三島由紀夫おすすめ作品15選と解説書一覧~日本を代表する作家三島由紀夫作品の面白さとその壮絶な人生とは

三島由紀夫 三島由紀夫と日本文学

三島由紀夫おすすめ作品15選と解説書一覧~日本を代表する作家三島由紀夫作品の面白さとその壮絶な人生とは

三島由紀夫(1925-1970)Wikipediaより

三島由紀夫は言わずと知れた日本を代表する作家です。

私が彼の作品を読もうとしたのは小阪修平著『思想としての全共闘世代』がきっかけでした。

元々この『思想としての全共闘世代』もスリランカにおける1971年の学生達の武装蜂起について学んだ流れで手に取ったものでしたが、日本における学生紛争について学んでいてぶつかることになったのがやはり三島由紀夫の存在でした。全共闘と三島由紀夫といえば、近年公開された『三島由紀夫vs東大全共闘〜50年目の真実〜』という映画で話題になりました。

日本の思想や時代の流れを考える上でやはり三島由紀夫は外せません。

そして私は前々からいつか三島由紀夫作品を読んでみたいと思っていたのでありました。

と言いますのも、私は2022年に「親鸞とドストエフスキー」の研究のためローマを訪れていました。そしてその時にお世話になったイタリア人のガイドさんに「三島由紀夫は素晴らしい。彼の文体は非常に美しい。ドストエフスキーが好きなあなたなら必ず気に入るでしょう」と薦められていたのです。

なんと、イタリア人から三島由紀夫を薦められるという不思議な体験をすることになったのでした。ドストエフスキー好きの私としてはこれはぜひ読んでみたいと強く思ったのでありました。

ただ、その後も旅行記の執筆や仏教の勉強もあり、なかなか三島文学に取りかかるタイミングを見出せないまま時が過ぎてしまいましたが、ここに来てようやくその時が訪れたようです。スリランカ仏教の流れで期せず交差した三島由紀夫。この機会を逃す手はありません。私はこれから三島作品を一気に読んでいくことにしました。

とはいえいきなり三島文学に突入するのも難易度が高いのではないか、そんな思いがよぎり、私はまず新潮社から出ている『文豪ナビ 三島由紀夫』というガイドブックを手に取ったのでありました。

この本がとにかく優秀!コンパクトでありながら三島由紀夫の生涯やその特徴がわかりやすくまとめられています!

新潮社さんのこの試みは実にありがたいです。難しそうで敬遠しがちな文豪たちへの入り口として非常に優れています。文豪たちの名作の何が面白くて何がすごいのか、そしてどの作品から読むのがおすすめかまで懇切丁寧に語られます。小難しい文学論や哲学談義もないのもありがたいです。誰もが気軽に入門できるこの本に拍手喝采です。

そしてもう一冊。

きずな出版より2020年に発行された櫻井秀勲著『三島由紀夫は何を遺したか』もおすすめです。三島由紀夫と親しい関係であった著者だからこそ知る姿をこの本で学ぶことができました。

これらの入門書でざっくり三島由紀夫や彼の作品の流れを学んだ後、私はいよいよその代表作『金閣寺』に取りかかりました。そして私はあっという間に三島沼にはまることになってしまったのです。

今回の記事ではそんな三島由紀夫のおすすめ作品や解説書を紹介していきます。各作品のリンク先でより詳しくお話ししていますのでぜひそちらもご参照ください。

『金閣寺』(1956年)

金閣寺

私にとって、これが最初の三島作品。緊張の一瞬でした。

「幼時から父は、私によく、金閣のことを語った。」

この言葉から始まる物語。

三島の独特の文体はどこから始まるのか。世界で称賛される美しさはどこにあるのか。

淡々と語られる冒頭の言葉を私は注意深く読み進めました。

すると、なんと、最初の2ページ目にして私の胸を打つ美しい描写が現れたのです。

舞鶴湾は志楽村の西方一里半に位置していたが、海は山に遮られて見えなかった。しかしこの土地には、いつも海の予感のようなものが漂っていた。風にも時折海の匂いが嗅がれ、海が時化ると、沢山の鷗がのがれてきて、そこらの田に下りた。

