インドの歴史・宗教・文化について知るのにおすすめの参考書一覧~知れば知るほど面白いインド沼へ
インドの歴史・宗教・文化について知るのにおすすめの参考書一覧~知れば知るほど面白いインド沼へ
この記事では私がおすすめするインドの参考書をご紹介していきます。
当ブログでは『【インド・スリランカ仏跡紀行】を連載していますが、これから紹介する本達に私も強い影響を受けています。
私は以前、「インド仏教をもっと知りたい方へのおすすめ本~入門から専門書まで私がぜひおすすめしたい逸品を紹介します」という記事でインド仏教を学ぶためのおすすめ参考書もご紹介しましたが、今回の記事ではよりインドの宗教・歴史・文化に特化してご紹介していきたいと思います。
それぞれの記事のリンク先ではより詳しい本紹介がなされていますので、興味のある方はぜひそちらもご参照頂ければと思います。では、早速始めていきましょう。
インドの歴史を学ぶのにおすすめの参考書
『NHKスペシャル 四大文明 インダス』
この本はNHKスペシャルの取材が基になった作品で、インダス文明のおすすめの入門書となっています。
この本では上の商品紹介にありますように、ドービードーラーという当時発見されたばかりの貴重な遺跡や、インダス文明全体の貴重な写真や図版がたくさん紹介されています。また、普段私たちがなかなか触れることのない古代インドの世界をわかりやすく解説してくれます。私はこの本がインダス文明の本では一番最初に読んだ本でしたが、スムーズに読んでいくことができました。入門書として非常にクオリティーの高い逸品です。
私たちの常識が全く通用しないのがインドだとはよく言いますが、その雰囲気がよく感じられるのもこの本の面白い所だと思います。
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上杉彰紀『インダス文明 文明社会のダイナミズムを探る』
本書のタイトルが『インダス文明 文明社会のダイナミズムを探る』とありますように、この本ではインダス文明の誕生から衰退という歴史の大きな動きを見ていきます。私達は古代文明の驚異的な繁栄や技術に目が向いてしまいがちですが、それだけではなく衰退と変容にも着目して見ていくことの大切さをこの本では学ぶことができます。
仏教もインダス文明やその後のインド世界の歴史の文脈で生まれてきたものです。インダス文明は衰退して完全に消滅してしまったのではなく、その後のインド世界に溶け込み、一体化していきました。
そうした歴史の大きな流れの中に仏教もある。
私たちは「インドで仏教が生まれた」というと、何か新しいものが独立して生まれてきたという風に考えてしまいがちです。
ですが実際にはそうではなくインダス文明、いやさらに言えば世界の歴史と密接に絡み合って仏教は生まれてきました。
私もこうしてインダス文明を学ぶまでは仏教とインダス文明というものをつなげて考えるということにはほとんど意識が向いていませんでした。
ですがこの本を読んで改めて人類の歴史の壮大さ、ダイナミズムを感じることになりました。やはりインドは面白い!
謎多きインダス文明の様々な姿を知れる面白い作品です。
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山崎元一『古代インドの文明と社会〈世界の歴史3〉』
この本は古代インドの歴史や文化を詳しく知ることができるおすすめの解説書です。
「詳しく知ることできる」というと、難しくて読みにくい本というイメージが湧いてくるかもしれませんがこの本は全く違います。ものすごく読みやすく、わかりやすいです。
そして私がこの本を手にったのは仏教が生まれてくる時代背景を知りたかったからでした。なぜ仏教が人々に受け入れられたのかを知るには、思想面だけではなくそれが受け入れられた土壌も知らねばなりません。当時の人々がどんな社会に生き、どんな生活をしていたのか、それを私は知りたかったのです。
この本はそんな私の疑問に答えてくれた素晴らしい作品でした。
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藤井毅『歴史の中のカースト 近代インドの〈自画像〉』
この作品ではインドにおけるカースト制度がイギリスによる植民地政策によってより複雑化、固定化されたことを知ることができます。
私がこの本を手に取ったのは以前当ブログでも紹介した池亀彩著『インド残酷物語 世界一たくましい民』がきっかけでした。
この本では現在でも続くカースト差別の悲惨な実態を知ることになりました。そしてこの本の中で紹介されていたのが本書『世界歴史選書 歴史の中のカースト 近代インドの〈自画像〉』だったのです。
インドにおけるカースト差別は古代インドからありました。しかし現代のカースト差別は必ずしも古代インドからそのまま続いてきたものではありません。
そこにはインド独自の複雑な文化や民族性もさることながら、イギリスにおける植民地支配の影響があったのです。
インドにおけるカースト制はとにかく複雑です。
たしかに古代インドにもカースト制はありました。そしてそのカースト制度を批判していたのが仏教やジャイナ教だったというのはこれまで当ブログでも見てきた通りです。
ですが、そのインド土着のカースト制を一変させ、より強固なものに変えてしまったのがイギリス植民地政策だったのでした。そしてさらに難しいことに、イギリス植民地統治を生き抜くために自分たちのカーストを利用したという、インド人側からの働きかけもあったことをこの本では知ることになります。
イギリスをはじめとした西欧諸国と現地のインド人、その双方向の作用があって現在のカーストに繋がっていることを詳しく見ていけるこの本はとても貴重です。
著者はインドのカースト制度は単純化されて語られがちであるということを本書で指摘していました。この本ではなぜそうした単純化したカースト制が語られてしまうのかを歴史的な背景から解き明かしてくれます。
