ドストエフスキー論

ゴロソフケルドストエフスキー論

ゴロソフケル『ドストエフスキーとカント 『カラマーゾフの兄弟』を読む』~カントという切り口から見るドストエフスキーとは

やはり欧米文学をやる上ではカントは避けては通れぬ道なのかもしれません。

とはいえ、正直申しまして私はカントやヘーゲル、プラトンなど西欧哲学が苦手です。挑戦してはあっさりと跳ね返され、未だにしっかりとは読めていません。

ですがこの本ではその言わんとしていることが何となくわかります。カントを知った上で読むのがベストなのかもしれませんが、そうでなくとも読んでいくことができます。

ドストエフスキーをまた違った視点から見ることができる興味深い作品でした。

ベルジャーエフドストエフスキー論

ベルジャーエフ『ドストエフスキーの世界観』~亡命ロシア人哲学者によるドストエフスキー思想研究の古典

人生の苦悩の中に光明が、救いがある。苦悩を苦悩として引き受けていく、そこにドストエフスキー作品の救いがあるとベルジャーエフは述べます。

ドストエフスキーは重くて暗い作品ばかり書いたというイメージが根強い作家ですが、それは真のドストエフスキーではないと彼ははっきり言うのです。ここに彼のドストエフスキー観の特徴があります。

クドリャフツェフの『革命か神か―ドストエフスキーの世界観―』と対比しながら読むとそれぞれの思想の違いが際立ってさらに面白くなります。

クドリャフツェフドストエフスキー論

クドリャフツェフ『革命か神か―ドストエフスキーの世界観―』ソ連的ドストエフスキー像を知るならこの1冊

この本は前回ご紹介した佐藤清郎著『観る者と求める者 ツルゲーネフとドストエフスキー』と共にものすごい本でした。ぜひ2冊セットで読むことをおすすめします。そうするとこの本の持つ意味がより深まると思います。

ソ連時代にドストエフスキーがいかにしてソ連化していったのかがとてもわかりやすいです。そしてドストエフスキーが非信仰者であるという論説がどのようにして生まれてきたのかも知ることができます。これはドストエフスキーとキリスト教を学びたいと思っていた私にとっては非常に興味深かったです。あまりに面白かったので夜寝る時間が大幅に遅れてしまったほどです。読んでいて途中で切り上げるなんて到底できなくなりました。それほどこの本はすごいです。

観る者と求める者ドストエフスキー論

佐藤清郎『観る者と求める者 ツルゲーネフとドストエフスキー』これ1冊で両者の特徴を学べる名著!比べてわかるその個性!

やはり比べてみるとわかりやすい。特に、ツルゲーネフとドストエフスキーは真逆の人生、気質、文学スタイルを持った二人です。

違いが大きければ大きいほど見えてくるものははっきりしてきますよね。

この著作を読むことでドストエフスキーがなぜあんなにも混沌とした極端な物語を書いたのか、ツルゲーネフが整然とした芸術的な物語を書いたのかがストンとわかります。

おすすめドストエフスキードストエフスキー論

おすすめドストエフスキー解説書一覧~これを読めばドストエフスキー作品がもっと面白くなる!

この記事ではこれまで紹介してきましたドストエフスキー論を一覧できるようにまとめてみました。

それぞれの著作にはそれぞれの個性があります。

また、読み手の興味関心の方向によってもどの本がおすすめかは変わってくることでしょう。

簡単にですがそれぞれのドストエフスキー論の特徴をまとめましたので、少しでも皆様のお役に立てれば嬉しく思います。

高橋誠一郎ドストエフスキー論

高橋誠一郎『ロシアの近代化と若きドストエフスキー「祖国戦争」からクリミア戦争へ』~ドストエフスキーの青年期に着目

ドストエフスキーに関する参考書はそれこそ無数に存在しますが、その多くはやはり『罪と罰』や『悪霊』『カラマーゾフの兄弟』などドストエフスキー後期の長編を題材にしていることがほとんどです。

そんな中、この本ではドストエフスキーの若かりし頃の作品を主に論じています。

しかも単にドストエフスキー作品の解説をするのではなく、当時の混沌としたロシア情勢やドストエフスキーがどのようにして作家としての道を歩んでいったのかが詳しく書かれています。

木下豊房ドストエフスキー論

木下豊房『ドストエフスキー その対話的世界』~ドストエーフスキイの会会長によるドストエフスキー論

この著作では国内外の研究をふまえて、作品を論じていきます。これまでドストエフスキーがどのように研究され現在はどのように論じられているかという流れがわかりやすく説かれています。

特に以前紹介したバフチンや、夏目漱石、小林秀雄など日本の文人とドストエフスキーの繋がりの歴史も知ることででき、新しい発見をすることができました。

また著書の後半にドストエフスキーに関するエッセイが多数収録されていますが、その中でもドストエフスキーゆかりの地を巡るシリーズは特に興味深かったです。

ツヴァイクドストエフスキー論

ツヴァイク『三人の巨匠』~バルザック、ディケンズ、ドストエフスキー、比べてわかるその特徴

この本の著者シュテファン・ツヴァイクは1881年にウィーンに生まれ、『マリー・アントワネット』や『バルザック』など世界的ベストセラーを著し、世界的な伝記作家として有名です。

「なぜドストエフスキーは難しくて、どこにドストエフスキー文学の特徴があるのか。」

ツヴァイクはバルザック、ディケンズとの比較を通してそのことを浮き彫りにしていきます。

比べてみると実にわかりやすいですね。さすが世界屈指の伝記作家です。まさに目から鱗でした。

バフチンドストエフスキー論

バフチン『ドストエフスキーの詩学』~ポリフォニー論はここから始まった

『ドストエフスキーの詩学』 も前回紹介したシェストフの『悲劇の哲学』と同じくドストエフスキー研究の古典とされています。

この本の特徴はと言いますと、何といっても「ドストエフスキー作品はポリフォニー小説である」と定義した点にあります。

近年のドストエフスキー関連の書籍を読んでいると、そのほとんどに「ドストエフスキーの小説はポリフォニー的であり・・・」という解説がぽんと出てきます。

こうした有名な概念の起源をこの本では知ることができます

シェストフドストエフスキー論

シェストフ『悲劇の哲学 ドストイェフスキーとニーチェ』~『地下室の手記』に着目したドストエフスキー思想の古典 

ドストエフスキーの思想を研究する上で『地下室の手記』が特に重要視されるようになったのもシェストフの思想による影響が大きいとされています。そのためシェストフの『悲劇の哲学 ドストイェフスキーとニーチェ』はドストエフスキー研究の古典として高く評価されています。

『地下室の手記』と合わせて読むことでドストエフスキー思想の研究に役立つ作品です。