コゼットはなぜテナルディエ夫妻に預けられたのか~鹿島茂著『「レ・ミゼラブル」百六景』より 

『レ・ミゼラブル』とドストエフスキー

コゼットはなぜテナルディエ夫妻に預けられたのか~鹿島茂著『「レ・ミゼラブル」百六景』より 

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引き続き鹿島茂著『「レ・ミゼラブル」百六景』を参考に、ミュージカル鑑賞に役立つキャラクター解説をしていきます。この本は原作のレミゼのストーリーの流れだけでなく当時の時代背景やもっともっとレミゼを楽しむための豆知識が満載です。 ミュージカルの最高の参考書にもなります。

ミュージカルでは時間の都合上、表現しきれない箇所がどうしても出てきてしまいます。そこで、より深くレミゼを知るためにこの本とユゴーの原作をたよりにしながらそれぞれのキャラクターを見ていきたいと思います。

なぜコゼットはテナルディエ夫妻に預けられたのか

前回の記事ではファンテーヌの悲惨な運命についてお話ししました。

今回の記事ではそんなファンテーヌの娘コゼットについてお話ししていきます。

コゼットといえば言わずと知れた『レ・ミゼラブル』の顔というべき存在です。下のポスターでお馴染みですよね。

コゼットはもはや世界で最も有名な少女と言っても過言ではありません。

困窮に苦しむファンテーヌの手を離れてテナルディエ家に預けられたコゼット。彼女はまるでシンデレラのようにこき使われ、いじめられていたのでした。ミュージカルや映画を観た人はもしかしたら次のような疑問を持ったかもしれません。「なんでテナルディエみたいな悪党の家にわざわざコゼットを預けてしまったのか」と。

たしかに、これはよくよく考えてみたらそうですよね。コゼットがなぜテナルディエのもとに預けられることになったのか、その経緯は気になるところです。また、そもそもファンテーヌとテナルディエはどこで接点があったのでしょうか。

こうしたこともこれまでの記事で紹介したミリエル司教やジャン・ヴァルジャン、ファンテーヌと同じく原作ではしっかりと書かれています。

では、いつものごとく鹿島茂著『「レ・ミゼラブル」百景』を読んでいきましょう。

一八一八年のある日の夕方、コゼットを抱いたファンチーヌはモンフェルメイユの一軒の安料理屋の前を通りかかった。道路では、小さな女の子が二人、巨大な荷馬車の前輪につるした鎖で遊んでいた。きれいな服を着た二人の子供は光り輝くほどかわいらしかった。

ファンチーヌは思わず「なんてかわいらしいんでしょう」と叫んだ。そばにいた大柄な母親がファンチーヌにべンチにすわるように勧めた。コゼットが女の子たちといっしょになって三人の姉妹のように遊ぶのを見ていたファンチーヌは、思い切って、コゼットをしばらく預かってくれないかとたのんだ。すると奥から亭主の声がして月に七フランの半年分、それに支度金十五フランと子供の服を置いていくなら預かってもいいと答えた。ファンチーヌは翌朝、その金を払い、コゼットを残して出ていった。テナルディエ夫妻がどんな人間かも知らずに―

文藝春秋、鹿島茂『「レ・ミゼラブル」百六景』P72

ファンテーヌはパリでは仕事がなかったので故郷のモントルイユ=シュル=メールに帰ることにしました。その時ファンテーヌは22歳。幼いコゼットはまだ2歳でした。しかもその時の所持金はたったの80フラン。日本円にして8万円でした。

そんなファンテーヌがたまたま通りかかったのがテナルディエの安料理屋だったのです。

そこで彼女が目にしたのはかわいらしい女の子たち。

その子たちはきれいな服を着せられていかにも幸せそうに見えたのでした。この女の子の一人は後にマリユスを助けて命を落とすエポニーヌです。

ミュージカルや映画を観た方はご存知だと思いますが、テナルディエ夫妻は自分の子はかなりかわいがります。

そんな女の子たちを見たファンテーヌはこの子たちの親ならばコゼットも大切に育ててくれるかもしれないと思ってしまったのでした。ファンテーヌはまだ22歳。さらに基本的に善良で騙されやすい性格です。恋人にもそうして騙されています。彼女にはまだまだ人を見抜く目がありませんでした。

テナルディエは金に困っていたので、ファンチーヌの五十七フランで手形を落とし、翌月また金が必要になるとコゼットの衣類を質屋で六十フランにかえた。この金を使ってしまうと、コゼットをお情けで引き取っている子供としか見なくなった。服は娘たちのお古を着せ、食事は犬や猫といっしょにテーブルの下でとらせた。テナルディエの女房は片方を愛するためにはもう一方を憎まずにはいられないたちの女だったので、娘たちを愛した分だけコゼットを憎み、二人の娘たちも母親にならってコゼットをいじめた。ファンチーヌはテナルディエの要求するままに仕送りを続けたが、コゼットは五歳て料理屋の女中にされてしまった。

コゼットが真冬の日の出前に、穴のあいたぼろを着て、赤くなった小さな手に大きなほうきを持って、目に涙を浮かべながら店先を掃いている姿は痛ましかった。

文藝春秋、鹿島茂『「レ・ミゼラブル」百六景』P76

テナルディエ夫妻がどんな人間かは私たちはすでに知っています。しかしファンテーヌはこうして何も知らずにコゼットを彼らに預けてしまいます。そしてその後テナルディエ夫妻にコゼットをネタにお金をゆすられ困窮のどん底に沈んでしまうのでした。

また、上の解説にありますように預けられたコゼットの方も辛い日々を送っていました。

Wikipediaより

きっと誰しもが一度は目にしたことがあるこの有名な絵はこの場面を描いたものでした。

ファンテーヌはこの家に預ければこの子も幸せになるかもしれないと思い、コゼットを預けたのでした。

しかし、その結果は私達の知る通り、全くの真逆でした。悲惨な運命はこの親子をどん底に落とすのです。

コゼットの幸せを願ってとった行動が結果的に最悪の結末を迎えてしまうのでした。

こうしてファンテーヌはより貧しくなり、コゼットはこき使われる過酷な日々を過ごすことになったのです。

次の記事では徒刑囚だったジャン・ヴァルジャンがなぜいきなり裕福な工場長、市長にまでなれたのかということをお話ししていきます。

以上、「コゼットはなぜテナルディエ夫妻に預けられたのか~鹿島茂著『「レ・ミゼラブル」百六景』より」でした。

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