インドの複雑さを学ぶ上でもこの本は非常にありがたい作品となっています。ぜひおすすめしたい一冊です。
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歴史のなかのカースト: 近代インドの〈自画像〉 (世界歴史選書)
森本達雄『インド独立史』
この本はあまりに重いです・・・。この本で説かれるインド苦難の歴史は想像を絶します。
インドのイギリス植民地からの独立といえばマハトマ・ガンディーを思い浮かべることでしょう。
インド独立のリーダー、ガンディー。私達はガンディーの非暴力や非協力、塩の行進など有名な抵抗運動を単語レベルでは知っています。そして彼の活躍によりインドは最終的にイギリスから独立を勝ち取ったということも私たちは知ってはいます。
ですがその背景で何が起こっていたのか。この本では想像を絶するほど複雑な事態があったことを目の当たりにすることになります。
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W・ダルリンプル『略奪の帝国 東インド会社の興亡』
この本では巨像インドがイギリスの東インド会社に支配されていく流れを詳しく見ていく作品です。
はじめに言わせて言わせて頂きますが、この本はあまりに衝撃的です。読んでいて恐怖すら感じました。圧倒的な繁栄を誇っていたムガル帝国がなぜこうもあっさりとイギリスの貿易会社に屈することになってしまったのか。この本で語られることは現代日本に生きる私たちにも全く無関係ではありません。この本はまさに私達現代人への警告の書とも言えるでしょう。
私はこの本を読んで心底恐くなりました。繁栄を誇っていた国もあっという間に崩れ落ちるのです。日本もかつては繁栄していたかもしれませんが今や完全に右肩下がりの状況です。そして今の混乱。
現代の警告書としてこの本は非常に大きな意味があると思います。
もちろん、インドの歴史やイギリス史に興味のある方にもとてもおすすめです。私もこれまで学んできたこととこの本が繋がり、非常に刺激的でした。まさかアメリカの独立戦争やあのナポレオンまでこの出来事と繋がってくるのかと仰天しました。
世界は繋がっているんだということも知れる名著です。これはぜひおすすめしたい一冊です。
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間永次郎『ガンディーの真実―非暴力思想とは何か』
マハトマ・ガンディーといえば誰もが知るインド独立に大きな役割を果たした偉人中の偉人です。
本作『ガンディーの真実―非暴力思想とは何か』はそんなガンディーの思想や人柄、そして社会に与えた影響についてわかりやすく見ていけるおすすめの参考書になります。
ガンディーの有名な「非暴力」は私達もよく知る言葉です。しかしこの「非暴力」がはたしてどういうものなのかというのが実はあまり知られていない、いや誤解すらされている。そんな問題提起が本書ではなされていきます。
特にガンジーの宗教観、そして家庭問題について説かれる第5章、6章は衝撃的です。私も「え?そうだったの!?」と驚いてしまいました。
ただ、この本は単なるゴシップのようなものではありません。ガンディーの思想や人柄を様々な資料によって明らかにしていきます。
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『NHKスペシャル文明の道〈3〉海と陸のシルクロード』
この本は古代インドとローマ帝国を結んだシルクロードについて学ぶのに最高の一冊です。図版や写真も豊富でイメージしやすく、解説も初心者でもわかりやすいように丁寧に語られます。
上の画像にありますように、陸路のシルクロードは多くの方がイメージすることができるのではないかと思うのですが、海のシルクロードというとあまりイメージが湧かないのではないでしょうか。かく言う私もシルクロードといえばラクダの隊商というイメージがあったので海で船が行き交うシルクロードというのはとても新鮮でした。
しかもこの船による大量輸送が古代インドとローマ帝国を結ぶ大きな手段だったというのにはものすごくロマンを感じました。
と言いますのも、私は昨年ローマ帝国について様々な本を読むことになりました。それらについてはこちらの「ローマおすすめ参考書一覧~歴史、文化、宗教、芸術!ローマがもっと面白くなる名著を一挙ご紹介!」の記事にまとめていますのでぜひ参照頂きたいのですが、私はすっかりローマ帝国の歴史に夢中になってしまったのでした。そのローマと古代インドが繋がるのです。これはたまりません。
古代インド、ローマ帝国、どちらも私にとってはロマン溢れる大好きな世界です。その二つが繋がった本書は私にとっても大興奮の一冊でした。
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インドの宗教・文化について知るのにおすすめの参考書
堀田善衞『インドで考えたこと』
この本で語られるのは1956年から57年初頭という、今から70年近くも前のインドです。これは戦後日本が急速に経済発展し、同時に安保問題など社会的、思想的に混乱を迎えた時代でもあります。
当時の日本では一般人が海外旅行に行くことはほとんどできない時代でした。そんな中インドは特に日本人を惹きつけた存在でありました。このインドブームと言いますか、インドへの好奇心、憧れのようなものを日本人に強く植え付けたのが本書と言ってもよいのかもしれません。
この本の出版のおよそ10年後にはあの三島由紀夫もインドを訪れその体験を彼の最期の大作『豊饒の海』に描いています。やはりインドは作家を刺激してやまないものがあるのでしょう。
そしてこの本は出版から70年近く経った今も全く色あせるものがありません。ものすごく面白いです。私もインド渡航前に何度も読み返しました。
とにかくこの旅行記は読みやすい!
