資本主義

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

W・シャブウォフスキ『踊る熊たち 冷戦後の体制転換にもがく人々』~旧共産圏の人々に突然訪れた自由。自由は重荷なのか。

この本は旧共産圏のブルガリアに伝わる「踊る熊」をテーマに、旧共産圏に生きる人々の生活に迫る作品です。

この本もすごいです・・・!

ロシアに関する本は山ほどあれど、旧共産圏のその後に関する本というのはそもそもかなり貴重です。

しかも、その地に伝わってきた「熊の踊り」というのがまさに旧共産圏から「自由」への移行劇を絶妙に象徴しています。

「踊る熊」を通して私たち自身のあり方も問われる衝撃の作品です。これは名著です。ぜひぜひおすすめしたい作品です。

マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ

(6)エンゲルス『ヴッパータールだより』~工場の劣悪な環境を18歳のジャーナリスト、エンゲルスが告発

エンゲルス18歳の時に発表された『ヴッパータールだより』。

後にお話しすることになりますが、この『ヴッパータールだより』のスタイルは後の『イギリスにおける労働者階級の状態』にも引き継がれ、そしてそれはそのままマルクスの『資本論』にも直結していきます。

ギムナジウムを退学し、大学にも行けなかったエンゲルスですが、やはり歴史を変える天才は何かが違います。マルクスの影に隠れてしまいがちですがその片鱗はすでにここに現われています。

マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ

(3)エンゲルスの生地、工業地帯ヴッパータールの宗教事情とは

エンゲルスが育ったドイツの工業都市バルメンの宗教事情ははまさしくヴェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』で語られることと重なっています。

ドイツにおいてエンゲルスがこうした環境の中で育っていたというのは驚きでした。

この記事ではそんなバルメンの宗教事情とエンゲルスの家庭環境、若きエンゲルスの宗教に対する見方をお話ししていきます。

マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ

(2)エンゲルスの恵まれた家庭環境と故郷の町バルメン(現ヴッパータール)の社会事情とは

エンゲルスは1820年にドイツのバルメン(現ヴッパータール)という町で生まれました。

エンゲルス家は典型的な上流ブルジョワ家庭であり、綿工場の経営者の御曹司として何一つ不自由のない温かな家庭で生活していたのでした。

ドイツの新興工業地帯に生まれたエンゲルス。彼はここで工業化がもたらす悲惨な環境破壊や労働者の貧困を間近で見ながら育っていくことになります。

おすすめマルクス・エンゲルス伝記

トリストラム・ハント『エンゲルス マルクスに将軍と呼ばれた男』~マルクスを支えた天才の生涯と思想背景を知れるおすすめ伝記!

この伝記はマルクスやエンゲルスを過度に讃美したり、逆に攻撃するような立場を取りません。そのような過度なイデオロギー偏向とは距離を取り、あくまで史実をもとに書かれています。

そしてこの本を読んだことでいかにエンゲルスがマルクスの著作に影響を与えていたかがわかりました。

マルクスの伝記や解説書を読むより、この本を読んだ方がよりマルクスのことを知ることができるのではないかと思ってしまうほど素晴らしい伝記でした。マルクスの伝記に加えてこの本を読むことをぜひおすすめしたいです。

おすすめマルクス・エンゲルス伝記

玉川寛治『『資本論』と産業革命の時代―マルクスの見たイギリス資本主義』~現地取材によるリアルな記事が魅力の参考書

産業革命について書かれた本はいくつもあれど、「マルクスとエンゲルスが見た」視点から産業革命をじっくり見ていこうという本はなかなか貴重です。写真やイラストも多いのもありがたいです。

マルクスとエンゲルスは実際に産業革命時代を目の当たりにして生活していました。そんな彼らの実体験があったからこそ彼らの思想、作品は生まれてきています。彼らの思想を学ぶ上でも産業革命とはどのようなものだったのか、そして彼らがそれをどのように考えていたかを知ることは非常に重要なことだと思います。

おすすめマルクス・エンゲルス伝記

ウルリケ・ヘルマン『スミス・マルクス・ケインズ よみがえる危機の処方箋』~古典経済学の流れを知るのにおすすめ!

マルクス以前とマルクスはどこが違うのか。マルクス以後とマルクスは何が違うのか。

この本はそうしたことを比べながら見ていくことができるので非常にわかりやすいです。やはり比べてみて初めて見えてくることもありますよね。

マルクスのことを歴史の流れ、時代背景と絡めながら見ていけるこの本は素晴らしいです。非常に広い視野で書かれた逸品です。

これはぜひぜひおすすめしたい1冊です。マルクスだけでなく、アダム・スミスやケインズを学びたい方にもおすすめです。

マルクスは宗教的な現象か

マルクスとフロイトの共通点とは~フロイトのドストエフスキーにおける「父親殺し」についても一言

マルクスとフロイトは人間の過去・現在・未来の物語を提供しました。

その救済的な物語があったからこそ多くの人々を惹きつけたとトニー・ジャットは語ります。

そして彼らの語る物語が本当に正しいか正しくないかは問題ではありません。

人を惹きつける魅力的な物語であるかどうかがマルクス・フロイト理論が影響を持つ大きなポイントと言えるのではないでしょうか。

マルクスは宗教的な現象か

歴史家トニー・ジャットによるマルクス主義への見解~「伝統的なキリスト教の終末論との共通点」とは

世界的な歴史家トニー・ジャットは「マルクス主義は世俗的宗教である」という決定的な言葉を述べます。

その理由は記事内で述べる通りですが、マルクス主義は宗教的な要素がふんだんに取り込まれており、それがあるからこそマルクス主義が多くの人に信じられたという見解が語られます。

マルクスは宗教的な現象か

歴史家E・H・カーによるマルクス主義への見解~なぜマルクス主義は人を惹きつけるのか

E・H・カーはこの伝記においてマルクスの『資本論』における問題点を指摘していきます。そして有名な「剰余価値説」や「労働価値」などの矛盾点を取り上げ、そうした問題点がありながらもなぜマルクスはここまで多くの人に信じられているかを分析していきます。

経済学や思想、イデオロギー面だけではなく、世界全体との関わりという視点からアプローチするのは、歴史家たるE・H・カーならではの一歩引いた視点と言うことができるかもしれません。