仏教書

スリランカの大乗仏教スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

森祖道『スリランカの大乗仏教』~上座部仏教で有名なスリランカに大乗が根付いていた!観音菩薩像の変遷も

スリランカといえば上座部仏教というのが当然視され、大乗仏教の存在はほとんど顧みられることはありませんでした。

そして実際にスリランカの大乗仏教の流れ自体は十二世紀後半に途絶えてしまうのですが、文化というのは面白いもので「公式には消滅したとしても、形を変えて生き続ける」ということが起こり得ます。

それがこの記事のタイトルにも書きましたように観音菩薩の変遷という現象となってスリランカに溶け込んでいたのでありました。

いや~スリランカは面白い!この本も非常に刺激的な一冊でした。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

現代スリランカの上座仏教スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

前田惠學編『現代スリランカの上座仏教』~現代スリランカ仏教を体系的に学べる大著!

日本仏教が様々な宗派に別れていてそれぞれ教義や作法が全く異なるように、スリランカ仏教と一言で言ってもそこにはさまざまな違いがあります。

本書ではそんな現代スリランカのそれぞれの宗派やその成り立ちなどを体系的にわかりやすく学ぶことができます。頭が混乱していた私にとってこれは実にありがたい作品でした。

スリランカの各宗派の特徴や教義、さらにはスリランカの人々の生活レベルの仏教が体系的にまとめられた本書は非常に貴重です。葬儀や日々のお参りなどについても詳しく説かれますので日本の仏教と比較しながら読んでいくのもとても面白いです。

ブッダの生涯インドにおける仏教

平川彰『ブッダの生涯 『仏所行讃』を読む』~漢訳された仏伝をもとに超人間的なブッダの生涯を見ていくおすすめ入門書

前回の記事では2世紀頃に活躍したアシュヴァゴーサによる仏伝叙事詩『ブッダチャリタ』をご紹介しました。

この『ブッダチャリタ』は西暦430年頃に曇無讖によって『仏所行讃』として漢訳されました。これが日本にも伝来し日本の仏教者にも伝えられたのでありました。最澄や空海、法然や親鸞もこの仏伝を読んでブッダに思いを馳せていたのではないでしょうか。

本書はこの漢訳の『仏所行讃』の書き下し文を読みながらブッダの生涯がわかりやすく解説される仏教入門書になります。

マヌ法典インド思想と文化、歴史

『マヌ法典』~インド・ヒンドゥー教社会の礎。世界創造から人間の理法まで壮大な規模で説かれた聖典

『マヌ法典』は単なる法律書のようなものではありません。『マヌ法典』を読み始めてまず驚くのは、いきなりこの聖典が天地創造の話から始まるということです。ブラフマンという創造主を中心にした壮大な宇宙論、世界観がまず語られ、そこから人はいかに生きるべきか、何を規範とし生活の掟としていくのかが語られていきます。

『マヌ法典』を読んでいるとまさに生活のあらゆる場面にヒンドゥー教の実践や思想が組み込まれていることを強く感じます。さらにそれだけでなく誕生から死までの通過儀礼においても細かな規定が定められていることもわかりました。まさに生まれてから死ぬまで、いや死後の世界までヒンドゥー教の世界観が貫かれているということを強く感じました。

『マヌ法典』は仏教を学ぶ上でも非常に意味のある聖典です。

ヒンドゥー教と叙事詩インド思想と文化、歴史

中村元選集第30巻『ヒンドゥー教と叙事詩』~仏教や日本とのつながりも知れる名著!インド思想の奥深さを体感

中村元先生は宗教を単に思想や理論として見るのではなく、当時の社会状況と合わせて考察していきます。インドにおける宗教を知るには、インドそのものも視野に入れて考えていかなければなりません。

なぜインドではヒンドゥー教が栄え、仏教は衰退していってしまったのか。そのことをこの本では見ていくことができます。そこには単に思想面だけではなく、もっと大きな社会的要因が絡んでくるのでありました。

また、この本では書名にありますようにインド二大叙事詩『マハーバーラタ』と『ラーマーヤナ』についても詳しく見ていくことができます。仏教学者中村元先生ならではの視点で説かれるインド神話の講義を聴けるのは非常に興味深いものがありました。

