フランス

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

(9)第一次世界大戦とレーニン~ドイツの支援と新聞メディアの掌握

なんと、レーニンの政治活動の背後にはドイツ政府の秘密資金があったのでした。しかもその金額が桁外れです。そうした資金があったからこそロシアでのメディア掌握が可能になったのでした。

そもそもロシア二月革命勃発時、スイスに亡命中だったレーニンを封印列車でロシアに送り届けたのもドイツです。

ドイツは戦争からの撤退を主張していたレーニンをロシアに送ることで、ロシア政府が対独戦争から手を引くことを狙っていたのでした。

ですのでドイツは帰国後もレーニンを秘密裏に支援していたのです。

レーニンが権力を掌握できたのもドイツの戦略があったからこそというのは私にとっても驚きでした。

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

神野正史『世界史劇場 第一次世界大戦の衝撃』―この戦争がなければロシア革命もなかった

前回の記事に引き続き神野正史氏の著作をご紹介していきます。

というのも、ロシア革命は第一次世界大戦がなければ起こっていなかったかもしれないほどこの戦争と密接につながった出来事でありました。

『世界史劇場 ロシア革命の激震』でもそのあたりの事情は詳しく書かれているのですが、やはりこの大戦そのものの流れや世界情勢に与えた影響を知ることでよりこの革命のことを知ることができます。

単なる年号と出来事の暗記ではなく、歴史がどのように動いていったのかを知るのにも最高な入門書です。しかもとにかく面白くて一気に読めてしまう。これは本当にありがたい本です。

ロシア革命や当時のロシアが置かれていた状況を知る上でもこの本はおすすめです。

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

神野正史『世界史劇場 ロシア革命の激震』~ロシア革命とは何かを知るのにおすすめの入門書!

神野氏の本はいつもながら本当にわかりやすく、そして何よりも、面白いです。点と点がつながる感覚といいますか、歴史の流れが本当にわかりやすいです。

ロシア革命を学ぶことは後の社会主義国家のことや冷戦時の世界を知る上でも非常に重要なものになります。

著者の神野氏は社会主義に対してかなり辛口な表現をしていますが、なぜ神野氏がそう述べるのかというのもこの本ではとてもわかりやすく書かれています。

この本はロシア革命を学ぶ入門書として最適です。複雑な革命の経緯がとてもわかりやすく解説されます。

ロシアの大作家チェーホフの名作たち

本当にいい本とは何かー時代を経ても生き残る名作が古典になる~愛すべきチェーホフ・ゾラ

今こそチェーホフとゾラを読もう!―時代と世の中の仕組みを冷静に見る視点 これまで当ブログではおよそ1カ月にわたってチェーホフについてご紹介してきました。 ドストエフスキーを学ぶ上では必須という作家ではないチェーホフをここ…

ロシアの大作家チェーホフの名作たち

チェーホフ『犬を連れた奥さん』あらすじと感想~不倫は悪か…チェーホフが見つめた男女の愛と苦悩とは

この物語は不倫の物語です。

チェーホフはこうした不倫の物語を多く描いています。 実はこれ、フランス人作家エミール・ゾラにもそうした傾向がありました。

ゾラにしろチェーホフにしろ、なぜ不倫ものを書いたのでしょう。私はそこに彼ら流の問題提起があるように思えます。

不倫ものをチェーホフは多く書きましたが、単にゴシップ的なものを書きたかっただけというのではなく、そこにある人間の苦悩をチェーホフは見つめていたのではないでしょうか。

意志と表象としての世界哲学者ショーペンハウアーに学ぶ

ショーペンハウアー『意志と表象としての世界』を読んで

『意志と表象としての世界』はかなりの大作です。これを完全に理解するのは当時の人たちにとっても現代の私達にとっても至難の業です。

しかも驚くべきことに著者のショーペンハウアー自身が序文でとてつもないことを述べるのです。

彼はまず言います。この本は2回読まねばわからぬと。

こんな難しくてしかも長い本を2回も読めと。しかも1回目はまずわからないだろうから忍耐が必要だと最初から宣言するのです。さすがショーペンハウアー、言うことが違います。

他にも驚きの言葉がどんどん出てきます。やはりこの作品は一筋縄ではいきません

ゴロソフケルドストエフスキー論

ゴロソフケル『ドストエフスキーとカント 『カラマーゾフの兄弟』を読む』~カントという切り口から見るドストエフスキーとは

やはり欧米文学をやる上ではカントは避けては通れぬ道なのかもしれません。

とはいえ、正直申しまして私はカントやヘーゲル、プラトンなど西欧哲学が苦手です。挑戦してはあっさりと跳ね返され、未だにしっかりとは読めていません。

ですがこの本ではその言わんとしていることが何となくわかります。カントを知った上で読むのがベストなのかもしれませんが、そうでなくとも読んでいくことができます。

ドストエフスキーをまた違った視点から見ることができる興味深い作品でした。

ツルゲーネフの生涯ロシアの文豪ツルゲーネフ

佐藤清郎『ツルゲーネフの生涯』~文豪の生涯と特徴を知れるおすすめ参考書!

この本はツルゲーネフの全生涯を振り返りながら、その出来事と作品のつながりをわかりやすく、そして深く掘り下げていってくれます。

単に生涯をたどるだけでもなく、単に作品の解説をするだけでもない。生涯と作品を結び付けて何がツルゲーネフの作品に影響を与えているかをとてもわかりやすく解説してくれます。

これまで当ブログでもツルゲーネフ作品を紹介してきましたがそこでもたくさん引用させて頂きました。

難しい理論的な話ではなく、実際の人生と作品の結びつきが物語的に語られるので肩肘張らずに作品を理解できます。

ヴィアルドーロシアの文豪ツルゲーネフ

ツルゲーネフとヴィアルドー夫人の宿命の恋~ツルゲーネフの運命を決めたオペラ女優の存在

ツルゲーネフは大地主の御曹司でしかも容姿端麗。文壇のスターとして活躍し、さらに社交界では軽妙洒脱な話術や抜群の知性で伊達男として通っていました。これはモテないわけがありません。これはドストエフスキーと比べても興味深いです。彼とは真逆のモテっぷりです。ツルゲーネフは若い頃から恋多き男でした。

しかし、そんな彼でしたが生涯結婚することはありませんでした。

彼には生涯にわたって愛し続けた一人の女性がいたのです。

それがポーリーヌ・ヴィアルドーというオペラの歌姫だったのです。

この記事ではそんなツルゲーネフの恋についてお話ししていきます。ドストエフスキーとの比較も興味深かったです。

ロシアの文豪ツルゲーネフ

スラブ派・西欧派とは?ドストエフスキーとツルゲーネフの立場の違い―これがわかればロシア文学もすっきり!

ドストエフスキーやツルゲーネフ、トルストイの作品や解説を読んでいてよく出てくるのがタイトルにもあるスラブ派・西欧派という言葉。

当時のロシア文学は純粋な娯楽や芸術としてだけではなく、国や人間のあり方について激論を交わす場として存在していました。

彼らにとっては文学とは自分の生き方、そして世の中のあり方を問う人生を賭けた勝負の場だったのです。

その尋常ではない熱量、覚悟が今なお世界中でロシア文学が愛されている理由の一つなのではないかと私は考えています。