スリランカで運命論者になる

杉本良男『スリランカで運命論者になる 仏教とカーストが生きる島』~上座部仏教の葬儀や現地の宗教と生活を知るのにおすすめ!

著者は実際に現地に赴き、そこで人々と接しながら現地の宗教や生活文化そのものについて見ていきます。文献だけではわからない現地の微妙な問題や曖昧な部分まで見ていけるのが本書の魅力です。

特にスリランカにおける葬儀や結婚などの儀礼についてのお話は非常に興味深かったです。

スリランカでも仏教は「生と死」の問題と深く繋がっているということをフィールドワークという視点から見れたこの本はとても興味深かったです。

また、単に宗教的な側面だけでなく、政治経済面からもスリランカの宗教と実生活を知れるのもこの本のありがたい点です。「スリランカ=敬虔な仏教国」とだけ見てしまうと見誤るものが多々あります。実際にはかなり複雑な背景がそこにはあります。そうした社会の複雑さを知れるのも本書の魅力です。

タイ仏教入門

石井米雄『タイ仏教入門』~上座部仏教が今なお息づくタイの仏教について知るのにおすすめの入門書

タイに長く滞在し研究調査をした著者ならではの、現地のリアルな仏教な姿を知ることができるのがこの本の魅力です。

この本では難解な哲学や教義について語られるのではなく、あくまで入門書ということで現地の人々の生活や仏教僧の日々の姿が説かれます。

タイの仏教徒が何をもって救いと考えているのか、なぜ仏教を篤く信仰しているのかということも知ることができます。

日本仏教とは違った仏教の姿を垣間見れる本書はとても刺激的です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

東南アジア上座部仏教への招待

『東南アジア上座部仏教への招待』~日本と異なる東南アジアの仏教を知るのにおすすめ!

この本では東南アジア各国の仏教の教義を細かく見ていくというよりは、その国の仏教徒の生活や信仰の実践がどのようなものなのかを見ていく形を取ります。

もちろん、本書の第一章で上座部仏教とはそもそも何なのかをわかりやすく解説してくれるので、専門知識のない方にも優しい作りになっています。大乗仏教との違いをわかりやすく解説してくれるこの作品は非常に貴重です。しかも入門者でも親しみやすく読めるような語り口で説かれるので、仏教だけでなく文化そのものを学びたいという方にも非常におすすめです。

上座部仏教とは何か、そしてそこに生きる人々の生活レベルでの仏教を知れるこの本はとても刺激的でした。日本仏教との違いや共通点を考えながら読むのはとても興味深かったです。

文明の道

『NHKスペシャル文明の道〈3〉海と陸のシルクロード』~古代インドとローマ帝国の繋がりを知れる刺激的な一冊!

この本は古代インドとローマ帝国を結んだシルクロードについて学ぶのに最高の一冊です。図版や写真も豊富でイメージしやすく、解説も初心者でもわかりやすいように丁寧に語られます。 古代インド、ローマ帝国、どちらも私にとってはロマン溢れる大好きな世界です。その二つが繋がった本書は私にとっても大興奮の一冊でした。ぜひぜひおすすめしたい名著です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

新アジア仏教史02

『新アジア仏教史02インドⅡ 仏教の形成と展開』~仏教のイメージが覆る?仏教学そのものの歴史を問う参考書

私達が当たり前だと思って享受していた〈仏教学〉が日本の仏教思想や文化とは全く無関係に生まれたものだった。

この本を読めば〈仏教学〉というものがどんな流れで生まれてきたのか、そしてそれがどのように日本にもたらされ、適用されることになったのかがよくわかります。

日本仏教に対する批判で多いのは「原始仏教と比べればなんと日本仏教は堕落しているのか」というものなのですが、こうした批判がなぜ生まれてきたのかも考えることになります。そして同時にこの批判の問題点についても私達読者は気づくことになるでしょう。

この本は改めて〈仏教学〉という学問そのものを俯瞰で見ることができる素晴らしい作品です。

13億人のトイレ

佐藤大介『13億人のトイレ』~インドにはトイレがない!?清掃カーストの過酷な仕事やガンジス川の汚染についても学べる1冊!