そして人間の精神の奥底に入っていくような深い洞察だけでなく、思わずくすっと笑ってしまうようなユーモアも散りばめられています。これは極上の旅行記です。
そしてこの本の中で出てくるインド人の「おっかない顔」・・・
これがこの本の中で強烈に印象に残っています。
実際、私も2023年8月のインド訪問でその顔を目の当たりにすることになりました。
私のインド訪問にとっても本書『インドで考えたこと』は強い影響を与えています。これは素晴らしい旅行記です。単に「現地にはこんなものがあります!」で終わらない深い人間洞察がこの本にはあります。ものすごく面白いです。
ぜひぜひおすすめしたい傑作インド旅行記です。
この本を読めばあなたも「インドへ行ってごらんなさい」という声に誘われるかもしれません。
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山下博司『古代インドの思想―自然・文明・宗教』
この本ではインドの思想がその独特な気候や風土から大きな影響を受けていることを知ることができます。インドではなぜ無限の宇宙的な哲学が生まれたのか、なぜインド人は多神教的な宗教を信仰するのか、そうしたことを自然や風土という切り口から見ていけるこの作品は非常に刺激的です。
「(1)なぜ私はインドに行きたくないのか、どうしてそれでもインドに行かねばならぬのか、それが問題だ。」の記事でもお話ししましたが、私が8月の雨季のインドに行こうと思ったのはこの本がきっかけです。
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保坂俊司『インド宗教興亡史』
この本はインドの宗教を学ぶ上で非常にありがたい参考書です。
と言いますのも、この本ではインドに多数ある宗教をそれぞれ別個に見ていくのではなく、その相互関係に着目して語っていく点にその特徴があるからです。
インド古代のバラモン教と仏教、ジャイナ教の関係。そこから時を経てヒンドゥー教とイスラム教が力を増す背景とは何だったのか。なぜ仏教は衰退したのか、そしてその姉妹宗教と言われるジャイナ教はなぜ今も生き残ることができたのか。これらを時代背景や宗教間の相互関係から見ていけるこの本は非常に貴重です。宗教は宗教だけにあらず。歴史や文化、政治経済すべてが関わります。この本ではそんな歴史のダイナミズムを感じることができる非常に刺激的な作品です。
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森本達雄『ヒンドゥー教―インドの聖と俗』
インド、ヒンドゥー教といえば上の写真のような礼拝の儀式を連想してしまう私でしたが、この本ではこうしたヒンドゥー教の成り立ちや思想だけでなく、一般信者の日常レベルでの信仰についても知ることができます。
謎の国インド。同じアジアでありながら異世界のようにすら思えてしまうインドについてこの本では楽しく学ぶことができます。著者の語りもとてもわかりやすく、複雑怪奇なインド世界の面白さを発見できます。「なぜインドはこんなにも独特なのか」ということを時代背景と共に知ることができますのでこれは興味深いです。
私たちからすると複雑怪奇な魔境にも見えてしまうインド。そのバックグラウンドには独特な宗教的事情があります。これは非常に興味深かったです。
他にもこの本ではインドの興味深い宗教事情をたくさん知ることができます。そしてそれらはインドの宗教にとどまらず、「そもそも宗教とは何なのか」ということまで考えさせられることになります。
これは面白い本でした。どんどんインド沼にはまりつつある自分を感じています。
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川村悠人『ことばと呪力 ヴェーダ神話を解く』
この本は古代インドの神話を題材に「ことば」の持つ力について考えていく作品になります。古代インドの『ヴェーダ』と言われると何やら難しそうな気がして一歩引いてしまうかもしれませんがご安心ください。インドについて何も知らない方でも気軽に楽しく読めるよう著者は心を砕いておられます。
ことばはその人自身を表します。もちろん、「言葉、言葉、言葉」と言われるように、時には言葉そのものも信用できない時もあります。ですが普段何気なく使っていることばはやはりその人を表すものです。その人の内から現れ出るものがことばだと思います。
ことばというものを改めて考えてみるきっかけとしてこの本は非常に素晴らしいものがあると思います。そして普段接することのない古代インドの歴史や文化も楽しく学べるありがたい作品です。
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辛島昇・奈良康明『生活の世界歴史5 インドの顔』
この本ではインドの生活レベルの文化や精神性について学ぶことができます。著者が述べるように実際の生活には「本音と建て前」があります。これを無視してどちらかだけを取り上げてしまうと全く別のものが出来上がってしまうというのはたしかに「なるほど」と頷けるものでありました。
本書ではこうした宗教面だけでなく、カーストや芸術、カレーをはじめとした食べ物、政治、言語、都市と農村、性愛などなどとにかく多岐にわたって「インドの生活」が説かれます。仏教が生まれ、そしてヒンドゥー教世界に吸収されていったその流れを考える上でもこの本は非常に興味深い作品でした。これはぜひぜひおすすめしたい作品です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
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マーティン・J・ドハティ『インド神話物語百科』
ドハティは単に物語の内容を語るだけでなく、その時代背景や文化の奥深さまで語ってくれます。
