バラモン教

仏教の誕生インドにおける仏教

佐々木閑『仏教の誕生』~初学者にもおすすめの仏教入門書!

今作『仏教の誕生』は仏教入門にぜひぜひおすすめしたい参考書です。仏教に興味があるけど何を読んだらよいですか?と聞かれたら最近はこの本を私はおすすめしています。それほどわかりやすく、読みやすいです。しかも仏教が私達の生活とどのように関わってくるかということも考えていけるので非常に実践的です。単なる知識で終わるのではなく、生きる智慧としての仏教を本書で知ることができます。

これまで当ブログでは様々な仏教書を紹介してきましたが、入門書としてはこの本がピカイチです。ぜひ私もおすすめしたいです。

ブッダチャリタインドにおける仏教

『完訳 ブッダチャリタ』~アシュヴァゴーシャ(馬鳴)による『仏所行讃』としても知られる仏伝の大元!ブッダの生涯を叙事詩化!

今作『ブッダチャリタ』は1~2世紀頃にインドで活躍した仏教詩人アシュヴァゴーサ(馬鳴)による仏伝です。漢訳では曇無讖によって『仏所行讃』として翻訳されています。空海や最澄、鎌倉仏教の開祖たちもこの仏伝を読んでブッダの生涯を学んでいたのではないでしょうか。

現在語られるブッダの生涯の大元となったアシュヴァゴーシャの『ブッダチャリタ』。物語としても非常に面白い作品でした。

ジャイナ教インド思想と文化、歴史

渡辺研二『ジャイナ教 非所有・非暴力・非殺生―その教義と実生活』~仏教との比較も興味深いおすすめ解説書!

この本ではジャイナ教の基本的な教義や成立の背景などをわかりやすく知ることができます。

特にこの本ではジャイナ教が生まれてくる背景としての六師外道についても詳しく知れるのがありがたかったです。

六師外道とは仏教側から見たブッダと同時代のインドの思想家のことです。この中の一人がジャイナ教の開祖マハーヴィーラ(仏教ではニガンタ・ナーマプッタと呼びます)になります。

ブッダの生きた時代を学ぶ上でも六師外道の思想家は非常に重要な存在です。やはり仏教とジャイナ教は同じ時代に同じ文化的背景の中で生まれてきたとあってその成立過程も共通するものが多々あります。

こうした時代背景と一緒にジャイナ教とは何かを知れるこの本はとてもおすすめです。

インド仏教史インドにおける仏教

平川彰『インド仏教史』~仏教学の不滅の古典!仏教の歴史や教義が網羅された名著!

この本が出版されたのは1974年ですが、今なお名著中の名著として高く評価されている仏教書です。2011年には新版が出版され、現在においても仏教を深く学びたい方必読の参考書となっています。

一つの著作でここまで教えを網羅し、ひと流れの仏教史として書き上げられた本書は驚異としか言いようがありません。

これはものすごい本です。初学者に気軽におすすめできる本ではありませんが、仏教をより深く学びたいという方にはぜひおすすめしたい一冊です。

カーマスートラインド思想と文化、歴史

『カーマ・スートラ』~古代インドの性愛の法典。カジュラーホー寺院やタントリズム、密教に深い関係も

『カーマ・スートラ』を実際に読んで感じたのは、いわゆる現代の恋愛指南とそっくりということでした。

「どんな男がモテるのか」、「男を惹きつける方法」などなど、ものすごく身近な話題が出てくることに驚きました。「自分に言い寄ってくる嫌いな男を遠ざける方法」や「精力のない男を元気にする方法」が説かれた箇所では思わず笑ってしまいました。当時の男女間の様子が目に浮かんでくるようです。まさに当時の文化、生活を知れる第一級の資料であることに間違いありません。

『カーマ・スートラ』は単なる好色文献というわけではありません。どぎつい性的表現ばかりと誤解されていますが、それもあくまで男女間の生活の一部分です。男女の出会い、そして共に歩む人生、その全体を含んでの『カーマ・スートラ』です。この法典を読んで男女間における生活規範がびっしり説かれていることに私も驚きました。

実理論インド思想と文化、歴史

カウティリヤ『実利論』~古代インドのマキャヴェリズム!『君主論』に比すべき徹底的な帝王学とは!

