『資本論』第1巻の段階ですでに膨大な原稿を編集していたエンゲルス「マルクスとエンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ」(51)

マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ

『資本論』第1巻の段階ですでに第2巻、第3巻と同じく、エンゲルスが膨大な原稿を編集していた「マルクスとエンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ」(51)

上の記事ではマルクスとエンゲルスの生涯を年表でざっくりとご紹介しましたが、このシリーズでは「マルクス・エンゲルスの生涯・思想背景に学ぶ」というテーマでより詳しくマルクスとエンゲルスの生涯と思想を見ていきます。

これから参考にしていくのはトリストラム・ハント著『エンゲルス マルクスに将軍と呼ばれた男』というエンゲルスの伝記です。

この本が優れているのは、エンゲルスがどのような思想に影響を受け、そこからどのように彼の著作が生み出されていったかがわかりやすく解説されている点です。

当時の時代背景や流行していた思想などと一緒に学ぶことができるので、歴史の流れが非常にわかりやすいです。エンゲルスとマルクスの思想がいかにして出来上がっていったのかがよくわかります。この本のおかげで次に何を読めばもっとマルクスとエンゲルスのことを知れるかという道筋もつけてもらえます。これはありがたかったです。

そしてこの本を読んだことでいかにエンゲルスがマルクスの著作に影響を与えていたかがわかりました。かなり驚きの内容です。

この本はエンゲルスの伝記ではありますが、マルクスのことも詳しく書かれています。マルクスの伝記や解説書を読むより、この本を読んだ方がよりマルクスのことを知ることができるのではないかと思ってしまうほど素晴らしい伝記でした。

一部マルクスの生涯や興味深いエピソードなどを補うために他のマルクス伝記も用いることもありますが、基本的にはこの本を中心にマルクスとエンゲルスの生涯についてじっくりと見ていきたいと思います。

では、早速始めていきましょう。

『資本論』第1巻の段階ですでに第2巻、第3巻と同じく、エンゲルスが支離滅裂な原稿を編集していた

マルクスの最高傑作にたいするエンゲルスの貢献は、金銭上の問題をはるかに超えたものだった。その基本的な哲学だけでなく、資本と労働の実際の仕組みを探る同書の核となる洞察の多くは、彼が提供したものである(それにマルクスが公式報告書から大量に失敬した情報を付け加えた)。

エンゲルスはまた次々に編集、明確化、書き直すべき箇所を提案し、一八六七年の夏に到着した膨大なドイツ語の原稿に青鉛筆を入れた。

「思考の流れが図解によって中断されつづけており、図解された要点が図の終わったところで再開されることがないため、読者はつねにある要点の図解から、別の点の説明へと飛躍することになる」と、彼はもっともながら、しばしば支離滅裂になるマルクスの文体について指摘した。

「これは恐ろしく疲れるし、よほど注意深くない限り、混乱のもとになる」。ときにはあまりにも論が急ぎ過ぎていると感じることもあった(「アイルランドについて君が挿入した部分は、ひどくやっつけ仕事だった。あの話題はまともに体を成していない」)し、別の箇所では文体に怒りが込められ過ぎていると思われた(「とくに二枚目には、君のようがかなりしっかりと押されている痕跡が見える」)。

幸い、エンゲルスはマルクスが批判を甘んじて受けようとするきわめて、、、、わずかな人間の一人だった。
※一部改行しました

筑摩書房、トリストラム・ハント、東郷えりか訳『エンゲルス マルクスに将軍と呼ばれた男』P307-308

マルクスの『資本論』は読むのがあまりにも難しい作品として有名ですが、マルクスの元の原稿はそれどころではない支離滅裂なものだったというのは驚きですよね。その解読困難な原稿をかろうじて読める形でエンゲルスが再構成したものが私たちが手にする『資本論』だったのです。

『資本論』第2巻、第3巻がエンゲルスによる編集によって成立したのは有名ですが、そもそも第1巻からしてエンゲルスの多大な貢献があったのでした。

『資本論』の特徴

だが、最終的な結果は科学的社会主義の基礎をなす文献となり、西洋の政治思想の古典の一つとなったのである。

ロバート・スキデルスキーの適切な要約を拝借すれば、『資本論』は「歴史的段階の弁証法的理論と、史的唯物論(人類の向上においてへーゲルが主張した思想の闘争に、階級闘争が取って代わったもの)、資本主義文明の経済的および倫理的批判(搾取と疎外のテーマで具体化したもの)、資本主義は(その矛盾ゆえに)崩壊する運命にあるという経済面での証明、革命的行動への呼びかけ、および共産主義が次の―そして最終の―歴史的段階だとする予想(というよりはむしろ確信)を網羅している。

『資本論』の精神的中枢には、余剰価値の理論があった(エンゲルスはこれを史的唯物論に次ぐ、マルクスの画期的な発見と見なしていた)。

これは資本主義経済において、正確にはどのように階級搾取が起こるのかを説明した錬金術師の方程式だった。マルクスにしてみれば、労働者が自分の労働力を、その労働力によって生産された消費財の交換価値よりも安く売らざるをえないことが、一方へ方向づけをするつめ車装置ラチェットとなり、それによってブルジョワ階級は徐々に裕福になり、プロレクリアートは着実にみずからの労働と人間性からしだいに疎外されてゆくのであった。

要するにマルクスは、労働者が六時間で、暮らすのに必要な最低限のものと交換できるだけの生産活動をしているとすれば、一二時間労働のうちの残りの六時間による生産物は、資本家によって彼らの利益のために搾取されていると主張したのである。この搾取的な生産様式―私的所有制度の必然的結果―は不自然であり、歴史的には一過性のもので、暴力的なほど不公平なものだった。

『資本論』が約束した解放への大きな希望は、こうした資本主義の不公正な形態が、階級意識をもったプロレタリアートによって破壊されるというものだった。
※一部改行しました

筑摩書房、トリストラム・ハント、東郷えりか訳『エンゲルス マルクスに将軍と呼ばれた男』P308-309

「『資本論』が約束した解放への大きな希望は、こうした資本主義の不公正な形態が、階級意識をもったプロレタリアートによって破壊されるというものだった。」

『資本論』は希望の書だった。

これは非常に重要な観点だと思います。

以前、「マルクスとフロイトの共通点とは~フロイトのドストエフスキーにおける「父親殺し」についても一言」「歴史家E・H・カーによるマルクス主義への見解~なぜマルクス主義は人を惹きつけるのか マルクス主義は宗教的現象か⑴」の記事の中でもお話したのですが、マルクスは人間の過去・現在・未来の物語を提供しました。

その救済的な物語があったからこそ、多くの人々を惹きつけたとこれらの記事でお話ししました。ぜひ参照して頂ければと思います。

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