今作『インド神話物語百科』においても「どのような宗教であれ、その宗教を理解するには、その背景となる社会や文化、その文化が形成された歴史を知ることが不可欠である(P13)」とドハティが述べるように、ヒンドゥー教が成立していく時代背景も知れる非常にありがたい構成となっています。
人間には世界の真理を知り尽くすことができない。神話そのものも答えを与えてくれない。だが、「そこには自己認識が存在する」。
この解説に私はぐっと来ました。これまで私は「親鸞とドストエフスキー」をテーマに4年ほど学んできましたが、キリスト教的な世界観では「絶対的な真理などない」という発想はほとんど出てきません。絶対者・創造主である神の存在は自明のものとしてそこに存在しています。しかしインドではそうではなかった。こうした西洋東洋の違いを感じられるのも興味深い点です。
そしてこの本を読んでいると、ヒンドゥー教の死生観や来世観についても知ることになります。当時の時代背景と絡めながらそれらのことを考えていくと、仏教というものがまさに「インドの文脈」から生まれてきたのだということを強く感じることになりました。
仏教の思想やそこで使われる用語、概念がまさにヒンドゥー教の世界から生まれてきたのだということを改めて実感したのです。仏教から遡りインドの歴史や文化を知ることで見えてくるものがある。それを確信した読書になりました。これは面白いです。仏教に対する新たな視点をくれる素晴らしい作品だと思います。
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服部正明『古代インドの神秘思想 初期ウパニシャッドの世界』
この本は古代インド思想の奥義とも言えるウパニシャッド哲学について説かれた作品です。
そしてこの記事のタイトルにも書きましたように、この本の序盤では古代インド思想とショーペンハウアーのつながりについても説かれます。
これまで当ブログでもショーペンハウアーについて見てきましたが、彼と古代インドのつながりやそれがヨーロッパ社会に与えた影響も詳しく知れたのはとても興味深かったです。
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古代インドの神秘思想 初期ウパニシャッドの世界 (法蔵館文庫 は 2-1)
立川武蔵『ヒンドゥー教巡礼』
この本はヒンドゥー教の聖地を著者と一緒に旅をしている気分になれる作品です。
この本ではインドだけでなくネパールやバリなどの地も紹介されます。ヒンドゥー教といえばインドのイメージがありますが、実はその周辺国にもヒンドゥー教は信仰されていたのでありました。特にネパールの首都カトマンズでの章は私にとっても目が開かれるような思いになりました。これまでの伝統的な社会の中に急激に現代資本が入るとどうなってしまうのか、著者はそのことについて自身の目で見た世界を私たちの前に開いてくれます。
古くから生き続けている宗教の姿、人々の生活。この本では抽象的な哲学概念ではなく、生身の人間の暮らしそのものを見ることができます。現地の人々と宗教はどのような関係なのか。日本に生きる私達と何が違うのか。そうしたことを考えさせられます。
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辻直四郎『インド文明の曙―ヴェーダとウパニシャッド―』
「本書はヴェーダの概要を、専門家以外の人に紹介するのを目的とする。従ってこれはヴェーダの研究書ではなく、常識としてのヴェーダの入門書である。」
「ヴェーダとウパニシャッド」といいますと何かとてつもなく難しそうなイメージが湧いてきますがこの本自体はここで述べられますように専門家以外の人にもわかるように書かれた入門書になります。
古代インドの宗教において何が信仰されていたのか、どのように信仰されていたのかということを知ることができるのがこの本です。
特にインド最古の文献である『リグ・ヴェーダ』には現在のヒンドゥー教の源流になったバラモン教の神々がたくさん登場します。ヒンドゥー教になる前のインド宗教との違いを感じる上でもこの本は非常にありがたい作品でした。
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インド文明の曙: ヴェーダとウパニシャッド (岩波新書 青版 619)
辻直四郎訳『リグ・ヴェーダ讃歌』
この本は古代インドの根本聖典『リグ・ヴェーダ』の主要な箇所を抜粋した作品になります。
上ではこの聖典のおすすめの参考書、辻直四郎著『インド文明の曙―ヴェーダとウパニシャッド―』をご紹介しましたが、いよいよその本丸の登場です。
『リグ・ヴェーダ讃歌』というタイトル通り、この聖典ではとにかく神々への讃嘆が繰り返されます。
そして上の解説にありましたように、その神々のバリエーションがとにかく豊富です。また、そこに神々のランク付け、秩序があいまいというのが非常に興味深いです。まさに多神教的な世界がそこに繰り広げられます。
その中でも特に興味深かったのが後のヒンドゥー教で主神となるヴィシュヌとシヴァがこの『リグ・ヴェーダ讃歌』では影が薄いという点です。シヴァ神においてはその前身のルドラという名前で登場しますが、古代インドの時点ではそこまで人気のある神ではなかったというのは非常に興味深かったです。
このヴェーダで影の薄かったヴィシュヌとシヴァがやがてインドの宗教で絶大な人気を得るようになっていく。この変化がインド宗教を知る上で非常に重要なポイントとなりそうです。
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沖田瑞穂『マハーバーラタ入門 インド神話入門』
早速この本について見ていきましょう。
ここに存するものは他にもある。しかし、ここに存しないものは、他のどこにも存しない―
神話・教説・哲学が織り込まれた古代インド叙事詩『マハーバーラタ』。
18巻・十万詩節からなるヒンドゥー教の聖典を1冊にまとめた画期的入門書! !
