ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』あらすじと感想~ディズニーの原作!マグリットも愛した傑作童話!

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ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』あらすじと感想~ディズニーの原作!マグリットも愛した傑作童話!

今回ご紹介するのは1865年にルイス・キャロルによって発表された『不思議の国のアリス』です。

私が読んだのは角川文庫、河合祥一郎訳の『不思議の国アリス』2019年第14刷版です。

早速この本について見ていきましょう。

ある昼下がり、アリスが土手で遊んでいるとチョッキを着た白ウサギが時計を取り出しながら、急ぎ足に通り過ぎ、生き垣の下の穴にぴょんと飛び込みました。アリスも続いて飛び込むと、そこは…。チェシャーネコ、三月ウサギ、帽子屋、ハートの女王など、一癖もふたくせもあるキャラクターたちが繰り広げる夢と幻想の国。ユーモア溢れる世界児童文学の傑作を、原文の言葉あそびの楽しさそのままに翻訳した、画期的新訳決定版。

Amazon商品紹介ペ―ジより

この作品はあのディズニー映画の原作となった作品です。私も子供の頃何度も見たことを覚えています。世界中で最も知られているアニメ映画の一つなのではないでしょうか。

私はこの曲が大好きで、今脳内リピート中です。

さて、今回私がこの作品を読もうと思ったのはマグリットがきっかけでした。

前回、前々回とマグリットについて紹介してきましたが、このマグリットが強い影響を受けていたのが何を隠そう、『不思議の国のアリス』とその続編の『鏡の国のアリス』だったのです。

『マグリット 光と闇に隠された素顔』では作品解説に何度も『アリス』が出てきます。『アリス』の不思議な世界観がマグリットの奇妙な絵に大きな影響を与えていることがこの本からわかりました。

そして実際にこの物語を読み、ディズニーを見てみると驚くほど「マグリットっぽさ」を感じることになりました。マグリットと『アリス』のつながりを感じながら見た『アリス』はかつて子供の頃に見たものとは違った魅力を感じることになりました。具体的にどの部分がマグリットと繋がってくるかはここではお話しできませんが、ぜひ上で紹介した本を読んで頂ければなと思います。ものすごく面白いのでおすすめです。

さて、話は戻りまして、まずはこの作品の著者のプロフィールについてご紹介します。

ルイス・キャロル(1832-1898)

イングランド北西部チェシャー州出身。本名:チャールズ・ラトウィッジ・ドッドソン。数学者であり、作家。母校オックスフォード大学で数学講師を務めていた際、学寮長リドルの次女アリスのために書き下ろした物語が、『不思議の国のアリス』(1865年)の原型となる。71年には『鏡の国のアリス』を発表、他に『スナーク狩り』などの作品がある。

角川文庫、ルイス・キャロル、河合祥一郎訳『不思議の国のアリス』より

このプロフィールを読んで驚いたのですが1832年生まれといえばドストエフスキーの11歳下です。

しかも『不思議の国のアリス』が書かれたのは1865年です。あの『罪と罰』が発表される1年前です。

つまり、ドストエフスキーとルイス・キャロルはほぼ同時代人です。

アンデルセンやグリム兄弟の時も驚いたのですが、『不思議の国のアリス』もこの時代に書かれたものだったのですね。

そして主人公のアリスも実在のモデルがいたというのも驚きでした。くまのプーさんのクリストファーロビンを連想してしまいました。

この角川文庫版の巻末のあとがきではこの作品が生まれてきた経緯も詳しく知ることができます。この経緯を知ると、『不思議の国のアリス』がまた違って見えてきます。

私はこの原作を読んでからディズニーの『不思議の国のアリス』を見てみました。よくよく考えてみればこの作品を見るのは実に20年ぶりでした。

ですが意外としっかり覚えているものですね。見ていてとても懐かしくなりました。

そして感じたのは想像以上に原作に忠実であることでした。

ディズニーのアリスは『不思議の国のアリス』と続編『鏡の国のアリス』がブレンドされて出来上がっています。

ディズニー映画でも人気のディーダム兄弟も実は続編の『鏡の国のアリス』で出てきたキャラクターです。

Wikipediaより

他にも、お花が歌うシーンなどもこの続編から取られています。

ですが基本線としては原作の『不思議の国のアリス』に忠実になっています。

それにしても映画を観て感じたのですが、ディズニーの構成の見事さたるや驚くしかありません。

正直、原作で文字で読むとあまりに突飛な展開で目が回りそうになるのですが、さすがはディズニー。魅力的な歌とダンスで見事に表現しています。

正直、子供の頃より今見た時の衝撃の方が大きかったです。ものすごく面白い!