新潮社、三島由紀夫『金閣寺』P6

「しかしこの土地には、いつも海の予感のようなものが漂っていた」

なんという表現でしょう!この時点で私は三島文学の強烈な文体を感じることとなりました。

そしてこれから先も三島スタイルはとどまることを知りません。

私はこの作品を読んだ後の異様な持続力を体感しています。読み終わってそれで終わりではないのです。読後何日経ってもこの小説の異様な感化力が持続し、今でも「あれは何だったのか」と私を掴んで離さないのです。

この文体。この熱量・・・!恐るべき作品です。これから三島由紀夫の作品を読んでいくのが楽しみになりました。

いや~ものすごい作品でした。

『憂国』(1961年)

憂国

この作品は2.26事件に際し親友を討たねばならなくなった中尉が「今夜腹を切る」と妻に告げ、そのまま命を絶つという衝撃的な物語です。ページ数にしてわずか30ページほどの短編ですが恐るべき濃密さです。

三島自身、この作品について次のように述べています。

『憂国』は、物語自体は単なるニ・二六事件外伝であるが、ここに描かれた愛と死の光景、エロスと大義との完全な融合と相乗作用は、私がこの人生に期待する唯一の至福であると云ってよい。しかし、悲しいことに、このような至福は、ついに書物の紙の上にしか実現されえないのかもしれず、それならそれで、私は小説家として、『憂国』一編を書きえたことを以て、満足すべきかもしれない。かつて私は、「もし、忙しい人が、三島の小説の中から一編だけ、三島のよいところ悪いところすべてを凝縮したエキスのような小説を読みたいと求めたら、『憂国』の一編を読んでもらえばよい」と書いたことがあるが、この気持には今も変りはない。

新潮社。三島由紀夫『花ざかりの森・憂国―自選短編集―』P331

「もし、忙しい人が、三島の小説の中から一編だけ、三島のよいところ悪いところすべてを凝縮したエキスのような小説を読みたいと求めたら、『憂国』の一編を読んでもらえばよい」

三島自身がこう述べるほどの作品が『憂国』です。私自身、最初の三島体験となった『金閣寺』の次にこの作品を読んだのですが、この『憂国』を読んで私はいよいよ三島の魔力に取り憑かれてしまったのでした。

三島はこの小説を発表した9年後の1970年に自刃しています。自らの身体に刀を突き刺し、さらにそこから腹部を割いてゆく・・・まさにこの小説通りの死に様、生き様を見せたのが三島由紀夫という男だったのでした。三島を知る上で必読の一冊です。

『葉隠入門』(1967年)

葉隠入門

「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」

誰もが知るこの言葉の元となった『葉隠』を三島由紀夫は生涯愛しました。そして彼自身この作品を発表した3年後にまさに武士のように自刃しています。この本が三島に与えた影響が並々ならぬことは間違いありません。

三島由紀夫のあまりに壮絶な人生の秘密がこの本には記されています。『憂国』と合わせてぜひこの『葉隠入門』はおすすめしたいです。三島が『戦争中の「葉隠」は、いわば光の中に置かれた発光体であったが、それがほんとうに光を放つのは闇の中だったのである』と述べたのはまさに至言だと思います。

「生と死の問題」から目を反らし続けてきた私たち現代人にこそこの書は響くのではないでしょうか。

『不道徳教育講座』(1959年)

不道徳教育講座

この作品はタイトルこそ『不道徳教育講座』という刺激的でダークなイメージを醸し出していますが、中身は意外や意外、結論は不道徳どころではない王道へと着地します。この挑戦的なタイトルは三島由紀夫流のユーモアが込められた大いなる逆説なのでありました。

『金閣寺』『憂国』を読んだ後にこのエッセイを読んだ私ですが、三島由紀夫ってこんなに面白い人なんだ!と新鮮な驚きを感じながらの読書となりました。

重厚な小説とは一味違うユーモア溢れる三島の言葉を堪能できるおすすめの作品です。

『仮面の告白』(1949年)