英雄・アルジュナ、宿敵・カルナ、ヴィシュヌの化身・クリシュナ、絶世の美女・ドラウパディー…。神々・英雄たちが活躍する今話題の『マハーバーラタ』が一冊で丸わかり!★『マハーバーラタ』とは…
サンスクリット語で書かれ、全18巻、約10万もの詩節より成る古代インド叙事詩。「マハーバーラタ」は、「マハー(偉大な)・バラタ族」=「バラタ族の物語」という意味。
従兄弟同士の戦争物語を主筋とし、その間に多くの神話、教説、哲学が織り込まれた、膨大な書物である。物語では、何億という人間が戦争で命を落とし、生き残るのはたったの10人であるため、この物語を「寂静の情趣(シャーンタ・ラサ)」とよぶこともある。【本書の特色】
Amazon商品紹介ページより
◎長大な物語を、4章構成とし、それぞれ「主筋」・「挿話」に分け、わかりやすく解説。
◎神話モチーフの読み解き、他地域の神話との類似点や相違点、登場人物についての豆知識など『マハーバーラタ』がより深く楽しめる多数のコラムを掲載。
◎英雄たちの系図、登場人物一覧、索引など充実の附録。
この本はインドの大叙事詩『マハーバーラタ』の概要を知れるおすすめの入門書です。
あまりに長大なこの叙事詩の全体像を掴むのに本書は非常に役に立ちました。初学者でも安心してその流れを学んでいけるおすすめの入門書です。インドに興味のある方にぜひおすすめしたい作品です。
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上村勝彦『バガヴァッド・ギーターの世界 ヒンドゥー教の救済』
この作品はインドの大叙事詩『マハーバーラタ』の中で書かれるインド最高峰の思想書『バガヴァッド・ギーター』の解説書になります。
上の商品紹介にも書かれていましたように、著者はこの『バガヴァッド・ギーター』に日本の文化や大乗仏教とのつながりを指摘します。
「日本人はいわば「隠れヒンドゥー教徒」であるといっても過言ではありません。そのことを示すことが、本書の目的の一つでもあります。」
衝撃的な言葉ですよね。
ですがこの本を読んでいると、この言葉があまりにリアルなものとして感じられてきます。日本の文化や大乗仏教とのつながりが非常にわかりやすく説かれます。
この本自体は『バガヴァッド・ギーター』という古代インドの思想の解説書ということでなかなか手が伸びにくい作品であるかもしれません。ですがそこは少し見方を切り替えてこの本を仏教書として見てみてはいかがでしょうか。
この本は古代インドやインド思想を知らなくても読めるような作りになっています。また同時に、仏教の入門書としても十分通用するほどわかりやすい作品になっています。これはものすごい名著です。
日本仏教を知る上でも新たな視点を得られる非常におすすめな作品です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
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バガヴァッド・ギ-タ-の世界: ヒンドゥ-教の救済 (ちくま学芸文庫 マ 14-15)
『インド神話物語 マハーバーラタ』
『マハーバーラタ』はインドを代表する二大叙事詩のひとつです(もうひとつは『ラーマーヤナ』)。
この大叙事詩は現代インドでも親しまれていて、ここに出てくる英雄や神をモチーフに多くの映画も作られています。最近爆発的なヒットを叩き出したインド映画『RRR』もまさにその一つです。主人公のひとり、ビームは『マハーバーラタ』に出てくる英雄ビーマから来ています。さらに言えば、もうひとりの主人公ラーマも『ラーマーヤナ』の主人公ラーマから来ています。つまり『RRR』はインド二大叙事詩の合体というインド人の精神表現の極みたる豪華な作品なのです。これには私も胸が熱くなりました!
物語そのものとしても『マハーバーラタ』は非常に面白いです。この物語自体が王位継承争いから発しているということで非常に多彩な人間ドラマが展開されます。そこに呪いや前世からの因縁が絡んだりと、さらにドラマチックで読み応え抜群の物語となっています。
さらに、『バガヴァッド・ギーター』をはじめ、戦争という悲惨な地獄や苦しみ多き人生の中でいかに生きるか、何を求めて生きるべきかを問うてくるのがこの神話です。ドラマチックな神話物語の中に「いかに生きるべきか」という深い思索が込められています。こうした深い思索、「いかに生きるべきか」の知恵があるからこそインドにおいてここまで根付いたのではないでしょうか。
ギリシャ神話『イリアス』もそうでしたが、そもそも物語として抜群に面白い!現代でも多くの人に親しまれているのにはやはり理由があります。インド思想の源流を知る上でも非常に興味深い作品でした。
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『バガヴァッド・ギーター』
『バガヴァッド・ギーター』はインドの大叙事詩『マハーバーラタ』の中で説かれた、インド思想の奥義と言ってもよい対話篇です。
この作品は『マハーバーラタ』の主人公の一人、アルジュナとその御者クリシュナ(実はヴィシュヌ神の化身)との対話によって成り立っています。
その対話はもちろん『マハーバーラタ』の物語の筋を背景に始められます。『バガヴァッド・ギーター』単独で読んでもわからないことはないのですが、やはりより深く味わうためには『マハーバーラタ』の大筋を知っておくことが必須であると思います。
『バガヴァッド・ギーター』は文庫本で140ページほどとかなりコンパクトです。そして上村勝彦さんの訳も非常に読みやすく、巻末には50頁以上も解説が付されていますのでこれはありがたいです。
上で紹介した『バガヴァッド・ギーターの世界 ヒンドゥー教の救済』と沖田瑞穂著『マハーバーラタ入門 インド神話入門』、そして『マハーバーラタ』そのものと合わせて読めばさらに理解は深まります。
仏教を学ぶ上でもこれは大きな意味がありました。いや、仏教だけに収まらず、宗教、人間そのものにも目を開かせてくれる珠玉の聖典でした。
