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『メンデルスゾーン家の人々―三代のユダヤ人』あらすじと感想~奇跡の一冊!ドイツの天才作曲家メンデルスゾーン一族の驚異の物語!

目次

奇跡の一冊!ドイツの天才作曲家メンデルスゾーン一族の驚異の物語!『メンデルスゾーン家の人々―三代のユダヤ人』概要と感想

メンデルスゾーン(1809-1847)Wikipediaより

今回ご紹介するのは東京創元社より1985年に発行されたハーバード・クッファーバーグ著、横溝亮一訳『メンデルスゾーン家の人々―三代のユダヤ人』です。

早速この本について見ていきましょう。

ドイツのソクラテスと呼ばれ、ユダヤ人の開放に貢献した哲学者モーゼス、天与の商才を武器に巨富を築いた銀行家アブラハム、数々の絢爛たる名曲を残して早世した音楽家フェリックス、そして彼らの妻や兄弟姉妹が織りなすユダヤ人一家の歓びと哀しみの伝記

東京創元社、ハーバード・クッファーバーグ、横溝亮一訳『メンデルスゾーン家の人々―三代のユダヤ人』 帯より

前々回の記事でひのまどかさんのメンデルスゾーンの伝記をご紹介しました。

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私はこの伝記を読んですっかりメンデルスゾーンに惚れ込んでしまい、この人物についてもっともっと知りたいと思うようになりました。

そこで出会ったのが今回ご紹介する『メンデルスゾーン家の人々―三代のユダヤ人』でした。

この伝記もものすごかったです・・・!奇跡の一冊です!読んでいて驚くようなことが大量に出てきます。

メンデルスゾーン家がいかに傑出した一族だったのかがこの本では語られます。そしてその語り口も素晴らしく、ぐいぐい引き込まれていきます。とにかく面白いです。

音楽家フェリックス・メンデルスゾーンの偉業はもはや説明もいらないほど有名です。

ですが、祖父モーゼスがその彼を超えると言ってもいいほど偉大な人物だったこと。そして父アブラハムもあのロスチャイルドと一時期並ぶほどの大銀行を設立していたこと。

これは衝撃の事実でした。特に祖父モーゼスがあのカントが尊敬していたほどの大哲学者だったという事実には度肝を抜かれました。

音楽家フェリックス・メンデルスゾーンはそんな祖父、父、一族の様々な力が結びついて生まれた存在でした。これは読んでいてものすごく興味深かったです。

この本について著者は序で次のように述べています。少し長くなりますが、この本についてわかりやすくまとめられていますのでぜひ紹介したいと思います。

メンデルスゾーン一族は、文化界におけるロスチャイルド家だといってよい。高名な銀行家一族同様、ゲットーの中から身を起こしたこの一家は、十八、十九世紀を代表するドイツ系ユダヤ人家系のひとつとなり、その影響力と子孫を世界中に広げたのである。

ロスチャイルド家と同じように、この一族の理財に対する眼識は広く知られるところであり、彼らが設立したメンデルスゾーン銀行は、一九三九年に閉鎖されるまで、べルリンにおける主要民間銀行として有名であった。

しかし、メンデルスゾーン家の真の功績は、宗教、文学、そして音楽の分野に残されている。一族の中で最も有名なのは、いうまでもなく、フェリックス・メンデルスゾーンである。彼は当時のヨーロッパにおける傑出した作曲家であり、彼の作品は現代のコンサートにおいても欠くことの出来ないレパートリーとして演奏され続けている。けれども、このフェリックスは、彼よりずっと昔に、思想界に貢献したとして称えられた一族が世に送り出した子孫の一人に過ぎない。

一族の祖、モーゼス・メンデルスゾーンは、痩せて聡明な眼つきをしたせむしの少年だった。デッサウのゲットーを飛び出した彼は、それまでの五〇〇年間で、最も著名なユダヤ人となった。彼は哲学者、文学者として一世を風靡し、当時広く読まれた本を書いた。そして、何よりも重要なのは、彼が特別そのように計画したわけではなかったけれども、ユダヤ人の宗教的慣習を近代化し、今日、我我が知る改革派ユダヤ教成立への糸口をつくったことである。

モーゼス・メンデルスゾーンが、ユダヤ人たちを広く解放したことから、彼自身の子孫ですらその多くがユダヤ教を捨て、先祖伝来の習慣や人生観は残しながらも、キリスト教に改宗していった。モーゼスの息子たちは保守的な銀行家になったが、娘たちは自由な思想を抱いて、当時の女性解放運動の草分け的存在となった。中でもドロテーア・メンデルスゾーンは、その著作と恋愛事件でヨーロッパ中の話題となったのであった。

私は宗教改革者、または哲学者としてのモーゼス・メンデルスゾーン、音楽家としてのフェリックスの功績を矮小化しようとしたつもりはない。が、彼らの一族の人間としての姿に重きを置こうとしたのは事実である。メンデルスゾーン家の物語は、以下の各点から成り立っていると私は考える。つまり、モーゼスが貧しい身分から名声を築き上げるまでのドラマチックな出世、アブラハムが信仰に対する疑惑とためらいゆえに抱いた心の葛藤、へンリエッタのパリにおける家庭教師という変わった仕事と、それが招来した恐るべき結末、そしてフェリックスがプロ意識と家庭への愛着というニつの心理に対して見せた反応と、あわれな姉ファンニーから野心に燃えた弟子のジェニー・リンドまで、彼の人生にかかわりを持った女性との間の、きわめて独特な関係、といった事柄である。

また、私はこの優れた家系、ならびに彼らの偉業を我々の時代に引き込み、メンデルスゾーン家の子孫の運命だけでなく、一族の名声の運命をも探ってみたつもりである。


東京創元社、ハーバード・クッファーバーグ、横溝亮一訳『メンデルスゾーン家の人々―三代のユダヤ人』 P6-8

この伝記は1972年にアメリカのユダヤ系アメリカ人ハーバード・クッファーバーグによって書かれました。日本でメンデルスゾーンに関する書物が少ない中でこの本が果たした役割はとてつもないものがあります。ひのまどかさんの伝記もこの本から多くのものを得ているように感じられました。

この本はメンデルスゾーンのことをかなり詳しく知ることができる作品です。

ひのまどかさんの伝記は物語として最高に面白い作品です。そしてこの『メンデルスゾーン家の人々―三代のユダヤ人』 はそこからさらにメンデルスゾーンについて深めたい時に最高のお供になります。

これら2つの伝記を合わせて読む相乗効果は計り知れないものがあります。

ぜひぜひおすすめしたい1冊です。これほどの本にお目にかかれるのは滅多にあることではありません。ぜひ手に取って頂きたい1冊です。

次の記事ではフェリックス・メンデルスゾーンの祖父、モーゼスについて紹介したいと思います。

ぜひ、引き続きお付き合い頂けましたら幸いです。

以上、「『メンデルスゾーン家の人々―三代のユダヤ人』奇跡の一冊!ドイツの天才作曲家メンデルスゾーン一族の驚異の物語!」でした。

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メンデルスゾーン家の人々: 三代のユダヤ人

メンデルスゾーン家の人々: 三代のユダヤ人

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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