ドストエフスキー

金閣寺三島由紀夫と日本文学

三島由紀夫『金閣寺』あらすじと感想~「金閣寺を焼かねばならぬ」。ある青年僧の破滅と内面の渦

「金閣寺を焼かねばならぬ」

なぜ青年僧はそう思わねばならなかったのか。それを幼少期からその決行まで我々は見ていくことになります。

そしてこの作品を読んでいてふと思ったのは、『金閣寺』はドストエフスキーの『罪と罰』と対になる作品かもしれないということでした。

私は『罪と罰』をかつて「ドストエフスキーの黒魔術」と呼びました。ドストエフスキーの作品は私たちに異様な感化力を以て襲いかかってきます。

そしてまさに三島由紀夫の『金閣寺』もそのような作品だと確信しました。この文体。この熱量・・・!恐るべき作品です。これから三島由紀夫の作品を読んでいくのが楽しみになりました。

いや~ものすごい作品でした。

変革の時代スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

M・ウィクラマシンハ『変革の時代』あらすじと感想~スリランカ新興商人の実態をリアルに描写。ゾラを彷彿とさせる名著

まさにこの小説は20世紀前半のスリランカを知るための絶好の資料となります。遠く離れた日本に住む私たちにとってこれほどありがたいスリランカ絵巻はありません。

『変革の時代』では新興商人が金や地位に溺れる虚飾の世界や、それに反発を覚える息子世代の心情、旧社会の伝統を捨てきれない村の人々とのずれなど様々な立場からスリランカ社会を見ていくことになります。

これは見事な作品です。前作に引き続きウィクラマシンハの恐るべき描写力を本作でも感じることになりました。

変わりゆく村スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

M・ウィクラマシンハ『変わりゆく村』あらすじと感想~スリランカの傑作長編!ドストエフスキーやチェーホフとの関連も!

日本ではあまり知られていない作品ですが、世界的にも評価されている素晴らしい小説です。私も実際に読んでみてその素晴らしさを堪能することとなりました。

スリランカでの生活が目の前に現れるかのような、没入感ある小説です。ドストエフスキーやチェーホフが好きな人には特にフィットする作品だと思います。

これからこの三部作全てを読んでいきますが、そのスタートからして圧倒的なクオリティを感じた一冊でした。

らんまんとドストエフスキードストエフスキー、妻と歩んだ運命の旅~狂気と愛の西欧旅行

借金取りを撃退した『らんまん』の寿恵子さんとドストエフスキーの妻アンナ夫人がそっくりなのではないかという件について

今週のNHK朝ドラ『らんまん』で借金取りを見事に追い返した寿恵子さんを見て、私はドストエフスキーの妻アンナ夫人を連想せずにはいられませんでした。

アンナ夫人も生活能力ゼロのドストエフスキーを支え、原稿の清書、出版まで手掛け、さらには借金取りも撃退しています。

この記事ではそんな二人の共通点やドストエフスキー夫妻の意外な一面についてお話ししていきます。

スターリンの図書室レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

ジェフリー・ロバーツ『スターリンの図書室』~読書という視点から見る斬新なスターリン伝。彼はドストエフスキーをどう見たのか。

「嫌っているだけでは、彼がなぜ、いかにしてあのような所業に走ったのかを説明することはできない。」

これは著者による非常に重要な指摘です。スターリンを単なる大悪人と片付けてしまったらそこで思考は終了です。

なぜスターリンは独裁者となれたのか、その背景となったものは何だったのか、それを「読書」という観点から見ていく本書は非常に刺激的です。「読書」というある意味独裁者と結びつきにくいマイナーな切り口から攻めていく著者の勇気には驚くしかありません。非常に斬新です。

ドストエフスキー論

T.G.マサリク『ロシアとヨーロッパⅠ』チェコの哲人大統領による貴重なロシア論!

農奴の父、料理番の母の子として生れ、そこから苦学して哲学教授になり、初代チェコ大統領にまでなったという驚異の経歴の持ち主、マサリクによるロシア・ドストエフスキー論。

そもそも哲学者として超一流。そしてそこに政治家として世界情勢や政治経済の現場を見た経験も加わったマサリク。さらに人格者としてチェコ国民だけでなく世界中の人から敬愛されていた偉大なる人物。

そんな大人物が語るロシア史、ドストエフスキー論はものすごく刺激的でした。

トルストイの肖像ロシアの巨人トルストイ

クラムスコイ『トルストイの肖像』制作エピソード~トルストイの射貫くような眼差しはこうして描かれた!

この肖像画で描かれたトルストイのまなざしの鋭さには驚かされます。

トルストイといえば晩年の白いひげを生やした姿を連想しがちですが、この肖像画が描かれた1873年はトルストイ45歳の年です。4年前には『戦争と平和』の連載が完了し大ヒット。そしてこの年には『アンナ・カレーニナ』を書いていました。つまり、作家としてバリバリの時期です。その時の鋭い眼光がこの肖像画で描かれています。

そして興味深いことに、トルストイとクラムスコイの出会いは『アンナ・カレーニナ』の執筆にも影響を与えることになりました。

ドストエフスキーの肖像画ドストエフスキー作品

ペローフ『ドストエフスキーの肖像画』制作のエピソードをご紹介!画家の見た作家の素顔とは

私は2019年夏より『親鸞とドストエフスキー』をテーマにこれまで学んできましたが、学べば学ぶほど愛着が湧き、ついには額縁に入った肖像画を購入し部屋に飾るほどになってしまいました。

そしてこのドストエフスキーを描いた画家こそ今回紹介するペローフになります。

この記事ではこの肖像画が生まれたエピソードを見ていきます。子供を愛したドストエフスキーならではの姿を知ることになりました。

ボスニア紛争とルワンダ虐殺の悲劇に学ぶ~冷戦後の国際紛争

ルワンダの虐殺を学ぶのにおすすめの参考書7作品~目を背けたくなる地獄がそこにあった…

ルワンダの虐殺はあまりに衝撃的です。トラウマになってもおかしくないほどの読書になるかもしれません。それほどの地獄です。人間はここまで残酷になれるのかと恐れおののくしかありません。

私はボスニア紛争をきっかけにルワンダの虐殺をこうして学ぶことになりましたが、これらの本を読んでいてボスニア、ルワンダ、ソマリアのそれぞれが特異で異常なのではなく、人間の本質としてそういうことが起こり得る、誰しもがやってしまいかねないものを持っているのだということを改めて思い知らされることになりました。

目を背けたくなるような歴史ではありますが、ここを通らなければ、歴史はまた形を変えて繰り返してしまうことでしょう。そうならないためにも私たちは悲惨な人間の歴史を学ばなければならないのではないでしょうか。

ドストエフスキードストエフスキー作品

ドストエフスキーおすすめ作品4選!ロシア文学の面白さが詰まった珠玉の名作をご紹介!

あのトルストイと並ぶロシアの文豪、ドストエフスキー。

ドストエフスキーといえば『罪と罰』や『カラマーゾフの兄弟』など文学界では知らぬ者のない名作を残した圧倒的巨人です。彼は人間心理の深層をえぐり出し、重厚で混沌とした世界を私達の前に開いてみせます。そして彼の独特な語り口とあくの強い個性的な人物達が織りなす物語には何とも言えない黒魔術的な魅力があります。私もその黒魔術に魅せられた一人です。

この記事ではそんなドストエフスキーのおすすめ作品や参考書を紹介していきます。またどの翻訳がおすすめか、何から読み始めるべきかなどのお役立ち情報もお話ししていきます。