インド文明の曙

辻直四郎『インド文明の曙―ヴェーダとウパニシャッド―』~バラモン教の聖典の概要を学ぶのにおすすめの参考書

「本書はヴェーダの概要を、専門家以外の人に紹介するのを目的とする。従ってこれはヴェーダの研究書ではなく、常識としてのヴェーダの入門書である。」

「ヴェーダとウパニシャッド」といいますと何かとてつもなく難しそうなイメージが湧いてきますがこの本自体はここで述べられますように専門家以外の人にもわかるように書かれた入門書になります。

古代インドの宗教において何が信仰されていたのか、どのように信仰されていたのかということを知ることができるのがこの本です。

古代インドや原始仏教を学ぶ上で避けて通れない『ヴェーダ』や『ウパニシャッド』の入門書としておすすめの一冊です。

ヒマラヤの寺院

佐藤正彦『ヒマラヤの寺院 ネパール・北インド・中国の宗教建築』~カトマンズの仏教建築を詳しく知れる驚きの作品

本書はネパールの宗教建築に特化した作品になります。これはかなりマニアックな本です。ですがネパールの独特な宗教建築について詳しく知りたい方にはまたとない作品となっています。

ネパールの雰囲気や宗教建築はインドとも中国とも違います。

そして木がたくさん使われているというのは日本人にとって馴染みのものなのかもしれません。私もいずれネパールを訪ねる予定ですのでその時はじっくり見てきたいと思います。

写真も豊富ですので現地の様子もイメージしやすいです。

かなりマニアックな本ですがネパールの宗教や建築に興味のある方にぜひおすすめしたい一冊です。

ネパール仏教

田中公明/吉崎一美『ネパール仏教』~日本と同じ妻帯する仏教が根付く国!その教えと歴史を知るのにおすすめ

この本はものすごく貴重な逸品です。

私たち日本人にとってネパールといえばヒマラヤ山脈というイメージが強くありますが、この国の宗教は何なのかというとほとんどわからないというのが実際のところではないでしょうか。私自身もつい最近までこの国についてほとんど何も知りませんでした。

ですが、この国の宗教事情は知れば知るほど面白い・・・!

まずこの国がヒンドゥー教が主でありながらも今なお仏教が息づいているという点。しかもこの国の仏教の中には私達日本の仏教と同じく妻帯している仏教もあるというのです。これは興味深いです。

インドともスリランカともタイとも中国とも違う独特な仏教の歴史をこの本では知ることができます!おすすめです!

スリランカで運命論者になる

杉本良男『スリランカで運命論者になる 仏教とカーストが生きる島』~上座部仏教の葬儀や現地の宗教と生活を知るのにおすすめ!

著者は実際に現地に赴き、そこで人々と接しながら現地の宗教や生活文化そのものについて見ていきます。文献だけではわからない現地の微妙な問題や曖昧な部分まで見ていけるのが本書の魅力です。

特にスリランカにおける葬儀や結婚などの儀礼についてのお話は非常に興味深かったです。

スリランカでも仏教は「生と死」の問題と深く繋がっているということをフィールドワークという視点から見れたこの本はとても興味深かったです。

また、単に宗教的な側面だけでなく、政治経済面からもスリランカの宗教と実生活を知れるのもこの本のありがたい点です。「スリランカ=敬虔な仏教国」とだけ見てしまうと見誤るものが多々あります。実際にはかなり複雑な背景がそこにはあります。そうした社会の複雑さを知れるのも本書の魅力です。

タイ仏教入門

石井米雄『タイ仏教入門』~上座部仏教が今なお息づくタイの仏教について知るのにおすすめの入門書

タイに長く滞在し研究調査をした著者ならではの、現地のリアルな仏教な姿を知ることができるのがこの本の魅力です。

この本では難解な哲学や教義について語られるのではなく、あくまで入門書ということで現地の人々の生活や仏教僧の日々の姿が説かれます。

タイの仏教徒が何をもって救いと考えているのか、なぜ仏教を篤く信仰しているのかということも知ることができます。

日本仏教とは違った仏教の姿を垣間見れる本書はとても刺激的です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

東南アジア上座部仏教への招待

『東南アジア上座部仏教への招待』~日本と異なる東南アジアの仏教を知るのにおすすめ!

