トルストイ

ロシアの巨人トルストイ

トルストイ『人にはどれほどの土地がいるか』あらすじと感想~人間の欲望の果てしなさ、虚しさを語るトルストイの傑作民話

この作品は「ある村の百姓が、より大きな土地をもらえるという儲け話に乗っかり、次々と欲望を増大させていき、最後にはその欲望のゆえに命を落とす」という、筋書きとしてはかなりシンプルな物語です。

ですがそこは最強の芸術家トルストイ。彼の手にかかればそうしたシンプルなストーリーがとてつもなく劇的で奥深いものになります。

トルストイ民話の中で一番好きな作品はどれかと言われましたら私はこの作品を選びます。

ぜひぜひおすすめしたい作品です。

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トルストイ『イワンのばかとそのふたりの兄弟』あらすじと感想~戦争反対、非暴力を素朴な民話に託して語るトルストイ

一般的には『イワンのばか』という名で有名なトルストイのこの作品ですが、正式には『イワンのばかとそのふたりの兄弟』が正式な名前となっています。

この作品にはトルストイ思想がこれでもかと詰まっています。しかもそれが素朴に、わかりやすく表現されています。非常に読みやすい作品です。

ロシアによるウクライナ侵攻で揺れる今だからこそ重要な作品だと思います。

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トルストイ『わが信仰はいずれにありや』概要と感想~トルストイの真理探究とその結末にニーチェを感じる

私はトルストイのこの作品を読み始めてすぐ、うっすらとではありますがニーチェ的なものを感じました。

そしてそのうっすらとした予感は確信へと変わることなります。

トルストイはこの作品で教会を批判し、自身の信仰、思想を開陳していきます。

私はそれらトルストイの言葉に、自らの理性によって真理を掴み、それにより自己完成を目ざさんとするニーチェ的な感性を感じたのでありました。

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トルストイ『人はなんで生きるか』あらすじと感想~素朴な人間愛が込められたトルストイ民話の代表作

トルストイはこの作品で「人はなんで生きるか」を探究していきます。

そしてその大きな柱となるのが「愛」です。

この作品は民話を題材にしていることもあり、非常に素朴です。ですがこれがとにかく味わい深い!

この作品は「民衆自身の言葉で、民衆自身の表現で、単純に、簡素に、わかり易くをモットーに努力した」というトルストイの渾身の一作です。まさにその通りの作品となっています。

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トルストイ『要約福音書』概要と感想~福音書から奇跡を排したトルストイ流の聖書理解とは

この作品は聖書に書かれているイエスの生涯をトルストイ流に再構成したものになります。

この作品の特徴は何と言っても「キリストの言説と伝えられるものであっても、近代人にとって不合理と認められ、抵抗を感じさせるような奇蹟や神秘の部分は除去されて」いる点にあります。

この作品ではイエスが病人を治したり、水の上に浮かんだり、死者を蘇らせたりというエピソードがカットされています。キリスト教にとって最も重要な教義のひとつである「イエスの復活」ですらカットする徹底ぶりです。

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トルストイ『教義神学の批判』概要と感想~ロシア正教の教義を徹底的に批判したトルストイ

前回の記事で紹介した『懺悔』ではトルストイが自身の信仰がどのような経緯でもたらされるようになったのかが語られましたが、この作品では実際にロシア正教の教義を徹底的に批判していくことになります。トルストイの信仰とロシア正教の教義はもはや到底相容れないものとなっていたのです。

この記事ではそんなトルストイの激烈な教会批判の例をいくつか紹介します。きっと読めば皆さんも驚くと思います。それほど強烈な批判でした。

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トルストイ『懺悔』あらすじと感想~トルストイがなぜ教会を批判し、独自の信仰を持つようになったのかを知るのに必読の書

『懺悔』は『アンナ・カレーニナ』を書き終えて宗教的著作をこれから発表しようとしていたトルストイが、自らの立場や思いを表明するために書いた作品になります。

「それを抜きにしていきなり、『教義神学研究』や『要約福音書』など、常識はずれの著作を発表しても、読者はトルストイが本当に発狂したと思って、読まなかっただろう。」

こう書かれてしまうほど根本的な思想転換がトルストイには起こっていました。一般の人にはまず受け入れられないであろう存在がここからのトルストイになります。

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トルストイ『アンナ・カレーニナ』あらすじ解説と感想~トルストイ芸術の最高傑作にただただひれ伏すのみ。完敗です

『戦争と平和』に引き続き『アンナ・カレーニナ』を読んだ私ですが、圧倒的なスケールの『戦争と平和』に脳天直撃のガツンとした一撃を受け、今度は『アンナ・カレーニナ』の完璧すぎる芸術的描写に、私はもうひれ伏すしかありませんでした。ただただひれ伏すしかない。それだけです。もう完敗です。こんな完璧な作品を見せられて、自分の卑小さをまざまざと感じさせられました。何でこんなに完璧な文章を書けるのかと頭を抱えたくなります!それほど圧倒的な作品です。

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トルストイ『カフカースのとりこ』あらすじと感想~トルストイ作の子供向け教科書にも収録されたカフカース物語

トルストイは子供たちの教育に並々ならぬ熱意を抱いていました。

自分の邸宅を学校として開放し、自ら教え、ついには自分で教科書を作ってしまうほどでした。

今作『カフカースのとりこ』はそんな自作教科書に収録された作品になります。

『カフカースのとりこ』というタイトルから私は最初、カフカースに夢中になる話かと思ってしまっていたのですが「捕虜」の「とりこ」でした。

この作品も芸術家トルストイらしい見事な自然描写と、究極の人間観察家トルストイの特徴が出ています。

ロシアの偉大な作家プーシキン・ゴーゴリ

プーシキン『カフカースの捕虜』あらすじと感想~雄大な自然と異国の文化を描くロマン溢れるカフカースの物語詩

この作品はカフカースを訪れていたプーシキンがその地で得たインスピレーションをもとに書き上げた物語詩です。

この作品を読んでいてやはり思うのはプーシキンらしい、ロマンチックな情景描写です。カフカースの雄大な景色の描写はとにかくカッコいいです。読んでいて思わず興奮してしまうような不思議な高揚感があります。感情に訴えかける力が凄まじいです。「これぞプーシキン!」という名作です