代表作『居酒屋』『ナナ』を含むゾラ渾身の作品群「ルーゴン・マッカール叢書」一覧

エミール・ゾラとドストエフスキー

フランス文学の最高峰!代表作『居酒屋』『ナナ』を含むゾラ渾身の作品群「ルーゴン・マッカール叢書」一覧

これまで20巻にわたり「ルーゴン・マッカール叢書」をご紹介してきましたが、今回はそれらを一覧にし、それぞれどのような物語かをざっくりとまとめていきたいと思います。

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「ルーゴン・マッカール叢書」の全体像を把握するのに便利ですので、ぜひ上のリンクから家系図をご覧になってください。どの人物がどの作品に登場するかが一目瞭然です。

第1巻『ルーゴン家の誕生』1871年

「ルーゴン・マッカール叢書」の始まり。すべての物語のルーツ。
ナポレオン三世のクーデターの混乱に揺れる地方都市が舞台。
ルーゴン・マッカール一族がいかにして生まれたかが語られます。

第2巻『獲物の分け前』1872年

ルーゴン家三男のアリスティッドが主人公。
パリに上京したアリスティッドは金の響きがするサッカールへと改名。
ナポレオン三世政権のパリ大改造に乗じた土地投機で莫大な利益を得る。
「金」と「投機熱」、「贅沢」、「色欲」の悲惨が描かれています。

第3巻『パリの胃袋』1873年

食べ物で溢れかえるパリ中央市場が舞台。
主要登場人物のリザはマッカール一族の女性。
宗教や倫理の規範も希薄になり、自分の欲望をどこまでも追求することが良しとされる時代。ゾラはこの小説のなかで、そうした歯止めのない欲求を、「食欲」という身近なかたちで表現している。
自分さえ安穏に暮らせれば他はどうなろうと関係ないというエゴイズムを批判。

第4巻『プラッサンの征服』1874年

ルーゴン・マッカール一族が生まれた地方都市プラッサン。
第1巻『ルーゴン家の誕生』ではナポレオン三世のクーデターに乗じてルーゴン家がこの村の実権を握ることが描かれましたが、この作品ではその実権を取り戻すためにパリから密かに送られてきた謎の人物フォージャ神父がキーパーソンとなります。
聖職者による洗脳、家庭崩壊、政治的陰謀がこの作品では描かれています。

第5巻『ムーレ神父のあやまち』1875年

第4巻『プラッサンの征服』で登場したフランソワ・マルト夫妻の次男セルジュが主人公。セルジュは神父でありましたが、病気のため一時記憶喪失になりその時献身的に看護してくれたアルビーヌという美しい女性と恋に落ちます。
しかし記憶が戻ると聖職者としてその恋は唾棄すべきものとなり、アルビーヌを捨ててしまうのです。
信仰と恋愛、いのちの問題がこの作品で描かれています。

第6巻『ウージェーヌ・ルーゴン閣下』1876年

ルーゴン家長男ウージェーヌが主人公。
ウージェーヌはパリの大物政治家で、今作ではパリの政治の裏側を描いています。政治的駆け引きやルーゴン家の血を引くウージェーヌのしたたかさを感じることができます。

第7巻『居酒屋』1877年

アルコール中毒のマッカール家の遺伝を受け継いだジェルヴェーズが主人公。
ゾラの文学者としての地位を確実なものとした大ヒット作。
パリの労働者家庭がいかにして悲惨な生活へと落ち込んでいくかを赤裸々に暴露。
低賃金、飲酒、モラルの崩壊、近隣住人との関係、寄生する男による搾取、児童虐待など、多くの悲惨が描かれています。

第8巻『愛の一ページ』1878年

第5巻『ムーレ神父のあやまち』と対をなす作品。敬虔で貞淑な未亡人エレーヌと、裕福な医者アンリの不倫の物語。
エレーヌの一人娘ジャンヌは自分以外に愛が向くことが耐えられずヒステリーを起こすほどの神経症を持ち、エレーヌはアンリとジャンヌの間で揺れ動きます。
夕暮のパリ、嵐のパリ、夜景のパリ、―心情をなぞるような都市の描写でも有名な、印象派絵画を思わせる悲恋の物語

第9巻『ナナ』1880年

第7巻『居酒屋』の続編。主人公ナナは『居酒屋』の主人公ジェルヴェーズの娘。こちらもゾラの代表作。
前作『居酒屋』ではダメ男と貧乏、酒によって家庭は崩壊し、ジェルヴェーズは悲惨な死を遂げました。ナナはそんな悲惨な家庭を飛び出し、娼婦となり新たな生活を始めます。そしてその美しさと奔放な性格によって数多くの男を虜にし、パリに君臨することになります。

第10巻『ごった煮』1882年

この作品は次の『ボヌール・デ・ダム百貨店』の前史となるもので、『居酒屋』と『ナナ』以上に緊密な関連性を持った小説と言われています。
主人公は『プラッサンの征服』の主人公フランソワ・ムーレとその妻マルト・ルーゴン夫妻の長男オクターヴ・ムーレという人物です。
この物語ではパリのブルジョアの退廃した生活が描かれています。

