池内紀『池内紀の仕事場3 カフカを読む』概要と感想~おすすめカフカ入門書!

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おすすめカフカ入門書!池内紀『池内紀の仕事場3 カフカを読む』おすすめカフカ入門書!

今回ご紹介するのは2004年にみすず書房より発行された池内紀著『池内紀の仕事場3 カフカを読む』です。

早速この本について見ていきましょう。

「大学を出るとき、卒業論文はカフカだった。大学院に進んだのち、カフカはやめた。興味がうつったからだが、一つには、日本語で読めるカフカになじめないものがあった。どうしてなのか、自分にも理由がわからない。とにかく読みだすとイライラする。原書で読むのと、あまりにもちがいすぎる」

『カフカを読む』の「仕事場ノート」に著者はこう書いている。思えば、戦後の実存主義のブームに乗って流行した〈カフカ文学〉は暗く深刻で、読者をなかなか寄せつけないところがかえって有り難いようなところがあった。しかし、池内紀訳の手稿版『カフカ小説全集』(白水社)が出て、この小説家のイメージは一変した。彼の考えた小説の構想とともに、その熾烈な文学的野心とユーモアが明らかになってきた。謎めいた神話的人物ではなく、等身大のカフカが発見された。

「書棚の隅に〈カフカ〉のラベルのついたファイルがある。全体が象のおなかのようにふくらんでいるのは、何であれカフカとかかわりのあるものを入れたからだ。プラハの地図、絵葉書、写真、挿絵のコピー、新聞の切り抜き、映画のパンフレット……」

家族とりわけ父との関係・勤め先・文房具や女性関係、さらに「変身」「断食芸人」や長篇三部作のきめこまかい分析と鑑賞など。本書には、最新のテクストと現場検証によって、これまでになかった〈未知のカフカ〉が姿を現わすことになるだろう。

みすず書房HPより

フランツ・カフカ(1883-1924)Wikipediaより

この本紹介に「戦後の実存主義のブームに乗って流行した〈カフカ文学〉は暗く深刻で、読者をなかなか寄せつけないところがかえって有り難いようなところがあった。 」とありますように、かつてカフカは難しくて暗いイメージがあったようです。

しかし最近はそんなカフカのイメージも変わり、野心ありユーモアありの等身大のカフカというものが現れてきたそうです。

この作品はまさしくそんなカフカを知るのに最適な1冊となっています。

目次を見て頂ければわかりますように、 この本の前半では彼の生まれ育った環境や彼がどのようなことに影響を受けていったのかということが語られます。

カフカのことをほとんど知らない方でも、彼の作品に親しんでいる方にとっても非常に興味深く、読み応えのあるカフカの物語を楽しむことができます。「カフカってこんな人だったのか!」ときっと驚くと思います。

そして中盤以降はカフカの短編、長編作品を実際に見ていき、そこに込められた意味や楽しみ方、逸話などが語られます。

カフカの作品は不思議な展開が多く、読んでいるこっちがパニックになるシーンがたくさんあります。そうした中でわかりやすい解説をしてもらえるとかなり助かります。

カフカの入門書として、あるいは困った時の参考書としてこの本はとてもおすすめです。

カフカは難しいし暗いからとっつきにくいという方には特におすすめです。きっとそんなカフカのイメージが変わると思います。私はカフカのことがもっと好きになりました。

ぜひおすすめしたい1冊です。

以上、「池内紀『池内紀の仕事場3 カフカを読む』おすすめカフカ入門書!」でした。

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