チャペックおすすめ作品『ロボット(R.U.R)』あらすじと感想~ロボットの語源はこの作品!衝撃の面白さ!

カフカの街プラハとチェコ文学

チャペックの傑作『ロボット(R.U.R)』あらすじと感想~ロボットの語源はこの作品!

今回ご紹介するのは1920年にカレル・チャペックによって発表された『R.U.R』です。

私が読んだのは1989年に岩波書店より発行された千野栄一訳の『ロボット(R.U.R)』2020年第29刷版です。

早速この本について見ていきましょう。

ロボットという言葉はこの戯曲で生まれて世界中に広まった。舞台は人造人間の製造販売を一手にまかなっている工場。人間の労働を肩代わりしていたロボットたちが団結して反乱を起こし,人類抹殺を開始する。機械文明の発達がはたして人間に幸福をもたらすか否かを聞うたチャぺック(1890-1938)の予言的作品。

Amazon商品紹介ページより

1920年にしてすでにロボットをテーマにしたSF小説が存在していたということに私はまず驚きました。そしてそもそも「ロボット」という言葉自体がこの作品によって生み出され世界中に広がっていったというのも驚きでした。このロボットの語源について、訳者あとがきでは次のように述べられていました。

「ロボット」は、「R・U・R」の著者力レル・チャペックがこの戯曲の中の人造人間を表現するために、兄のヨゼフからヒントを得て作った新語で、チェコ語には「賦役」を意味するrobotaロボタという語があり、その語末のaをとったものである。チェコ語と同系のスラブ語であるロシア語にもработаラボータ(rabota)という語があって「労働」を意味する。またこの語はドイツ語のArbeitアルバイト「労働」とも関係がある(ドイツ語の Arbeit の語頭の二文字をひっくり返してみるとよく分かる)。しかし、スラブ語派とゲルマン語派にまたがるこの語の言語学的説明は容易ではない。


岩波書店、カレル・チャペック、千野栄一訳『ロボット(R.U.R)』2020年第29刷P206

私は今ロシア語の市民講座に通っているのですが、この解説を見て「なるほど!」と頷きました。ラボータから来ていると言われればかなりすっと入ってきます。たしかにロボットって働かせるための存在ですよね・・・

そしてこの作品について訳者あとがきでは次のように解説されています。

今日では世界のいたるところで、しかも絶えず耳にする「ロボット」という言葉を作り出し、それを世界に広めたSF劇『R・U・R-ロッスムのユニバーサルロボット』(通称『ロボット』)は、ひとりSF作品の古典であるのみならず、世界の文学の古典といっても過言ではない。

SFという文学ジャンルの性質上、時代の移り変りに敏感なため、長い期間読者の関心を引きつけておくことが難しい分野で、この『ロボット』が一九二〇年の出版以来依然として愛好されているのには、非常によく考えられているSF作品であることのほか、文学的にも優れていることがある。(中略)

長い間人間の夢であった人間が人間を作り出し、人間にとってふさわしくない仕事をその作り出された人間―ロボット―に代行させるという筋書きの作品であるが、人間が人間を作り出すというプロセスは、ドミンがへレナに説明するという方法で簡単にかたづけられている。

そして、その結果、社会にいろいろな変化がもたらされるところから作品の本筋に入る。ロボットの導入に組合が反対したり、導入が遅れたために企業が倒産するというところは、まさにこの日本でもわれわれが目のあたりにしたところであり、チャペックの他のSF作品と同様に、この作品でもSFの内容が実際にもう実現されている「近未来性」という特色が示されている。
※一部改行しました

岩波書店、カレル・チャペック、千野栄一訳『ロボット(R.U.R)』2020年第29刷P201-202

チェコ文学を代表する作家チャペックとは何者かという興味から手に取ったこの作品ですが、読んですぐに私は度肝を抜かれました。

はっきり申しますと、ものすごく面白いのです!チェコにこんな作品があったのか!と私はただただ衝撃を受けるのみでした。

筋書きはシンプルです。最初はただ働くだけのロボットがやがて「意志」を持ち、人間に攻撃を仕掛けていくというSF作品の王道中の王道です。いや、この作品こそ後のSF小説に道筋をつけたのかもしれません。私はSF小説の歴史に詳しいわけではないので正確なことはわからないのですが1920年にしてこれほどの完成度を持ったSF小説を作り上げたチャペックの想像力には脱帽するしかありません。

そして単にシナリオが面白いだけではなく、チャペックの人間分析のまたなんと深いこと・・・!

彼は人間とは何か、人間とロボットは何が違うのか。人間を人間たらしめているのは何なのかということをこの作品で問うていきます。そしてロボット製造によって世界における「労働」の意味も変わってしまいます。さらには世界経済も激変していくことになります。機械化が極限まで進んで行くと人類の生活はどうなってしまうのか、そうしたことまでこの作品では見せられていくことになります。

しかもこうしたことを彼一流のユーモア溢れる筆致で描いていくので単に暗くて重たい作品にはなっていないのです。これは恐るべき才能だと思います。テーマ自体はものすごく重いのです。ですが彼のユーモアによってそれが絶妙に軽さを与えられています。ですのでとにかく読みやすい。そして面白い。ページをめくる手が止まりません。私は時間も忘れて一気に読んでしまいました。これほどの作品に出会えるのはなかなかありません。これは名作中の名作と言っても過言ではありません。凄まじい作品です。

一般的に、プラハ・チェコ文学と言えばまずカフカが連想されると思います。

ですがちょっとお待ちを。ここに恐るべき天才がいました・・・!

私はカフカ作品も好きですが、正直、このチャペックには参ってしまいました。『ロボット』はもっともっと世に知られてもいい作品です。ジャンルは違いますが『変身』と比べてもまったく遜色ないくらい素晴らしい作品だと思います。

いや~いい本と出会いました。

ぜひぜひおすすめしたい作品です。絶対後悔しないと思います。それほど面白いです。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「チャペックおすすめ作品『ロボット(R.U.R)』あらすじと感想~ロボットの語源はこの作品!衝撃の面白さ!」でした。

次の記事はこちら

前の記事はこちら

関連記事

HOME