演劇

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

『スターリン伝』から見たゴーリキー~ソ連のプロパガンダ作家としてのゴーリキー

『スターリン伝』で読んだゴーリキー像は佐藤清郎氏の『ゴーリキーの生涯』とはだいぶ違った姿でした。

とは言え、ゴーリキーが幼い頃から苦労し、作家となってからも自身の考える理想を追求していたのも事実です。そしてロシア革命後にはレーニンの独裁に反対し、国も去っています。ですので、佐藤清郎氏によって書かれたゴーリキー像もそういう点では間違いではないと思います。

ただ、スターリンがあまりに狡猾だったということが言えるのではないでしょうか。ゴーリキーを自身の手元に置き、利用した。それも自身の意図に気づかれることもなく、ゴーリキーがスターリンのソ連が素晴らしいものだと思い込むように仕向けた。このスターリンの手法は恐るべきものだと思います。

ロシアの大作家チェーホフの名作たち

本当にいい本とは何かー時代を経ても生き残る名作が古典になる~愛すべきチェーホフ・ゾラ

今こそチェーホフとゾラを読もう!―時代と世の中の仕組みを冷静に見る視点 これまで当ブログではおよそ1カ月にわたってチェーホフについてご紹介してきました。 ドストエフスキーを学ぶ上では必須という作家ではないチェーホフをここ…

ロシアの大作家チェーホフの名作たち

松下裕『チェーホフの光と影』~ドストエフスキーにも造詣が深い著者によるおすすめのチェーホフ入門書

松下裕氏の言葉はとてもわかりやすく、読んでいて引き込まれるような魅力があります。百年前の偉大な作家の解説書というと小難しいイメージがあるかもしれませんがまったくそういう雰囲気はありません。とにかく読みやすいです。

この本を読んでいるともっとチェーホフを知りたい、早くチェーホフの作品を読みたいという気持ちになります。

また、最初にお話ししましたように松下氏は『評伝ドストエフスキー』を翻訳された、ドストエフスキーにも造詣が深いロシア文学研究者です。

そのためこの本の中でも何度もドストエフスキーが登場します。

ドストエフスキーとチェーホフを比較して解説してくれますので、チェーホフだけでなくドストエフスキーのことも知ることができます。

ロシアの大作家チェーホフの名作たち

佐藤清郎『わが心のチェーホフ』~チェーホフの魅力や面白さをわかりやすく解説した名著!

この本ではチェーホフがいかに優れた作家か、そしてその特徴がどこにあるのかということがこの上なくわかりやすく書かれています。

そしてチェーホフだけではなく、ドストエフスキーとの対比も書かれているので、チェーホフを知りたい方だけではなく、ロシア文学や演劇を知りたい方にとっても非常に面白い知見がたくさん説かれています。

この本を読めばチェーホフだけでなくロシア文学の特徴、そしてそれらが現代日本を生きる私たちにどのような意味があるのか、どのような問いかけをしているかまで学ぶことができます。

この本はとにかくおすすめです。チェーホフ関連の本で何を読もうか迷っている方がいればまずこの本をお薦めしたいです。

ロシアの大作家チェーホフの名作たち

佐藤清郎『チェーホフ劇の世界』~チェーホフ劇のおすすめ参考書!

この本の特徴ですが、タイトルにありますようにチェーホフの劇に特化して解説された参考書です。同氏の『チェーホフ芸術の世界』では小説作品のみを取り上げていたのに対し、こちらの本では小説作品は取り上げません。

チェーホフ四大劇の『かもめ』、『ワーニャ伯父さん』、『三人姉妹』、『桜の園』だけでなく、『イヴァーノフ』という作品についてもかなり詳しく解説されています。

演劇とは何か、小説とは何が違うのかということまでじっくり考察された盛りだくさんな本です。四大劇だけでなく、舞台演劇に興味のある方にもおすすめしたい内容となっています。

桜の園・三人姉妹ロシアの大作家チェーホフの名作たち

チェーホフ『桜の園』あらすじと感想~チェーホフ最晩年の名作劇!

個人的な感想ですが『桜の園』は四大劇の中では一番読みやすく、印象に残った作品でした。

時代に取り残されていくのんきな田舎貴族と、現実的な商人ロパーヒンの対比はチェーホフの力量がまさに遺憾なく発揮されています。

本を読んでいても独特な間と余韻が感じられます。もしこれを劇で観れたとしたらどれほどのインパクトを受けるだろうかと思ってしまいました。

桜の園・三人姉妹ロシアの大作家チェーホフの名作たち

チェーホフ『三人姉妹』あらすじと感想~悲劇と喜劇の融合!晩年の熟練した技術が詰め込まれた傑作劇!

『かもめ』で圧倒的な成功を収めたチェーホフ。その新しい演劇方式は演劇界に革命をもたらしました。チェーホフは独自な劇をするということが世に広まった後ですら、この台本を見た舞台関係者は困惑してしまうほどでした。

この作品はチェーホフの劇へのこだわりが強く出ている作品となっています。

ロシアの大作家チェーホフの名作たち

チェーホフ『ワーニャ伯父さん』あらすじと感想~ゴーリキーが号泣した劇作品

この劇は『かもめ』というロシア演劇界に革命を起こした作品を経てさらに円熟した作劇が光る作品となっています。

この作品の大きなテーマは「絶望から忍耐へ」です。

この作品を見たゴーリキーは感動して号泣してしまったと言われています。

この記事ではそんな『ワーニャ伯父さん』についてお話ししていきます。

ロシアの大作家チェーホフの名作たち

チェーホフ『かもめ』あらすじと感想~ロシア演劇界に革命を起こしたチェーホフの代表作!

『かもめ』はチェーホフの代表作として今では有名ですが、実はこの劇の初演はとてつもない大失敗だったと言われています。

『かもめ』は当時の劇としては斬新すぎてお客さんどころか演じる役者ですら全く理解できなかったそうです。

しかしその2年後ダンチェンコによってモスクワ座で『かもめ』が再演されます。チェーホフの意図するところを深く理解した彼によって指揮された『かもめ』はロシア演劇界最大級の事件になるほどの大成功を収めます。

この成功があったからこそ後の『ワーニャ伯父さん』『三人姉妹』『桜の園』という名作劇が作られていくことになったのでした。

退屈な話ロシアの大作家チェーホフの名作たち

チェーホフ『黒衣の僧』あらすじと感想~天才と狂気は紙一重?思わず考えずにはいられない名作

天才とは何なのか。逆に言えば狂気とは何なのか。人と違ったことを考えたり、人と違うものが見えることが狂気であるならば、天才とはもれなく治療の必要な狂人となってしまうではないか。

そして巷でもてはやされる天才が結局そうではない以上、凡人が天才として祭り上げられているに過ぎないのではないか。そんな世の中などうんざりだと主人公コーヴリンは語ります。

これはとても考えさせられますよね。

天才ってそもそもなんだろう。狂気と紙一重のものなのではないだろうか。

これはとても面白いテーマです。そして同時に恐ろしくもあります。そんな恐るべき深淵をチェーホフは得意のシンプルな語りで問いかけてきます。