ドストエフスキー

処女地ロシアの文豪ツルゲーネフ

ツルゲーネフ『処女地』あらすじと感想~ロシアの70年代ナロードニキ青年達を描いた大作

ドストエフスキーの『悪霊』が書かれたのはまさに1870年頃のことです。

これはツルゲーネフが描こうとした70年代の青年とぴったり重なります。

ツルゲーネフは社会主義思想を信ずる過激派が農村に潜入し暴動を起こす流れを描写しました。

それに対しドストエフスキーはある街を舞台に、社会主義革命家が起こす大混乱と陰惨な事件を描きました。

舞台は違えど2人の問題意識は共通するものがあります。

物語の深刻さ、どす黒さという点では『悪霊』のほうが圧倒的に際立っていますが、『処女地』の視点も非常に興味深いです。文学スタイルの違う2人の作品を見ることでより深くこの時代の人間精神を学ぶことができるような気がします。

煙ロシアの文豪ツルゲーネフ

ツルゲーネフ『煙』あらすじと感想~ドイツの保養地バーデン・バーデンが舞台!文学における芸術を知るならこの本がおすすめ!

当時のロシア文壇からは不評だったこの作品ではありましたが現代日本に生きる私が読んでみたらどうだったのかと言いますと・・・正直、面白くはなかったです

では、この小説は読むに値しないものなのか。

いや、それが違うんです。

実は私にとってこの『煙』という小説は、ツルゲーネフ作品の中でもトップクラスに印象に残った作品となったのです。

個人的にはとてもおすすめな作品です。文学における芸術とは何かを知る上でこの作品は計り知れない意味を持っていると私は思います。

ハリストス正教会ロシアの歴史・文化とドストエフスキー

函館ハリストス正教会を訪ねて~ロシア正教の祈りとガンガン寺の鐘の音

ハリストス正教会は日本で初めて建てられたロシア正教の教会で、函館のシンボルともなっている教会です

ロシア正教は同じキリスト教といってもカトリックやプロテスタントとはその教えや祈り方、文化がかなり違います。

そしてそのロシア正教が初めて日本に上陸し根付いたのがここ函館だったのです。日本に布教にやって来たニコライ神父はドストエフスキーとも面識があったと言われています。

ドストエフスキーを愛する私としては何か不思議なご縁を感じます。私が住む函館がロシア正教を学ぶ上で非常に大きな意味をもっていることに運命のようなものを感じてしまいました。

父と子ロシアの文豪ツルゲーネフ

ツルゲーネフ『父と子』あらすじと感想~世代間の断絶をリアルに描いた名作!あまりに強烈!

ツルゲーネフがバザーロフというニヒリストを生み出すと、それ以降現実世界においてそのような人は「バザーロフ的人間」とか「ニヒリスト」と呼ばれることになりました。

この影響力たるやすさまじいものがあります。

これをやってのけたツルゲーネフの観察者、芸術家としての能力はやはりずば抜けているなと感じました。

『父と子』は読みやすく、とてもおすすめな作品です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

初恋ロシアの文豪ツルゲーネフ

ツルゲーネフ『初恋』あらすじと感想~自伝的な性格を持ったツルゲーネフの代表作

この小説はツルゲーネフの実際の体験をもとにして書かれています。自分が恋した女性が実は父の愛人だったという、もし実際にそういう場面に直面したらかなりショックを受けそうな内容です。

物語としても非常に面白い『初恋』ですが、ツルゲーネフの恋愛観を知る上でも非常に興味深い作品となっています。

分量も文庫で100ページ少々と気軽に読めるものとなっています。 ツルゲーネフの代表作『初恋』、とてもおすすめな作品です。

その前夜ロシアの文豪ツルゲーネフ

ツルゲーネフ『その前夜』あらすじと感想~農奴解放直前のロシアを描いた長編小説

この作品が発表された1860年はまさしく1861年の農奴解放令の前夜でした。

世の中の流れが農奴解放へと向かって行く中で、青年たちはどのようなことを思い、何をしようとしているのか。それをツルゲーネフは凝視します。

そしてツルゲーネフはそうした青年たちの中でも、社会に積極的に関わり行動していこうという女性を描こうと思い立ちます。

この作品はツルゲーネフにとっては苦い記憶となってしまいましたが、現代日本人たる私が読んだ感想としてはそこまで非難されるべき作品ではないと思いました。

国によって、そして時代によって評価がこうも異なるのかというのを感じられた作品でした。

天使のためのウヴェルテュールロシアの歴史・文化とドストエフスキー

跳魚@ロシア史と露様『天使のためのウヴェルテュール前編(アレクサンドル1世紹介漫画) 』~ロシア皇帝アレクサンドル1世を漫画で紹介!

跳魚さんの『天使のためのウヴェルテュール前編 』ではあの無敵のナポレオンを敗走させたアレクサンドル1世について彼の波乱万丈の生涯をわかりやすく漫画で紹介して下さっています。

ロシアの皇帝というとかなりいかついイメージがあるかもしれませんが、跳魚さんのイラストは非常に繊細で美しくて、とっつきにくいロシア史のイメージが変わると思います。

貴族の巣ロシアの文豪ツルゲーネフ

ツルゲーネフ『貴族の巣』あらすじと感想~ロシアで大絶賛されたツルゲーネフの傑作長編

ツルゲーネフを学ぶまで『貴族の巣』という小説はまったく知らなかったのですが、この作品がツルゲーネフの作品中屈指の人気があるというのは驚きでした。

ロシア中から大喝采をもって迎えられるほどこの作品はロシアで大人気となり、ドストエフスキーもこの作品に対して賛辞を送っています。

たしかにこの小説はとても読みやすかったです。展開もどんどん動きますし、小説としてかなり面白いです。

ファウストロシアの文豪ツルゲーネフ

ツルゲーネフ『アーシャ(片恋)』あらすじと感想~二葉亭四迷の翻訳で有名な恋物語

この小説はアーシャとN・Nの恋物語が主軸ですが、『猟人日記』時代からのツルゲーネフの最大の魅力である美しい情景描写がこれでもかと出てきます。

次に何が起こるかわからない混沌とした心理ドラマを描くドストエフスキー。

ため息を誘うほど美しい世界の中、甘くも苦しい恋に身を焦がす二人のドラマを描くツルゲーネフ。

この違いがとてもくっきりするような作品でした。

ファウストロシアの文豪ツルゲーネフ

ツルゲーネフ『ファウスト』あらすじと感想~ゲーテの『ファウスト』に影響を受けた恋愛物語

ツルゲーネフの後半生の作品は憂鬱な気分にさせるものが多いです。そのきっかけとなった時期がまさにこの頃であると言われています。

ここから「あきらめなければ」という諦念がツルゲーネフを強く覆っていくことになります。

この辺りも激情家ドストエフスキーとの大きな違いを感じさせられます。

ツルゲーネフは時代を俯瞰し、達観した賢者のごとく静かな憂鬱に身を任せます。

こうした違いが文学の上にも明らかに出てくるのだなと思いながら私はこの作品を読んだのでありました。