2022年3月

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

W・シャブウォフスキ『踊る熊たち 冷戦後の体制転換にもがく人々』~旧共産圏の人々に突然訪れた自由。自由は重荷なのか。

この本は旧共産圏のブルガリアに伝わる「踊る熊」をテーマに、旧共産圏に生きる人々の生活に迫る作品です。

この本もすごいです・・・!

ロシアに関する本は山ほどあれど、旧共産圏のその後に関する本というのはそもそもかなり貴重です。

しかも、その地に伝わってきた「熊の踊り」というのがまさに旧共産圏から「自由」への移行劇を絶妙に象徴しています。

「踊る熊」を通して私たち自身のあり方も問われる衝撃の作品です。これは名著です。ぜひぜひおすすめしたい作品です。

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

A・スルタノヴァ『核実験地に住む―カザフスタン・セミパラチンスクの現在』~ドストエフスキーも滞在していた地がソ連の核実験場になっていた・・・

前回、前々回の記事でチェルノブイリ原発についてお話ししましたが、今回は原子力に関連してソ連のカザフスタン核実験場について書かれた本をご紹介します。

この本はカザフスタン出身の著者アケルケ・スルタノヴァさんによって書かれた作品です。

この本では旧共産圏のカザフスタンの核実験場、セミパラチンスク(現セメイ)で起きた悲劇について語られます。

かつてドストエフスキーも滞在していたこの地で起こった悲劇をこの本では知ることになります。

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

「戦争反対声明」~ロシア・ウクライナ危機へ思うこと

私は戦争に断固反対です。武力侵攻にも断固抗議します。

ですが、私は戦争における善悪の単純化を恐れます。

単純化は問題の解決にはなりえません。たとえ一時解決したかのように見えても必ずどちらかに禍根を残します。そしてそれが将来の争いの種になります。

だからこそ相手の歴史や文化を学び、それまで見えていた恐怖に打ち克たねばなりません。与えられた情報や自分で作り上げた恐怖のイメージで相手を見ている内はその実態が見えてきません。

一刻も早くこの悲劇が終わることを心から祈っています。

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

アレクシエービッチ『チェルノブイリの祈り 未来の物語』~原発事故の被害者の声を聴く世界的名著

著者はこの事故に関わるひとりひとりの声を丁寧に聴いていきます。歴史という大きなくくりにおいては失われてしまう個々の声。それをこの作品では聴くことができます。

あの当時、あそこで何が起こっていたのか、人々はそれに対し何を思い、何を語るのだろうか。

それを知れるのがこの本の最大の特徴です。

特に、この本の最初に出てくる、事故で亡くなった消防士の妻リュドミーラ・イグナチェンコの物語は何度読んでも凄まじいです・・・私はいつも涙が出そうになります。

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

アダム・ヒギンボタム『チェルノブイリ』~原発事故はなぜ起こったのか、ソ連の政治経済・官僚システムとの繋がりも知れる名著

この本は単にチェルノブイリ原発の事故そのものだけを語るのではなく、この事故が起きるそもそもの原因となったソ連の構造そのものについても多く言及しています。

これはものすごく興味深かったです。ソ連末期がどのような状態だったのかということもこの本で知ることができます。

ロシア・ウクライナ問題に揺れる今、原発の問題が強く注視されています。

日本も全く他人事ではない原発事故について大きな示唆を与えてくれる衝撃の一冊です。

マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ

(9)エンゲルス、兵役志願を利用しベルリン大学へ~ヘーゲル研究とバクーニン、キルケゴールとの出会い

エンゲルスはベルリンで兵役を務めながらもこっそり抜け出して、学問の中心ベルリン大学へと通っていました。

そして彼がそこまでして通い詰めたベルリン大学というのが、当時、ものすごい場所だったのです。

なんと、そこにはあのキルケゴールやバクーニンがいて、エンゲルスは彼らと机を並べてヘーゲルを学んでいたというのです。しかもこの数年前にはこの大学でマルクスとツルゲーネフも学んでいます。恐るべし、ベルリン大学。

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

E・H・カー『歴史とは何か』要約と感想~歴史はいかにして紡がれるのかを問う名著

E・H・カーの『歴史とは何か』は私たちが当たり前のように受け取っている「歴史」というものについて新鮮な見方を与えてくれます。

歴史を学ぶことは「今現在を生きる私たちそのものを知ることである」ということを教えてくれる貴重な一冊です。この本が名著として受け継がれているにはやはりそれだけの理由があります。ロシア・ウクライナ情勢に揺れている今だからこそ読みたい名著中の名著です。

マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ

(8)シュトラウスからヘーゲルへ~なぜヘーゲル思想は青年たちの心を捉えたのか

無神論というと、何も信じていないかのように思われがちですが実は違うパターンもあります。

この記事で語られるように、無神論とは何も信じないことではなく、従来のキリスト教の信仰を否定し、新たな信条に身を捧げることでもありました。

当時、キリスト教の世界観を否定し、ヘーゲル思想に傾倒していった若者はたくさんいました。そのひとりがエンゲルスであり、マルクスでもありました。

ロシアの歴史・文化とドストエフスキー

栗生沢猛夫『タタールのくびき ロシア史におけるモンゴル支配の研究』~ロシアとアジアのつながりを知るのにおすすめ参考書!

「タタール人支配をロシア人はどのように受け止めてきたのか」、これは今の問題にも繋がります。

この本を読んだことで「歴史はどのように紡がれていくのか」ということを考えさせられました。歴史は「今生きている人によって作られるものだ」ということをつくづく感じました。歴史は過去ではなく、まさに今の問題なのだと。「歴史観」の問題なのだと・・・

ロシアの歴史・文化とドストエフスキー

O・ファイジズ『クリミア戦争』~ロシア・ウクライナの関係と、近代西欧情勢を学ぶのにおすすめの名著!

この作品にも本当に驚かされました。

クリミア戦争ってこんな戦争だったのかと呆然としてしまいました。

世界史の教科書でも取り上げられるこの戦争ですが、どれだけ入り組んだ背景があったか、そしてこの戦争がもたらした影響がいかに現代まで続いているかを思い知らされます。

ウクライナ情勢で揺れる世界において、この戦争を学ぶことは非常に大きな意味があると思います。

ぜひおすすめしたい作品です。