梁の武帝

森三樹三郎『梁の武帝 仏教王朝の悲劇』~仏教信仰に篤かった中国王の善政とその悲劇を知るのにおすすめ!曇鸞とのつながりも

本書では梁武帝の政治と宗教の問題を詳しく見ていくことになります。武帝は当時としては考えられないほどの善政を行っていました。武帝の仏教的な平和文化路線は明らかに人々の生活を豊かにしました。しかしその善政そのものに国の崩壊の原因があったというのは何たる悲しい皮肉ではないでしょうか。

本書ではそんな武帝の善政と国家の崩壊を詳しく見ていくことになります。上の引用にありましたように、国が滅亡していく様はものすごく悲しくなります。武帝自身も脇の甘さと言いますか、失策がもちろんないわけではないのですがそれでもやはり「歴史のもし」を想像したくなります。

また、今作の主人公梁の武帝は浄土真宗にとっても実は非常に深いつながりのある存在です。そうした意味でも本書はとてもおすすめな作品です。

鳩摩羅什

横超慧日、諏訪義純『人物 中国の仏教 羅什』~翻訳僧鳩摩羅什の波乱万丈の人生を知るのにおすすめ!

。鳩摩羅什の苦難の人生は有名ですが、そのひとつひとつの苦難をこの本では詳しく見ていくことになります。

後世を生きる私たちは鳩摩羅什や数々の翻訳僧が遺した経典を当たり前のように享受していますが、その翻訳がなされるまでにどれだけの御苦労があったかをこの本では感じることになります。

以前当ブログで紹介した船山徹著『仏典はどう漢訳されたのか スートラが経典になるとき』とセットでぜひおすすめしたい一冊です。

仏典はどう漢訳されたのか

船山徹『仏典はどう漢訳されたのか スートラが経典になるとき』~お経とは何かを考える上でもおすすめの刺激的な参考書!

古代インドの言葉で作られた経典がいかにして中国語に変換されたのか。

普段なかなか考えることすらない「漢訳の過程」ではありますが、いざその実態を見てみるとこれが面白いのなんの!「ほお!そうやってお経が作られていったのか」と驚くこと間違いなしです。これは刺激的です。

中国仏教や日本仏教を考える上でもこの本は大きな示唆を与えてくれる作品です。

新アジア仏教史07

『新アジア仏教史07 中国Ⅱ 隋唐 興隆・発展する仏教』~道綽・善導についての興味深い事実を知れるおすすめ作品

宗教は宗教だけにあらず。当時の時代背景、政治経済、あらゆる要因が絡んで宗教は変化生成されていきます。

中国は特に国家との関係性が強かったという事情があります。では翻って日本はどうでしょうか。

こうしたことを考える上でも本書は非常に良い思考実験になります。

そして本書を読んで一番興味深かったのは中国浄土教の流れが解説されていた箇所でした。特に道綽と善導という浄土真宗でも七高僧として崇められている二人の高僧についてのお話には刺激を受けました。

この道綽、善導の生涯や人柄についてはなかなか知る機会がないのでこの本で語られる内容はとにかく驚きでした

新アジア仏教史06

『新アジア仏教史06 中国Ⅰ 南北朝 仏教の東伝と受容』~中国への仏教伝来について幅広く学ぶのにおすすめ!

中国に入った仏教は中国人からすると全く異質な存在です。その異質な存在をどう受容するかというのは非常に大きな問題です。

日本仏教を知る上でもこの中国における仏教伝来は非常に大きな意味を持ちます。『新アジア仏教史』シリーズはこれまで見てきたように幅広く仏教史を学べる作品です。今作も中国における仏教伝来を幅広く見ていきますので、中国仏教入門にとてもおすすめです。参考文献も豊富に掲載されていますので今後の学びにも非常に役立ちます。ぜひぜひおすすめしたい一冊です。

