青銅の騎士

プーシキン『青銅の騎士』あらすじと感想~ゴーゴリ・ドストエフスキーの「ペテルブルグもの」の元祖

『青銅の騎士』が後のロシア人作家に与えた影響は並々ならぬものがあります。

こうした文学的な影響力もさることながら、ひとつの読み物としてもとても面白い作品です。さすがプーシキンの傑作と呼ばれるだけあります。

プーシキンらしく簡潔かつ研ぎ澄まされた表現でどんどん物語が動いていきます。現実と幻想が絶妙に入り混じったプーシキンの世界観がいかんなく発揮されています。これは面白いでした。

駅長

プーシキン『駅長』あらすじと感想~『カラマーゾフ』のあの名シーンはここから来ていた!?

かつて私は『カラマーゾフの兄弟』の「スネギリョフがもらった金を踏みつける有名なシーン」を初めて読んだ時、「なんでドストエフスキーはこんなことを思いつけるのだろう!なんて化け物なんだ!」と学生ながらに感動したものでした。

ですがそのシーンに似たシーンがまさに、この作品にあったのです。若い頃から暗記するまでに読みふけっていたプーシキンからこういう風にドストエフスキーはインスピレーションを受けていたのです。これは衝撃でした。

石の客

プーシキン『ペスト流行時の酒もり』あらすじと感想~疫病の極限状態でロシア人は何を思うのかをプーシキン流に問うた名作

ひとつ前の記事で紹介しました『石の客』でもそうでしたが、この作品でもプーシキンは従来の作品とは異なる視点でこの物語を書き換えます。

ページ数にして20ページにも満たないコンパクトな作品ながらこの作品に込められた主題はあまりに根源的です。プーシキンはたった20ページ弱の物語でそれを見事なまでに凝縮し、芸術にまで高めました。

短いながらも強烈なインパクトを残す作品でした。苦悩や絶望、死に対して私はどんな向き合い方をするのかということを考えさせられた作品でした。

凄まじい名作です

石の客

プーシキン『石の客』あらすじと感想~プレイボーイの代名詞「ドン・ファン」をロシア流に翻案した名作悲劇

プーシキンは既成のドン・ファン像をそのまま採用することはしませんでした。

彼の描くドン・ファンはたしかにプレイボーイではあるのですが、スペインやイタリア、フランスのように女をもてあそんでは捨てるというような軽薄な男ではありません。

ドストエフスキーがプーシキンを高く評価するのも、こうした彼の独特な世界の見方とそれをロシア人の心に響くものにまで磨き上げた点にあるのでした。

プーシキンは読めば読むほどその革新性や後代に与えた影響力の大きさを感じさせられます。

この作品もとても面白い作品でした。非常におすすめです。

石の客

プーシキン『モーツァルトとサリエーリ』あらすじと感想~天才が天才に抱く嫉妬の物語。ぜひおすすめしたい傑作!

『モーツァルトとサリエーリ』は日本においてはマイナーな作品ですがこれは逸品です。もっと世に出てほしい作品です。とってもおすすめです。読めばわかります。プーシキンはすごいです。そのすごさをこの作品で特に感じました。

正直私にとってこの作品がプーシキン作品の中で最も好きな作品かもしれません。

ぜひ読んで頂けましたら嬉しく思います。

石の客

プーシキン『吝嗇の騎士』あらすじと感想~ドストエフスキー『未成年』に強烈な影響を与えた傑作小悲劇

この作品はドストエフスキーと非常につながりの深い作品として有名です。

ドストエフスキーは無から作品を創造したのではありません。多くの偉大な先達の作品を長い時間をかけて自らに取り込み、そこからドストエフスキー流の世界観を表現していったのです。

『吝嗇の騎士』は直接的には『未成年』に最も強い影響を与えた作品ですが、『罪と罰』や『カラマーゾフの兄弟』にも影響を与えていると考えるとまた興味深いです。

石の客

プーシキン『ボリス・ゴドゥノフ』あらすじと感想~イワン雷帝亡き後の混乱時代を劇作化

『ボリス・ゴドゥノフ』はプーシキンの歴史観を知る上で非常に重要な作品です。

ドストエフスキーも当然この作品を熟読しており、その歴史観を彼の内に取り込んでいます。ドストエフスキーの民衆愛はこういうところからも影響を受けているのかもしれません。

イヴァン雷帝亡き後のロシアの歴史を知る上でもとても興味深い作品ですのでおすすめの作品です。

Yahoo!ニュース「百貨店はついに「大閉店時代」に突入、東京商工リサーチが解説」を読んで

ゾラの『ボヌール・デ・ダム百貨店』と鹿島茂氏の『デパートを発明した夫婦』を読めば百貨店の誕生の過程やその繁栄の秘密をかなり詳しく知ることができます。

私は経済学者でもビジネスの専門家でもありませんのでこうしたことを言うのは僭越なこととは思いますが、文学、思想、社会という視点から百貨店を見ていくのも非常に興味深いことなのではないかと思います。

ニュースを見て改めてゾラの視点というのは現代にも必ず生きてくると感じた今日この頃でありました。

レールモントフ『現代の英雄』あらすじと感想~ロシア最初の心理的小説!ロシア三大文豪とのつながり

『現代の英雄』は後の作家たちに大きな影響を与えました。

特に、「しかしこのような風俗的亜種を生み出したのも、作品にそれだけ強い毒が含まれているということであって、人間の魂の暗い部分、いわゆる存在の「悪」の意味をドストエフスキイに先んじてつかまえていたこの作品は今日もその新鮮さを失っていない。」とロシア文学者川端香男里氏が述べるのは非常に重要です。

ロシア文学に特有の、人間の本質に迫るどろどろした展開はここに根があったのです。

バイロン『マンフレッド』あらすじと感想~「バイロン的」とは?プーシキンの『オネーギン』とのつながり

バイロンは後の作家たちに多大な影響を与えました。プーシキンもその一人です。

そしてそのプーシキンを深く敬愛していたドストエフスキーもバイロンを読み込み、そして『オネーギン』を通してバイロン的なるものへの思索を深めていったのでありました。

こうして考えてみると改めて、あらゆるものは繋がっているのだなと感じさせられました。

『マンフレッド』は近代人の自我の悩みを描いた古典中の古典です。その迫力は今でも色あせないものがあると感じました。言っていることに全然古さを感じさせないです。