれません。

マヌ法典インド思想と文化、歴史

『マヌ法典』~インド・ヒンドゥー教社会の礎。世界創造から人間の理法まで壮大な規模で説かれた聖典

『マヌ法典』は単なる法律書のようなものではありません。『マヌ法典』を読み始めてまず驚くのは、いきなりこの聖典が天地創造の話から始まるということです。ブラフマンという創造主を中心にした壮大な宇宙論、世界観がまず語られ、そこから人はいかに生きるべきか、何を規範とし生活の掟としていくのかが語られていきます。

『マヌ法典』を読んでいるとまさに生活のあらゆる場面にヒンドゥー教の実践や思想が組み込まれていることを強く感じます。さらにそれだけでなく誕生から死までの通過儀礼においても細かな規定が定められていることもわかりました。まさに生まれてから死ぬまで、いや死後の世界までヒンドゥー教の世界観が貫かれているということを強く感じました。

『マヌ法典』は仏教を学ぶ上でも非常に意味のある聖典です。

ヒンドゥー教と叙事詩インド思想と文化、歴史

中村元選集第30巻『ヒンドゥー教と叙事詩』~仏教や日本とのつながりも知れる名著!インド思想の奥深さを体感

中村元先生は宗教を単に思想や理論として見るのではなく、当時の社会状況と合わせて考察していきます。インドにおける宗教を知るには、インドそのものも視野に入れて考えていかなければなりません。

なぜインドではヒンドゥー教が栄え、仏教は衰退していってしまったのか。そのことをこの本では見ていくことができます。そこには単に思想面だけではなく、もっと大きな社会的要因が絡んでくるのでありました。

また、この本では書名にありますようにインド二大叙事詩『マハーバーラタ』と『ラーマーヤナ』についても詳しく見ていくことができます。仏教学者中村元先生ならではの視点で説かれるインド神話の講義を聴けるのは非常に興味深いものがありました。