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マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ

(6)エンゲルス『ヴッパータールだより』~工場の劣悪な環境を18歳のジャーナリスト、エンゲルスが告発

エンゲルス18歳の時に発表された『ヴッパータールだより』。

後にお話しすることになりますが、この『ヴッパータールだより』のスタイルは後の『イギリスにおける労働者階級の状態』にも引き継がれ、そしてそれはそのままマルクスの『資本論』にも直結していきます。

ギムナジウムを退学し、大学にも行けなかったエンゲルスですが、やはり歴史を変える天才は何かが違います。マルクスの影に隠れてしまいがちですがその片鱗はすでにここに現われています。

マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ

(1)エンゲルスを学ぶ意味とは~マルクスに多大な影響を与えた人物としてのエンゲルス像

これから先、「マルクスとエンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ」シリーズと題して全69回、更新を続けていきます。これを読めばマルクスとエンゲルスの思想が出来上がる背景をかなり詳しく知ることができます。

そしてこれはマルクス・エンゲルスを知るだけではなく、宗教、思想、文化、政治、いや人間そのもののあり方についても大きな示唆を与えてくれるものになっています。

おすすめマルクス・エンゲルス伝記

トリストラム・ハント『エンゲルス マルクスに将軍と呼ばれた男』~マルクスを支えた天才の生涯と思想背景を知れるおすすめ伝記!

この伝記はマルクスやエンゲルスを過度に讃美したり、逆に攻撃するような立場を取りません。そのような過度なイデオロギー偏向とは距離を取り、あくまで史実をもとに書かれています。

そしてこの本を読んだことでいかにエンゲルスがマルクスの著作に影響を与えていたかがわかりました。

マルクスの伝記や解説書を読むより、この本を読んだ方がよりマルクスのことを知ることができるのではないかと思ってしまうほど素晴らしい伝記でした。マルクスの伝記に加えてこの本を読むことをぜひおすすめしたいです。

おすすめマルクス・エンゲルス伝記

『神話なきマルクス―その生涯と著作に関する編年史研究』~マルクスが何を参考にしていたかを知るのに最適!

この本のありがたい点はマルクスが何に影響をうけていたのか、何を参考にどのような研究をしてきたかということが詳細に解説されているところです。

しかもそれが年代順にリスト化もされているので、マルクス研究において非常にありがたい作品となっています。私もこの作品のおかげでこれから先何を読んでいこうか参考にすることができました。

マルクスは猛烈な読書家、勉強家として有名ですが彼が何を読んでいたのかが一目瞭然なのでこれは非常に興味深かったです。

おすすめマルクス・エンゲルス伝記

フランシス・ウィーン『カール・マルクスの生涯』~人間マルクスを追求したイギリス人作家による伝記

フランシス・ウィーンは自分の著作はどちらかのイデオロギーに偏ったものではなく、神でも悪魔でもない「人間マルクス」を描いたとこの作品で言っています。つまり、「中立的」な立場から伝記を書いたと述べています。

ただ、あらゆるジャンルのものについてもそうなのですが、マルクスほど「中立な立場」で見ていくことが難しい人物はいないかもしれません。

この伝記は読みやすさはあるものの、注意して読まなければならないタイプの書籍であると私は感じました。

マルクスは宗教的な現象か

マルクスとフロイトの共通点とは~フロイトのドストエフスキーにおける「父親殺し」についても一言

マルクスとフロイトは人間の過去・現在・未来の物語を提供しました。

その救済的な物語があったからこそ多くの人々を惹きつけたとトニー・ジャットは語ります。

そして彼らの語る物語が本当に正しいか正しくないかは問題ではありません。

人を惹きつける魅力的な物語であるかどうかがマルクス・フロイト理論が影響を持つ大きなポイントと言えるのではないでしょうか。

マルクスは宗教的な現象か

歴史家トニー・ジャットによるマルクス主義への見解~「伝統的なキリスト教の終末論との共通点」とは

世界的な歴史家トニー・ジャットは「マルクス主義は世俗的宗教である」という決定的な言葉を述べます。

その理由は記事内で述べる通りですが、マルクス主義は宗教的な要素がふんだんに取り込まれており、それがあるからこそマルクス主義が多くの人に信じられたという見解が語られます。

マルクスは宗教的な現象か

歴史家E・H・カーによるマルクス主義への見解~なぜマルクス主義は人を惹きつけるのか

E・H・カーはこの伝記においてマルクスの『資本論』における問題点を指摘していきます。そして有名な「剰余価値説」や「労働価値」などの矛盾点を取り上げ、そうした問題点がありながらもなぜマルクスはここまで多くの人に信じられているかを分析していきます。

経済学や思想、イデオロギー面だけではなく、世界全体との関わりという視点からアプローチするのは、歴史家たるE・H・カーならではの一歩引いた視点と言うことができるかもしれません。

マルクスは宗教的な現象か

マルクス主義者ではない私がなぜマルクスを学ぶのか~宗教的現象としてのマルクスを考える

マルクスは宗教を批判しました。

宗教を批判するマルクスの言葉に1人の宗教者として私は何と答えるのか。

これは私にとって大きな課題です。

私はマルクス主義者ではありません。

ですが、 世界中の人をこれだけ動かす魔力がマルクスにはあった。それは事実だと思います。 ではその魔力の源泉は何なのか。 なぜマルクス思想はこんなにも多くの人を惹きつけたのか。 そもそもマルクスとは何者なのか、どんな時代背景の下彼は生きていたのか。 そうしたことを学ぶことは宗教をもっと知ること、いや、人間そのものを知る大きな手掛かりになると私は思います。