ドイツ

ニーチェとドストエフスキー

ニーチェは読む人によって姿を変える?ニーチェとはどんな存在なのか

ニーチェに関してはそれこそ無数の見解があることでしょう。それほど難解で多面的な顔を持つ存在です。

ニーチェと言えば難解過ぎてなかなか触れる機会もない存在だと思います。ですがそれにも関わらず様々な場所で顔を出してくる存在です。「なんかよくわからないがとにかくすごい人」というのが世の大体のイメージなのではないでしょうか。私もその一人でした。正直、ニーチェがいかなる存在かよくわからないのです。

今回の記事ではこれまで紹介してきた参考書の中から「ニーチェとは何なのか」ということについて書かれた4つの箇所を見ていきたいと思います。

ニーチェとドストエフスキー

マッキンタイアー『エリーザベト・ニーチェ ニーチェをナチに売り渡した女』~ニーチェには恐るべき妹がいた!前代未聞の衝撃!

この本は凄まじいです。衝撃的です。

「嘘でしょ!?」と思わずにはいられない驚くべき事実の連発です。

世界がいかにニーチェを受容していったのかを調べようと思い手に取ったこの本でしたが、想像をはるかに超える面白さでした。

ニーチェ自身も規格外の存在でしたがその妹もとてつもない人物でした。彼女は夫とともに南米パラグアイの奥地に純粋アーリア人の村を作り、そこの支配者として君臨し、村人たちを騙し続けていました。しかもニーチェ発狂後は彼の著作や手紙を改竄し、自分の都合のいいように「偉大な哲学者ニーチェ」を作り上げ、最後にはナチスに加担することになります。

この本はそんな恐るべきニーチェの妹の生涯を通してニーチェの人物像もあぶり出していくという作品となっています。

ニーチェとドストエフスキー

R.ザフランスキー『ニーチェ その思考の伝記』~ニーチェの思想はいかにして生まれたのかを知るのにおすすめの参考書

この本の特徴は何と言っても、単なる伝記ではなく、「思考の伝記」であるという点にあります。ニーチェの生涯を辿りながらその思考のプロセスをこの本では見ていくことになります。

しかも難解な哲学者の代表とも言えるニーチェの思想を小難しい言葉をなるべく使わずに解説してくれる点もありがたいです。

この本はわかりやすくも、その本質をしっかりと押さえた参考書になっています。難解なものをわかりやすい言葉で説明するというのはある意味危険を伴います。簡単に表現することで本来のものからかけ離れてしまう危険があるのです。しかしこの本ではそうしたことにならないよう、著者は細心の注意を払っていることがうかがわれます。

ニーチェとドストエフスキー

渡辺二郎・西尾幹二編『ニーチェ物語 その深淵と多面的世界』~様々な視点からニーチェを知れる画期的な参考書

「ニーチェとは何者なのか。」

これは永遠のテーマなのかもしれません。

読まれる時代、読む者それぞれの違いによって違った姿で現れてくるニーチェ。

この本ではそんな「多面体」というべきニーチェについて考えていく参考書となっています。

ニーチェの生涯や思想面についても簡潔にまとめられていますので、困った時の参考書としても非常に便利な1冊となっています。

ニーチェとドストエフスキー

W.シューバルト『ドストエフスキーとニーチェ その生の象徴するもの』~2人のキリスト教理解から読み解くおすすめ参考書!

著者は絶対的な真理を追い求める両者を神との関係性から見ていきます。

さらにこの本では『罪と罰』の主人公ラスコーリニコフや『カラマーゾフの兄弟』のイワンとニーチェの類似についても語っていきます。理性を突き詰めたドストエフスキーの典型的な知識人たちの破滅とニーチェの発狂を重ねて見ていきます。これもものすごく興味深かったです。

この本では興味深い箇所が山ほどあり、正直、本そのものを全部引用して紹介したいくらいの気持ちです。ですがそれをしてしまうと大変なことになってしまうのでそれはあきらめます(笑)

