イギリス

インドの僧院生活インドにおける仏教

G・ショペン『大乗仏教興起時代 インドの僧院生活』~定説だった大乗仏塔起源説を覆した衝撃の説!インド仏教の実際の姿とは!

大乗仏教は紀元後から小乗仏教を批判する形で生まれ、大きな勢力となりやがては中国を経由して日本にやって来た。私たちはそうしたイメージで大乗仏教を考えてしまいがちですが、大乗仏教教団そのものが5、6世紀になるまで存在していた形跡がないというのは驚くべき事実です。大乗経典自体は紀元一世紀頃から生まれてはいるものの、小乗教団と別の形で大乗教団が存在していたわけではないとショペンは言うのです。

「経典があるのに教団がないってどういうこと?」と皆さんも不思議に思うかもしれません。私もそうでした。

ですがショペンはこの本の中で鮮やかにその仕組みを解き明かします。正直、衝撃としか言いようがありません。

新アジア仏教史03インドにおける仏教

『新アジア仏教史03 インドⅢ 仏典からみた仏教世界』~仏伝や経典に説かれる史実はどこまで史実たりえるのだろうか!

「現在われわれの手元にある経典の記述を鵜呑みにして今から二五〇〇年前の仏教の実像に迫ることは不可能であるし、また客観的・批判的研究のフィルターを通しても、その作業は困難を極める。」

私たちはブッダの生涯をこれまで様々なところで見聞きしたことがあると思います。ですが、ここで語られるように実はブッダの歴史的な事実というのはわかっていないことも多々あります。

それをこの本では経典や資料を用いて丁寧に見ていくことになります。特に本書前半の仏伝に関する解説は私にとっても非常に刺激的なものとなりました。

この「新アジア仏教史」シリーズは読む度に新たな驚きがあります。しかも参考資料なども掲載されているのでこれからの学びの指針も与えてくれます。これもとてもありがたいポイントです。

東南アジア上座部仏教への招待スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

『東南アジア上座部仏教への招待』~日本と異なる東南アジアの仏教を知るのにおすすめ!

この本では東南アジア各国の仏教の教義を細かく見ていくというよりは、その国の仏教徒の生活や信仰の実践がどのようなものなのかを見ていく形を取ります。

もちろん、本書の第一章で上座部仏教とはそもそも何なのかをわかりやすく解説してくれるので、専門知識のない方にも優しい作りになっています。大乗仏教との違いをわかりやすく解説してくれるこの作品は非常に貴重です。しかも入門者でも親しみやすく読めるような語り口で説かれるので、仏教だけでなく文化そのものを学びたいという方にも非常におすすめです。

上座部仏教とは何か、そしてそこに生きる人々の生活レベルでの仏教を知れるこの本はとても刺激的でした。日本仏教との違いや共通点を考えながら読むのはとても興味深かったです。

13億人のトイレインド思想と文化、歴史

佐藤大介『13億人のトイレ』~インドにはトイレがない!?清掃カーストの過酷な仕事やガンジス川の汚染についても学べる1冊!

この作品はとにかく衝撃的です。こんな劣悪な状況で清掃カーストの人たちは働いているのかと衝撃を受けました。何の処理もされていない下水に何の装備もなく浸かり、素手でその詰まりを解消させる仕事の様子には読んでいて目を疑いました。

また、モディの進めるインド全土のトイレ設置の政策の欺瞞にはただただ唖然とするしかありませんでした。インドの汚職、腐敗、賄賂体質はすさまじいものがあります。このトイレ政策においても忖度、汚職、不正まみれの実態があったのでありました。まさに汚物まみれのトイレ政策だったわけです。

そしてインドや仏教に関心のある方には特に関心の強いであろうガンジス川についての言及があるのも本書の嬉しいポイントです。ぜひおすすめしたい作品です。

大乗仏教の思想インドにおける仏教

中村元選集第21巻『大乗仏教の思想』~原始仏教と初期大乗について考えるのに刺激的なおすすめ参考書

今作では日本仏教にも直接関わってくる大乗仏教の思想やその成立・発展過程を知ることができます。中村元先生の特徴は単に思想だけでなく当時の時代背景と絡めて語る点にあります。この本でも当時の時代背景や当地の気候風土、民族性など幅広い視点から仏教を見ていきます。

