キリスト教

ドストエフスキーとフロイトの父親殺し

ルイス・ブレーガー『フロイト 視野の暗点』~フロイトの虚構と神話を指摘する、中立的なおすすめ伝記

この伝記の著者ルイス・ブレーガーは現代精神分析研究所の初代所長を務めた人物です。

つまり、この本はフロイト側の精神分析家による伝記になります。ですが、この伝記は非常に公正です。フロイトの間違っているところや欠点もこの本ではかなり詳しく指摘され、英雄視したり神話化するような伝記ではありません。

その上でフロイトがいかにして世に出たのか、彼の特徴はどこにあったのかということを解説していく伝記です。これは非常にありがたいものでした。

マルクスは宗教的な現象か

マルクスとフロイトの共通点とは~フロイトのドストエフスキーにおける「父親殺し」についても一言

マルクスとフロイトは人間の過去・現在・未来の物語を提供しました。

その救済的な物語があったからこそ多くの人々を惹きつけたとトニー・ジャットは語ります。

そして彼らの語る物語が本当に正しいか正しくないかは問題ではありません。

人を惹きつける魅力的な物語であるかどうかがマルクス・フロイト理論が影響を持つ大きなポイントと言えるのではないでしょうか。

マルクスは宗教的な現象か

歴史家トニー・ジャットによるマルクス主義への見解~「伝統的なキリスト教の終末論との共通点」とは

世界的な歴史家トニー・ジャットは「マルクス主義は世俗的宗教である」という決定的な言葉を述べます。

その理由は記事内で述べる通りですが、マルクス主義は宗教的な要素がふんだんに取り込まれており、それがあるからこそマルクス主義が多くの人に信じられたという見解が語られます。

マルクスは宗教的な現象か

歴史家E・H・カーによるマルクス主義への見解~なぜマルクス主義は人を惹きつけるのか

E・H・カーはこの伝記においてマルクスの『資本論』における問題点を指摘していきます。そして有名な「剰余価値説」や「労働価値」などの矛盾点を取り上げ、そうした問題点がありながらもなぜマルクスはここまで多くの人に信じられているかを分析していきます。

経済学や思想、イデオロギー面だけではなく、世界全体との関わりという視点からアプローチするのは、歴史家たるE・H・カーならではの一歩引いた視点と言うことができるかもしれません。

マルクスは宗教的な現象か

マルクス主義者ではない私がなぜマルクスを学ぶのか~宗教的現象としてのマルクスを考える

マルクスは宗教を批判しました。

宗教を批判するマルクスの言葉に1人の宗教者として私は何と答えるのか。

これは私にとって大きな課題です。

私はマルクス主義者ではありません。

ですが、 世界中の人をこれだけ動かす魔力がマルクスにはあった。それは事実だと思います。 ではその魔力の源泉は何なのか。 なぜマルクス思想はこんなにも多くの人を惹きつけたのか。 そもそもマルクスとは何者なのか、どんな時代背景の下彼は生きていたのか。 そうしたことを学ぶことは宗教をもっと知ること、いや、人間そのものを知る大きな手掛かりになると私は思います。

クラシック・西洋美術から見るヨーロッパ

『レーピンとロシア近代画家の煌めき』~ドストエフスキーも生きたロシア19世紀絵画のおすすめガイドブック

この本は19世紀ロシアを代表する画家レーピンを中心に、この時代のロシア絵画界の全体像を眺めることができるおすすめのガイドブックです。

そしてこの本のありがたいのは当時のロシアの時代背景も知れる点です。これらの画家がどのような社会に生き、何を求めて絵を描き続けたのか、闘い続けたのかを知ることができます。とてもおすすめな1冊です!

光の画家フェルメールと科学革命

『もっと知りたいフェルメール 生涯と作品』~17世紀オランダ絵画の時代背景も学べるおすすめ入門書!

この本ではフェルメールが活躍した17世紀オランダの時代背景も詳しく知ることができます。

この時代のオランダ社会は、当時芸術界の中心だったローマとはまったく異なる様相を呈していました。

その社会事情の違いがオランダ絵画に独特な発展をもたらすことになります。その流れがとても面白く、一気にこの本を読み込んでしまいました。

クラシック・西洋美術から見るヨーロッパ

『ブリューゲル ネーデルラント絵画の変革者たち』~ブリューゲルの風景画の特徴と北方ルネッサンスの歴史とは

この本は北方ルネッサンス、ネーデルラント絵画の大家ブリューゲルの作品とその特徴を知るための格好の入門書となっています。

この本の中でも特に印象に残っているのは「ネーデルラント絵画の特徴」について書かれた箇所です。その部分を参考に、イタリアの絵画とは全く異なる画風の源泉はどこにあるのかをこの記事では紹介していきます。

クラシック・西洋美術から見るヨーロッパ

『もっと知りたいエル・グレコ 生涯と作品』~トレドの偉大な画家とギリシア正教のイコン画との意外なつながりとは

エル・グレコといえばスペインのトレドで活躍した、独特のタッチが特徴の画家です。

彼はギリシア正教のイコン画の影響を強く受けていた画家でした。

西欧美術の本場イタリアの伝統とは異なる土壌で修行をしたエル・グレコだからこそこうした独特な絵を生み出すことができたというのは非常に興味深かったです。