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『インド神話物語 ラーマーヤナ』
『マハーバーラタ』と並んでインド二大叙事詩と称えられる『ラーマーヤナ』は主人公ラーマが羅刹王ラークシャに囚われた妻シータを救いに行く冒険物語となっています。
『マハーバーラタ』、『ラーマーヤナ』と二つ続けてインド二大叙事詩を読んできましたがこれは素晴らしい体験となりました。インドの奥深さ、面白さに私はすっかり撃ち抜かれてしまいました。ぜひぜひおすすめしたい作品です。
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長谷川明『インド神話入門』
この本ではインドの神々をたくさんの図像とともに学ぶことができます。神々の特徴と見分け方を実際にその姿を見ながら学べるのは非常にわかりやすくてありがたいです。
異国人である私たちにはなかなか一見するだけでは区別がつきにくいインドの神々ではありますが、見分け方にはちゃんとポイントがあります。その神ごとに特有の姿であったり持ち物などが必ずあります。見分け方がわかればよりインドの神々への親近感が湧いてきます。
これまで本の文章を中心にインドを学んできましたが、こうして実際に神々の姿をじっくり見ていくというのはとても新鮮で楽しかったです。最初は不気味で本を開くことすらできなかった私でしたが今やこの本は私の愛読書です。ことあるごとに本書を手に取り、「あぁ、これがシヴァの特徴だったな」とそれぞれの神々の特徴を復習しています。これは便利な一冊です。
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渡瀬信之『マヌ法典 ヒンドゥー教世界の原型』
この本はインド・ヒンドゥー教世界の世界観、生活規範の礎となった『マヌ法典』の参考書です。
この作品は『マヌ法典』の概要をわかりやすく解説してくれる素晴らしい作品です。
インドにおける宗教は生活そのものと一体化したものとなっています。ただ精神的に信仰するのではなく、生活実践そのものとして存在しています。こうしたインドの宗教間、世界観の中で仏教も生まれています。
また、この作品の中でも説かれているのですがこの『マヌ法典』も、仏教やジャイナ教、様々な出家修行者の存在に大きな影響を受けています。いや、より正確に言うならば、互いに影響を与え合いながら思想や制度が生み出されてきました。
私達日本人がインドの仏教を学ぼうとすると、どうしても仏教の側のみからインド世界を見てしまいがちです。ですがインドにおいて仏教はどちらかといえばアウトサイダー側の存在でした。その主流はやはりヒンドゥー教世界になります。
しかも仏教は在俗信者の日常生活にはあまり介入しないという方針を取りました。つまり、仏教徒の日常生活や通過儀礼は相変わらずヒンドゥー教世界の枠組みの中にあったとされています。
そんなインド仏教徒とも共存してきたヒンドゥー教世界の生活規範や世界観を知れる本書は非常に貴重です。インド仏教について考える上でもとても大きな意味がある作品だと私は思います。
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『マヌ法典』
『マヌ法典』は紀元前2世紀から紀元2世紀に編纂されたとされるインドの聖典です。この聖典は今日のインド社会にも大きな影響を与え続けています。
『マヌ法典』は単なる法律書のようなものではありません。『マヌ法典』を読み始めてまず驚くのは、いきなりこの聖典が天地創造の話から始まるということです。ブラフマンという創造主を中心にした壮大な宇宙論、世界観がまず語られ、そこから人はいかに生きるべきか、何を規範とし生活の掟としていくのかが語られていきます。
また、上の『マヌ法典 ヒンドゥー教世界の原型』でも説かれていたのですが、単に生活規範やシステムを羅列していくのではなく、そこにブラフマンという創造主による宗教的権威付けがなされているところにポイントがあります。
『マヌ法典』は仏教やジャイナ教、無数の出家修行者への反論という側面を持った聖典です。仏教が厭世的で欲望を滅する形を理想としたのに対してヒンドゥー教の聖典は現世肯定で願望成就も否定しません。こうしたところにも後にインドで仏教が滅亡し、ヒンドゥー教が繁栄を極める理由があったのかもしれません。
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カウティリヤ『実利論』
今作の著者(とされている)カウティリヤは実は私達仏教徒にも大きな関わりがある人物です。と言いますのもカウティリヤは紀元前317年に建国されたマウリヤ王朝の祖チャンドラグプタの名宰相として知られた人物で、この王朝の最も有名な人物がこの少し後の時代に登場するアショーカ王です。
アショーカ王はインド全土に仏教を広めたことで有名な王ですが、その王朝はこのカウティリヤの政治力があったからこそインド全土に広がる勢力を持つことができたとも言えるでしょう。
というわけで私達仏教徒にとっても実は繋がりがあるのがカウティリヤなのでありました。
さて、マキャヴェリの『君主論』ではかなりえげつない権謀術数が説かれますが、この『実利論』もかなりのどぎつさです。
本書解説でも「本書の作者は、自国の治安を守り、国力を増強して、他者の領土を獲得するために、君主の採用すべきありとあらゆる権謀術数を説く。なかんずく、本書の随所で展開される諜報活動の実例は、最も注目すべきものの一つであろう。インドの古典において諜報活動は非常に重視され、後代の文学作品においても、スパイを適切に活用できぬ王は非難されている。」と述べられるように、スパイの活用法については特に念入りに説かれます。
この本を読んでいると王族で生まれることが全く羨ましくありません。どんなに贅沢ができたとしても私は謹んでその権利をお返ししたいと思います。ブッダももしかしたらそういう気持ちだったのかもしれません。