この作品はとにかく衝撃的です。こんな劣悪な状況で清掃カーストの人たちは働いているのかと衝撃を受けました。何の処理もされていない下水に何の装備もなく浸かり、素手でその詰まりを解消させる仕事の様子には読んでいて目を疑いました。

また、モディの進めるインド全土のトイレ設置の政策の欺瞞にはただただ唖然とするしかありませんでした。インドの汚職、腐敗、賄賂体質はすさまじいものがあります。このトイレ政策においても忖度、汚職、不正まみれの実態があったのでありました。まさに汚物まみれのトイレ政策だったわけです。

そしてインドや仏教に関心のある方には特に関心の強いであろうガンジス川についての言及があるのも本書の嬉しいポイントです。ぜひおすすめしたい作品です。

新アジア仏教史01

『新アジア仏教史01インドⅠ 仏教出現の背景』~仏教とカースト制の関係や時代背景を学ぶのにおすすめ!

この本は仏教教団が生まれた当時のインド社会を知るのにおすすめの作品です。

仏教もゴータマ・ブッダという偉大な人物が突然生まれたわけではなく、古代より続くインド世界の文脈の中で生まれてきたことがよくわかります。

当時の社会事情を見ていくことで思想や理論だけでは見えてこない仏教教団の姿が見えてきます。これは刺激的でした。やはりインドは一筋縄ではいかない存在だなと改めて実感することになりました。

『新アジア仏教史』シリーズは2010年段階最新の研究が反映されています。その点もこのシリーズのおすすめポイントとなっています。

大乗仏教の思想

中村元選集第21巻『大乗仏教の思想』~原始仏教と初期大乗について考えるのに刺激的なおすすめ参考書

今作では日本仏教にも直接関わってくる大乗仏教の思想やその成立・発展過程を知ることができます。中村元先生の特徴は単に思想だけでなく当時の時代背景と絡めて語る点にあります。この本でも当時の時代背景や当地の気候風土、民族性など幅広い視点から仏教を見ていきます。

この本では冒頭からいきなりドキッとする指摘がなされます。記事タイトルにありますように仏教とは何かを考える上で非常に興味深い指摘満載の名著です。

現代インドのカーストと不可触民

鈴木真弥『現代インドのカーストと不可触民』~デリーの清掃カーストから見る差別の実態とは

この本はデリーの清掃カーストを切り口にインドのカースト差別の実態について見ていく作品です。

インドのカースト差別の実態については以前当ブログでも池亀彩著『インド残酷物語 世界一たくましい民』や藤井毅著『歴史の中のカースト 近代インドの〈自画像〉』を紹介しました。

これらの本でもインドのカースト差別の実態は詳しく語られていましたが、今作では現地でのフィールドワークやデータを基にデリーの清掃カーストに特化して見ていく点にその特徴があります。

データやフィールドワークを中心にした貴重なインド情報を知れるのが本書です。次の記事で紹介する佐藤大介著『13億人のトイレ 下から見た経済大国インド』と合わせてぜひおすすめしたい作品です。

ドストエフスキー

ドストエフスキーおすすめ作品4選!ロシア文学の面白さが詰まった珠玉の名作をご紹介!

あのトルストイと並ぶロシアの文豪、ドストエフスキー。

ドストエフスキーといえば『罪と罰』や『カラマーゾフの兄弟』など文学界では知らぬ者のない名作を残した圧倒的巨人です。彼は人間心理の深層をえぐり出し、重厚で混沌とした世界を私達の前に開いてみせます。そして彼の独特な語り口とあくの強い個性的な人物達が織りなす物語には何とも言えない黒魔術的な魅力があります。私もその黒魔術に魅せられた一人です。

この記事ではそんなドストエフスキーのおすすめ作品や参考書を紹介していきます。またどの翻訳がおすすめか、何から読み始めるべきかなどのお役立ち情報もお話ししていきます。