仮面の告白

今作『仮面の告白』は三島由紀夫の初の長編となった作品です。しかもそうした「始まりの作品」でありながらこの小説はかなりどぎついです。後の三島を予感させる内面の苦悩、葛藤、嵐がすでにここに描かれています。

本作の主人公は同性愛的傾向を持ち、さらには若い男の流す血に性的興奮を持ってしまうという、特異な少年です。ですが、彼はそのことに煩悶し、世間一般の幸福も望んでもいました。

しかし、やはり彼にはそのような平穏は許されていなかった・・・

この作品は三島由紀夫の自伝的な小説と呼ばれています。三島自身は妻を持ち子もいますので完全には小説そのままではありませんが、彼の抱えていた悩みやその生育過程が今作に大きな影響を与えたとされています。

『潮騒』(1954年)

潮騒

この小説は三島由紀夫29歳の年の作品ですが、数ある三島作品の中でも特異なポジションにある作品です。

と言いますのも、三島作品といえば『金閣寺』『仮面の告白』など、異常なほどの自意識に苦しむ主人公の恐るべき心理ドラマや、『憂国』のような、血が流れるバイオレンスな描写が有名です。

しかしこの『潮騒』は「平和で静穏な小説であり、この作家としては例外的に、犯罪も血の匂いも閉め出された世界なのである」と解説されるほど三島らしからぬ異質な作品です。

舞台は伊勢の海に浮かぶ歌島という孤島。本土から隔たれたこの美しい島で、二人の若者の恋が語られます。

ある意味三島由紀夫らしくはない作品ではありますが、読みやすさはトップクラスです。シンプルに、面白いです。読みやすくて面白い三島作品をまずは読みたいという方にもぜひおすすめな作品です。

『太陽と鉄・私の遍歴時代』

太陽と鉄

『太陽と鉄・私の遍歴時代』は三島由紀夫の若き頃と文学活動の原点を知れるおすすめの作品です。

あの三島は若い頃どんな日々を過ごしていたのか、どうやって文壇に入り込むことができたのか。これはとても興味深いです。特にあの太宰治との初対面のエピソードはものすごく面白く、三島VS太宰の構図がはっきりとここで語られています。両者の文学スタイルの違いまで語られていて、この箇所だけでも非常に贅沢なエピソードということができるでしょう。

そして『潮騒』の記事でも引用したのですが、私の中では何と言っても三島由紀夫の人生初の世界一周旅行についてのエピソードが最も印象に残っています。彼は朝日新聞の特別通信員という形で1951年末から世界一周の旅に出かけました。その時に三島由紀夫がまさに太陽を発見したというこのエピソードは後の三島文学を決定づけるかのような意味を持っていたのでした。

こうした三島の貴重な声を聞けるのも本書の魅力です。小説作品とはまた違った三島由紀夫を知れるおすすめの作品です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

『アポロの杯』

アポロの杯

三島由紀夫は朝日新聞の特別通信員という形で1951年末から世界一周の旅に出かけました。この旅の旅行記が『アポロの杯』になります。

この旅については中央公論新社刊『太陽と鉄 私の遍歴時代』でも三島自身が語っているのですが、まさにこの旅において三島は太陽を発見し、ギリシアへの強い愛着を抱いたのでありました。このことについては以前紹介した『潮騒』の記事でもお話ししましたのでそちらの記事を参照して頂ければ幸いですが、若き三島にとってこの世界一周旅行が彼に与えた影響は非常に大きなものがありました。

また、本書『三島由紀夫紀行文集』には『アポロの杯』だけでなく、その後の三島の旅行記も収録されています。

ですので海外だけでなく日本国内の紀行文も読むことができます。私個人としては昭和35年の三島のカリフォルニア・ディズニーランド訪問について言及された「美にさからうもの」という紀行文がとても印象に残っています。三島はここでディズニーランドを高く評価しています。