『実利論』よりも数百年前ではありますがブッダ在世時にもインド全土は戦国時代であり、弱肉強食の様相を呈しておりました。さらに言えば、ブッダは釈迦族の王子であり、本来は『実利論』で説かれるような権謀術数を用いて国を統治しなければなりませんでした。結果的にブッダはその道を捨て出家者となってしまいましたが、釈迦族はその後大国コーサラ国に滅ぼされることになります。ブッダは生まれた国の消滅を目の当たりにしたのでありました。
また、釈迦族を滅ぼしたコーサラ国ですらその後すぐにマガダ国に滅ぼされてしまいます。ちなみにこの時のマガダ国の王はアジャセという有名な人物です。きっと皆さんも聞いたことがあるのではないでしょうか。
ブッダはこうした弱肉強食、権謀術数の実態を肌身で感じた上で仏教を説いていました。そう考えると、ブッダの平和的な教えがいかに当時の常識から距離があるかを思い知らされます。
「ブッダの説く平和は単なる理想ではないか。現実の前にはそんなものは無力だ。国を治めるというのは綺麗事ではいかないのだ。」
私の中でそんな苦しい思いが何度もよぎりましたが、それでもなお信念を持って教えを説き最後まで生きたのがブッダなのだとしたらやはりそれは偉大なことだと私は思います。
当時の厳しいインド情勢を知る上でも本書は非常に役立つ作品です。
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実利論 上: 古代インドの帝王学 (岩波文庫 青 263-1)
『カーマ・スートラ』
私が『カーマ・スートラ』を読もうと思ったのはインドのカジュラーホーがきっかけでした。ここにはヒンドゥー教の寺院でありながら性的な彫刻がこれでもかと残されています。ですが単に「性的ないかがわしいもの」と侮るなかれ、宗教における性の問題は非常に重要なものを秘めていたのでありました。しかもこれは単にヒンドゥー教の中の話ではなく、仏教もヒンドゥー教の思想を吸収し、タントリズムや密教へと繋がっていくため、こうした性にまつわる思想や実践が現れてくることになります。
『カーマ・スートラ』は単なる好色文献というわけではありません。どぎつい性的表現ばかりと誤解されていますが、それもあくまで男女間の生活の一部分です。男女の出会い、そして共に歩む人生、その全体を含んでの『カーマ・スートラ』です。この法典を読んで男女間における生活規範がびっしり説かれていることに私も驚きました。
以前紹介した『マヌ法典』もまさに生活のあらゆる場面における生活規範を説いていました。そう考えると、ヒンドゥー教世界は日常生活すべてにおいてかなり厳密に規範、やるべきこと、信じるべきことが定められていたのだということになります。もちろん、本音と建て前があるように、そのすべてが厳密に守られていたわけではないでしょう。ですが、生活のまさに隅々までヒンドゥー教の教えが染みついていたのではないでしょうか。
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渡辺研二『ジャイナ教 非所有・非暴力・非殺生―その教義と実生活』
ジャイナ教は仏教と姉妹宗教と言われるほど共通点の多い宗教です。
この本ではジャイナ教の基本的な教義や成立の背景などをわかりやすく知ることができます。
時代背景と一緒にジャイナ教とは何かを知れるこの本はとてもおすすめです。
ジャイナ教の入門書としてとても読みやすく、仏教の参考書としてもありがたい作品でした。
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インド仏教をもっと知りたい方へのおすすめ本
この記事ではインド仏教について知るためのおすすめ本を紹介しています。
ここまでインドの宗教に特化して本を紹介してきましたが、仏教の本まで紹介するととてつもない量になってしまうので割愛することにしました。ぜひこちらも参考にして頂ければ幸いです。
現代インドについて学ぶのにおすすめの参考書
池亀彩『インド残酷物語 世界一たくましい民』
私はこの本に強い衝撃を受けました。僧侶としてショックを受けずにはいられない問題がこの本で説かれていたのです。詳しくはこの記事の後半で改めてお話ししていますが、私にとってこの本はインドという存在を考える上で大きな問題を提起してくれることになりました。
この本は現代インドにおけるカースト制について語られる作品です。上の本紹介にありますように、この本は著者の現地での調査に基づいた貴重な記録です。机の上で文献を読むだけでは知りえない、リアルな生活がそこにはあります。
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藤本欣也『インドの正体―好調な発展に潜む危険』
この本では2006年当時のインド社会を知ることができます。2023年となった今、インドは中国を凌駕する勢いで成長し続ける巨象です。この本はそのインドの2006年当時はどのような状況だったのかを知れる非常に興味深い作品です。
この本では「社会、文化、ビジネス」と様々な視点からインドを見ていきます。写真も豊富ですので非常に読みやすく、現地の状況もイメージしやすいです。
現代インドについて知りたいという方に非常におすすめな作品です。
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笠井亮平『モディが変えるインド』
近年インドは急激な成長を見せ、ついには中国を凌駕するのではないかというほどの勢いを見せています。BBCNEWSJAPANの「インド人口、中国抜き世界最多に 今年半ばに14億2860万人=国連」の記事では人口面でも今年中に中国を上回ることが書かれていました。
そんな成長著しい現代インドの政治経済、外交を知るのにこの本はうってつけの作品となっています。
今作『モディが変えるインド:台頭するアジア巨大国家の「静かな革命」』の主人公は書名にありますように2014年にインド首相に就任したナレンドラ・モディという人物です。
この本では複雑なインド社会をモディ首相という人物を軸に見ていくことになります。
モディ首相の簡単な略歴やその人柄、どのようにしてインド屈指の影響力を持つようになったのかがわかりやすく説かれます。
