フランス

フランス文学と歴史・文化

ヴォルテール『寛容論』~狂信、宗教対立に対するヴォルテールの告発とは!今こそ読みたい名著!

この本は「カラス事件」をきっかけに書かれ、当時の狂信に対するヴォルテールの激しい反発が込められています。

しかし、全体を読んでみると厳しい言葉や攻撃的な言葉が意外と少ないことに気づきます。彼は一線を越えないのです。この辺のバランス感覚の絶妙さがヴォルテールのヴォルテールたる所以であるように感じました。

彼はこの本で宗教的不寛容の実例をいくつも紹介し、その弊害を説きます。

『寛容論』は現代にも通じる名著です。寛容さが失われつつある現代こそ、この本は非常に大きな意味を持つのではないでしょうか。ぜひおすすめしたい1冊です。

フランス文学と歴史・文化

ヴォルテール『カンディード』あらすじと感想~最善説への反論、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』とのつながりも

『カンディード』は18世紀中頃の作品ではありますが、全く古さを感じない作品です。物語もドラマチックでストーリーにぐいぐい引き込まれます。とても面白い作品でした。

そして『カラマーゾフの兄弟』をとのつながりを感じながら読むとこれまた味わいが増してきます。ドストエフスキーファンの方にもぜひおすすめしたい1冊です。

フランス文学と歴史・文化

保苅瑞穂『ヴォルテールの世紀 精神の自由の世紀』~ヴォルテールの生涯をわかりやすく解説したおすすめ伝記!

この作品は450ページを超える大作です。ですが一気に読めてしまうほどの面白さがこの本にはあります。著者の劇的な語り口によって、まるで小説を読んでいるかのような気持ちになります。

そして何より、ヴォルテールという人物の魅力!これに尽きます。

『哲学書簡』や『寛容論』、『カンディード』などで有名なヴォルテールですが、名前や作品は有名ではあってもこの人物がどんな時代に生きて、どんな生涯を送ったかというとほとんど知られていないというのが実際のところではないでしょうか。かく言う私も彼についてはほとんど知らなかったというのが正直なところでした。

ですがこの本を読んで驚きました。ヴォルテールという人物がどれほど革新的で、後の世にどれだけ大きな影響を与えたのかというのかが明らかになります。

ニーチェとドストエフスキー

ヒュー・マクドナルド『巡り逢う才能ー音楽家たちの1853年』~ワーグナーやブラームスら天才音楽家が交差する奇跡の1年を描写

私はこれまでドストエフスキーを学ぶ過程でヨーロッパの歴史や文化を「文学の観点」から見てきました。

ですがこの本では「音楽という観点」から当時のヨーロッパを知ることができました。

よくよく考えてみれば本来、文学も音楽も切り離されるものではなく、互いに関連し合って存在するものです。一九世紀半ばのヨーロッパがどのような世界だったのかを音楽という側面から眺めることができたのは非常に大きな体験でした。

音楽に興味がある人だけでなく、文学やヨーロッパそのものに興味がある方にもぜひおすすめしたい作品です。

レ・ミゼラブル『レ・ミゼラブル』をもっと楽しむために

『レ・ミゼラブル』解説記事一覧~レミゼをもっと知りたい方へおすすめ!

今回の記事ではこれまで紹介してきた「レミゼをもっと楽しむためのお役立ち記事」をまとめていきます。

レミゼは原作よりも、映画やミュージカルで楽しむ方がほとんどだと思います。

私も原作からスタートしたものの、やはり何度も観るのはミュージカル映画です。

映画やミュージカルは長大な原作をぎゅぎゅっとまとめたものになるので、泣く泣くカットされた部分も多々あります。ですがそうした部分にこそそれぞれのキャラクターの背景や個性がより深く描かれています。

