芝健介『ホロコースト』ホロコーストの歴史を学び始めるのにおすすめな1冊
中公新書、芝健介『ホロコースト』ーナチスによるユダヤ人大量虐殺の全貌 今回ご紹介するのは中公新書より2008年に出版された芝健介著『ホロコースト』という本です。 早速この本について見ていきましょう。 ヒトラー政権下、ナチ…
中公新書、芝健介『ホロコースト』ーナチスによるユダヤ人大量虐殺の全貌 今回ご紹介するのは中公新書より2008年に出版された芝健介著『ホロコースト』という本です。 早速この本について見ていきましょう。 ヒトラー政権下、ナチ…
この作品は心理学者フランクルがアウシュヴィッツやミュンヘンのダッハウ収容所での経験を綴ったものです。
前回の記事でご紹介したワシーリー・グロスマンの『トレブリンカ収容所の地獄』では絶滅収容所の悲惨さが描かれたのに対し、『夜と霧』では強制収容所という極限状態においてどのように生き抜いたのか、そしてそこでなされた人間分析について語られていきます。
この本は絶望的な状況下でも人間らしく生き抜くことができるという話が語られます。収容所という極限状態だけではなく、今を生きる私たちにとっても大きな力を与えてくれる本です。
この本がもっともっと多くの人に広がることを願っています。
グロスマンの描いたトレブリンカは絶滅収容所といわれる収容所です。ここはそもそも大勢の人を殺害するために作られた場所です。そこに移送された者で生存者はほとんどいません。移送された人々は騙され、強制され、追い立てられ、次第に自分の運命を悟ることになります。そして圧倒的な暴力の前で無力なまま殺害されていきます。これはまさにフランクルの言う地獄絵図です。グロスマンはフランクルの描かなかった地獄を圧倒的な筆で再現していきます。『夜と霧』と一緒に読むと、よりホロコーストの恐ろしさを体感することになります。
ホロコーストを学ぶ上でこの本がもっとフォーカスされてもいいのではないかと心から思います。
訳者は「多くの人に、とくに若い人たちにグロスマンの作品を読んでもらいたい」、「全体主義の問題は今日でも大きな問題ですし、いつの時代にも権力と個人の問題は誰も避けては通れません。そして、そうしたものに対するグロスマンの投げかけた問いは、今日でも色あせてはいないのです。」と述べます。
『人生と運命』もそうでしたがこの小説も読むのがつらかったです。ですがその分衝撃もものすごかったです。よくぞこんなにえげつないものが書けるものだなとため息しかありません。読んでいてその厳しさに何度も固まってしまいました。「じゃあいったいどうすればいいんだ・・・」と呻くしかなくなってしまいます・・・
そうした状況に実際に当時の人たちは置かれていたのかと思うと戦慄してしまいます。
『人生と運命』はグロスマンの命がけの告発の書です。
ソ連において体制批判はタブー中のタブーです。強制収容所送りや死刑を覚悟しなければなりません。グロスマンはこの作品を書き上げるもKGBの家宅捜索を受け没収されてしまいます。そして当局から危険書物扱いをされ「今後2~300年、発表は不可」と宣告されます。
「今後2~300年、発表は不可」という宣告のものすごさ。この小説がどれだけソ連当局にとって危険なものだったかがうかがえます。逆に言えば、それだけソ連にとって都合の悪い真実を映し出していたということができるかもしれません。
日本ではワシーリー・グロスマンの存在はあまり知られていませんが、それは残念なことだと私は思います。戦争の悲惨さや全体主義の抑圧の恐怖を伝える偉大な作家の一人がこのワシーリー・グロスマンです。
この本で何より印象的だったが、ナチスのホロコーストの現場を取材した部分です。ホロコーストというと、私たちはアウシュヴィッツを想像してしまいますが、トレブリーンカという絶滅収容所についてこの本では述べられています。そこでは80万人以上の人が殺害されています。その凄惨な殺害の手法は読んでいて寒気がするほどです。それを現地で取材したグロースマンはどれほど衝撃を受けたのか想像することもできません。
独ソ戦という世界の歴史上未曽有の絶滅戦争を最前線で取材した彼の記録は必見です。とてもおすすめな1冊です。
アウシュヴィッツのホロコーストに比べて日本ではあまり知られていないカチンの森事件ですが、この事件は戦争や歴史の問題を考える上で非常に重要な出来事だと私は感じました。
国の指導者、知識人層を根絶やしにする。これが国を暴力的に支配する時の定石であるということを学びました。非常に恐ろしい内容の本です。ぜひ手に取って頂ければなと思います。
民主主義であったはずのドイツがなぜ全体主義へと突き進んでいったのか。
これは日本においても当てはまる事象です。
ナチスを学ぶことは私達の歴史を学ぶことにもつながります。
この本ではいつものごとく、神野氏の絶妙な解説で進んで行きます。とにかく面白く、読みやすいです。ドイツの流れをまずは知りたいという方には非常におすすめな1冊となっています。
第二次世界大戦とは実際にどのような戦争だったのか。ナチスはどのように動いたのか。スターリン率いるソ連はそれにどのように対抗したのか。イギリス、フランス、アメリカは?
複雑怪奇な国際情勢をこの本では学べます。そして単に出来事の羅列ではなくなぜ歴史がそのように動いたのかという「なぜ」を神野氏は強調していきます。ここが『世界史劇場』シリーズの素晴らしいところだと思います。単なる暗記ではなく、「なぜ」を考える思考力を鍛えてくれるところにこの本の特徴があると私は思っております。非常におすすめな一冊です。
戦争がいかに人間性を破壊するか。
いかにして加害者へと人間は変わっていくのか。
人々を戦争へと駆り立てていくシステムに組み込まれてしまえばもはや抗うことができないという恐怖。 平時の倫理観がまったく崩壊してしまう極限状態。
独ソ戦の凄まじい戦禍はそれらをまざまざと私たちに見せつけます。
もちろん太平洋戦争における人々の苦しみを軽視しているわけではありません。 ですが、あえて日本から離れた独ソ戦を学ぶことで戦争とは何かという問いをより客観的に学ぶことができます。だからこそ私はあえて独ソ戦を学ぶことの大切さを感じたのでした。