マルクスと大英博物館図書館~毎日12時間研究に没頭する鬼のような読書家マルクス「マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ」(43)

マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ

マルクスと大英博物館図書館~毎日12時間研究に没頭する鬼のような読書家マルクス「マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ」(43)

上の記事ではマルクスとエンゲルスの生涯を年表でざっくりとご紹介しましたが、このシリーズでは「マルクス・エンゲルスの生涯・思想背景に学ぶ」というテーマでより詳しくマルクスとエンゲルスの生涯と思想を見ていきます。

これから参考にしていくのはトリストラム・ハント著『エンゲルス マルクスに将軍と呼ばれた男』というエンゲルスの伝記です。

この本が優れているのは、エンゲルスがどのような思想に影響を受け、そこからどのように彼の著作が生み出されていったかがわかりやすく解説されている点です。

当時の時代背景や流行していた思想などと一緒に学ぶことができるので、歴史の流れが非常にわかりやすいです。エンゲルスとマルクスの思想がいかにして出来上がっていったのかがよくわかります。この本のおかげで次に何を読めばもっとマルクスとエンゲルスのことを知れるかという道筋もつけてもらえます。これはありがたかったです。

そしてこの本を読んだことでいかにエンゲルスがマルクスの著作に影響を与えていたかがわかりました。かなり驚きの内容です。

この本はエンゲルスの伝記ではありますが、マルクスのことも詳しく書かれています。マルクスの伝記や解説書を読むより、この本を読んだ方がよりマルクスのことを知ることができるのではないかと思ってしまうほど素晴らしい伝記でした。

一部マルクスの生涯や興味深いエピソードなどを補うために他のマルクス伝記も用いることもありますが、基本的にはこの本を中心にマルクスとエンゲルスの生涯についてじっくりと見ていきたいと思います。

では、早速始めていきましょう。

大英博物館図書館に籠るマルクス

今回の記事ではいつもの『エンゲルス マルクスに将軍と呼ばれた男』ではなく、ジョナサン・スパーバーの『マルクス ある十九世紀人の生涯』を参考にしていきます。

仕事に対するマルクスの耐久力たるや、凄まじいものがあった。彼は毎日一二時間、大英博物館で青書を読んで過ごした。

彼は膨大な量の記事やニュースの報告を『ニューヨーク・デイリー・トリビューン』のために書いた。その仕事ぶりは、国際労働者協会の総評議会での長時間にわたる会合や、経済学に関する著作の大量の草稿からも窺うことができる。

こうした骨折りにもかかわらず、マルクスの重要な知的計画は達成されず、不完全なものにしかならなかった。慢性的な財政問題は明らかに妨げとなったし、いや増す体の不調も仕事の完遂を大いに困難にした。しかしマルクスの個性のなかにもまた、最良の努力を妨害しがちな要素があった。
※一部改行しました

白水社、ジョナサン・スパーバー、小原淳訳『マルクス ある十九世紀人の生涯』下P242
大英博物館 Wikipediaより

マルクスが大英博物館図書館のいつも同じ席で猛勉強していたことは有名ですが、ようやくそのエピソードが語られる時期まで進んできました。

そして、こうしたマルクスの鬼のような読書ぶりですが、明らかに彼の仕事に悪影響を及ぼしてもいました。

マルクスの無秩序

重要な特徴の一つが、彼のボへミアン的生活の無秩序さであった。殴り書きされた判読し難い手稿、本や紙で足の踏み場もない混沌状態の書斎(時に本人ですら見通すことができなかった)が、それを証拠立てている。

彼はずっと起き続け、正午まで眠った。熱情の爆発で仕事は何度も中断された。彼は日も夜もなく書き続け、ついに体を壊して何もできない時期を過ごす羽目に陥った。こうしたことは、大がかりな計画を達成する後押しとは一切ならなかった。

マルクスの執筆の経過は実際のところ、異常なまでに不規則であった。叔父のリーオン・フィリプスを訪問した際にマルクスが経済学の著作の執筆作業をしているのを見たオランダの親戚が伝えるところでは、「何事か書き留めるや否や立ち上がり、テーブルの周囲を歩き回り、どんどん歩調を早め、何事か思いつくまでそうして、それから書き物をするためにまた席に着くというのがマルクスの習慣であった」。
※一部改行しました

白水社、ジョナサン・スパーバー、小原淳訳『マルクス ある十九世紀人の生涯』下P242

マルクスの異常な集中力と散漫、いや、狂気と言っていい姿。

実務に優れ、規則正しい生活をしていたエンゲルスとは正反対のマルクスなのでした。何事にも過剰、極端なマルクスがここでもうかがえます。

マルクスの完璧主義と脱線癖

ゆっくりと着実に事を進めるのがレースに勝つための唯一の方法ではないし、猛烈に働く人びとは多くのことを成し遂げるものである。しかしマルクスの性格には、大きな取り組みを成就させるうえで妨げとなる点が他にもあった。

すなわち、完璧を期すこと、情報の最後の一片までを見つけ出すこと、そして最新の発見に照らして既に書いたものを何度も何度も書き直すのに固執することであった。

こうした仕事のやり方の特徴は、マルクスの全生涯にわたって確認される。

「彼は沢山の本を読む。そして並々ならぬ猛烈さで働き、批評の才能をもっている。……しかし彼は何も完成させず、いつも仕事を中断し、書物の汲めど尽きせぬ大海にまたぞろ飛び込むのだ」、とアルノルト・ルーゲは一八四四年に記した。

三五年後〔のラファルグ回想によれば〕、フリードリヒ・エンゲルスはマルクスの仕事の習慣のこうした特徴に大いに苛立って、彼にこう語った。「私のほうだってよろこんであのロシアの農業事情にかんする公刊物を燃やしてしまいたいくらいだ。これが年来君のじゃまをして『資本論』の完成を妨げたのだから!」
※一部改行しました

白水社、ジョナサン・スパーバー、小原淳訳『マルクス ある十九世紀人の生涯』下P242ー243

マルクスが『資本論』の第二巻、第三巻を完成させられなかったのは有名ですが、その背後にはこうしたマルクスの完璧主義、脱線癖があったのでした。

「彼は沢山の本を読む。そして並々ならぬ猛烈さで働き、批評の才能をもっている。……しかし彼は何も完成させず、いつも仕事を中断し、書物の汲めど尽きせぬ大海にまたぞろ飛び込むのだ」

「私のほうだってよろこんであのロシアの農業事情にかんする公刊物を燃やしてしまいたいくらいだ。これが年来君のじゃまをして『資本論』の完成を妨げたのだから!」

上でも述べましたようにマルクスは鬼のような読書家でした。大英博物館図書館に籠りひたすら本の海に飛び込むマルクス・・・

彼は原稿を書いては破り捨て、書いては破り捨てを繰り返して、何か思いついたかと思いきや今度は本の世界に飛び込みまた脱線した読書に夢中にのめり込む・・・

これではエンゲルスが嘆くのも無理はないですよね・・・なかなか原稿を送ってくれない作家に振り回される編集者そのものです。

マルクスのロンドンでの生活はこのようなものだったのでした。

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