インド思想と文化、歴史

南インドインド思想と文化、歴史

辛島昇・坂田貞二編『世界歴史の旅 南インド』~写真満載!チェンナイなど北インドと異なる独特な建築や文化を学ぶのにおすすめ!

今作『世界歴史の旅 南インド』は北インドとは異なる文化を持つ南インドのおすすめのガイドブックです。

本書の特徴は何と言っても写真が満載な点にあります。素晴らしい写真を見ながら南インドの歴史を辿っていくと、自分も南インドにぜひ行ってみたくなります。

私達はインドというと、ひとつのインドを思い浮かべてしまいがちですが、インドは広い!(笑)

日本でも関東と関西では文化が違うように、インドも北と南、いや全方位においてそれぞれの文化があります。

この本を読めば南インドの雰囲気が伝わってきます。 写真も満載ですので南インド入門に格好のガイドブックとなっています。

近現代南インドのバラモンと賛歌インド思想と文化、歴史

小尾淳『近現代南インドのバラモンと賛歌』~タミル人とバクティ信仰。南インドの文化を学ぶのにおすすめ

インドの宗教や文化について数多くの本はあれど、南インドの音楽に特化して書かれた本は貴重です。私もこの視点からインド文化を考えたのは初めてのことでとても新鮮な気持ちでこの本を読むことができました。

私自身、最近ガンジス川上流の聖地ハリドワールやリシケシでヒンドゥー教の祈りの音楽を聴くことになりました。

そのメロディーが今でも耳に残っています。なぜか忘れられない印象的なメロディーでした。初めて聴く私ですらこうなのですからインドの方にとったらどれだけ愛着のあるものだったことでしょう。

本書は当時の音楽家達やその音楽について語られるのでかなりマニアックですが、北インドとは異なる南インドならではの空気感が感じられる興味深い作品です。

ガンディーインド思想と文化、歴史

間永次郎『ガンディーの真実―非暴力思想とは何か』~ガンディーの人柄や思想の核を知るのにおすすめの参考書!

マハトマ・ガンディーといえば誰もが知るインド独立に大きな役割を果たした偉人中の偉人です。

本作ではそんなガンディーの思想や人柄、そして社会に与えた影響についてわかりやすくかつ詳しく見ていけるおすすめの参考書になります。

ガンディーの有名な「非暴力」は私達もよく知る言葉です。しかしこの「非暴力」がはたしてどういうものなのかというのが実はあまり知られていない、いや誤解すらされている。そんな問題提起が本書ではなされていきます。

特にガンジーの宗教観、そして家庭問題について説かれる第5章、6章は衝撃です。私も「え?そうだったのか!?」と驚いてしまいました。

ですがこの本は単なるゴシップのようなものではありません。ガンディーの思想や人柄を様々な資料によって明らかにしていきます。

ジャイナ教インド思想と文化、歴史

渡辺研二『ジャイナ教 非所有・非暴力・非殺生―その教義と実生活』~仏教との比較も興味深いおすすめ解説書!

この本ではジャイナ教の基本的な教義や成立の背景などをわかりやすく知ることができます。

特にこの本ではジャイナ教が生まれてくる背景としての六師外道についても詳しく知れるのがありがたかったです。

六師外道とは仏教側から見たブッダと同時代のインドの思想家のことです。この中の一人がジャイナ教の開祖マハーヴィーラ(仏教ではニガンタ・ナーマプッタと呼びます)になります。

ブッダの生きた時代を学ぶ上でも六師外道の思想家は非常に重要な存在です。やはり仏教とジャイナ教は同じ時代に同じ文化的背景の中で生まれてきたとあってその成立過程も共通するものが多々あります。

こうした時代背景と一緒にジャイナ教とは何かを知れるこの本はとてもおすすめです。

アジャンタとエローラインド思想と文化、歴史

『アジャンタとエローラ―インドデカン高原の岩窟寺院と壁画』~インドの誇る世界遺産のおすすめガイドブック!

この本はインドの世界遺産アジャンタとエローラのおすすめのガイドブックになります。

特に両遺跡にある彫刻や絵の解説はものすごく興味深かったです。ジャータカという仏教説話の解説は特にぐっと来るものがありました。単に遺跡や芸術の解説をするのではなく、そこから時代背景や思想のもっと奥深くまで語ってくれるのでぐいぐい引き込まれてしまいます。