ただ、私自身にとってもこの本は非常に衝撃的な作品でした。

この本はドストエフスキー、ニーチェの両者を考える上で非常に有益な参考書です。

フリードリヒ・ニーチェニーチェとドストエフスキー

ニーチェとドストエフスキーの比較~それぞれの思想の特徴とはー今後のニーチェ記事について一言

今回の記事からドイツの哲学者ニーチェについて考えていきたいと思います。ニーチェと言えば難解な思想や「神は死んだ」という言葉で有名な哲学者ですよね。

正直、私は当ブログでニーチェを紹介することをずっとためらっていました。

というのも、ニーチェは読む者に良くも悪くも強烈な影響を与える存在だからです。

ニーチェの言葉には悪魔的な強さがあります。その感染力たるや凄まじいものがあります。

しかし、最近ニーチェ関連の参考書を読んだり、ニーチェ作品を改めて読み返してみると、これまでとは違ったニーチェが私の前に現れてきました。ニーチェを学ぶことはドストエフスキーの理解をさらに深め、さらに言えば浄土真宗の開祖親鸞聖人を学ぶ上でも非常に有益な視点を与えてくれることに気づいたのです。

スターリンとヒトラーの虐殺・ホロコースト

ソ連とナチスの虐殺の歴史を学ぶために~「独ソ戦・ホロコーストに学ぶ」記事一覧

『ブラッドランド ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実』という作品は本当に衝撃的な一冊でした。

自分がいかに何も知らなかったかということを思い知らされました。私たちが習う世界の歴史では見えない事実がこの本にはあります。そしてそうした見えない事実こそ、私たちが真に学ぶべき事柄であるように思えます。

混乱を極める現代において、暗い歴史を学ぶことはたしかにつらいことかもしれません。ですが、だからこそこうした歴史をくり返さないためにも苦しくとも学ぶ意味があるのではないかと思います。

ぜひ、これらの記事を読んで頂けたら嬉しく思います。

独ソ戦~ソ連とナチスの絶滅戦争

独ソ戦のおすすめ参考書16冊一覧~今だからこそ学びたい独ソ戦

この記事では独ソ戦を学ぶのにおすすめな参考書を紹介していきます。

独ソ戦は戦争の本質をこれ以上ないほど私たちの目の前に突き付けます。

なぜ戦争は起きたのか。戦争は人間をどう変えてしまうのか。虐殺はなぜ起こるのかということを学ぶのに独ソ戦は驚くべき示唆を与えてくれます。私自身、独ソ戦を学び非常に驚かされましたし、戦争に対する恐怖を感じました。これまで感じていた恐怖とはまた違った恐怖です。ドラマや映画、ドキュメンタリーで見た「被害者的な恐怖」ではなく、「戦争そのものへの恐怖」です。

それぞれの記事でより詳しく本の紹介をしていますので、興味のある方はぜひ記事の方もご参照ください。

愛すべき遍歴の騎士ドン・キホーテ

(3)敵を打ち負かし、理想の実現を図るため拷問は行われる~犠牲者を人と見なさない心理とは

「私は不本意だがこれからお前を拷問にかける。お前が悪いことをしたから悪いのだぞ?神はそれを知っておられる。神は絶対に正しい。その神より委託を受けている私たちも正しい。お前は拷問によって苦しむかもしれんがそれは自業自得だ。だがそれによりお前は罪を償うことができるのだ。むしろ我々に感謝してもらいたい。」

異端審問官であれどさすがに自分の手を汚すのは精神的にダメージがあります。そこで自分たちの心が痛まないようにこうして神という絶対的な権威を利用していたのでした。これはスターリンやヒトラーによる虐殺の時にも見られたものです。絶対的な権威による免罪があるからこそ、淡々と暴力を振るうことができたのでした。

スターリンとヒトラーの虐殺・ホロコースト

(6)まとめ~なぜイワンは戦ったのか。戦争という極限状態における兵士の内面を学ぶ意味

この本に書かれた内容は本当にショッキングです。目を反らしたくなるような蛮行が語られます。

ですがそんな地獄のような世界を生きたイワンたちも涙を流していました。

イワンたちの犯した悪行は許されるものではありません。しかしそれをただ弾劾するだけでは何も解決しません。

なぜそのようなことが起こったのか、そしてイワンたちは何に苦しみ、涙を流したのか。このことを突き詰めていくことこそ、同じ歴史をくり返さないためにも重要であると私は感じました。