この本では冒頭からいきなりドキッとする指摘がなされます。記事タイトルにありますように仏教とは何かを考える上で非常に興味深い指摘満載の名著です。

現代インドのカーストと不可触民インド思想と文化、歴史

鈴木真弥『現代インドのカーストと不可触民』~デリーの清掃カーストから見る差別の実態とは

この本はデリーの清掃カーストを切り口にインドのカースト差別の実態について見ていく作品です。

インドのカースト差別の実態については以前当ブログでも池亀彩著『インド残酷物語 世界一たくましい民』や藤井毅著『歴史の中のカースト 近代インドの〈自画像〉』を紹介しました。

これらの本でもインドのカースト差別の実態は詳しく語られていましたが、今作では現地でのフィールドワークやデータを基にデリーの清掃カーストに特化して見ていく点にその特徴があります。

データやフィールドワークを中心にした貴重なインド情報を知れるのが本書です。次の記事で紹介する佐藤大介著『13億人のトイレ 下から見た経済大国インド』と合わせてぜひおすすめしたい作品です。

生活の世界歴史5インド思想と文化、歴史

辛島昇・奈良康明『生活の世界歴史5 インドの顔』~インド人の本音と建て前。生活レベルの精神性を幅広く知れるおすすめ本!

実際の生活には「本音と建て前」があります。これを無視してどちらかだけを取り上げてしまうと全く別のものが出来上がってしまうという著者の指摘にはたしかに「なるほど」と頷けるものがありました。

本書ではこうした宗教面だけでなく、カーストや芸術、カレーをはじめとした食べ物、政治、言語、都市と農村、性愛などなどとにかく多岐にわたって「インドの生活」が説かれます。仏教が生まれ、そしてヒンドゥー教世界に吸収されていったその流れを考える上でもこの本は非常に興味深い作品でした。

近代インドの思想インド思想と文化、歴史

中村元選集第31巻『近代インドの思想』~イスラーム侵入以後のインドやヒンドゥー教の宗教改革について学ぶのにおすすめ

中世インドは仏教やヒンドゥー教が栄えた古代インドと比べるとマイナーなジャンルかもしれませんが、仏教やヒンドゥー教そのものを考える上で大きな示唆を与えてくれます。私もこの本で語られるインドイスラームの歴史を興味深く読ませて頂きました。これは面白いです。

あまり話題にならない中世インドの話ではありますが、あえて手に取ってみるのもありだと思います。面白いです。

日本でわたしも考えたインド思想と文化、歴史

P・アイヤール『日本でわたしも考えた』~インド人から見た日本とは。日本の良さも悪さも率直に綴られた痛快作

この本を読めば日本とは何なのか、私たち日本人は海外からどう見られているのかというのがよくわかります。

この本を読んでいて特に感じたのはやはり「私達日本人も見られているのだ」ということでした。

私はここ数か月、インドについて学んでいます。インドについて語られた本をひたすら読み、この後には実際にインドを訪れる予定です。

そうして私はインドを読んで見て知ろうとしています。

ですがニーチェの「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」という言葉ではないですが、インドも私のことを見ているのだということを改めて実感したのでした。

略奪の帝国インド思想と文化、歴史

W・ダルリンプル『略奪の帝国 東インド会社の興亡』~現代への警告!大国インドはなぜイギリスの植民地になってしまったのか

この本では巨像インドがイギリスの東インド会社に支配されていく流れを詳しく見ていく作品です。

この本はあまりに衝撃的です。読んでいて恐怖すら感じました。圧倒的な繁栄を誇っていたムガル帝国がなぜこうもあっさりとイギリスの貿易会社に屈することになってしまったのか。この本で語られることは現代日本に生きる私たちにも全く無関係ではありません。この本はまさに私達現代人への警告の書とも言えるでしょう。
私はこの本を読んでつくづく今の日本が怖くなりました。