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モディが変えるインド :台頭するアジア巨大国家の「静かな革命」
清好延『インド人とのつきあい方―インドの常識とビジネスの奥義』
この本は私たちにとって「謎」としか言いようのないインド人とはどのような人たちなのかを知ることができる作品です。
インド人というと私たちにとっては様々なステレオタイプがあると思います。ターバンやカレー、歌やダンス、頭の良さ、インドのカオスなどなど、どれをとっても何かしら強烈なイメージがあるのではないでしょうか。
そんな強烈なイメージのインド人は一体どのような人たちなのか、それをインドの歴史や生活、文化、ビジネスと絡めて様々な観点から学んでいくのが本書の大筋になります。
この本はあくまでインドでビジネスをする人のために書かれた本ではありますが、それだけではなくインドそのものに興味のある方にもとてもおすすめな作品です。謎の国インド。日本とは全く違う世界観、人間観がここにあります。異文化を学ぶという意味でも非常に興味深い作品です。
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ジェイムズ・クラブツリー『ビリオネア・インド』
2023年に中国の人口を追い越し、経済成長著しい大国インド。モディ首相率いるインドはこれからどこへ向かうのか。今や世界に巨大な影響を与える存在となった現代インドについて知るのにこの本はうってつけです。
『ビリオネア・インド 大富豪が支配する社会の光と影』という書名にあるように、この本ではインドにおける超富裕層をメインテーマに据えてインドを見ていきます。
この本を読んでまず驚くのはインドの大富豪のあまりの富豪っぷりです。世界の富豪ランキングの上位に食い込むような超富裕層がインドで次々と生まれています。
こちらはこの本の冒頭で登場する大富豪ムケーシュ・アンバニの自宅アンティリアです。本書の表紙にもなっていますが、この建物は世界で最も高級な個人宅とも言われています。もしかすると「これくらいのビルなら世界にたくさんあるのでは?」と思うかもしれません。ですが違うのです。このビルの一部が彼の家というのではなく、このビルそのものが個人宅なのです。そう考えるとアンバニの驚くべき富豪ぶりが見えてきますよね。
今インドではこうした超富裕層がどんどん出てきています。彼らは圧倒的な富を手にしていますが、その一方で圧倒的な格差の問題がインドを揺るがしています。
インドでは元々格差が大きいことは知られていましたがここに来てその格差がさらに極端なものになっています。これが現代インドの悩みの種となっています。
ではそんな超富裕層はどのようにして生まれてきたのか、それを見ていけるのが本書になります。そして本紹介にありましたように、その主な理由が政財界との癒着、縁故主義、汚職、賄賂などの不正という、目を背けたくなるような現実でありました。
この本で語られるインドの腐敗は凄まじいです。「これからの世界はインドが牽引する」とメディアなど様々な場所で語られていますがそんな単純にことが進むだろうかと疑問になるほどです。インドの発展がどうなるかというのは全くわかりません。一寸先は闇とはまさにこのこと。このカオスな国の行く末がどうなるか全く想像がつきません。
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鈴木真弥『現代インドのカーストと不可触民』
本書ではデリーにおける清掃カーストの悲惨な状況を見ていくことになります。
また、この本ではガンジーによる改革の内容や問題点についても考えていくことになります。ガンジーが理想としたインド社会はどのようなものだったのか。ガンジーがカースト制、不可触民についてどのように考えていたのかがよくわかります。ガンジーといえばインド独立に大きな指導力を発揮した聖人のようなイメージが根強いですが、そのガンジーがカーストをどのように考えていたのかというのは非常に重要なポイントだと思います。
データやフィールドワークを中心にした貴重なインド情報を知れるのが本書です。カースト差別を知る上で非常にありがたい作品でした。次で紹介する佐藤大介著『13億人のトイレ 下から見た経済大国インド』と合わせてぜひおすすめしたい作品です。
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現代インドのカーストと不可触民:都市下層民のエスノグラフィー
佐藤大介『13億人のトイレ』
この本も衝撃的でした。上の記事で紹介した鈴木真弥著『現代インドのカーストと不可触民』ではデリーの清掃カーストに特化して語られましたが、今作『13億人のトイレ 下から見た経済大国インド』ではより具体的にその悲惨な実態を知ることになります。
『現代インドのカーストと不可触民』ではデータやフィールドワーク、歴史的経緯の解説が中心で全体像を掴むのに最適な参考書となっているのに対し、今作ではそのとにかく強烈な実例が次から次へと語られます。ですのでこの二作をセットで読むことで相乗効果間違いなしです。
この本は新書ながらものすごく濃厚で情報量の多い作品です。現代インドの実態を知る上で最高におすすめの本のひとつです。「トイレ」というなかなかない切り口から現代インドを語るこの本はとても刺激的です。読みやすさも抜群ですいすい読んでいけます。驚くような内容がどんどん出てくる作品なのであっという間に引き込まれてしまうことでしょう。
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おわりに
以上、インドのおすすめ本を紹介しました。
知れば知るほど面白いインドです。そして実際にこれらを学んだ上で行ったインドは実に興味深いものがありました。
ぜひ読書の参考にして頂けましたら幸いでございます。
以上、「インドの歴史・宗教・文化について知るのにおすすめの参考書一覧~知れば知るほど面白いインド沼へ」でした。
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