私も今年アジャンタとエローラを訪れる予定です。そんな私にとってこの本は非常にありがたいガイドブックでした。ぜひおすすめしたい一冊です。

カーマスートラインド思想と文化、歴史

『カーマ・スートラ』~古代インドの性愛の法典。カジュラーホー寺院やタントリズム、密教に深い関係も

『カーマ・スートラ』を実際に読んで感じたのは、いわゆる現代の恋愛指南とそっくりということでした。

「どんな男がモテるのか」、「男を惹きつける方法」などなど、ものすごく身近な話題が出てくることに驚きました。「自分に言い寄ってくる嫌いな男を遠ざける方法」や「精力のない男を元気にする方法」が説かれた箇所では思わず笑ってしまいました。当時の男女間の様子が目に浮かんでくるようです。まさに当時の文化、生活を知れる第一級の資料であることに間違いありません。

『カーマ・スートラ』は単なる好色文献というわけではありません。どぎつい性的表現ばかりと誤解されていますが、それもあくまで男女間の生活の一部分です。男女の出会い、そして共に歩む人生、その全体を含んでの『カーマ・スートラ』です。この法典を読んで男女間における生活規範がびっしり説かれていることに私も驚きました。

実理論インド思想と文化、歴史

カウティリヤ『実利論』~古代インドのマキャヴェリズム!『君主論』に比すべき徹底的な帝王学とは!

マキャヴェリの『君主論』ではかなりえげつない権謀術数が説かれますが、この『実利論』もかなりのどぎつさです。

本書解説でも「本書の作者は、自国の治安を守り、国力を増強して、他者の領土を獲得するために、君主の採用すべきありとあらゆる権謀術数を説く。なかんずく、本書の随所で展開される諜報活動の実例は、最も注目すべきものの一つであろう。インドの古典において諜報活動は非常に重視され、後代の文学作品においても、スパイを適切に活用できぬ王は非難されている。」と述べられるように、スパイの活用法については特に念入りに説かれます。

この本を読んでいると王族で生まれることが全く羨ましくありません。どんなに贅沢ができたとしても私は謹んでその権利をお返ししたいと思います。ブッダももしかしたらそういう気持ちだったのかもしれません。

マヌ法典インド思想と文化、歴史

『マヌ法典』~インド・ヒンドゥー教社会の礎。世界創造から人間の理法まで壮大な規模で説かれた聖典

『マヌ法典』は単なる法律書のようなものではありません。『マヌ法典』を読み始めてまず驚くのは、いきなりこの聖典が天地創造の話から始まるということです。ブラフマンという創造主を中心にした壮大な宇宙論、世界観がまず語られ、そこから人はいかに生きるべきか、何を規範とし生活の掟としていくのかが語られていきます。

『マヌ法典』を読んでいるとまさに生活のあらゆる場面にヒンドゥー教の実践や思想が組み込まれていることを強く感じます。さらにそれだけでなく誕生から死までの通過儀礼においても細かな規定が定められていることもわかりました。まさに生まれてから死ぬまで、いや死後の世界までヒンドゥー教の世界観が貫かれているということを強く感じました。

『マヌ法典』は仏教を学ぶ上でも非常に意味のある聖典です。

マヌ法典インド思想と文化、歴史

渡瀬信之『マヌ法典 ヒンドゥー教世界の原型』~古代インドから続くインド人の世界観、生活規範を学ぶのにおすすめ

私達日本人がインドの仏教を学ぼうとすると、どうしても仏教の側のみからインド世界を見てしまいがちです。ですがインドにおいて仏教はどちらかといえばアウトサイダー側の存在でした。その主流はやはりヒンドゥー教世界になります。

しかも仏教は在俗信者の日常生活にはあまり介入しないという方針を取りました。つまり、仏教徒の日常生活や通過儀礼は相変わらずヒンドゥー教世界の枠組みの中にあったとされています。

そんなインド仏教徒とも共存してきたヒンドゥー教世界の生活規範や世界観を知れる本書は非常に貴重です。インド仏教について考える上でもとても大きな意味がある作品だと私は思います。

ヒンドゥー教と叙事詩インド思想と文化、歴史

中村元選集第30巻『ヒンドゥー教と叙事詩』~仏教や日本とのつながりも知れる名著!インド思想の奥深さを体感

中村元先生は宗教を単に思想や理論として見るのではなく、当時の社会状況と合わせて考察していきます。インドにおける宗教を知るには、インドそのものも視野に入れて考えていかなければなりません。

なぜインドではヒンドゥー教が栄え、仏教は衰退していってしまったのか。そのことをこの本では見ていくことができます。そこには単に思想面だけではなく、もっと大きな社会的要因が絡んでくるのでありました。

また、この本では書名にありますようにインド二大叙事詩『マハーバーラタ』と『ラーマーヤナ』についても詳しく見ていくことができます。仏教学者中村元先生ならではの視点で説かれるインド神話の講義を聴けるのは非常に興味深いものがありました。