こうした様々な三島の紀行文を読めるのが本書『三島由紀夫紀行文集』の魅力です。

『美しい星』(1962年)

美しい星

あの三島由紀夫が本格SF小説を書いていた!これは青天の霹靂!ぜひ読んでみたい!そんな思いで私は本書を手に取ってみたのでありました。

『美しい星』は三島が37歳の時に発表した作品です。この頃の三島は多作で、この二年前には当ブログでも紹介した名作短編『憂国』を世に問うています。

『憂国』は三島の自決に直結する非常に思想性が強い作品でした。そんな作品を書いていた三島が宇宙人小説を書くというのはそれだけでも驚きです。

ただ、この『美しい星』が思想性、政治性が全くないのかというとそうではありません。SF小説の形を取りながら絶妙にそれらを取り込んでいます。

三島はこの小説で真面目なこてこての日本文学でもなく、空想的なSF小説でもない独自な世界観を作り出そうとしたようです。

たしかに『美しい星』はものすごく読みやすいです。作者名が伏せられていたら三島由紀夫だとわからないくらいの読みやすさです。しかもものすごく没入感が強く、気づけば小説の世界にすっかり入り込んでしまいます。大杉家の面々が宇宙人であること、そしてそれとは別の宇宙人の存在も物語途中から現れるのですが、どこからどこまでがリアルかSFかわからなくなるほど絶妙な匙加減です。私達は知らぬ間に計算に計算を重ねた三島文学の術中にどっぷりはまることになります。これは面白い。シンプルに面白い!素晴らしい作品です。

『鏡子の家』(1959年)

鏡子の家

三島はこの小説で鏡子の家に集まる4人の青年に時代を投影し三島流の「戦後は終わった」文学を表現しようとしました。これは三島にとっても初めての試みで野心的な挑戦でした。

しかし500日をかけ精魂込めて書き下ろした『鏡子の家』は批評家に酷評され、失敗作の烙印を押されてしまいます。三島はこのことで深い傷を負うことになりました。

『鏡子の家』はたしかに成功作とは言えないでしょう。実際に三島由紀夫は精魂込めて書き下ろしたこの作品が世間に受け入れられず、さらには識者からも理解されないという孤独を味わうことになります。

私自身もこの作品を「面白いです!ものすごくおすすめです!」とは残念ながら言えません。ですが読んで失敗したとは全く思いません。たしかに350ページほどまでは苦行でした。ですがその後はもう夢中です。それは事実です。そして『豊饒の海』へと繋がり得る水仙の花や、夏雄や収の破滅は非常に読み応えのあるものでした。

そうした意味でもこの作品を読めたことは私にとって大いに意味深いものでした。

『宴のあと』(1960年)

宴のあと 三島由紀夫

『鏡子の家』で「時代」を描こうとした三島でありましたが、今作『宴のあと』は実際の政治家有田八郎の都知事選を題材に執筆しました。

ですがこの小説の発表後有田氏に三島は訴えられてしまいます。これが日本初のプライバシー裁判として世間を賑わすことになり、三島は『鏡子の家』の家に続き精神的なショックを受けることになりました。

ただ、徳岡氏とドナルド・キーン氏が述べるようにこの作品自体は非常に優れた作品であることは間違いありません。この作品は海外でも高く評価されているようです。

私も『鏡子の家』の直後にこの作品を読んだのですが、圧倒的に面白い!三島由紀夫には申し訳ないのですが、『鏡子の家』と比べるとその小説としての面白さが桁違いです。

何よりも女主人公かづのエネルギー!かづの圧倒的なエネルギーには読んでいるこちらもぐいぐい引っ張られてしまいます。猪突猛進で無茶苦茶なことをしているのですがなぜか応援せずにはいられません。夫の野口がぶっきらぼうで堅物で鈍重であるが故にかづの溢れんばかりの活力、野心、熱量がさらに引き立ちます。

物語の展開もスピーディーで、さらにそこに政治的な陰謀や駆け引き、人間ドラマが織り込まれるので目が離せません。やはり三島小説は面白い!ぜひおすすめしたい作品です。

『音楽』(1964年)