ディズニー恐るべしです。歌と踊り、派手な演出がもう頭から離れません。トランプ兵が出てくるところや最後の逃走シーンなんて素晴らしすぎる演出ですよね。「なんでもない日万歳」の歌も、チェシャーネコの「偉さが違う」のフレーズも忘れられません。音楽とアニメの融合はディズニーの伝家の宝刀ですが、この作品にしてもピカイチな魅力を放っています。あぁ、また見たくなってきました。

さて、最後にもう一つ興味深い点についてお話ししていきます。

それはこの作品のAmazonのカスタマーレビューです。

かなり高評価のこの作品ですが、その中でも低評価のレビューがまさにこの本の特徴を言い表しています。

星1つのレビューを見てみて下さい。「意味がわからない作品」とそこでは述べられています。

たしかにそう言いたくなるのもわかるのですが、逆に言えばそれこそこの作品の魅力でもあるわけです。

そしてこのことについてわかりやすく解説しているのが先ほども紹介したマグリットの本なのです。

私たちは普段、理性によって世界を把握し、「こうすればああなる」という合理的な思考の下生活しています。ですがはたしてそれは本当のことなのだろうかとマグリットは疑問を投げかけます。

私たちは自分の理性でも把握できない無意識の領域を持っていて、それが世界を形成しているのではないか。それこそ夢のように、コントロール不可能の突飛な物語が私たちの内側に渦巻いているのではないか。

それをマグリットは不思議な絵を通して表現しているのです。

特に、私たちは大人になるにつれてどんどん「合理的」になっていきます。子供の頃に持っていた自由な想像力はどんどん失われていきます。

私達の合理的な世界観をひっくり返すような想像力、突飛な世界、目まぐるしく変わる展開、それらを楽しむのがこの本の魅力であるとマグリットを通して感じました。

もちろん、マグリットはこの物語が書かれてから30年以上後に生まれていますから、マグリットの論のために『不思議の国のアリス』が書かれたわけではありません。

ですが、マグリットを通すことでこの作品をより楽しむ糸口になるのではないかと私は思います。実際、マグリットを感じながらこの作品を読んだりディズニー映画を観るのはとても楽しかったです。

子供のような自由な想像力を楽しむ。これがポイントです。

大人の合理的な物語展開を求めようとしてもこの本はそもそもそういう趣旨で書かれた本ではありません。子供が楽しめる童話として書かれたものです。

そうした前提の下読んでいくととても楽しく読むことができます。

そして『不思議の国のアリス』は様々な翻訳で出ていますが私はこの角川文庫版の河合祥一郎訳をおすすめします。いろいろ読み比べてみたのですが一番すっと入ってきたのが角川文庫版でした。それに挿絵もたくさんあり、これが非常にありがたいです。ディズニー版の面影も感じられる絵です。

絵があることで突飛なストーリー展開にもなんとか付いていくことができます。言葉だけだとイメージしにくいことも、絵があれば目で一発でわかります。かわいらしくもユーモラスな挿絵が非常にいい味を出しています。

絵と共にアリスの物語を読んでいけるので角川文庫版はとてもおすすめです。

マグリットとの関係性から読んでみた『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』でしたが、想像以上に深く、面白い作品でした。ルイス・キャロルの人となりについても興味が湧きました。『鏡の国のアリス』の巻末には彼とアリスとの悲しくもじーんとくるエピソードも書かれていて余計『アリス』の物語に感情移入することになります。そちらもぜひ読んで頂きたい箇所となっています。

『不思議の国のアリス』、ディズニー映画とともに、大人になった今だからこそおすすめしたい作品です。

以上、「ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』あらすじと感想~ディズニーの原作!マグリットも愛した傑作童話!」でした。

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