新アジア仏教史04スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

『新アジア仏教史04 スリランカ・東南アジア 静と動の仏教』~スリランカの聖地訪問に役立つ情報ありの参考書

この本ではスリランカの仏教の歴史や現地事情を知ることができます。また、スリランカの仏教聖地についても語られていますので、実際にスリランカを訪れる方にとっても便利な一冊となっています。私も近々スリランカを訪れる予定ですのでとても参考になりました。

もちろん、スリランカだけではなく他地域の仏教についても見ていく参考書なので、それぞれの関心に合わせて読むこともできます。

東南アジアの仏教を一冊の本でまとめて学ぶことができる本は貴重です。仏教の入門書としてはなかなか難しい作品ではありますが、東南アジアの仏教をもっと知りたいという方におすすめの一冊です。

仏教の正統と異端スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

馬場紀寿『仏教の正統と異端 パーリ・コスモポリスの成立』~スリランカ仏教とインドとの関係、歴史を知れる刺激的な一冊!

この本はものすごく面白いです!インド、スリランカの仏教を国際政治、内政の視点から見ていくというのはありそうであまりなかったのではないでしょうか。

私も今年スリランカに行く予定でしたのでこれはものすごくありがたい本でした。この記事でお話ししたのは本書の内容の極々一部です。とにかく盛りだくさんで刺激的な内容だらけです。読み始めは少し込み入った話や仏教初学者の方にとっては厳しい内容もありますが、途中からはスリランカの歴史パートに入り一気に読みやすくなります。

これはぜひぜひおすすめしたい一冊です。いや~面白い本でした!ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

英国の仏教発見インドにおける仏教

F・C・アーモンド『英国の仏教発見』~仏教学はイギリスの机上から生まれた!?大乗仏教批判の根はここから

この作品では衝撃的な事実が語られます。以前当ブログでも紹介した『新アジア仏教史02インドⅡ 仏教の形成と展開』でも西洋由来の仏教学の問題について語られていますが、本書はまさにその本丸と言ってもよい作品になります。

この本を読むと、「原始仏教に帰れ。日本仏教は堕落している」という批判が出てくる理由がよくわかります。これまでどうしても腑に落ちなかった大乗仏教批判に対して「ほお!なるほど!そういうことだったのか」という発見がどんどん出てきます。この批判が出てくる背景を追うととてつもない事実が浮かび上がってきます。これは最高に刺激的な一冊です。とてつもない作品です。もうぜひ読んで下さい!きっと皆さんも衝撃を受けると思います。

〈文化〉としてのインド仏教史インドにおける仏教

奈良康明『〈文化〉としてのインド仏教史』~葬式仏教批判に悩む僧侶にぜひおすすめしたい名著!

この本は「僧侶としてのあり方に悩む方」にぜひおすすめしたい作品です。

文献に書かれた教義だけが仏教なのではなく、そこに生きる人々と共に歩んできたのが仏教なのだというのがよくわかります。私自身、この本にたくさんの勇気をもらいました。仏教は現代においても必ずや生きる力に繋がるのだということを私は感じています。

僧侶以外の方でも、仏教における儀礼の意味に興味のある方には多くの発見がある作品です。

ぜひぜひおすすめしたい名著です。著者の信念が伝わってくる素晴らしい一冊でした。

大乗仏教のアジアインドにおける仏教

『シリーズ大乗仏教 第十巻 大乗仏教のアジア』~インド仏教も葬式仏教的な遺骨崇拝や納骨、供養を行っていた

今作はヒンドゥー教やイスラーム、中国文化とのつながりから大乗仏教を見ていくというユニークな論集となっています。

そしてこの本の中で次のような指摘がなされます。

「大雑把な言い方をすれば、葬式仏教的な要素がインド以来、現実の仏教の場で強く働いていたことが知られる。従来しばしば、インドの本来の仏教は生者のためによりよい生き方を教えるもので、死者のためのものではないと主張され、日本の葬式仏教を否定するような言説がなされてきたが、それはまったく実態にそぐわないことが、明白に示されたのである。」

このようなショペンの刺激的な論文を読むことができるおすすめの参考書です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。