ディヴィッド・ベロス『世紀の小説 『レ・ミゼラブル』の誕生』レミゼファン必見のおすすめ参考書

『レ・ミゼラブル』とドストエフスキー

レミゼファン必見のおすすめ参考書!ディヴィッド・ベロス『世紀の小説 『レ・ミゼラブル』の誕生』

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今回ご紹介するのは2018年に白水社より発行されたディヴィッド・ベロス著、立石光子訳『世紀の小説 『レ・ミゼラブル』の誕生』です。

早速この本の紹介について見ていきましょう。

南北戦争の兵士も共産圏の人々も愛読した『レミゼ』。その執筆・出版の波瀾の過程を縦糸に、作品の背景となる世界経済やユゴーの用いた技巧から、ミュージカルや映画までを横糸に織り上げられた、大傑作小説の「伝記」。

傑作小説の評伝
1862年4月4日に発売されるや、翌日午後にはパリで第1部上下巻6000部が完売。第2・3部の発売日には朝6時に早くも出版社の前の通りは人であふれ、行列の整理のために警察官が出動する騒ぎに。そして『レ・ミゼラブル』は世界各地でベストセラーとなる。本書はその執筆・出版の過程を縦糸に、小説の背景となる世界経済やユゴーの用いた技巧の考察から、翻訳のいきさつや意外な読まれ方、ミュージカル・映画などの受容までを横糸に織り上げた、いわば「小説の評伝」である。
この作品の背後には多くのものが隠れている。たとえば、マドレーヌ氏ことジャン・ヴァルジャンが模造黒ガラス玉でたちまち莫大な財産を手にした事情は、当時の世界史から推測できる。刊行当時、新聞にはこの作品に対して手厳しい批評がいくつも掲載されたが、マドレーヌ氏が財産を築いた方法にけちをつけたものはひとつもなかった。また、当時のパリの地理と作品中の地理との比較からはユゴーの政治的な心情が、ジャン・ヴァルジャンの囚人番号からは苦悩が透けて見える……。
おなじみの物語の違った顔が楽しめる一冊。

Amazon商品ページより

この本はものすごいです。とにかく面白い!

大好きなレミゼがどのようにして生まれ、そしてどのように広がっていったのか、そしてミュージカルとのつながりや物語に込められた意味など、たくさんのことを知ることができます。

「『レ・ミゼラブル』の伝記」というのはまさに絶妙な言葉だと思います。この本にぴったりの称号だと思います。

訳者あとがきでもこの本について以下のように語られています。この本の魅力が伝わってくると思います。

十九世紀フランスの文豪ヴィクトル・ユゴーの代表作、『レ・ミゼラブル』。映画やミュージカルを通し、あらすじは知っているし、ユゴーの名前にも聞き覚えがあるとはいえ、それ以上の知識となると、はなはだ心もとない。

本書は、そんな『レ・ミゼラブル』のまたとない道しるべである。

文学史に輝く永遠のべストセラーでありながら、全巻読み通されることは少ないといわれるこの大作が、作者ユゴーの生涯や信条とからめながら、さまざまな切り口を通して多面的に読み解かれているからだ。併せて、小説の舞台である十九世紀のフランス社会が、歴史、政治、経済、言語などいくつもの観点から浮き彫りにされており、まさに『レ・ミゼラブル』の”評伝”と呼ぶのがしっくりくる。

白水社、ディヴィッド・ベロス、立石光子訳『世紀の小説 『レ・ミゼラブル』の誕生』P330

さらにこの本が出版されるやいなや海外でいかに評価されたかも紹介しています。

原書がニ〇一七年三月に出版されると、英語圏の大手新聞や書評誌がつぎつぎに称賛を寄せた。

・ベロスは、ユゴーの伝記ではなく、『レ・ミゼラブル』の伝記を書き上げた……千五百ぺージにおよぶ小説の着想から出版までをくわしくたどり、数多くの映画やミュージカルにも触れながら、その豊かな生命力に言及している。―ルース・スカー《ガーディアン》

・面白くてためになる本……完壁に調べあげ、無駄のない文体で記されている……『レ・ミゼラブル』は十九世紀を描いた小説だという本書の題名は、社会的な視点から十二分に証明されている……ユゴーの部分的だが魅力的な評伝でもある。―トビアス・グレイ《ニューヨーク・タイムズ》ブックレビュー

・ベロスは、『レ・ミゼラブル』という本とその背景にまつわる数多くの魅力的な要素に、われわれの目を開いてくれる……ユゴー、フランス、フランス語が好きな人はだれでも、十九世紀フランス社会について深い知識を与えてくれるこの良書に夢中になるだろう。―《カーカス・レビュー》

白水社、ディヴィッド・ベロス、立石光子訳『世紀の小説 『レ・ミゼラブル』の誕生』P331

私もこの本を読んでこの称賛の言葉に対し深い共感を持ちました。まさにこれらの言葉通りです。私も夢中になってこの本を読んでしまいました。面白過ぎて読み終わるまであっという間でした。

