仏教

大乗仏教の思想インドにおける仏教

中村元選集第21巻『大乗仏教の思想』~原始仏教と初期大乗について考えるのに刺激的なおすすめ参考書

今作では日本仏教にも直接関わってくる大乗仏教の思想やその成立・発展過程を知ることができます。中村元先生の特徴は単に思想だけでなく当時の時代背景と絡めて語る点にあります。この本でも当時の時代背景や当地の気候風土、民族性など幅広い視点から仏教を見ていきます。

この本では冒頭からいきなりドキッとする指摘がなされます。記事タイトルにありますように仏教とは何かを考える上で非常に興味深い指摘満載の名著です。

パウッダインドにおける仏教

中村元、三枝充悳『バウッダ[佛教]』~阿含経とは何か、大乗経典の成立伝播の過程を学ぶのにおすすめの参考書

この本は日本ではあまり馴染みのない阿含経典についてや大乗仏教の成立伝播の過程を学べる参考書となっています。

私も阿含経典とはどのようなものなのか、いつどのようにして日本に入りどのように読まれてきたのかということに興味があったのでこの本は非常にありがたいものがありました。詳しいながらもわかりやすい解説ですので仏教をより深く学びたい方にも読み応え抜群だと思います。

大乗仏教についてもその成立と伝播の過程がわかりやすく解説されます。日本に伝わってきた仏教がどのようなものだったのか、また日本で信仰されてきた仏教とインドの原始仏教との違いがこの本で明らかにされます。

仏教とは何かを考える上で素晴らしい参考書であるのは間違いありません。

原始仏教から大乗仏教へインドにおける仏教

中村元選集第20巻『原始仏教から大乗仏教へ』~仏教史の転換点!日本仏教を考える上でも重要な示唆が満載の名著

今作ではこの時代の仏教思想の豊かさや当時の時代背景とのつながりを学ぶことができます。

また、大乗仏教が生まれてくる萌芽もこの本では詳しく見ていくことになります。大乗仏教は民衆を無視した既存教団への反発から生まれたという単純な構図で語られがちですが、実際はそう簡単な話ではありません。もちろん、そうした側面もあったかもしれませんが、そこには様々な社会要因も絡んでいたこともこの本では学べます。

入門書としてはかなり厳しい内容ですがより詳しく仏教を学びたい方にはとてつもなく読み応えのある大作です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

原始仏教の社会思想インドにおける仏教

中村元選集第18巻『原始仏教の社会思想』~原始仏教と国家、市場経済の関係性を知るのにおすすめ

前回の記事で紹介した中村元選集第17巻『原始仏教の生活倫理』では、主に原始仏教教団における在家信者の生活を見ていきました。そこでは出家者における生活や思想とは異なる在家信者ならではのものを見ていくこととなりました。

そして今作『中村元選集〔決定版〕第18巻 原始仏教の社会思想』では、そうした在家信者という、いわば個の問題ではなく国家や市場経済という社会全体との関わりについて見ていくことになります。

原始仏教をまた違った視点から見ることができる名著です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

生活の世界歴史5インド思想と文化、歴史

辛島昇・奈良康明『生活の世界歴史5 インドの顔』~インド人の本音と建て前。生活レベルの精神性を幅広く知れるおすすめ本!

実際の生活には「本音と建て前」があります。これを無視してどちらかだけを取り上げてしまうと全く別のものが出来上がってしまうという著者の指摘にはたしかに「なるほど」と頷けるものがありました。

本書ではこうした宗教面だけでなく、カーストや芸術、カレーをはじめとした食べ物、政治、言語、都市と農村、性愛などなどとにかく多岐にわたって「インドの生活」が説かれます。仏教が生まれ、そしてヒンドゥー教世界に吸収されていったその流れを考える上でもこの本は非常に興味深い作品でした。

原始仏教の生活倫理インドにおける仏教

中村元選集第17巻『原始仏教の生活倫理』~当時のインド社会と在俗信者の生活、葬儀事情を知れる名著

この本は原始仏教教団と共にあった在家の人々と仏教の教えについて説かれた参考書です。原始仏教教団は言うまでもなく出家者の教団です。世俗の生活とは全く離れた修行生活がその本義です。

ですがその教団は出家者だけで成り立つわけではありません。在家信者として生活する一般の人々あってこその出家教団でもあります。この本ではその一般の人々がどのように仏教と共に生きていたかを知ることができます。

また、原始仏教は葬式をしたのかどうかという問題もこの本では詳しく説かれます。葬式仏教批判に対する答えとしてもこの本は大きな意味があると思います。

インド美術インド思想と文化、歴史

V・デヘージア『岩波 世界の美術 インド美術』~オールカラーの素晴らしい写真が満載!おすすめインド美術ガイドブック

この本はインダス文明から現代インドまでの美術史を一冊で概観できる驚くべき作品です。この本の特徴は写真が豊富ですべてオールカラーで掲載されている点にあります。また、時代ごとに並んでいるのでインドの美術がどのような流れで変遷していったのかを知れるのもありがたいです。

私は特に仏教美術に関心があったのですが、初期の仏像や仏教彫刻を綺麗な写真で見れたのはとてもありがたかったです。解説もわかりやすく、これはぜひおすすめしたい作品だとすぐに感じました。

近代インドの思想インド思想と文化、歴史

中村元選集第31巻『近代インドの思想』~イスラーム侵入以後のインドやヒンドゥー教の宗教改革について学ぶのにおすすめ

中世インドは仏教やヒンドゥー教が栄えた古代インドと比べるとマイナーなジャンルかもしれませんが、仏教やヒンドゥー教そのものを考える上で大きな示唆を与えてくれます。私もこの本で語られるインドイスラームの歴史を興味深く読ませて頂きました。これは面白いです。

あまり話題にならない中世インドの話ではありますが、あえて手に取ってみるのもありだと思います。面白いです。

日本でわたしも考えたインド思想と文化、歴史

P・アイヤール『日本でわたしも考えた』~インド人から見た日本とは。日本の良さも悪さも率直に綴られた痛快作

この本を読めば日本とは何なのか、私たち日本人は海外からどう見られているのかというのがよくわかります。

この本を読んでいて特に感じたのはやはり「私達日本人も見られているのだ」ということでした。

私はここ数か月、インドについて学んでいます。インドについて語られた本をひたすら読み、この後には実際にインドを訪れる予定です。

そうして私はインドを読んで見て知ろうとしています。

ですがニーチェの「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」という言葉ではないですが、インドも私のことを見ているのだということを改めて実感したのでした。

中村元選集23インドにおける仏教

中村元選集第23巻『仏教美術に生きる理想』~仏教学の泰斗によるインド美術の名解説を聞けるおすすめ本!

この本は仏教学者中村元先生による仏教美術の解説書になります。

中村元先生といえば仏教思想においても当時の時代背景と絡めたわかりやすい解説で有名ですが、今作のテーマである仏教美術においてもその名解説は健在です。

ガンダーラ仏像やマトゥラー仏像など最初期の仏像や、5世紀頃のサールナートの仏像などの比較も行われ、それぞれの特徴も非常にわかりやすいです。

また、仏教芸術の発展に極めて大きな影響をもたらしたストゥーパについての解説も素晴らしいです。

他にもインドの誇る仏教遺跡アジャンタ石窟の解説がこの本ではかなり詳しくなされます。現地に行かれた中村元先生ならではのコメントもあり非常に興味深いです。