インドにおける仏教

原始仏教の社会思想インドにおける仏教

中村元選集第18巻『原始仏教の社会思想』~原始仏教と国家、市場経済の関係性を知るのにおすすめ

前回の記事で紹介した中村元選集第17巻『原始仏教の生活倫理』では、主に原始仏教教団における在家信者の生活を見ていきました。そこでは出家者における生活や思想とは異なる在家信者ならではのものを見ていくこととなりました。

そして今作『中村元選集〔決定版〕第18巻 原始仏教の社会思想』では、そうした在家信者という、いわば個の問題ではなく国家や市場経済という社会全体との関わりについて見ていくことになります。

原始仏教をまた違った視点から見ることができる名著です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

原始仏教の生活倫理インドにおける仏教

中村元選集第17巻『原始仏教の生活倫理』~当時のインド社会と在俗信者の生活、葬儀事情を知れる名著

この本は原始仏教教団と共にあった在家の人々と仏教の教えについて説かれた参考書です。原始仏教教団は言うまでもなく出家者の教団です。世俗の生活とは全く離れた修行生活がその本義です。

ですがその教団は出家者だけで成り立つわけではありません。在家信者として生活する一般の人々あってこその出家教団でもあります。この本ではその一般の人々がどのように仏教と共に生きていたかを知ることができます。

また、原始仏教は葬式をしたのかどうかという問題もこの本では詳しく説かれます。葬式仏教批判に対する答えとしてもこの本は大きな意味があると思います。

中村元選集23インドにおける仏教

中村元選集第23巻『仏教美術に生きる理想』~仏教学の泰斗によるインド美術の名解説を聞けるおすすめ本!

この本は仏教学者中村元先生による仏教美術の解説書になります。

中村元先生といえば仏教思想においても当時の時代背景と絡めたわかりやすい解説で有名ですが、今作のテーマである仏教美術においてもその名解説は健在です。

ガンダーラ仏像やマトゥラー仏像など最初期の仏像や、5世紀頃のサールナートの仏像などの比較も行われ、それぞれの特徴も非常にわかりやすいです。

また、仏教芸術の発展に極めて大きな影響をもたらしたストゥーパについての解説も素晴らしいです。

他にもインドの誇る仏教遺跡アジャンタ石窟の解説がこの本ではかなり詳しくなされます。現地に行かれた中村元先生ならではのコメントもあり非常に興味深いです。

インド思想史インドにおける仏教

中村元『インド思想史』~仏教の学びに大いに役立つ名著!インド思想の流れを概観できるおすすめ参考書

今作『インド思想史』は仏教研究における古典中の古典とも言える名著です。

中村元先生の著書の特徴は、単に思想や哲学理論を語るのではなく、時代背景や実際の現地での生活と絡めて説く点にあります。今作『インド思想史』もまさにそうした中村節を堪能できる名著となっています。

インダス文明から始まりアーリア人の侵入、バラモン教の始まり、仏教の興隆、ヒンドゥー教の定着、そしてイスラーム侵入から現代へという、あまりに盛りだくさんなインド思想史をこの本一冊で概観することができます。

釈尊の生涯インドにおける仏教

肥塚隆、田枝幹宏『美術に見る釈尊の生涯』~中村元推奨!仏伝をインド美術のビジュアルで見ていく画期的作品!

この本はブッダの生涯をインドにある仏教美術を通して見ていく作品です。ブッダの生涯を説く本は数多くあれど、本家本元のインド美術を中心にそれを解説していく作品は実はかなり貴重です。

私がこの本を手に取ったのは中村元著『ゴータマ・ブッダ』でこの本が絶賛されていたからでした。

この本を読んでいると実際に現地でこれらのインド美術を見てみたくなります。どこで出土してどこに展示されているのかも掲載されていますのでインド旅行の際の参考になることも間違いなしです。

原始仏教の思想インドにおける仏教

中村元選集第15,16巻『原始仏教の思想Ⅰ、Ⅱ』~最初期の仏教を思想面で見ていく参考書

今作の分量はなんと二冊合わせておよそ1800ページという驚異の大ボリュームです。

仏教の入門書としては正直おすすめすることはできませんが、原始仏教についてより深く学ぶには非常におすすめな作品です。

この本は原始仏教における思想を原典に即して見ていくところにその特徴があります。最初期の仏教教団はどのようなことを説いていたのか、そしてどのように思想が発展、体系化されていったのかを原典を読みながら解説していきます。原典の引用がとにかく膨大です。

思想面にフォーカスしてがっちり説かれるこの本は読みごたえ抜群の名著です。

原始仏教の成立インドにおける仏教

中村元選集第14巻『原始仏教の成立』~仏教はどのようにして生まれたのか。最初期の教団を取り巻く状況を知るのにおすすめ

この本は仏教教団の最初期について解説された作品です。中村元先生は最初期の仏教教団の様子を当時の時代背景や思想界の様相と絡めてこの本でお話ししていきます。

仏教が起こってきた時代背景については以前当ブログでも紹介した中村元著『古代インド』でも語られていました。この『古代インド』は初学者でもわかりやすく読むことができる入門書として非常におすすめな作品ですが、本作『中村元選集〔決定版〕第14巻 原始仏教の成立 原始仏教Ⅳ』ではさらにかっちりと古代インドと原始仏教教団のつながりを見ていくことができます。

仏弟子の生涯インドにおける仏教

中村元選集第13巻『仏弟子の生涯』~最初期のブッダ教団にはどのような人がいたのか。その出自や性格を知るのにおすすめ

仏弟子といえば舎利弗や目犍連、摩訶迦葉を筆頭とした十大弟子が有名ですが、この本では彼ら十大弟子だけではなく、教団に所属していたたくさんの修行者たちの姿も知ることができます。

この作品では最初期のブッダ教団がどのような雰囲気だったのかを知ることができます。原始仏教について学ぶ上で非常にありがたい作品でした。

中村元インドにおける仏教

植木雅俊『仏教学者 中村元 求道のことばと思想』~日本を代表する仏教学者の桁外れのスケールと生涯を知るのにおすすめ!

実は私はこの本を読むまで、中村元先生その人のことをほとんど知りませんでした。ですが、この本を読んで驚いたのですがまさに異次元とも言える業績を残された方でありました。

この本を読んで、大きな視点で世界を見ていく中村元先生のあり方に私も心打たれるものがありました。

この本は仏教とは何かを考えさせられる、非常に大きな意味を持った作品です。ぜひぜひおすすめしたい一冊です。先生の異次元の業績に驚くこと間違いなしです。

古代インドインドにおける仏教

中村元『古代インド』~仏教が生まれたインドの風土や歴史を深く広く知れるおすすめ参考書!

この本はまずインドの先史時代から始まり、インダス文明、アーリア人の侵入、バラモン教の発展など、仏教が生まれ、衰退するまでの過程を詳しく知ることができます。なぜ仏教は生まれたのか、どのような人にブッダの教えが響いたのか、どのようにして仏教教団がインドに広がっていき、最後には衰退することになってしまったのか、それらの大きな流れをわかりやすく学ぶことになります。

仏教の教えや思想を解説する本はそれこそ無数にありますが、それらの思想が生まれてきた時代背景や気候風土をわかりやすくまとめた本は意外と少ないです。この本は私達日本人にとって意外な発見が山ほどある貴重な作品です。これを読めばきっと驚くと思います。