そしてこの本の構成もあとがきでざっくりとまとめられていますのでそちらも紹介します。

本書の構成は『レ・ミゼラブル』と同じく五部からなり、各部のタイトルには同時代の有名な小説の題名が当てられている。第一部「罪と罰」では、ユゴーの誕生から亡命までと、十九世紀フランスの政治状況が、第二部「宝島」では、『レ・ミゼラブル』の経済にまつわる諸要素と、ユゴーの亡命後の生活が紹介される。第三部「眺めのいい部屋」は、執筆の再開から完成、出版契約、校正の過程。第四部「戦争と平和、そして進歩」は、小説への歴史的事実の取り込みと、ユゴーの政治思想や信条について。第五部「大いなる遺産」では、出版当時の熱狂ぶりと、映像・舞台を通したその伝播、そして『レ・ミゼラブル』の意義が総括されている。

白水社、ディヴィッド・ベロス、立石光子訳『世紀の小説 『レ・ミゼラブル』の誕生』P332

この解説を見てわかりますように、まさしくこの本は『レ・ミゼラブル』の誕生と発展の伝記と言うことができます。『レ・ミゼラブル』がどのように書き上げられたのがドラマチックに語られていきます。ユゴーがどんな状況でどんな思いでこの傑作を書いていたのか、それを知ると今まで知っていたレミゼとはまた違ったレミゼが見えてくることになると思います。これは非常に興味深かったです。

また、ありがたいことにこのあとがきではこの本の見どころもわかりやすく解説してくれています。せっかくですのでこちらも読んでいきましょう。

『レ・ミゼラブル』は題名どおり、〝貧しい人びと〟〝虐げられた人びと〟〝見捨てられた人びと〟の物語である。十九世紀半ば、労働階級は「危険な階級」とみなされ、貧困および犯罪への対処は緊急を要する社会問題だった。しかしユゴーは、〝貧しく哀れな人びと〟も〝犯罪者〟も〝恥ずべき卑劣漢〟もすべてひっくるめて「レ・ミゼラブル」と呼んだ。

そして、小説の主人公ジャン・ヴァルジャンが示しているのは、どれだけ貧しくみじめな者でも、尊敬に値する人間に生まれ変われるという希望である。ジャン・ヴァルジャンはミリエル司教の慈愛に触れて改心したあと、善人になるという使命をなし遂げるために、壮絶な戦いをつづける。その人物像を通して、『レ・ミゼラブル』は人間の理想に圧倒的な現実味を与え、百五十年前の出版時と変わらぬ意義を伝えているのである。

ユゴーは『レ・ミゼラブル』が「万人に読まれる」ことを望んでいた。その願いどおり、翻訳や翻案を通して、早くは南北戦争時代のアメリカで、南軍の兵士たちがこの小説に自分たちの姿を重ねた。『レ・ミゼラブル』を全世界の聴衆に届けたのは、映画やミュージカルの功績が大きい。小説を脚色したミュージカルやニ〇一二年のその映画化は、日本でも大きな人気を博した。

本書の読みどころのひとつは、『レ・ミゼラブル』出版のくだりであろう。版元のラクロワと史上最高額の契約を結んだあと、ベルギーのラクロワと島のユゴーが原稿をやりとりする手段は、週に三度の船便に限られた。迫りくる発売日、ユゴーと政権の対立から発禁処分になる可能性、さらに著作権が確立していない時代の海賊版への警戒が、作家と出版者との緊迫したやりとりからうかがえる。発売日の早朝から書店に押しかけた大群衆、あまりの人気ぶりに嫉妬を隠せない同時代の作家たち……。『レ・ミゼラブル』発売はまさに社会現象となったのである。(中略)

本書を読んで、『レ・ミゼラプル』の通読や再読にチャレンジしたいと思っていただければ、これに勝る幸せはない。舞台の幕開け、ジャン・ヴァルジャンが船を漕いでいるのは、フランス語の「galerien(徒刑囚)を「galley slave(ガレー船を漕ぐ奴隷)」と直訳したせいだとか、さまざまなトリビアも散りばめられているので、ミュージカルを観る楽しみも増すだろう。

白水社、ディヴィッド・ベロス、立石光子訳『世紀の小説 『レ・ミゼラブル』の誕生』P333-334

ここで述べられますように、たしかに『レミゼ』出版のくだりはものすごく面白かったです。レミゼがいかに前代未聞な作品であったかに驚かされました。当時の出版業界や文学界の様子も知れてとても興味深く読みました。

次の記事ではこの本において語られたジャン・ヴァルジャンという存在の意義や『レ・ミゼラブル』に込められた思いを紹介していきたいと思います。

この本はとにかく素晴らしいです。レミゼファンにぜひともおすすめしたい一冊です。

ものすごく面白い本でした。ぜひ読んでみてください。

以上、「ディヴィッド・ベロス『世紀の小説 『レ・ミゼラブル』の誕生』レミゼファン必見のおすすめ参考書」でした。

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