音楽 三島由紀夫

この作品は三島によるフロイト的な精神分析への挑戦が書き込まれた小説でもあります。私が本書を読んだのもまさにこのフロイトへの挑戦に関心があったからでした。

『音楽』の巻末解説でも述べられていたのですが、三島由紀夫はフロイトの精神分析についてかなり詳しく知っていたようです。三島はそれを材料に謎の美女の真相を巡るミステリーをこの作品で描いたのでした。

本作の主人公は精神科医です。この中年の精神科医の手記という形で物語が進んでいきます。

彼は自身の精神分析をふんだんにこの手記の中で披露していくのですが、いかんせん相手が悪かった!彼のもっともらしい解釈は美女の謎の行動や言葉によって次々と覆されていくことになります。ここに三島のフロイトへの挑戦が込められています。いかにもっともらしい心理分析をしようと相手次第でいくらでもそれは煙に巻かれてしまうのです。さらに言えば、そもそも精神分析自体が本当に相手の心理を掴めるような代物なのかという疑問さえ私たちに感じさせます。

作中でも精神科医は自らそれを認めるような発言をしています。結局は精神分析よりも実際に起こる事件や人間関係によって見えてきた具体的事実が問題の解決に繋がっていくのです。つまり、いくらもったいぶった心理分析を行おうとそれは本当に正しいものなのかは全くわからない、そしてその多くは後付けの解釈にすぎないということがこの小説で暗に示されます。

『行動学入門』(1970年)

行動学入門

1970年11月25日、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決した三島由紀夫。本書『行動学入門』はその前年の1969年から1970年に連載されたエッセイです。

徳岡孝夫著『五衰の人 三島由紀夫私記』では本書について次のように述べられていました。

「さまざまな角度から「行動」を論じ、三島さんの自決を理解するための最良の解説書になっている」

徳岡氏のこの言葉を読み私は本書『行動学入門』を読むことにしたのでありました。

三島の自決は今もなお謎に包まれたままです。

私もその謎に魅入られた一人です。三島の自決について知るには下でも紹介する『三島由紀夫と楯の会事件』という本がとてもおすすめですが、本書『行動学入門』も三島自身が自決について語っているという点で非常に重要な作品となっています。

ぜひ、合わせて手に取って頂けたらと思います

『インドの印象』(1967年)

三島由紀夫 インドの印象

こちらは1967年10月20、21日の毎日新聞(夕刊)に掲載された『インドの印象』というインタビュー記事です。私が読んだのは新潮社、『決定版 三島由紀夫全集 第34巻』所収版です。

このインタビュー記事は毎日新聞社記者徳岡孝夫氏が聞き手となり、三島由紀夫にインタビューを行っています。

徳岡孝夫氏は1970年11月25日の楯の会事件で三島由紀夫本人から市ヶ谷に来るよう呼び出され、その事件を見届けるよう依頼されたという、三島から深く信頼されていた記者です。この時の顛末が書かれた『五衰の人 三島由紀夫』は実に素晴らしい作品で私も愛読しています。

そんな徳岡氏が三島由紀夫と親交を深めるきっかけとなったのがバンコクでの再会でした。三島は1967年にバンコクに滞在し、その時ちょうど同地に駐在していた徳岡氏と連日のように会うようになっていたのです。

作家と記者というよりまさに旧知の友人同士という空気で二人は過ごしていたそうで、そんなリラックスしたムードから『インドの印象』というインタビュー記事が生まれました。

この記事ではその全文を紹介していますのでぜひご参照頂ければと思います。

『豊饒の海』(1965-1970)

豊饒の海

三島はこの四部作を通して「生命とは」「人生とは」を追求していきます。私達の生きる「生」とは何なのか。私達にとって「死」とは何なのか。「善く生きる」とは何なのか。どう生きるべきなのか。こうしたことを壮大なスケールで描き出していくのが『豊饒の海』です。はっきり言いましょう。この作品の巨大さは想像を絶します。私はこの作品に文字通り圧倒されました。

