トルストイ

親鸞とドストエフスキー

2022年度のブログ更新について~昨年のまとめと今年の方針。今年はいよいよ本丸に向かいます

あけましておめでとうございます。

僧侶のブログとしては謎としか言いようのないラインナップでお届けした昨年の記事たちでしたが、今年もまだまだそれは続きます。

一見バラバラにも思える記事たちですが、私の中では「親鸞とドストエフスキー」という一貫したテーマで考え続けています。全ては繋がっています。

今年もよろしくお願いします

クラシック・西洋美術から見るヨーロッパ

ひのまどか『ボロディン、ムソルグスキー、リムスキー=コルサコフ 嵐の時代をのりこえた「力強い仲間」』~19世紀ロシア音楽界を知るのにおすすめ!

私はひのまどかさんの本を初めて読んだ瞬間からその語り口の大ファンになり、こうしてこの伝記シリーズを読んできました。
「なぜ私はこんなにもひのまどかさんの語りに引き込まれるのだろう」

その答えがこの本にありました。なんと、ひのまどかさんは中学高校の時からロシア文学に親しんでいた文学人だったというのです!

ドストエフスキーとキリスト教

パウエル中西裕一『ギリシャ正教と聖山アトス』~知られざる正教の文化とギリシャの聖地とは

この本では私たちがあまり知ることのない正教の教えをわかりやすく解説してくれます。カトリックやプロテスタントとの違いもこの本を読めば見えてきますし、聖地アトス山が一体どのような場所なのかということも知ることができます。

長きにわたって守られ続けてきた祈りの生活とははたしてどんなものなのか。修道士は何を思い、どんな生活をしているのか。

読んでいて驚くような世界がどんどん出てきます。

写真も豊富で、現地の様子が非常にイメージしやすいです。これもこの本のありがたいところです。

著者の語り口もとても読みやすく、楽しみながら知られざる正教の姿を学ぶことができます。

イギリス・ドイツ文学と歴史・文化

アルセニイ・グリガ『カント その生涯と思想』~思想と時代背景を解説する1冊。ドストエフスキー、トルストイとの関係も

著者のアルニセイ・グリガはソ連の研究者です。かつてのソ連の研究はイデオロギーがかなり混入することが多かったのですがこの本の原著が書かれたのは1977年ということでそこまでイデオロギーを感じることはありません。

また、ソ連の研究者ならではの視点、ドストエフスキーとトルストイとの関係という点からカントを見ていく点もこの本の特徴です。

入門書としては少し厳しいものがあるように思えますが、カントが活躍した時代の社会情勢や文化背景を知ることができるのは非常に有益です。カントをより深く知りたい方におすすめしたい一冊です。

ニーチェとドストエフスキー

ニーチェの自伝的作品『この人を見よ』~発狂直前に書かれたニーチェ最後の作品

この本の巻末解説によると、この作品はニーチェの誕生日10月15日に書き始められ11月4日には脱稿するという驚異的スピードで書かれた作品です。1889年1月初頭にはニーチェは発狂してしまうのでまさにこの作品は発狂直前のニーチェ最後の姿を知ることができる1冊となっています。

実際に本文を読んでいると正気と狂気のはざまを揺れ動くような言葉が続いていきます。読んでいて恐怖を感じるほど鬼気迫る言葉でニーチェは語り続けます。ほとんど狂気と言ってもいいような精神状態で書かれた言葉というのは、やはり凄まじい強さがあります。ドストエフスキーにもそれを感じますが、やはり天才と言われる人間の精神の在り様は通常のそれとはまるで違うということを考えさせられました。

シェイクスピア名作の宝庫・シェイクスピア

シェイクスピアおすすめ作品12選~舞台も本も面白い!シェイクスピアの魅力をご紹介

世界文学を考えていく上でシェイクスピアの影響ははかりしれません。

そして何より、シェイクスピア作品は面白い!

本で読んでも素晴らしいし、舞台で生で観劇する感動はといえば言葉にできないほどです。

というわけで、観てよし、読んでよしのシェイクスピアのおすすめ作品をここでは紹介していきたいと思います。

チェーホフロシアの大作家チェーホフの名作たち

チェーホフおすすめ作品10選~チェーホフは小説も面白い!戯曲だけにとどまらない魅力をご紹介!

強烈な個性で突き進んでいくドストエフスキーは良くも悪くも狂気の作家です。

それに対しチェーホフはドストエフスキーと違ってもっと冷静に、そして優しいまなざしで訴えかけてきます。

私たちを包み込んでくれるような穏やかさがチェーホフにあります。こうしたクールで優しい穏やかさがチェーホフの大きな特徴です。ぜひおすすめしたい作家です!

ツルゲーネフロシアの文豪ツルゲーネフ

ロシアの文豪ツルゲーネフのおすすめ作品8選~言葉の芸術を堪能できる名作揃いです

ツルゲーネフの生涯と作品をたどることでドストエフスキーの側から見たツルゲーネフ像とはだいぶ違った姿を感じることができました。

ツルゲーネフとドストエフスキーの違いを感じることができたことは非常に興味深かったです。また、文学における芸術とは何かということをとても考えさえられました。

芸術家ツルゲーネフのすごさを感じることができたのはとてもいい経験になりました。これからトルストイを読んでいく時にもこの経験はきっと生きてくるのではないかと思います。

ツルゲーネフはドストエフスキーとはまた違った魅力を持つ作家です。ぜひ皆さんも手に取ってみてはいかがでしょうか。

独ソ戦~ソ連とナチスの絶滅戦争

ワシーリー・グロスマン『人生と運命』あらすじと感想~独ソ戦を生きた人々の運命を描いたロシア文学の傑作!

『人生と運命』はグロスマンの命がけの告発の書です。

ソ連において体制批判はタブー中のタブーです。強制収容所送りや死刑を覚悟しなければなりません。グロスマンはこの作品を書き上げるもKGBの家宅捜索を受け没収されてしまいます。そして当局から危険書物扱いをされ「今後2~300年、発表は不可」と宣告されます。

「今後2~300年、発表は不可」という宣告のものすごさ。この小説がどれだけソ連当局にとって危険なものだったかがうかがえます。逆に言えば、それだけソ連にとって都合の悪い真実を映し出していたということができるかもしれません。

日本ではワシーリー・グロスマンの存在はあまり知られていませんが、それは残念なことだと私は思います。戦争の悲惨さや全体主義の抑圧の恐怖を伝える偉大な作家の一人がこのワシーリー・グロスマンです。

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

(14)レーニンの文学観~ドストエフスキー、トルストイらをどう見たか

レーニンの文学観、芸術観を考える上で彼が保守的な考えを持っていたというのは意外な気がしました。革命家=既存の秩序の破壊というイメージが私にはありました。ロシアのニヒリストは特にそのような傾向があります。ツルゲーネフの『父と子』に出てくるバザーロフというニヒリスト青年はその典型です。

しかしレーニンはそうではなく、保守的な文化観の持ち主だったのです。

この記事ではそんなレーニンの文学観、芸術観を見ていきます。