ゾラファン必見映画『オフィサー・アンド・スパイ』あらすじと感想~「私は弾劾する!」で有名なドレフュス事件を描いた傑作!

フランスの文豪エミール・ゾラ

ゾラファン必見映画『オフィサー・アンド・スパイ』あらすじと感想~「私は弾劾する!」で有名なドレフュス事件を描いた傑作!

今回ご紹介するのは2022年6月に公開されたロマン・ポランスキー監督による映画『オフィサー・アンド・スパイ』です。

この作品はフランスの文豪エミール・ゾラによる「私は弾劾する!」の言葉で有名なドレフュス事件を描いた映画になります。

この映画について特設HPには次のように述べられています。

文書改竄 証拠捏造

‟あなたが知らない世紀のスキャンダル”

巨大権力と闘った男の命がけの逆転劇

『戦場のピアニスト』ロマン・ポランスキー監督の最新作は、歴史的冤罪事件“ドレフュス事件”の映画化。巨大権力と闘った男の不屈の信念と壮絶な逆転劇を描きベネチア国際映画祭では銀獅子賞を受賞。本国フランスでは、第45回セザール賞で3部門を受賞しNo.1大ヒットを記録した。

当時のフランスに、国家の土台を揺るがす深刻な分断をもたらしたこの事件。監督は、いわれなき罪を着せられたドレフュスと、彼を救い世に真実を知らしめようとする主人公ピカールの壮絶な運命を描出。その圧倒的なまでにサスペンスフルで、心揺さぶるストーリー展開は、衣装や美術などのあらゆる細部を突きつめた重厚なビジュアルと相まってひとときも目が離せない。

現代に通底する事件を通し、今の時代に警鐘を打ち鳴らす傑作歴史サスペンス上陸!

映画『オフィサー・アンド・スパイ』公式ページより

「文書改竄 証拠捏造」

「現代に通底する事件を通し、今の時代に警鐘を打ち鳴らす傑作歴史サスペンス上陸!」

いやはや、まさにその通り。これは私たちが生きる現代日本においても全く他人事ではない大事件を扱った映画になります。

そしておおまかなあらすじは以下の通りです。

1894年、フランス。ユダヤ人の陸軍大尉ドレフュスが、ドイツに軍事機密を流したスパイ容疑で終身刑を宣告される。ところが対敵情報活動を率いるピカール中佐は、ドレフュスの無実を示す衝撃的な証拠を発見。彼の無実を晴らすため、スキャンダルを恐れ、証拠の捏造や、文書の改竄などあらゆる手で隠蔽をもくろむ国家権力に抗いながら、真実と正義を追い求める姿を描く。

映画『オフィサー・アンド・スパイ』公式ページより

私がこの映画を観ようと思ったのはこの事件がエミール・ゾラに深い関係があったからでした。

私は3年前にエミール・ゾラの小説に出会って心底惚れ込み、彼の代表作『居酒屋』『ナナ』を含む「ルーゴン・マッカール叢書」を読むことになりました。

そして前回の記事で紹介した『ゾラ 人と思想73』の伝記にありますように、ゾラの生涯とドレフュス事件は切り離すことのできない巨大な出来事でありました。

この映画の主人公は軍人のピカールです。彼はドレフュスが冤罪であることに気づき、真実を明らかにするために闘います。

この映画においてはゾラの出番は多いわけではありません。ですがこの映画を観ればなぜゾラがこの事件にそこまで介入しようとしたのかがよくわかります。

ゾラはこの事件に介入し「私は弾劾する!」という有名な文章を発表します。このセンセーショナルな告発記事によってこの事件は国家的スキャンダルへと発展します。ゾラがいなければドレフュス事件は闇に葬られたままだったかもしれません。

ですがその代償も大きなものでした。

ゾラは反ユダヤ的な国民から激しい憎悪を向けられます。上の予告動画の23秒あたりを見てみて下さい。たくさんの紙が燃やされていますよね。映画本編ではゾラの『ナナ』が焼かれているのが明らかに見えました。ユダヤ人のドレフュスに味方したゾラを国民は「国賊、裏切り者」として攻撃したのです。