マキャヴェリの『君主論』ではかなりえげつない権謀術数が説かれますが、この『実利論』もかなりのどぎつさです。

本書解説でも「本書の作者は、自国の治安を守り、国力を増強して、他者の領土を獲得するために、君主の採用すべきありとあらゆる権謀術数を説く。なかんずく、本書の随所で展開される諜報活動の実例は、最も注目すべきものの一つであろう。インドの古典において諜報活動は非常に重視され、後代の文学作品においても、スパイを適切に活用できぬ王は非難されている。」と述べられるように、スパイの活用法については特に念入りに説かれます。

この本を読んでいると王族で生まれることが全く羨ましくありません。どんなに贅沢ができたとしても私は謹んでその権利をお返ししたいと思います。ブッダももしかしたらそういう気持ちだったのかもしれません。

マヌ法典インド思想と文化、歴史

『マヌ法典』~インド・ヒンドゥー教社会の礎。世界創造から人間の理法まで壮大な規模で説かれた聖典

『マヌ法典』は単なる法律書のようなものではありません。『マヌ法典』を読み始めてまず驚くのは、いきなりこの聖典が天地創造の話から始まるということです。ブラフマンという創造主を中心にした壮大な宇宙論、世界観がまず語られ、そこから人はいかに生きるべきか、何を規範とし生活の掟としていくのかが語られていきます。

『マヌ法典』を読んでいるとまさに生活のあらゆる場面にヒンドゥー教の実践や思想が組み込まれていることを強く感じます。さらにそれだけでなく誕生から死までの通過儀礼においても細かな規定が定められていることもわかりました。まさに生まれてから死ぬまで、いや死後の世界までヒンドゥー教の世界観が貫かれているということを強く感じました。

『マヌ法典』は仏教を学ぶ上でも非常に意味のある聖典です。

マヌ法典インド思想と文化、歴史

渡瀬信之『マヌ法典 ヒンドゥー教世界の原型』~古代インドから続くインド人の世界観、生活規範を学ぶのにおすすめ

私達日本人がインドの仏教を学ぼうとすると、どうしても仏教の側のみからインド世界を見てしまいがちです。ですがインドにおいて仏教はどちらかといえばアウトサイダー側の存在でした。その主流はやはりヒンドゥー教世界になります。

しかも仏教は在俗信者の日常生活にはあまり介入しないという方針を取りました。つまり、仏教徒の日常生活や通過儀礼は相変わらずヒンドゥー教世界の枠組みの中にあったとされています。

そんなインド仏教徒とも共存してきたヒンドゥー教世界の生活規範や世界観を知れる本書は非常に貴重です。インド仏教について考える上でもとても大きな意味がある作品だと私は思います。

ヒンドゥー教と叙事詩インド思想と文化、歴史

中村元選集第30巻『ヒンドゥー教と叙事詩』~仏教や日本とのつながりも知れる名著!インド思想の奥深さを体感

中村元先生は宗教を単に思想や理論として見るのではなく、当時の社会状況と合わせて考察していきます。インドにおける宗教を知るには、インドそのものも視野に入れて考えていかなければなりません。

なぜインドではヒンドゥー教が栄え、仏教は衰退していってしまったのか。そのことをこの本では見ていくことができます。そこには単に思想面だけではなく、もっと大きな社会的要因が絡んでくるのでありました。

また、この本では書名にありますようにインド二大叙事詩『マハーバーラタ』と『ラーマーヤナ』についても詳しく見ていくことができます。仏教学者中村元先生ならではの視点で説かれるインド神話の講義を聴けるのは非常に興味深いものがありました。

インド神話入門インド思想と文化、歴史

長谷川明『インド神話入門』~ビジュアルで学べるヒンドゥー教の神々!入門書にもおすすめ!

この本ではそんなインドの神々をたくさんの図像とともに学ぶことができます。神々の特徴と見分け方を実際にその姿を見ながら学べるのは非常にわかりやすくてありがたいです。

異国人である私たちにはなかなか一見するだけでは区別がつきにくいインドの神々ではありますが、見分け方にはちゃんとポイントがあります。その神ごとに特有の姿であったり持ち物などが必ずあります。見分け方がわかればよりインドの神々への親近感が湧いてきます。

これまで本の文章を中心にインドを学んできましたが、こうして実際に神々の姿をじっくり見ていくというのはとても新鮮で楽しかったです。最近ではことあるごとにこの本を手に取り、「あぁ、これがシヴァの特徴だったな」とそれぞれの神々の特徴を復習しています。これは便利な一冊です。