新アジア仏教史05

『新アジア仏教史05 中央アジア 文明・文化の交差点』~仏教の中国伝来に大きな役割を果たしたシルクロード圏の仏教とは

当時小学生だった私はアフガニスタンの大仏破壊のニュースを見て「なぜイスラム教の国にあんな巨大な大仏があったのだろう」と素朴にも疑問に思ったものですが、実はアフガニスタンをはじめとした中央アジア地域は仏教が非常に盛んな地域でもあったのでした。

そしてこの中央アジアの文化的影響が中国への仏教伝播にも大きな役割を果たしていたのでした。

「仏教はインドで梱包されて中国に送り届けられたわけではない」

私はこの言葉を読んで思わず「おぉ!」と膝を打たずにはいられませんでした。何たるパワーワード!

インドから中国へ仏教が伝来したというと、どうしてもこの「梱包的」なイメージを持ってしまいますが、よくよく考えてみればまさにその通り。当たり前のことのように思えますがよくよく考えるとものすごく深いです。

仏教の来た道

鎌田茂雄『仏教の来た道』~仏教の中国伝播の歴史を学べるおすすめ参考書。三蔵法師達の過酷な旅路を知る

この本では有名な玄奘三蔵をはじめとした三蔵法師たちの活躍やその時代背景を知ることができます。

仏教はインドから中国へ伝播しました。そのこと自体は広く知られていることではありますが、では実際にいつどこでどのように伝えられていったかというと意外とわからないですよね。私自身も漠然としか知りませんでした。この本を読んで中国からインドへ経典を求めて旅をすることがどれほど危険で命がけだったかに驚くことになりました。

老荘と仏教

森三樹三郎『老荘と仏教』~中国における仏教受容と老荘の関係を知れる刺激的な一冊!

この本はとてつもなく面白い名著です!頭がスパークするほど刺激的な一冊です!」

いやあこの本には参りました。中国関連の本をこれまで当ブログではご紹介してきましたが、その中でも間違いなくトップクラスに君臨します。いや、中国に限らず仏教関連の本全てにおいてもこの本はその位置に来るでしょう。それほど面白い一冊です。

インドから伝来した仏教が中国においてどのようにして受容され変容していったのかが本書の主要テーマでありますが、これがものすごく刺激的です。
他にも老荘思想の概要や中国仏教と政治の関係性、禅仏教や浄土教の展開など、この本ではとにかく興味深い内容がどんどん出てきます。いや~面白い!脳内がスパークしました。

老子

池田知久『『老子』 その思想を読み尽くす』~老子の思想を様々な視点から考察したおすすめの参考書

本書ではその前半で老子の生きた時代背景と、『老子』という書物の成立過程を見ていきます。そしてそこから著者は「倫理思想」「政治思想」「養生思想」「自然思想」と大きく4つのテーマに分けて『老子』の思想を見ていきます。

とてつもないボリュームです。この本ではかなり詳しく老子について語られます。注も充実しています。

入門書としては正直厳しいのではないかというのが私の思う所ではありますが、より詳しく老子について学んでみたいという方にはぜひおすすめしたい作品です。また、この本とセットで蜂屋邦夫著『老子探究 生き続ける思想』もおすすめです。こちらは老子と政治、国家、時代背景についてより詳しく知れる作品です。

墨子

浅野裕一『墨子』~兼愛や非攻など、戦国時代において平和と博愛を説いた墨家の思想を知るのにおすすめ

戦乱の世において平和主義を説いた異色の思想家集団の実態を知ることができる貴重な参考書です。

この本を読み、「非攻」という平和主義や「兼愛」という博愛主義を説いていた墨家が進んで武装し戦闘していたというのはかなり驚きでした。ですがこれは簡単な話ではなく、戦国時代という過酷な時代背景をいかに生き抜くかを極限まで考えた上でのお話です。

非攻を唱えながら進んで武装したことを矛盾と一言で切り捨てることはできません。なぜそのようなことになったのかというのは私にとって非常に興味深いものがありました。

本書ではそんな墨家がどのように生まれ、どのようにして中国に広がり、さらにはいかにして消滅していったかが説かれます。