この本では東南アジア各国の仏教の教義を細かく見ていくというよりは、その国の仏教徒の生活や信仰の実践がどのようなものなのかを見ていく形を取ります。

もちろん、本書の第一章で上座部仏教とはそもそも何なのかをわかりやすく解説してくれるので、専門知識のない方にも優しい作りになっています。大乗仏教との違いをわかりやすく解説してくれるこの作品は非常に貴重です。しかも入門者でも親しみやすく読めるような語り口で説かれるので、仏教だけでなく文化そのものを学びたいという方にも非常におすすめです。

上座部仏教とは何か、そしてそこに生きる人々の生活レベルでの仏教を知れるこの本はとても刺激的でした。日本仏教との違いや共通点を考えながら読むのはとても興味深かったです。

文明の道

『NHKスペシャル文明の道〈3〉海と陸のシルクロード』~古代インドとローマ帝国の繋がりを知れる刺激的な一冊!

この本は古代インドとローマ帝国を結んだシルクロードについて学ぶのに最高の一冊です。図版や写真も豊富でイメージしやすく、解説も初心者でもわかりやすいように丁寧に語られます。 古代インド、ローマ帝国、どちらも私にとってはロマン溢れる大好きな世界です。その二つが繋がった本書は私にとっても大興奮の一冊でした。ぜひぜひおすすめしたい名著です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

新アジア仏教史02

『新アジア仏教史02インドⅡ 仏教の形成と展開』~仏教のイメージが覆る?仏教学そのものの歴史を問う参考書

私達が当たり前だと思って享受していた〈仏教学〉が日本の仏教思想や文化とは全く無関係に生まれたものだった。

この本を読めば〈仏教学〉というものがどんな流れで生まれてきたのか、そしてそれがどのように日本にもたらされ、適用されることになったのかがよくわかります。

日本仏教に対する批判で多いのは「原始仏教と比べればなんと日本仏教は堕落しているのか」というものなのですが、こうした批判がなぜ生まれてきたのかも考えることになります。そして同時にこの批判の問題点についても私達読者は気づくことになるでしょう。

この本は改めて〈仏教学〉という学問そのものを俯瞰で見ることができる素晴らしい作品です。

13億人のトイレ

佐藤大介『13億人のトイレ』~インドにはトイレがない!?清掃カーストの過酷な仕事やガンジス川の汚染についても学べる1冊!

この作品はとにかく衝撃的です。こんな劣悪な状況で清掃カーストの人たちは働いているのかと衝撃を受けました。何の処理もされていない下水に何の装備もなく浸かり、素手でその詰まりを解消させる仕事の様子には読んでいて目を疑いました。

また、モディの進めるインド全土のトイレ設置の政策の欺瞞にはただただ唖然とするしかありませんでした。インドの汚職、腐敗、賄賂体質はすさまじいものがあります。このトイレ政策においても忖度、汚職、不正まみれの実態があったのでありました。まさに汚物まみれのトイレ政策だったわけです。

そしてインドや仏教に関心のある方には特に関心の強いであろうガンジス川についての言及があるのも本書の嬉しいポイントです。ぜひおすすめしたい作品です。

新アジア仏教史01

『新アジア仏教史01インドⅠ 仏教出現の背景』~仏教とカースト制の関係や時代背景を学ぶのにおすすめ!

この本は仏教教団が生まれた当時のインド社会を知るのにおすすめの作品です。

仏教もゴータマ・ブッダという偉大な人物が突然生まれたわけではなく、古代より続くインド世界の文脈の中で生まれてきたことがよくわかります。

当時の社会事情を見ていくことで思想や理論だけでは見えてこない仏教教団の姿が見えてきます。これは刺激的でした。やはりインドは一筋縄ではいかない存在だなと改めて実感することになりました。

『新アジア仏教史』シリーズは2010年段階最新の研究が反映されています。その点もこのシリーズのおすすめポイントとなっています。