世界史

墨子中国仏教と思想・歴史

浅野裕一『墨子』~兼愛や非攻など、戦国時代において平和と博愛を説いた墨家の思想を知るのにおすすめ

戦乱の世において平和主義を説いた異色の思想家集団の実態を知ることができる貴重な参考書です。

この本を読み、「非攻」という平和主義や「兼愛」という博愛主義を説いていた墨家が進んで武装し戦闘していたというのはかなり驚きでした。ですがこれは簡単な話ではなく、戦国時代という過酷な時代背景をいかに生き抜くかを極限まで考えた上でのお話です。

非攻を唱えながら進んで武装したことを矛盾と一言で切り捨てることはできません。なぜそのようなことになったのかというのは私にとって非常に興味深いものがありました。

本書ではそんな墨家がどのように生まれ、どのようにして中国に広がり、さらにはいかにして消滅していったかが説かれます。

孫子中国仏教と思想・歴史

渡邉義浩『孫子―「兵法の真髄」を読む』~現代にも通ずる古典中の古典をわかりやすく学べるおすすめ参考書

渡邉義浩『孫子―「兵法の真髄」を読む』概要と感想~現代にも通ずる古典中の古典をわかりやすく学べるおすすめ参考書 今回ご紹介するのは2022年に中央公論新社より発行された渡邉義浩著『孫子―「兵法の真髄」を読む』です。 早速…

論語中国仏教と思想・歴史

孔子『論語』~仏教にも大きな影響を与えた儒教の聖典。『論語』の語りのプライベート感に驚く。

今回初めて『論語』を読んでみて、「あぁ!あの名言はここでこういう流れで説かれていたのか」という刺激的な読書になりました。

私個人としてはこうした有名な言葉を読めたのはありがたかったのですが、それよりも『論語』全体の雰囲気が特に印象に残っています。

と言いますのも、『論語』がプライベート感満載のように感じられたのです。孔子と弟子との対話ということで人物名もたくさん出てきますし、ある特定の状況下における孔子の箴言が語られます。つまり、どんな時、どんな人間においても普遍的に通用する言葉というよりは、その状況に応じた孔子の言葉という雰囲気がありました。

儒教とは何か中国仏教と思想・歴史

加地伸行『儒教とは何か』~死と深く結びついた宗教としての儒教とは。中国人の宗教観を学ぶのにおすすめの解説書

この本はタイトル通り、儒教とは何かを見ていく作品です。儒教といえば宗教というより倫理道徳と見られがちですが、著者によれば儒教こそまさに中国人の宗教に大きな影響を与えたと述べます。

儒教は死と深く結びついており、儀礼、倫理道徳だけで収まるものではないことをこの本で知ることになります。

加地伸行氏の著作については前回の記事で紹介した『孔子』もとてもおすすめです。孔子がどのような人物でどのような人物だったかがわかる素晴らしい伝記です。本作とセットで読めば相乗効果抜群です。ぜひ二冊セットでおすすめしたいです。

中国の思想中国仏教と思想・歴史

村山吉廣『中国の思想』~中国宗教の時代背景と全体像を掴むのにおすすめの参考書!

私がこの本を読んだのは以前当ブログで紹介した菊地章太著『儒教・仏教・道教 東アジアの思想空間』がきっかけでした。その本の中で本書が次のように紹介されていたのです。

「村山吉廣氏の『中国の思想』という本は、興味がある方にはおすすめの一冊。中国思想史を簡潔にまとめた本だが、ときどき身も蓋もないが書いてあってワクワクする。たとえば開口一番こんな惑じだ。

「中国の古典や思想に関心を抱いている人は多いけれども、そういう人の持っている知識はおおむね。不正確であり、時として大いに間違っている」

いきなり目のまえの人をたたっ斬るようで痛快ですね」

実際この本を読んでみるとまさに切れ味抜群の刺激的な一冊でした。

儒教仏教道教中国仏教と思想・歴史

菊地章太『儒教・仏教・道教 東アジアの思想空間』~中国の宗教は何なのかを知るためのおすすめ入門書

著者によればこの本は入門書としての位置づけではありますが、この本で説かれることはものすごく濃いです。

この本では儒教、仏教、道教それぞれの教えや特徴を見ていきながらそれらがどのように絡み合っているかを見ていきます。

さらには「そもそも宗教とは何なのか」という直球ど真ん中の問題にもこの本では切り込んでいきます。これは面白いです!

私達の隣人である中国。その隣人の宗教は一体何なのか。意外とこれがわからない。そんな疑問をずっと持ち続けていた私にとってこの本は非常に刺激的で興味深いものがありました。

遊牧民から見た世界史中国仏教と思想・歴史

杉山正明『遊牧民から見た世界史』~私達の先入観を粉砕する刺激的な一冊!歴史を多角的に見る視野を得るために

この本では私たちが漠然と想像する遊牧民のイメージを根底から覆す作品です。また、単に遊牧民という存在だけにとどまらず私たちの歴史認識そのものを問う恐るべき作品となっています。

そして本記事のタイトルに「先入観を粉砕」と書きましたがまさにその通り。少なくとも私は思いっきり粉砕されました。

これまで様々なジャンルを読んできて、なるべく色んな視点から物事を見ていこうと意識していたにも関わらずこの様です。この事実にものすごく恥じ入ってしまいました。

この本を読めばきっと私と同じ思いになる方も多いのではないでしょうか。いやあ痛快な一冊でした。

スターリンの図書室レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

ジェフリー・ロバーツ『スターリンの図書室』~読書という視点から見る斬新なスターリン伝。彼はドストエフスキーをどう見たのか。

「嫌っているだけでは、彼がなぜ、いかにしてあのような所業に走ったのかを説明することはできない。」

これは著者による非常に重要な指摘です。スターリンを単なる大悪人と片付けてしまったらそこで思考は終了です。

なぜスターリンは独裁者となれたのか、その背景となったものは何だったのか、それを「読書」という観点から見ていく本書は非常に刺激的です。「読書」というある意味独裁者と結びつきにくいマイナーな切り口から攻めていく著者の勇気には驚くしかありません。非常に斬新です。

ビジュアル大図鑑中国の歴史中国仏教と思想・歴史

『ビジュアル大図鑑 中国の歴史』~写真や図版多数のおすすめ資料集!見て学ぶ中国史!

この本は中国史を学ぶ上で非常に参考になると作品です。何と言っても圧倒的なボリュームの図版が最大の魅力です。しかもオールカラー!中国の歴史と文化をビジュアルで学べるありがたい作品です。中学高校時代にあった資料集のような存在ですね。

この本は素晴らしい写真が満載です。中国の壮大さ、文明の洗練さに度肝を抜かれること請け合いです。

中国の歴史07中国仏教と思想・歴史

『中国の歴史07 中国思想と宗教の本流』~印刷術がもたらした知の革命や仏教・儒教への影響を知るのにもおすすめ!

宋といえば私の中で平清盛の日宋貿易のイメージしかなかったのですがこの本を読んで驚きました。隋や唐と比べて印象が薄い宋ではありますが、中国文化が圧倒的に洗練されたものになったのはこの時代だったのでした。
本書ではそんな宋の歴史とともにその文化面も詳しく見ていくことができます。写真も豊富ですのでその見事な陶磁器の姿も見ることができます。視覚的にイメージできるのでこれはありがたいです。

そして私が最も驚いたのは印刷術の発明によってもたらされた革命的な変化です。「本を読む」という行為が決定的に変容したその瞬間が非常に興味深かったです。