『世界史劇場 ナチスはこうして政権を奪取した』ヒトラーの権力掌握の過程を知るのにおすすめな参考書!

ソ連とドストエフスキー

ヒトラーはなぜ権力を掌握できたのか 神野正史著『世界史劇場 ナチスはこうして政権を奪取した』

今回ご紹介するのはベレ出版より2016年に出版された神野正史著『世界史劇場 ナチスはこうして政権を奪取した』です。

第二次世界大戦を知るにはヒトラー台頭の歴史を知ることが不可欠です。

ヒトラーはどのような人物だったのか。どのように権力を掌握していったのか。ヒトラーのナチスは何を考え、何をしようとしていたのか。

これらのことを学ぶ上でこの本は非常にわかりやすく面白い参考書となっています。

早速この本について見ていきましょう。

〇第一次世界大戦後のヴェルサイユ体制下における欧米の動きと、ナチスの誕生から全権委任法成立までの過程を詳しく解説。

〇まるで映画や舞台を観るような感覚でスイスイ読めてわかりやすい!

〇歴史が”見える”イラスト”が満載!

〇歴史を学びなおしたい大人から、歴史が苦手な高校生まで楽しめる。

ベレ出版、神野正史『世界史劇場 ナチスはこうして政権を奪取した』

この本のありがたいのはヒトラーのことだけではなく、ヒトラーが出てくる前の世界情勢もしっかり解説してくれるところです。

第一次世界大戦後のヨーロッパがいかに歪んでいたか、そしてドイツ国民がどのような状況に置かれていたかを知ることができます。

ヒトラーが台頭していったのは、彼の主張が通りやすい状況にあったからというのがよくわかります。神野氏の解説によって歴史の流れがすっと入ってきます。

ヒトラーはヒトラーだけにあらず。国際社会やドイツ国内の複雑な背景が絡み合ってヒトラーが生まれてきたことを学べます。

ではいつものように神野氏の「はじめに」の文章を読んでいきます。

はじめに

一歴史に学ばぬ者はかならず亡びる。

一愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。

前者がW.L.S.チャーチル、後占がO.E.L.ビスマルクの言葉ですが、似たような言葉は古今東西にあります。

しかし、偉人たちがどれだけ警鐘を鳴らそうとも、人はなかなか「歴史に学ぶ」ことができません。

18世紀末から19世紀初頭にかけて、ナポレオンがヨーロッパに覇を唱え、旧秩序(ウェストファリア体制)を破壊しました。

彼の没落後、ウェストファリア体制に代わる「新しい国際秩序」を構築するべく、ヨーロッパ中の国々の全権が集まってウィーン会議が開かれることになりましたが、その会議を主導したのは英・仏・普・墺・露の五大国のみ。

こうして生まれた新秩序が、所謂「ウィーン体制」です。

しかし、こんな大国唱導の独善的なやり方が長続きするはずもなく、ウィーン体制はわずか33年で崩壊し、あとは岩が崖を転がり落ちていくように「第一次世界大戦」へと驀進ばくしんしていく結果となります。

戦後、「二度とこんな戦禍をもたらさぬため、ウィーン体制に代わる新しい国際秩序を創ろう!」と開催されたのがパリ講和会議です。

ところが。

ウィーン会議同様、会議には世界中から全権が招かれながら、ここで発言権を有したのは、米・英・仏・伊・日の五大国のみ。

しかも、会議開始まもなくイタリア・日本が委員会から叩き出され、結局、米・英・仏の三巨頭の密談で「新国際秩序」が構築されることになります。こうして生まれたものが「ヴェルサイユ体制」です。

これでは、短命に終わり、第一次世界大戦を招いた「ウィーン体制」となんら変わりません。

彼らはまるで「歴史に学ぶ」ことができなかったのです。

案の定、ヴェルサイユ体制は、A.ヒトラー、B.ムッソリーニ、東条英機らを産み落とし、育み、第一次世界大戦などおよびもつかないほどの悲惨な戦争「第二次世界大戦」を自らの手で招き寄せることになりました。

巷間、戦禍のすべての責任を「ヒトラーが悪い」「東条が悪い」と、一個人に負わせるような固定観念が蔓延していますが、それはきわめて程度の低い浅慮と言わざるを得ません。

たとえば、ひとつの犯罪について裁判が行われるとき、「何もかも被告(人)が悪い!」と決め付けて刑罰が科されるわけではありません。

裁判では、被告(人)の生い立ち・環境・経歴その他諸々の事情を徹底的に調べあげ、犯罪の”温床”を明らかにしようとします。

そうすることで初めて犯罪の原因・本質に迫ることができ、ひいては再犯防止につなげることも可能になるからです。

歴史も同じです。

悲劇を繰り返さないために「歴史に学ぶ」というのは、単に「悲劇の責任を一個人に押しつける」ということではありません。

・そもそもなぜ「ヒトラー」という独裁者が現れたのか。

・ヒトラーを生み育てる揺籃となった”元凶”は何か。

世間では、ヒトラーのしでかした派手な汚行悪行ばかりが取り上げられ、強調され、人々はこれに目を奪われていますが、そもそも「彼を存在せしめた根本原因」について語られることはあまりありません。

しかし、それを知らないということは、ヒトラーの本質を何ひとつわかっていないということです。

本書がそのことについて考える糸口となってくれたなら、これを世に送った筆者としてこんなにうれしいことはありません。

ベレ出版、神野正史『世界史劇場 ナチスはこうして政権を奪取した』

前回の記事では同じ『世界史劇場』シリーズの第二次世界大戦についての本をご紹介しました。

今回の『世界史劇場 ナチスはこうして政権を奪取した』は第二次世界大戦に至るまでのドイツの動きや世界情勢について解説していきます。

上の「はじめに」の文章にもありましたようにヒトラーが出てくるにはそれを可能にさせた時代背景があったからこそです。ヒトラーただ一人のカリスマや実力によって独裁者へと成り上がったのではありません。

戦争は交戦している時だけが戦争というわけではありません。戦争は戦う前から始まっています。そうした複雑で緊迫した世界情勢を知らなければ戦争の全体像は見えてきません。

そうした意味でナチスが台頭していくドイツの流れを知ることは第二次世界大戦を学ぶ上で非常に重要な要素になっていきます。

民主主義であったはずのドイツがなぜ全体主義へと突き進んでいったのか。

これは日本においても当てはまる事象です。

ナチスを学ぶことは私達の歴史を学ぶことにもつながります。

この本ではいつものごとく、神野氏の絶妙な解説で進んで行きます。とにかく面白く、読みやすいです。ドイツの流れをまずは知りたいという方には非常におすすめな1冊となっています。

以上、「『世界史劇場 ナチスはこうして政権を奪取した』ヒトラーの権力掌握の過程を知るのにおすすめな参考書!」でした。

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