イギリス

マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ

(33)マルクス『哲学の貧困』とプルードン批判について

プルードンはフランスで活躍した社会主義思想家です。ロシアの革命家バクーニンや、ゲルツェンなどともつながりがあった人物として知られています。

マルクス・エンゲルスも当初は彼の思想に感銘を受けていたのですが、例のごとく、彼らは仲違いし批判し合うことになります。

そしてマルクスが出版したのが『哲学の貧困』というプルードン批判の書だったのでした。

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(32)1845-48年当時、即時の武力革命を否定していたマルクス・エンゲルス

マルクス・エンゲルスは武力革命も辞さなかったというイメージがありますが、1845年から48年段階では労働者がいきなり武力革命を起こすというやり方は認めていませんでした。

マルクス思想の参考書で「マルクスは武力革命に反対だった」という解説がなされるのは、ここに依拠しているのでしょうか。たしかにブルジョワ社会が成熟するまでは労働者による武力革命に反対していたかもしれませんが、彼らが生涯にわたってずっと武力革命に反対していたかは別問題です。この件も今後注意して伝記を読んでいかなければなりません

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(30)1845年マルクス・エンゲルスのイギリス研究旅行とエンゲルスの愛人問題

「ブルジョワの一語が罵り言葉にされ、彼らはそれをうんざりするほど繰り返すが、自分たち自身、頭のてっペんからつま先までブルジョワが染みついている」

このバクーニンの言葉ほどマルクス・エンゲルスの生活ぶりを的確に表したものはないのではないでしょうか。

これから先も彼らの生涯を見ていくことになりますが、実際にこの後も彼らはブルジョワ的な生活を決して捨てません。

こうした矛盾があるというのも、マルクス・エンゲルスを考える上では重要な点ではないかと思います。

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(29)反抗息子エンゲルスの家庭問題~地元ドイツ・バルメンで居場所を失うエンゲルス

地元バルメンでひとり大人しくしていれば大事にはならなかったでしょうが、エンゲルスはそのような男ではありません。彼は共産主義を広めるための講演会を開きました。

当然当局からも目をつけられ、エンゲルスは政治犯・要注意人物となってしまいます。

こうなってしまうとバルメンの名士として生きてきたエンゲルスの父ももう我慢なりません。

父の逆鱗に触れたエンゲルスはお小遣いを減らされる憂き目に遭ってしまったのでした。

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(27)マルクス・エンゲルス、パリでの運命の再会!2人の共同作業の始まり~マルクスの「第二バイオリン」になったエンゲルス

パリに来てから自身の思想の方向性が変わり始めていたマルクス。

そんな時にちょうどパリにやって来たのがエンゲルスでした。

ついに機は熟したのです。

今や二人はヘーゲル哲学から脱皮した、政治経済、共産主義の闘士。

彼らの思想は驚くほどの一致を見たのでした。そして彼らの確信の揺るぎなさたるや!

パリの酒場で10日間語り合ったマルクスとエンゲルス。

これからの生涯全てを捧げての共同作業が始まった瞬間でした。

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(26)『共産党宣言』『資本論』にも大きな影響を与えたエンゲルスの『イギリスにおける労働者階級の状態』

この作品の強みはエンゲルスの実体験に基づいたリアルな語りにありました。

しかもそれだけでなく、彼が夢中になって学んだヘーゲル哲学の素養がそこに生きてきます。

哲学的ジャーナリスト・エンゲルスの特徴がこの作品で示されているのでありました。

労働者の悲惨な生活を描くエンゲルスの筆はもはや作家の域です。

この作品は後のマルクスにも非常に大きな影響を与えました。

マルクスはマルクスのみにあらず。

やはりエンゲルスがいて、二人で共同作業をしたからこそのマルクスなのだなと思わされます。

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(25)マルクスを唸らせたエンゲルスの小論「国民経済学批判大綱」とは

彼はこれまで学んできたヘーゲル哲学を政治経済と結びつけました。この結合が後のマルクス・エンゲルスの思想に決定的な影響を与えることになります。

そして1843年に書かれた「国民経済学批判大綱」は、もう後のマルクスの言葉と言ってもわからないくらいです。

ギムナジウムを中退し、商人見習いをしていた23歳の青年がここまでのものを書き上げたというのは並大抵のことではありません。

マルクスという大天才の陰に隠れて目立たないエンゲルスですが、彼も歴史上とてつもない天才であるのは間違いないのではないでしょうか。

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(24)エンゲルスの最初の愛人メアリー・バーンズ~エンゲルスに貧民街を案内した女工の存在

エンゲルスがいかに頭が良かろうと、革命思想を奉じようと、彼は工場経営者の御曹司です。

そんな青年が一人で治安の悪い貧民窟に向かうのはさすがに不可能です。そこで彼はそうした危険地帯をよく知る人物と連れ立って実地の見聞を繰り返していたのでした。

そしてその中でも大きな役割を果たしていたのが最初の愛人、メアリー・バーンズだったのです。

この記事ではそんなメアリー・バーンズについてお話ししていきます。

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(23)イギリスの歴史家トーマス・カーライル~エンゲルスがイギリスで尊敬した唯一の知識人

イギリスの歴史家カーライルの思想はマルクスの『共産党宣言』にも非常に強い影響を与えています。

その本の中の有名な一節、(資本主義は)「人間と人間とのあいだに、むきだしの利害以外の、つめたい「現金勘定」以外のどんなきずなをも残さなかった。」という強烈な言葉はマルクスが資本主義の仕組みを痛烈に批判した言葉としてよく知られていますが、実はこの言葉はすでにカーライルがその著作で述べていた言葉だったのです。

この記事ではそんなカーライルとマルクス・エンゲルスについて見ていきます。

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(22)イギリスの労働運動「チャーティスト運動」を間近で見るエンゲルス

前回の記事でも紹介しましたが、1830年代まで根強い人気のあったオーエン派の活動も最後には衰退していってしまいます。

その大きな原因となったのがイギリスの新たな政治運動である「チャーティスト運動」でした。

今回の記事ではそんなイギリスの歴史に非常に大きな影響を与えたチャーティスト運動とエンゲルスについてお話ししていきます。