ロシア正教

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

(16)レーニンの死と今なお生き続ける神殿としてのレーニン廟

レーニン自身はまさか死後、自分の遺体が防腐処置をされ半永久的に保存され崇拝されることになるなど想像もしていなかったかもしれません。レーニンの家族も死後は墓に埋葬されることを望んでいました。

しかしソ連の指導力を高めるためには彼の遺体は非常に重要な意味を持っていました。そこに目を付けた人物達が家族の反対を押し切り、レーニンをまさしく不滅の神へと押し上げていくのです。

レーニンの遺体を保存し「永久に」祀ることはまさしく宗教的な響きがします。無神論を標榜するソ連においてこれは何とも逆説的な崇拝でした。

レーニンは死してなおもロシアに生き続けています。レーニン廟の存在は私たちが想像するよりはるかに深いところでロシアと繋がっています。これは宗教を学ぶ上で、いや、人間そのものを学ぶ上でも非常に重要な問題です。

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

(15)レーニンとロシア正教会~ソ連政府の教会弾圧の過酷な実態とは

「農民の不満が最大限に高まり飢餓に苦しむ今、教会を守ろうとする人間もいないはず。」

レーニンは教会を潰すには今しかないというタイミングまで待ち、ついに行動に移るのでした。

これは権力掌握のために徹底した戦略を立てるレーニンらしい政策でありました。

これによってロシア正教会は徹底的に弾圧され、ソ連政権時の長きにわたって過酷な運命を辿ることになったのでした。

レーニンがいかにして教会を弾圧したかをこの記事では見ていきます。

帝政末期のロシアロシアの歴史・文化とドストエフスキー

アンリ・トロワイヤ『帝政末期のロシア』~ドストエフスキー亡き後のロシア社会を知るために

この本は小説仕立てで1903年のロシア帝政末期の社会を紹介していきます。

主人公は若いフランス人ジャン・ルセル。彼はふとしたきっかけでロシアに旅立つことになります。私たち読者は彼と同じ異国人の新鮮な目で当時のロシア社会を目の当たりにしていくことになります。

この本ではロシア正教を中心にした宗教事情、そして劣悪な状況で働く労働者、軍隊の内情、農民の生活など様々な事象を紹介しています。

当時のロシア社会がどのようなものであったかを知るのにとても便利な一冊となっています。しかも小説仕立てであるので読みやすいというのも嬉しい点です。

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

ソ連とドストエフスキー~なぜ私がソ連を学ぶのかー今後のブログ更新について

ドストエフスキーは『悪霊』や『カラマーゾフの兄弟』で来るべき全体主義の悲惨な世界を予言していました

文学は圧倒的な権力の前では無力なのか。思想は銃の前では無意味なのか。

私はやはりソ連の歴史も学ばねばならない。ここを素通りすることはできないと感じました。だからこそ私はドストエフスキー亡き後の世界も学ぼうとしたのでした。

ロシアの大作家チェーホフの名作たち

チェーホフ『僧正』あらすじと感想~幼い頃の幸福な思い出~僧正と母の再会・死別を描いた感動作

この物語は20ページほどの短い物語ではありますが思わずじーんとくるものがあります。母が最期に息子に呼びかけるシーンは何度読んでも泣きそうになります。

この作品が書かれたのはチェーホフの晩年です。

チェーホフ自身も結核でこれ以上あまり長く生きられないことを覚悟していたと思います。そういう時期にこの作品が書かれたというのもチェーホフを知る上で非常に意味があることなのではないかと私は感じました。

この作品もおすすめです。チェーホフ作品の中でも随一の感動作です。

観る者と求める者ドストエフスキー論

佐藤清郎『観る者と求める者 ツルゲーネフとドストエフスキー』これ1冊で両者の特徴を学べる名著!比べてわかるその個性!

やはり比べてみるとわかりやすい。特に、ツルゲーネフとドストエフスキーは真逆の人生、気質、文学スタイルを持った二人です。

違いが大きければ大きいほど見えてくるものははっきりしてきますよね。

この著作を読むことでドストエフスキーがなぜあんなにも混沌とした極端な物語を書いたのか、ツルゲーネフが整然とした芸術的な物語を書いたのかがストンとわかります。

父と子ロシアの文豪ツルゲーネフ

ツルゲーネフ『父と子』あらすじと感想~世代間の断絶をリアルに描いた名作!あまりに強烈!

ツルゲーネフがバザーロフというニヒリストを生み出すと、それ以降現実世界においてそのような人は「バザーロフ的人間」とか「ニヒリスト」と呼ばれることになりました。

この影響力たるやすさまじいものがあります。

これをやってのけたツルゲーネフの観察者、芸術家としての能力はやはりずば抜けているなと感じました。

『父と子』は読みやすく、とてもおすすめな作品です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

ロシア正教古儀式派ドストエフスキーとキリスト教

『ロシア正教古儀式派の歴史と文化』~ドストエフスキーは無神論者で革命家?ドストエフスキーへの誤解について考える

この記事では「ドストエフスキーは無神論者であり、革命思想を持った皇帝暗殺主義者だった」という説について考えていきます。

これは日本でもよく聞かれる話なのですが、これはソ連時代、ソ連のイデオロギー下で発表された論説が基になっていることが多いです。

この記事ではなぜそのようなことになっていったのかもお話ししていきます。

ヒングリーロシアの歴史・文化とドストエフスキー

R・ヒングリー『19世紀ロシアの作家と社会』~知られざるロシア社会と文学者のつながりを網羅した名著

ドストエフスキーをはじめとしたロシア文学がなぜこうも私たちの心を打つのか。

それは彼らの人生に対する真剣さにあったのだ。

著者のヒングリーはそう述べます。

この本は19世紀のロシア社会やその文化と作家たちのつながりを解説しています。

文学論や哲学講義としてはよく出てくる19世紀ロシアですが、その社会事情や文化面はなかなか話に上ってくることがありません。そういう意味でこの本は非常に興味深い視点を与えてくれます。

マッカーターロシアの歴史・文化とドストエフスキー

R・マッカーター『名建築は体験が9割』~建造物に込められた意味を知るのにおすすめの解説書

建築は外観だけではなく、内部空間で感じる体験こそ人を感動させるのだということをこの本では教えてくれます。

写真や映像で見るだけでなく実際にその場に行ってみないとわからない感覚がある。

だからこそ現地に行って直接体験することには大きな意味がある。

そのことをこの本を読んで改めて感じました。