ひのまどか『メンデルスゾーン―「美しくも厳しき人生」』死後、ナチスに抹殺された天才ユダヤ人作曲家のおすすめ伝記

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死後、ナチスに抹殺された天才ユダヤ人作曲家のおすすめ伝記 ひのまどか『メンデルスゾーン―「美しくも厳しき人生」』

今回ご紹介するのは2009年にリブリオ出版から発行されたひのまどか著『メンデルスゾーン―「美しくも厳しき人生」』です。

この作品は「作曲家の物語シリーズ」のひとつで、このシリーズと出会ったのはチェコの偉大な作曲家スメタナの生涯を知るために手に取ったひのまどか著『スメタナ』がきっかけでした。 クラシック音楽には疎かった私ですがこの伝記があまりに面白く、「こんなに面白い伝記が読めるなら当時の時代背景を知るためにももっとこのシリーズを読んでみたい」と思い、こうして 「作曲家の物語シリーズ」 を手に取ることにしたのでありました。

この作曲の物語シリーズについては以下のように述べられています。

児童書では初めての音楽家による全巻現地取材

読みながら生の音楽に触れたくなる本。現地取材をした人でなければ書けない重みが伝わってくる。しばらくは、これを越える音楽家の伝記は出てこないのではなかろうか。最近の子ども向き伝記出版では出色である等々……子どもと大人が共有できる入門書として、各方面で最高の評価を得ています。

リブリオ出版、ひのまどか『ブラームス―「人はみな草のごとく」』 1999年第10刷版

一応は児童書としてこの本は書かれているそうですが、これは大人が読んでも感動する読み応え抜群の作品です。上の解説にもありますように「子どもと大人が共有できる入門書として、各方面で最高の評価を得ています」というのも納得です。

ほとんど知識のない人でも作曲家の人生や当時の時代背景を学べる素晴らしいシリーズとなっています。まさしく入門書として最高の作品がずらりと並んでいます。

このシリーズと出会ったきっかけは上にも述べましたようにスメタナでした。その伝記があまりに面白くこのシリーズをひたすら読んできたわけですが、正直、一番好きになったとも言える人物がこのメンデルスゾーンでした。

メンデルゾーンの生まれ育った環境、そしてその生き様。そのどれもが心に刺さるものでした。

もちろん私はスメタナも大好きです。スメタナとメンデルスゾーンが私の特に好きな作曲家です。

こうして考えてみると、ベートーヴェンやモーツァルト、ワーグナーなど破天荒で狂気すら感じられる天才よりも、天才でありながらも真面目でこつこつ仕事を続けるスメタナやメンデルゾーンのようなタイプが私の好みであることをこのシリーズからも感じさせられました(笑)

もちろん、偉大なる天才の狂気も、芸術作品として受け止め鑑賞するには最高です。私も大好きです。ですが一人の人間として憧れだったり尊敬、好意の念を持てるかというとまた違ってきますよね。

そういう意味でスメタナとメンデルゾーンは私にとって尊敬する偉人となったのでありました。

メンデルスゾーン(1809-1847)Wikipediaより

メンデルスゾーンはドイツ、ハンブルクの大銀行家の息子として生れました。その後ナポレオンの進軍により一家はベルリンへ拠点を移すことになります。メンデルスゾーン家はここでも有数の銀行家として繁栄することになりますが、ユダヤ人であったことから差別や迫害を受けることにもなりました。

メンデルスゾーンで有名なのは、あのシェイクスピアの『真夏の夜の夢』を題材にして作られた『真夏の夜の夢』です。その中でも以下の曲はものすごく有名です。

結婚式といえばこの曲ですが、まさかこの曲を作ったのがメンデルスゾーンだったとは!これには驚きました。

そして下の動画も聴き惚れてしまうほど素晴らしい演奏です。解説もついているのでぜひご視聴ください。こちらはメンデルスゾーンの代表曲『バイオリン協奏曲ホ短調』です。

メンデルスゾーンは幼い頃より神童ぶりを発揮していました。そして家柄もよく、その文化水準の高さによってメンデルスゾーン家のサロンには錚々たる顔ぶれがそこに集まっていました。ベルリン大学を創立した言語学者フンボルトや哲学者のヘーゲル、ガンス、作家のホフマンなど当時の最高レベルの知識人が集う中でメンデルスゾーンは育っています。これを知った時は思わず驚きで声を上げてしまいました。

