小川和男『東欧 再生への模索』概要と感想~ウクライナを含むソ連崩壊後の東欧経済の概観を知るのにおすすめ
今回ご紹介するのは1995年に岩波書店より発行された小川和男著『東欧 再生への模索』です。
早速この本について見ていきましょう。
冷戦時代,非情な鉄のカーテンによって一つのブロックに押し込められていた東ヨーロッパの諸国は,「東欧革命」により急激な市場化と政治改革の嵐の中に投げ込まれた.そしてそれから六年を経た今,圧倒的な西欧の力の下にあえぎながらも,様々な試行錯誤と挫折の中から徐々に新しい方向を見いだしつつある.各国の素顔を表情豊かに報告する.
Amazon商品紹介ページより
この本では東欧革命が起き、ソ連からの独立を果たした東欧諸国がソ連崩壊後にどのような経済状況に置かれたかを学ぶのにおすすめな作品です。


目次を見て頂ければわかるようにかなり幅広く東欧のことを知ることができます。
今問題になっているウクライナとロシアの関係性も出てきます。
また、2019年に私も訪れたポーランドとチェコも詳しく語られていて、自分が実際に見た国の経済事情を知れるというのは非常に興味深いものでした。
また、エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト三国やルーマニア、モルドバ、ブルガリア、ハンガリー、バルカン諸国などの国の紹介や文化、経済もわかりやすく説かれているのもありがたいです。
東欧諸国がそれぞれいかに独自な文化を持ち、経済事情も固有なものがあるかがわかります。それぞれを比べながら見ていけるのは読んでいてとても興味深かったです。
そしてこの本を読んでいて改めて感じたのは「ソ連が崩壊し、それぞれが独自に道を歩む」という言葉で一括りにしてしまえば、わかりやすくはなるもののその実態を見誤ることになるということです。
ソ連が崩壊するまで、それぞれの国の最大の貿易相手はソ連でした。エネルギー供給は安価なソ連産に頼るほかなく、もしこれがなくなってしまったらそもそも国が立ち行かなくなってしまう。さらには自国の工業製品をソ連に輸出することで産業が成り立っていたという現実があります。
ソ連が崩壊してしまったことでこうした構図も一緒に崩れてしまいました。
もはや新生ロシアはかつてのように東欧諸国に気前よく経済支援もすることもなく、製品も買ってくれません。さらには品質の悪い旧共産圏の製品では西側の高品質品には敵うべくもなかったのです。旧共産圏にとって自由化は何重にも苦しい状況となりました。
経済は単に一カ国の問題ではなく、世界の循環の問題なのだということもこの本では考えさせられました。
この本は1995年に書かれたものですが、当時の東欧事情を知るという意味では、2022年の今読んでも全く色あせない作品です。
写真も多数掲載されているので現地の姿もイメージしやすく、新書でコンパクトにわかりやすくまとめられているのでとてもありがたいです。
なかなか知る機会のない東欧の経済事情を知れるおすすめの作品です。
以上、「小川和男『東欧 再生への模索』ウクライナを含むソ連崩壊後の東欧経済の概観を知るのにおすすめ」でした。
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