そうした背景を知ることでより映画やミュージカルを楽しむことができるのではないでしょうか。

『レ・ミゼラブル』をもっと楽しむために

『レ・ミゼラブル』おすすめ解説本一覧~レミゼをもっと楽しみたい方へ

ドストエフスキーが愛した小説『レ・ミゼラブル』とはいかなる作品だったのだろうか。

そんな興味から読み始めたレミゼでしたが、今ではすっかりドはまりしてしまいました。

特にミュージカル映画の素晴らしさに撃ち抜かれてしまい、サントラを聴く毎日です。曲がまた素晴らしいんですよね・・・。

原作もミュージカルもとにかく面白い!そして知れば知るほどレミゼを好きになっていく。それを感じた日々でした。上で紹介した本はどれもレミゼファンにおすすめしたい素晴らしい参考書です。

レミゼファンの皆様のお役に少しでも立てたなら嬉しく思います。

『レ・ミゼラブル』をもっと楽しむために

ユゴーを批判したゾラが世紀の傑作『レ・ミゼラブル』をどう見るだろうか考えてみた

ユゴーの詩人としての天賦の才は人々を陶酔させる。しかしユゴーはあまりに理想を語りすぎ、現実と乖離していると批判したゾラ。

今回の記事ではそんなユゴーの偉大なる作品『レ・ミゼラブル』ならばゾラはどんなことを言うのだろうかということを考えていきたいと思います。

ちなみに、私はゾラもユゴーも大好きです。大好きだからこそ正反対の二人についてここでじっくり考えてみようとこの記事を書いたのでした。

『レ・ミゼラブル』をもっと楽しむために

ゾラのユゴー批判~ユゴーの理想主義を断固否定するゾラの文学論とは

まずはじめに言わせて頂きますが、私はユゴーが大好きです。そして同時に、ゾラも大好きです。

しかし、前回の記事でもお話ししましたように、この二人は真逆の文学観を持っています。

ユゴーの『レ・ミゼラブル』を読んでいると、「あぁ、ここはゾラだったら何と言うのかな」とふと思ってしまう時もあります。ユゴーの作品はとにかくドラマチックで面白いです。しかしその面白さ故に、ゾラがツッコミを入れてきそうな気がするのです。これはどういうことなのか。それはこれから読んでいくゾラの言葉を聴けばきっと納得して頂けると思います。

ユゴーとゾラはどちらもフランスを代表する作家です。この二人の特徴を知る上でもとてもわかりやすい評論がありますので、少し長くなりますがじっくりゾラの言葉を聴いていきましょう。

『レ・ミゼラブル』をもっと楽しむために

『〈ゾラ・セレクション〉第8巻 文学論集1865-1896』ゾラの文学観を知るならこの1冊!

この本は1865年から1896年にゾラによって書かれた文学論の中から編訳者が重要な13の論文を選び翻訳したものになります。

ゾラ(1840-1902)はフランスの偉大な作家でありますが、彼は同時にジャーナリストとして活躍していました。

特に作家としての駆け出しの頃はジャーナリストが本業と言ってもいいほどで、日々新聞にたくさんの記事を書いていました。

この本ではそんなゾラが文学について書いた論文を読むことができます。

そしてゾラの文学スタイル「自然主義文学」とは何かということがわかりやすく解説されているのがこの本の大きな特徴になります。

『レ・ミゼラブル』をもっと楽しむために

ユゴーの劇作品『リュイ・ブラース』あらすじと感想~スペインを舞台にしたユゴーらしさ溢れる演劇

ユゴーは詩人であり、劇作家でもありました。

ユゴーの最も有名な小説『レ・ミゼラブル』はそうした詩人、劇作家としての技能もふんだんに取り入れられた作品です。ユゴーは舞台化されやすいような演出を作品の中にすでに盛り込んでいたのです。どうすれば演劇的に盛り上がるか、そしてそれをどう小説に盛り込めば効果的か、そうした側面からもユゴーは作品制作をしていたのです。

そうしたことを知る上でもユゴーの劇作品に触れるのは非常に興味深い体験となりました。

後の記事でお話ししていきますがこの作品を題材にゾラがものすごい主張を展開していきます。これはユゴーファンにとってもゾラファンにとっても必見なものとなっています。私もその論を読みかなり衝撃を受けました。