すべて繋がっているんだと。

後に歴史を残す偉人たちは必ずどこかで繋がり合っている。でも、さすがにこれは繋がり過ぎだろうと!しかも後にはあのゲーテとも固い友情で結ばれるというのです。これにはさすがに呆然としてしまいました。

世界最高峰の偉人たちは19世紀にこうも絡み合って生きていたのかと、この伝記を読んで圧倒されてしまいました。

本当に面白い!この伝記はそんなあまりにドラマチックなメンデルスゾーンの生涯をひのまどかさん流の最高の語り口で堪能することができます。もうこれは読んで下さい!絶対に後悔しません!最高の読書体験になること請け合いです!

そしてこの伝記では上でも少し述べましたが、ベルリンにおけるユダヤ人差別についても知ることができます。ベルリンといえば後のナチスドイツの本拠地です。ナチスについては当ブログでもこれまで何度もお話ししてきましたが、あのユダヤ人大量殺戮に向かう土壌というのがすでに19世紀にはかなり出来上がっていることがこの伝記からわかります。

ドイツといえどもすべての地域、街で強いユダヤ人差別があったわけではありません。それぞれの街ごとにちがった空気があります。ですがこのベルリンにおいてはユダヤ人差別の風潮が特に強かったこと、そして激動の19世紀における時代の流れというのもこの本では感じることができます。

メンデルスゾーンがそうしたユダヤ人差別といかに向き合ったのか、そして彼の死後の悲しい運命、それもこの本で知ることになります。

彼はワーグナーによる激烈なユダヤ人差別の文章により、過激な攻撃に遭うことになります。そして後にはナチスによって完全に抹殺されてしまうことになります。

メンデルスゾーンが再評価され始めたのも最近になってようやくなことだそうです。そうしたことに思いを馳せながら彼の曲を聴くとさらに色んな思いが湧いてきます。

メンデルスゾーンに関してはあまりに思うことがありすぎてこれ以上はここでは申せません。彼の生涯について興味深いことがたくさんありすぎてどうしようもないのです。

また、彼の人生そのものも飛びぬけて面白いのですが、彼の姉のファニーという人物。この方もまたとてつもなく偉大な人物でした。

もうあまりに興味が尽きないので私はメンデルスゾーンに関する本をとにかく読んでみることにしました。次の記事からはそんな彼に関する本を紹介していきたいと思います。

いやぁ、まさかこんなにはまるとは自分でも思ってもみませんでした。ブラームスの伝記の記事でもお話ししましたがまさに「沼」です。抜け出せません。次から次へと興味深いことが現れてきて全く進めなくなっています。本当は今頃はトルストイを読んでいるはずだったのです。いつになったらトルストイを読めるのかさっぱりわからなくなってきました(笑)

それほどこの伝記シリーズは面白いです。ぜひぜひおすすめしたい1冊です。(※ただ、この本はすでに絶版になっているので、図書館などで借りるしかないのが泣き所です。ぜひ再出版をお願いしたいです)

メンデルスゾーンについては以下の解説動画が非常にわかりやすく面白いですのでこの動画もおすすめです。ぜひご覧になってください。メンデルスゾーンがどんな人物だったのか、そしてその音楽の特徴を知ることができます。

以上、「ひのまどか『メンデルスゾーン―「美しくも厳しき人生」』死後、ナチスに抹殺された天才ユダヤ人作曲家のおすすめ伝記」でした。

ひのまどか「作曲家の伝記シリーズ」20作品一覧はこちら!これを読めばクラシックが好きになります!衝撃の面白さです!

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