仏教の正統と異端

馬場紀寿『仏教の正統と異端 パーリ・コスモポリスの成立』~スリランカ仏教とインドとの関係、歴史を知れる刺激的な一冊!

この本はものすごく面白いです!インド、スリランカの仏教を国際政治、内政の視点から見ていくというのはありそうであまりなかったのではないでしょうか。

私も今年スリランカに行く予定でしたのでこれはものすごくありがたい本でした。この記事でお話ししたのは本書の内容の極々一部です。とにかく盛りだくさんで刺激的な内容だらけです。読み始めは少し込み入った話や仏教初学者の方にとっては厳しい内容もありますが、途中からはスリランカの歴史パートに入り一気に読みやすくなります。

これはぜひぜひおすすめしたい一冊です。いや~面白い本でした!ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

英国の仏教発見

F・C・アーモンド『英国の仏教発見』~仏教学はイギリスの机上から生まれた!?大乗仏教批判の根はここから

この作品では衝撃的な事実が語られます。以前当ブログでも紹介した『新アジア仏教史02インドⅡ 仏教の形成と展開』でも西洋由来の仏教学の問題について語られていますが、本書はまさにその本丸と言ってもよい作品になります。

この本を読むと、「原始仏教に帰れ。日本仏教は堕落している」という批判が出てくる理由がよくわかります。これまでどうしても腑に落ちなかった大乗仏教批判に対して「ほお!なるほど!そういうことだったのか」という発見がどんどん出てきます。この批判が出てくる背景を追うととてつもない事実が浮かび上がってきます。これは最高に刺激的な一冊です。とてつもない作品です。もうぜひ読んで下さい!きっと皆さんも衝撃を受けると思います。

初期仏教

馬場紀寿『初期仏教 ブッダの思想をたどる』~最新の研究が反映されたおすすめの原始仏教入門書

この本を読んで私が一番印象に残っているのは中村元先生の説が最新の研究においては否定されているという点でした。

もちろん、中村元先生の説く仏教が全て誤っていたというわけでは当然ないのですが、最新の研究によるならば、かつてよりも随分と違った仏教が私達の前に開かれているということになるでしょう。中村元先生の説といえども無批判に受け取ることはできないということにハッとする思いになりました。と同時に学問はこうして進んでいくのだとしみじみする気持ちにもなりました。

他にも、この本では最新の研究をふまえて、当時のインド社会とブッダの関係を見ていくことができます。後半ではブッダの思想そのものも解説されますので、初期仏教の全体像を掴むためにもおすすめです。

〈文化〉としてのインド仏教史

奈良康明『〈文化〉としてのインド仏教史』~葬式仏教批判に悩む僧侶にぜひおすすめしたい名著!

この本は「僧侶としてのあり方に悩む方」にぜひおすすめしたい作品です。

文献に書かれた教義だけが仏教なのではなく、そこに生きる人々と共に歩んできたのが仏教なのだというのがよくわかります。私自身、この本にたくさんの勇気をもらいました。仏教は現代においても必ずや生きる力に繋がるのだということを私は感じています。

僧侶以外の方でも、仏教における儀礼の意味に興味のある方には多くの発見がある作品です。

ぜひぜひおすすめしたい名著です。著者の信念が伝わってくる素晴らしい一冊でした。

大乗仏教のアジア

『シリーズ大乗仏教 第十巻 大乗仏教のアジア』~インド仏教も葬式仏教的な遺骨崇拝や納骨、供養を行っていた

今作はヒンドゥー教やイスラーム、中国文化とのつながりから大乗仏教を見ていくというユニークな論集となっています。

そしてこの本の中で次のような指摘がなされます。

「大雑把な言い方をすれば、葬式仏教的な要素がインド以来、現実の仏教の場で強く働いていたことが知られる。従来しばしば、インドの本来の仏教は生者のためによりよい生き方を教えるもので、死者のためのものではないと主張され、日本の葬式仏教を否定するような言説がなされてきたが、それはまったく実態にそぐわないことが、明白に示されたのである。」

このようなショペンの刺激的な論文を読むことができるおすすめの参考書です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