私は以前当ブログで「名刺代わりの小説10選」の記事を書きましたがこの『豊饒の海』もここに新たに加わることでしょう。間違いなく私の人生に大きな衝撃を与えた作品です。

私のインド仏跡旅行にもこの三島のエキスは実に強い影響を与えています。三島が見たインドは一体何だったのかと考えながらの旅になりました。

『豊饒の海』は日本を超えて世界文学史上の大事件だと私は考えています。それほど巨大な作品でした。簡単には「おすすめです」とは言えませんが、恐るべき作品であることは間違いありません。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

おすすめ参考書

三島由紀夫、芥正彦他『三島由紀夫VS東大全共闘 1969-2000』

三島由紀夫

この本はあの伝説の討論を闘った東大全共闘メンバーが再集結し、あの日のことや今だからこそ語れる話題を語り合うという作品です。

私が三島由紀夫に関心を持つきっかけとなったのもまさにこの1969年の討論でした。上でも紹介した小阪修平著『思想としての全共闘世代』を機に観た上の映画に私は度肝を抜かれたのです。

この記事の中でもお話ししましたが、私はこの後学生紛争やセクトの暴力化についての本を読むことになりました。三島由紀夫の作品に取りかかったのはその後のことです。

ですが、私はモヤモヤしたものを抱えていました。

結局、あの東大全共闘は何だったのか・・・安田講堂に立てこもり火炎瓶を投げつけた学生達や内ゲバを繰り返したセクトたちと何が違うのか・・・。

私にはこれがどうしてもわからなかったのです。三島由紀夫と討論した彼らは一体何者だったのか。彼らも内ゲバや暴力をしていたのだろうか・・・。

そんな疑問を抱えていた私にとって本書『三島由紀夫VS東大全共闘 1969-2000』はあまりにありがたい作品となりました。

先程も述べましたように、この本はあの討論に参加したメンバーが再結集しています。上で紹介した『思想としての全共闘世代』の著者小阪修平氏もまさにその中心メンバーですし、司会を務めた木村修氏も参加しています。彼らの話を聞いていると、東大全共闘におけるあの討論はセクト間の争いを離れたノンセクトの学生によるものだったということがわかりました。特にその中心人物である小阪氏、木村氏の考え方もこの本で率直に語られることになります。やはり彼らはセクト間抗争や内ゲバとは異なるところにいたのです。学生紛争という形で一概に安田講堂事件やあさま山荘事件、赤軍とごっちゃにしてはいけないということを改めて感じることになりました。

そしてこの本では映画でも一際異彩を放っていた芥正彦氏も登場します。

私にとってこの本で一番刺激的だったのはこの芥正彦氏の存在だったかもしれません。あの映像を観るだけでは氏の突飛な行動や難解極まる言葉の数々をどう捉えてよいのかわからなかったのです。そんな中この本では氏の言葉を活字でじっくりと読んでいくことができます。そしてそれに対しての他のメンバーのコメントや対応がとにかく面白い!小阪氏や木村氏は学生の頃から芥氏のことを深く知っています。ですので明らかに芥氏に対する扱いがこなれています。論点がずれている時や疑問がある時は正確に指摘し、さらには割って入って議論をかき混ぜる芥氏をスルーするなど、旧知の仲だからこその空気感も感じることができます。

この本はメンバー間での討論が活字にされています。ですので議論がそのまま文字となって記されています。最初から本として書かれた言葉ではないところにその臨場感があります。よくぞまあこれほどの議論を交わし続けることができるなと驚くばかりです。

また、この本では難解な言葉や出来事の注釈も豊富で、当時の状況に詳しくない方でも読めるようになっています。もちろん、映画を観てからこの本を読むのがベストだとは思いますが、読者への配慮も行き届いた作品です。写真も豊富で当時の状況や、現在の彼らの写真も掲載されているので討論の雰囲気がより伝わってきます。いや~ものすごい本です。計15時間にも及ぶ濃密な討論がこの本で文字化されています。東大全共闘とは何だったのか、三島由紀夫との対談は何だったのかということを知るのにこの本は最高の資料になります。この時代の雰囲気を感じるためにもぜひぜひこの本はおすすめしたいです。