第11巻『ボヌール・デ・ダム百貨店』1883年

前作『ごった煮』でも主人公であったオクターヴ・ムーレはブルジョワ達の私生活を学び、ついに彼の野望であった巨大デパートの開業を成し遂げていました。
この物語では近代消費資本主義の発祥となったデパートのメカニズムを詳細に描きだしています。
巨大なデパートは近隣の小規模な小売店を駆逐しながらどんどん成長していきます。昔ながらの店主たちの悲しみもこの作品では描かれています。

第12巻『生きる歓び』1884年

主人公ポリーヌは、「ルーゴン・マッカール叢書」第3巻の『パリの胃袋』に登場したリザの娘です。
この小説は近代社会の厭世と献身の物語 と言われていて、ゾラはこの小説で当時大流行していたショーペンハウアー的なペシミズム(悲観主義、厭世主義)を批判するために、生きる歓びを体現するポリーヌを立たせています。

第13巻『ジェルミナール』1885年

主人公は『居酒屋』のジェルヴェーズの三男エチエンヌです。
今作は炭鉱労働者となったエチエンヌが働く炭鉱の実態と資本家と労働者の対立、そして過酷なストライキと群衆の狂気、暴動を描いた作品です 。
『居酒屋』、『ナナ』と並ぶゾラの代表作です。

第14巻『制作』1886年

今作の主人公クロードは「ルーゴン・マッカール叢書」第7巻『居酒屋』のジェルヴェーズの長男にあたります。
セザンヌやマネなど、印象派の画家たちをモデルに、当時の芸術界の実態を描写し、芸術家の生みの苦しみをとことんまで描いた作品です。
また、クロードの親友として登場する小説家サンドーズを通してゾラの自伝的な物語も展開されています。

第15巻『大地』1887年

「ゾラが問う、田園が孕む老いと相続の邂逅   土地相続をめぐるフーアン爺さんと三家族、その姪姉妹とジャン=マッカールの殺意に充ちた物語」
今作の主人公ジャンは『パリの胃袋』のリザ、『居酒屋』のジェルヴェーズの弟に当たります。
今作の『大地』は農村を舞台にし、没落していく貧しい農民たちが遺産の土地を奪い合い、土地に対する異様なほどの執着を見せあう物語になっています。そしてこの作品を前編とし、第19巻の『壊滅』へと繋がっていきます。

第16巻『夢想』1888年

今作の主人公アンジェリックはルーゴン家のシドニーという女性の一人娘で、今作では捨てられた孤児として物語はスタートします。
そして善良な刺繍職人であるユべール夫婦の養女となり、すくすく育ちますが、いつか王子様が現れて結婚し、大金持ちになるという黄金伝説の夢想にふけるようになります。そしてその結末は夢想の実現と、彼女の死というファンタスティックな物語となっています。

第17巻『獣人』1890年

19世紀、時代の先頭を驀進する鉄道を駆使した“鉄道小説”の先駆! 「叢書」中屈指の人気を誇る、探偵小説的興趣をもった作品。
今作の主人公のジャックは『居酒屋』のジェルヴェーズの次男にあたり、狂気の遺伝を持つマッカール家に位置します。
鉄道を舞台にした殺人事件をめぐる物語で、ドストエフスキーの『罪と罰』の影響を受けた作品と言われています。

第18巻『金』1891年

「80年代日本のバブル景気とその崩壊そのままの、19世紀金融小説!
世論誘導、粉飾決算などによる実体のない株価急騰、極限まで騰貴した株価の突然の大暴落、不良債権を抱えて自殺する事業家―高度資本主義社会における人間と社会の異常さを描ききる!」
主人公サッカールは『ルーゴン家の誕生』や『獲物の分け前』でも登場しています。 株価の高騰や配当、金利収入が人を狂わす過程をこの小説では丹念に描いています。

第19巻『壊滅』1892年

フランス第二帝政期の終焉をもたらした普仏戦争とパリ・コミューンの争乱を描いた作品。
『壊滅』は叢書第15巻の『大地』の続編で、「ルーゴン・マッカール叢書」のクライマックスと言うべき作品で、 戦争文学の傑作、金字塔とされています。

第20巻『パスカル博士』1893年

「ルーゴン・マッカール叢書」の締めくくりとしてゾラの思想が最もはっきりと見える作品。
今作でパスカルはこれまで語られてきた19巻の物語を回想し、それらを題材に自らの信念や遺伝と人間の関係性、科学と宗教の戦いなど多くのことを語ります。
ゾラが献辞で「私の全作品の要約にして、結論であるこの小説を母の思い出と愛する妻に捧げる」と述べるように、この作品は「ルーゴン・マッカール叢書」を知る上で非常に重要な意味を持つ作品となっています。

終わりに

次回は私の選ぶゾラおすすめ作品5選を改めて紹介します。

以上、「エミール・ゾラ「ルーゴン・マッカール叢書」一覧」でした。

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