この映画ではゾラが主役なわけではないので描かれませんでしたが、この後ゾラは身の危険や事件への影響を恐れイギリスへ亡命せざるをえなくなりました。

ゾラはこの事件に関わったことでそれだけの代償を払うことになったのです。それでもゾラは正義のために闘おうとしました。ゾラの「真実・正義」への思いの強さには驚くしかありません。

ゾラは1898年7月に亡命し、99年6月に帰国しています。ですがその後まもなく、1902年に自宅で一酸化炭素中毒で急死してしまいます。調査によって事故死であるとされはしたものの、反ユダヤ主義者による犯行であるという説も未だに消えていないというのが実情です。彼の死はあまりにも急で、あまりにもショッキングなものでした。

ドレフュス事件が未だ解決していない中でのゾラの死はフランス中、いや、世界中に大きなショックを与えました。「真実と正義」を求めた偉大な作家の生涯とドレフェス事件はそのようなつながりがあったのでした。

さて、ここまで映画そのものよりもゾラについてお話ししてしまいましたが、ここでこの映画について一言申し上げるとするなら、

「ぜひ観に行きましょう!ゾラファンは必見です!そうでない人にも、特に若い世代にも見てほしい作品です!」

ということをぜひぜひお伝えしたいなと思います。

この作品は明るく楽しい娯楽作品ではありません。

ですが苦しくなるほど重い作品でもありません。テーマは冤罪事件という重いものではありますが、そこは監督の手腕なのでしょう、流れるようなストーリー展開によってあっという間に引き込まれてしまいます。

そしてこの記事の最初にお話ししましたように、

「文書改竄 証拠捏造
‟あなたが知らない世紀のスキャンダル”
巨大権力と闘った男の命がけの逆転劇」

こうしたテーマで描かれるこの映画は私たち日本人も全く他人事ではありません。

「軍の体面を守るため。国家の威信を守るため。自分自身の保身のため。」

大なり小なり様々な理由で国家権力側はドレフュスに罪をなすりつけ、すべてを隠蔽・改竄しようとしました。

そして隠蔽や改竄に手を染めた者は何と言ったか。

「軍においては命令が絶対だ。上官がやれといえばやるだけだ」

正確に何と言っていたかは思い出せないのですが、権力構造のシステム、歯車になってしまえば人間は何の罪悪感もなく犯罪を行いうるということを実にはっきりと浮かび上がらせた名シーンだと思います。

日本においても最近改竄や隠蔽など様々な問題が噴出していますよね。ですがそれはその後どうなったでしょうか。うやむやにされ、真相の究明には程遠い幕切れになってはいないでしょうか。なぜそうなってしまうのでしょうか。それがまさにこの映画で表されているのではないだろうかと私は思います。

この映画が今公開されている意味は極めて大きいと思います。私が若い人にこそ観てほしいと述べたのはここに理由があります。これから先、国を担っていくのは私たちです。その私たちがこうした現実を知らなければどうやって社会を作り上げていくのでしょうか。

また、この映画では反ユダヤ主義の激烈さも知ることになりました。当時の社会ではユダヤ人をスケープゴートにして人々の不満をそこへ向けさせていました。何か悪いことがあれば「奴らのせいだ」と攻撃させガス抜きをさせるのです。国家権力はそうしたことも利用してドレフュス事件を闇に葬ろうとしました。この作品ではそうした大衆煽動、ポピュリズム、暴力のメカニズムも巧みに描かれています。

こうしたことを知ることも私たちにとって特に重要なのではないかと思うのです。

この映画はぜひぜひおすすめしたいです!私はこの映画を観てもっとゾラが好きになりました。ゾラが生涯をかけて伝えようとしたことを私も大切に受け取っていきたいです。

以上、「ゾラファン必見映画『オフィサー・アンド・スパイ』あらすじと感想~「私は弾劾する!」で有名なドレフュス事件を描いた傑作!」でした。

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