大乗の仏の淵源

新田智通「大乗の仏の淵源」~ブッダの神話化はなかった!?中村元の歴史的ブッダ観への批判とは。『シリーズ大乗仏教 第五巻 仏と浄土—大乗仏典Ⅱ』より

今作では浄土経典について説かれるということで浄土真宗僧侶である私にとって非常に興味深いものがありました。

特に第二章の新田智通氏による「大乗の仏の淵源」は衝撃的な内容でした。これは仏教を学ぶ全ての人に読んで頂きたい論文です。

「シリーズ大乗仏教」は2010年代初頭当時における最新の研究が反映されています。かつては主流だった仏教理解が今や通用しなくなっているということを肌で感じた作品でした。

新田智通氏の衝撃的な論文が収録された『シリーズ大乗仏教 第五巻 仏と浄土—大乗仏典Ⅱ』は仏教を学ぶ全ての方におすすめしたいとてつもない一冊です。このシリーズの中でも圧倒的に印象に残った作品です。

シリーズ大乗仏教第四巻

『シリーズ大乗仏教 第四巻 智慧/世界/ことば 大乗仏典Ⅰ』~般若経・華厳経・法華経の成立と展開を学ぶのにおすすめ

この本は般若経、華厳経、法華経それぞれの成立とその展開が詳しく語られます。

正直、仏教の入門書としてのレベルをはるかに超えています。仏教の入門書を求めている方にはおすすめできません。

ですがこれらの経典についてもっと深く知りたいという方には非常にありがたい参考書と言えます。

般若経、華厳経、法華経は日本仏教の根幹とも言える経典です。それらがどう生まれ、どう展開していったのか、それらを最新の研究に基づいて学べるのが本書『シリーズ大乗仏教 第四巻 智慧/世界/ことば 大乗仏典Ⅰ』になります。

大乗仏教の実践

『シリーズ大乗仏教 第三巻 大乗仏教の実践』~仏道修行の原点や仏塔、仏像、遺骨崇拝の展開を学べる一冊!

今作はそのタイトル通り、大乗仏教の実践面について見ていく作品となります。本書冒頭で語られるように、大乗と小乗の実践面には繋がりがあり、明確に異なる存在ではなかったことが本論集で語られます。

文献や深遠な哲学体系だけが宗教ではありません。そこにはそこに生きる人々の宗教的実践、生活実践もあります。西欧的な文献研究のみで推し量ろうとする仏教研究に対する反省もこの本では語られます。目から鱗の情報が満載のぜひぜひおすすめしたい一冊です。

大乗仏教の誕生

『シリーズ大乗仏教 第二巻 大乗仏教の誕生』~大乗仏塔起源を批判したショペンの説の概略を知れるおすすめ参考書

今作『シリーズ大乗仏教 第二巻 大乗仏教の誕生』は前作『シリーズ大乗仏教 第一巻 大乗仏教とは何か』に引き続き、最新の仏教研究の成果が盛り込まれた論集となっています。

この本の中で私が特にありがたいなと感じたのは下田正弘氏による第二章「経典を創出する—大乗世界の出現」の章の存在です。

この章の中でこれまで当ブログでも紹介したグレゴリー・ショペンの説がわかりやすくまとめられています。現代における仏教学においてとてつもない影響をもたらしたショペンの説の概略を学べるのは非常にありがたいものがありました。

バガヴァッド・ギーターの世界

上村勝彦『バガヴァッド・ギーターの世界 ヒンドゥー教の救済』~日本文化や大乗仏教とのつながりも知れる名著!

「日本人はいわば「隠れヒンドゥー教徒」であるといっても過言ではありません。そのことを示すことが、本書の目的の一つでもあります。」

衝撃的な言葉ですよね。

ですがこの本を読んでいると、この言葉があまりにリアルなものとして感じられてきます。日本の文化や大乗仏教とのつながりが非常にわかりやすく説かれます。

この本自体は『バガヴァッド・ギーター』の解説書ということでなかなか手が伸びにくい作品であるかもしれません。ですがそこは少し見方を切り替えてこの本を仏教書として見てみてはいかがでしょうか。

この本は古代インドやインド思想を知らなくても読めるような作りになっています。また同時に、仏教の入門書としても十分通用するほどわかりやすい作品になっています。これはものすごい名著です。