保阪正康『三島由紀夫と楯の会事件』

三島由紀夫と楯の会事件

1970年11月25日、三島由紀夫と楯の会メンバー4人が自衛隊市ヶ谷駐屯地に立てこもり、バルコニーから自衛隊決起を促す演説をした後、三島と森田必勝両氏がそのまま切腹し自殺するという衝撃的な事件が起こりました。本書はこの衝撃的な事件の背景とその経緯を知るのに最高の一冊です。

この本では三島が自決に至る過程をかなり詳しく見ていくことができます。特に楯の会の結成やその進展、そして三島と自衛隊とのつながりについての解説は非常に興味深いものがありました。

その内容についてはここではご紹介できませんが、私も「えっ!」と驚くようなことがどんどん出てきました。この本を読む前と後では三島に対する見方がまた変わったように思えます。

三島由紀夫はなぜ死なねばならなかったのか。

そのことを考える上でも本書は非常に重要な示唆を与えてくれる作品です。

徳岡孝夫『五衰の人 三島由紀夫私記』

『五衰の人 三島由紀夫私記』の著者徳岡孝夫氏は三島由紀夫本人から事件当日市ヶ谷に来ることを依頼され、バルコニーでの演説を聞くことになった記者です。それほど三島由紀夫から信頼されていた記者でした。

徳岡氏はこの事件の3年前に三島とバンコクで親交を深め、様々なインタビューを行っています。その中でも三島がインドについて語った箇所は僧侶である私にとっても非常に興味深いものがありました。他にも三島の自衛隊体験入隊直後の貴重なインタビューやその後の展開なども記者の目から詳しく描かれています。まさに知られざる三島由紀夫の姿をこの本では知ることができます。

三島の壮大な遺作となった『豊饒の海』を理解する上でも本書は非常に貴重な一冊となっています。最高におすすめな一冊です。

西法太郎『三島由紀夫事件 50年目の証言—警察と自衛隊は何を知っていたのか

この本では書名の通り、警察と自衛隊がこの事件をどのように捉えていたのか、そして事件当時どのような背景があったかを詳しく知ることができます。

東大安田講堂事件やあさま山荘事件を指揮した佐々淳行氏へのインタビューでは衝撃の事実が語られます。

そして公安が三島の決起を把握していたこと、そしてそれに対して上層部がどのような判断を下したかなど想像もつかないような事実を本書で知ることになります。あまりのことに私はこの本を読み呆然としました・・・。

ぜひこの本もおすすめしたいです。

犬塚潔『三島由紀夫と死んだ男 森田必勝の生涯』

『三島由紀夫と死んだ男 森田必勝の生涯』では三島と共に自決した楯の会の森田必勝氏について詳しく知ることができます。

この本の最大の特徴は森田氏や楯の会の写真が豊富に掲載されている点にあります。事件の当事者となった彼らの様々な姿を知れる本書は非常に貴重です。

おわりに

さて、これまで長々と三島作品とその解説書をご紹介してきましたがいかがだったでしょうか。

私個人としては三島由紀夫の入門としては『憂国』『金閣寺』をまずはおすすめしたいです。そしてその前に超入門として『文豪ナビ』を読むことを強くおすすめします。

この『文豪ナビ』があることで作品そのものの大まかな流れや三島自身のことを知ることができます。その上で読んだ方が圧倒的に読みやすく、味わい深くなりますのでぜひおすすめしたいです。

そして三島の黒魔術に魅入られたのならそのラスボスとして『豊饒の海』は必読です。とんでもない作品です。文学史上の金字塔と言ってもよいでしょう。私も完全にこの作品に撃ち抜かれました。

三島由紀夫という尋常ならざる巨人と出会えたことは私の幸せでした。

以上、「三島由紀夫おすすめ作品15選と解説書一覧~日本を代表する作家三島由紀夫作品の面白さとその壮絶な人生とは」でした。

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