トルストイ

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

(5)なぜ口の強い人には勝てないのか~毒舌と暴言を駆使するレーニン流弁論術

レーニンは議論において異様な強さを見せました。その秘訣となったのが彼の毒舌や暴言でした。

権力を掌握するためには圧倒的に敵をやっつけなければならない。筋道通った理屈で話すことも彼にはできましたが、何より効果的だったのは毒舌と暴言で相手をたじたじにしてしまうことでした。

この記事ではそんなレーニンの圧倒的な弁舌についてお話ししていきます。

帝政末期のロシアロシアの歴史・文化とドストエフスキー

アンリ・トロワイヤ『帝政末期のロシア』~ドストエフスキー亡き後のロシア社会を知るために

この本は小説仕立てで1903年のロシア帝政末期の社会を紹介していきます。

主人公は若いフランス人ジャン・ルセル。彼はふとしたきっかけでロシアに旅立つことになります。私たち読者は彼と同じ異国人の新鮮な目で当時のロシア社会を目の当たりにしていくことになります。

この本ではロシア正教を中心にした宗教事情、そして劣悪な状況で働く労働者、軍隊の内情、農民の生活など様々な事象を紹介しています。

当時のロシア社会がどのようなものであったかを知るのにとても便利な一冊となっています。しかも小説仕立てであるので読みやすいというのも嬉しい点です。

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

『スターリン伝』から見たゴーリキー~ソ連のプロパガンダ作家としてのゴーリキー

『スターリン伝』で読んだゴーリキー像は佐藤清郎氏の『ゴーリキーの生涯』とはだいぶ違った姿でした。

とは言え、ゴーリキーが幼い頃から苦労し、作家となってからも自身の考える理想を追求していたのも事実です。そしてロシア革命後にはレーニンの独裁に反対し、国も去っています。ですので、佐藤清郎氏によって書かれたゴーリキー像もそういう点では間違いではないと思います。

ただ、スターリンがあまりに狡猾だったということが言えるのではないでしょうか。ゴーリキーを自身の手元に置き、利用した。それも自身の意図に気づかれることもなく、ゴーリキーがスターリンのソ連が素晴らしいものだと思い込むように仕向けた。このスターリンの手法は恐るべきものだと思います。

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

帝政末期・ソ連時代を代表する作家ゴーリキーとドストエフスキー

ドストエフスキーは『悪霊』や『カラマーゾフの兄弟』で社会主義思想によって人々の自由が失われる時代が来ることを予言しました。

そして実際にロシアはその通りになってしまったのです。ドストエフスキーがあれだけ危惧して読者に語りかけていたにも関わらず、そうなってしまったのです。そしてドストエフスキーは国民からもあまり読まれなくなった・・・

これは文学の敗北、思想の敗北なのではないかと私はふと思ってしまいました。いくら文学や思想を述べても、権力や武力で脅されたら私たちは無力なのではないか・・・そんなことを私は感じてしまったのです。

そのためこうした時代を学ぶために、まずはソ連を代表する作家ゴーリキーを読んでみようと私は思ったのでした。

ロシアの大作家チェーホフの名作たち

佐藤清郎『わが心のチェーホフ』~チェーホフの魅力や面白さをわかりやすく解説した名著!

この本ではチェーホフがいかに優れた作家か、そしてその特徴がどこにあるのかということがこの上なくわかりやすく書かれています。

そしてチェーホフだけではなく、ドストエフスキーとの対比も書かれているので、チェーホフを知りたい方だけではなく、ロシア文学や演劇を知りたい方にとっても非常に面白い知見がたくさん説かれています。

この本を読めばチェーホフだけでなくロシア文学の特徴、そしてそれらが現代日本を生きる私たちにどのような意味があるのか、どのような問いかけをしているかまで学ぶことができます。

この本はとにかくおすすめです。チェーホフ関連の本で何を読もうか迷っている方がいればまずこの本をお薦めしたいです。

ロシアの大作家チェーホフの名作たち

チェーホフ『谷間』あらすじと感想~チェーホフの人間愛が感じられる名作

チェーホフの『谷間』の老人はドストエフスキーの『百姓マレイ』を彷彿とさせるものがあります。農村に生きる素朴な老人。彼らの優しさが人間性への信頼を取り戻させてくれたのです。

この作品はたしかに暗い雰囲気があるものの、救いがあります。チェーホフの人間愛や優しさが感じられる作品です。

ゴーリキーやトルストイなど錚々たる人達にも絶賛された作品です。ページ数も50頁ほどと読みやすい分量になっています。ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

ロシアの大作家チェーホフの名作たち

チェーホフ『可愛い女』あらすじと感想~トルストイ大のお気に入りの作品

『可愛い女』を大絶賛し他人の前で何度も朗読までしたトルストイ。彼がいかにこの作品を気に入っていたかがうかがわれます。

こうしたところにもトルストイの考える理想像の特徴が見えてきます。

ですがこれに関して一つ裏話があります。

と言うのもチェーホフはトルストイのような意図で『可愛い女』を書いたわけではなかったのです。

チェーホフはまったく自分の意思のないオーレニカを風刺する意図で『可愛い女』というタイトルにしこの作品を書き上げたのでした。

ある作品をどのように読むか。そこに読み手の個性が表れるという好例がこの『可愛い女』とトルストイの組み合わせなのではないかと私は感じました。

ロシアの大作家チェーホフの名作たち

チェーホフ『すぐり』あらすじと感想~幸福とは何かを問う傑作短編!幸せは金で買えるのか。ある幸福な男の恐ろしすぎる実態とは

「『すぐり』は短い作品であるが、鋭く人の心を刺す。人は何のために生きるかを、わずか数ぺージに、香り高く圧縮して見せてくれている。

『すぐり』はすばらしい、そしてある意味でおそろしい作品である。小品といってもいい短い形式の中に盛りこまれた内容は一個の長篇小説に匹敵する。」

ロシア文学研究者佐藤清郎氏も絶賛するチェーホフ短編の最高傑作!

ロシアの大作家チェーホフの名作たち

サハリン体験を経たチェーホフの人間観の変化とは~理想主義と決別し、トルストイを超えんとしたチェーホフ

人間の可能性を信じるオプチミズム。

「人間は真実を求めて二歩前進し、一歩後退する。苦悩や過ち、退屈が、人間を後ろに投げ返すが、真実の渇きと不屈の意志は、前へ前へと駆り立てる」という人生観がチェーホフにはあります。

地獄の島サハリン島を経て書かれた『決闘』はチェーホフの思想を知る上でも非常に重要な作品となっています。

ロシアの大作家チェーホフの名作たち

「理想は人を救わない」と説くチェーホフの真意とは~『決闘』から見るチェーホフとトルストイの関係

チェーホフは作家として確固たる地位を抱いてから晩年にいたるまでトルストイと親しく交流していました。

しかし芸術家トルストイ、そして人間トルストイとしては亡くなるまで尊敬の意を持っていましたが作家、思想家としてのトルストイとは距離を置くようになっていきます。彼の中でトルストイ思想との決別があったのです。

それがいよいよ形になって現れ出てくるのが『決闘』という作品だったのです。